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アウディ A6 アバント 2.8 FSI クワトロ新車試乗記(第659回)

Audi A6 Avant 2.8 FSI quattro

(2.8リッターV6・7速DCT・640万円)

アウディ躍進の秘密を
先進のコンサバワゴン、
A6 アバントにミタ!

2012年04月27日

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キャラクター&開発コンセプト

「100」から数えて7代目。半年遅れでアバントも登場


東京モーターショーでジャパンプレミアを飾ったA6 アバント

アウディの「A6」は1994年に登場したアッパーミディアムクラスモデル。2011年8月に日本で発売された現行モデルは4代目で、また前身のアウディ「100」から数えると7代目にあたる。

今回試乗したのはセダンに半年ほど遅れて、2012年2月に追加されたステーションワゴンの「A6 アバント」。アウディでステーションワゴンを意味するアバントは、2代目アウディ100から続く伝統のモデル。ワゴンではなくアバントと称したのは、リアウインドウが寝た5ドア的なモデルとして始まったからだろう。

 

新採用されたフルLEDヘッドライト

プラットフォームは先に登場したA7 スポーツバックがベース。ホイールベースは先代より65mm伸び、オーバーハングを短縮。ヘッドライトまわりもLEDを多用した新世代デザインとなり、スポーティなイメージを強めている。また、ボディ全体の20%以上にアルミ素材を使用し、軽量化に務めたのも売りの一つ。また2種類のV6直噴エンジン、7速DCT「Sトロニック」、アイドリングストップ機能「スタートストップ システム」などの採用によって、環境性能も大幅に向上。全車にフルタイム4WDシステム「クワトロ」を採用しながら、JC08モード燃費11.0~11.8km/Lを達成している。

またフリック操作や文字などの手書き入力ができるタッチパッド「MMI タッチ」を全車標準とするなど、インターフェイスも最新世代に刷新。直接のライバルはEクラス、そして5シリーズだ。

価格帯&グレード展開

アバントの「2.8 FSI」がお買い得!?


今回試乗した A6 アバント 2.8 FSI クワトロ

ラインナップはシンプルで、計4モデル。セダンとアバントそれぞれに、2.8リッターV6・直噴NA(最高出力204ps、最大トルク28.6kgm)の「2.8 FSI クワトロ」と3リッターV6・直噴スーパーチャージャー(310ps、44.9kgm)の「3.0 TFSI クワトロ」を設定。変速機は両者ともに7速Sトロニック、いわゆるDCT(デュアル クラッチ トランスミッション)になる。

セダンとアバントの価格差はわずか30万円だが、一方で「2.8 FSI クワトロ」と「3.0 TFSI クワトロ」の差は225万円もある。これは後者がアダプティブクルーズコントロール等を含む「プレセンスパッケージ」(2.8 FSI クワトロでは50万円のオプション)等を標準装備するから。とはいえ、アバント 2.8 FSI クワトロのお買い得感が目立つのは確かだ。

 

8インチディスプレイのHDDナビゲーションシステムは標準装備

先進安全装備については、レーダーセンサーを使った「アダプティブクルーズコントロール」や衝突回避を行う「プレセンスプラス」を、「3.0 TFSI クワトロ」に標準装備、「2.8 FSI クワトロ」にオプション設定。オーディオはBOSE(14スピーカー・600w)が標準で、オプションでバング&オルフセン(15スピーカー・1200w)を84万円で用意する。特徴的なフルLEDヘッドライトは30万円。

【セダン】
■A6 2.8 FSI クワトロ     610万円
■A6 3.0 TFSI クワトロ     835万円

【アバント】
■A6 アバント 2.8 FSI クワトロ   640万円  ※今回の試乗車
■A6 アバント 3.0 TFSI クワトロ   865万円

パッケージング&スタイル

より精悍に。スタイルも引き締まる

ボディサイズはセダンとアバントでほぼ同じ。正確に言えばアバントは10mm長く、30mm背が高くて、全長4940mm×全幅1875mm×全高1495mm、ホイールベース2910mm。ミディアムクラスとは言うものの、全長はラージクラス並みで、実車を見ても伸びやかなシルエットが印象的。とはいえ、やっぱりそこはミディアム。A8とは違う、控えめで実用的な雰囲気がそこはかとなく漂う。

 

ボンネット、フロントフェンダー、前後ドアはアルミ製。テールゲートもアルミが使われる

また先代のプロポーションはやや厚みのあるコンサバなものだったが、新型はA4などと同様にフロントアクスル(前輪車軸)を前方に移動して、ホイールベースを65mm伸ばし、逆にオーバーハングは短縮。結果、FRモデルのようなスポーティな印象も強めている。A1、A8、マイナーチェンジしたA4などと足並みを揃えたフロントデザインも精悍。誰が見ても一目で「アウディ」と分かる。

 

インテリア&ラゲッジスペース

デザイン・装備をアップデート


日本の「包丁」をモチーフにしたというインパネデザインが新しい

新しいモチーフを採り入れながら、アウディらしさをしっかり引き継いだインテリア。A7やA8など最新のモチーフも採り入れる一方、操作系やウッドパネルの使い方などは少々コンサバという気もするが、カンパニーカーとしての需要も大きいA6には、これで正解なのだろう。

またインパネで最も目を引くのがHDDナビ用の電動格納式8インチディスプレイ。画面にはMMIで各種車両情報や車両設定を呼び出すこともできる。操作性は悪くないが、「MMI タッチ」についてはまた後で触れる。

 

シフトレバー周辺にはMMI コントローラー、MMI タッチ、エンジン始動スイッチなど操作系が集中する

ただ、他車から乗り換えると、エンジン始動スイッチを探してしまうのがご愛嬌。シフトレバーの周辺をMMIのコントローラーやMMI タッチに占領されてしまったことで、エンジン始動ボタンはシフトレバーの左側に追いやられている。少し手を伸ばすような感じで、少々やりにくい。

 

「MMI タッチ」は普段はラジオの選曲として機能。ナビ使用時には地図のスクロールもできる

試乗車のシートは標準仕様。オプションで電動18ウェイ&ミラノレザー仕様も用意
 

後席もそつなく。居住性はライバル車を上回る


後席シートヒーターは「2.8 FSI」ではオプション。アバントでは電動パノラマサンルーフ(25万円)もオプションで選べる

FFベースでホイールベースが2910mmもあるわけだから、後席スペースはもちろん問題なし。センタートンネルは出っ張るが、3人掛けはとりあえず可能。着座位置が高めのおかげで、閉塞感も少ない。またアバントの場合は、セダンよりドア上部も広く開くので、乗り降りも楽になる。居住性についてはFRで着座位置が低めのライバル車を一歩リード、といったところか。

荷室容量は560~1680リッター。「バーチャルペダル」もオプションで用意


リアゲートを開けると、トノカバーが上に持ち上がる。単純ながら便利

セダンのトランク容量は530リッターだが(さらに後席背もたれを畳んでトランクスルーも可)、アバントでは通常時565リッター、後席の背もたれを畳んで最大1680リッター。また、テールゲートを開けると、一緒にトノカバーが上にずれる仕組みやトランク床面にフック等が取り付けられるレールの設置など、工夫もいろいろ。

オプションの電動テールゲート(15万円)には、キーを持ってリアバンパー下に足をかざすとテールゲートが自動的に開く「バーチャルペダル」というシステムが付いてくる。先回試乗した新型BMW 3シリーズにも装備されていたように、今や欧州車では珍しくない装備らしい。ただ、噂によるとA6 アバントのものは操作に少々コツが要るらしい。実は試乗車もオプション装着車だったのだが、試すのをうっかり忘れてしまった。

 

後席背もたれは60:40のシングルフォールディングで倒れる

床下には浅い収納スペースがある
 

オートマチックテールゲート(バーチャルペダル付)は15万円のオプション

トランクの底部にはパンク修理キットとBOSEのオーディオシステムを搭載
 

基本性能&ドライブフィール

「2.8 FSI」は徹底的に、滑らか穏やか

試乗したのは過給器なしの2.8リッターV6直噴エンジンを搭載する「2.8 FSI」。ボディ自体はA8のようなオールアルミ製ではなく、スチールモノコックだが、「Audi ultra(アウディ ウルトラ)」なる軽量化技術によって、先代アバント比で20kg軽量化。ボンネット、フロントフェンダー、ドア4枚、前後バンパーストラクチャーなどがアルミ製になる。もちろんエンジンやサスペンションの一部もアルミ製。

とはいえ車重は1830kgとそこそこあり(セダンの40kg増し)、それに対して2.8 FSIの最高出力は150kW(204ps)、最大トルクは280Nm(28.6kgm)となる。馬力では約1.5倍の228kW(310ps)、トルクも約1.5倍の440Nm(44.9kgm)を誇る3.0 TFSI のような怒涛の加速は望めない。

 

100km/h巡航時のエンジン回転数は約1800回転ほど

とはいえ、とろけるように滑らかな回転フィーリング、パワーの出し入れが容易な穏やかな出力特性は、いかにも高級車、いかにも上品。また過給器付きエンジンと組み合わせると迫力のある7速Sトロニックも、こうしたNAエンジンとセットになると途端に滑らかに感じられるのは、ポルシェの911やパナメーラなどでも体感できるところ。予備知識がなければ、トルコンATと間違えてもおかしくないくらいスムーズに変速してゆく。

またある意味、オーソドクスなメカ式(クラウンギヤ式)センターデフの最新世代クワトロも、そんな穏やかさの要因。前後トルク配分は通常時40:60で、そこから(ある意味、なりゆきで)変化するが、要するに電子制御が介在しないから伝達感がナチュラル。もともと2.8 FSIにはタイヤを打ち負かすほどのパワーはないが、そんな「シャシー勝っている感」をクワトロがダメ押ししている。

 

さらに、エアサス要らずのスムーズな乗り心地(試乗車のタイヤは標準の18インチ仕様だった)、まったく不満のない静粛性、電動ながら適度な重みがあるステアリング(MMIでセッティング変更も可能)などなどは、いかにもミディアムクラスセダンらしい上質な世界。尖った部分、軽々しさ、メカメカしたところはなく、絹ごし豆腐のような印象に終始する。言ってみれば宮沢賢治の詩のように「いつも静かに笑っている」感じ。

回せば速い。「アウディドライブセレクト」も活躍


アウディドライブセレクトはMMIを使って設定する。走行モードは「コンフォート」「オート」「ダイナミック」の3つ(3.0 TFSIは「エフィシェンシー」を加えた4つ)で、さらにステアリング、エンジン、変速機などを個別に設定できる「インディビジュアル(個別)」もある

そんなわけで、大排気量V8や過給器付エンジンと比べれば、線の細さは確かにあるが、アウディ ドライブ セレクトで「ダイナミック」を選び、必要とあればマニュアルモードで上まで回せば、V8のような澄んだサウンドと共に速やかに加速するなど、決して遅いクルマではない。何かとお上の規則が厳しい日本で乗るなら、これくらいがちょうどいいかも。

ちなみに、新型A6で始まったものではないが、シフトレバーはD(ドライブ)とS(スポーツ)の切り替え方法が変わった新タイプ。以前のVWアウディ車は、Dの下(手前側)にあるSから、マニュアルモードにする際は、一回Dに戻してから左に倒す必要があったが、新タイプはSを選んでもレバーの位置はDのままなので、すぐに左のマニュアルモードに倒すことができる。今までずっと不便だなぁ、と思っていたのだが、その思いはVWアウディも同じだったということか。まぁ、パドルシフト(3.0 TFSIは標準装備)があれば、それでマニュアルモードにすればいいので、それほど恩恵はないかもしれないが、2.8 TFSIにはパドルシフトが装備されない。

積極的にアイドリングストップ。発進時に少しショックがある

アイドリングストップ機能「スタートストップ システム」は全車標準。A6の場合は水温が上がらない状態からでも積極的にエンジンを止めてくる。もともとエンジンは静かなので、止まっても気づかないことが多い。

肝心の再始動は、ブレーキを緩めれば即座に始動するし、ノイズも小さく、クランキングも短い。BMWの新型1シリーズや3シリーズにあるようなショックはなく、同じアウディのA1よりも静かだし、ポルシェの911(991型)やパナメーラのように始動時の「雄叫び」もない。唯一惜しいのが、変速機がDCTだからか、電子制御クラッチがミートする際に、小さなショックがあること。ゆっくり発進すれば問題ないが、急いで発進する時は出やすい。慣れてくると、ほとんど気にならなくなるが。

試乗燃費は7.7~9.7km/L。JC08モードは11.8km/L


30km走って9.7km/Lだった時のもの(撮影中に少し下がってしまった)

今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費は、様々なパターンで一般道と高速道路を走った区間(約90km)が7.7km/L。また一般道でエコドライブに徹した走った区間(約30kmを計2回)が8.8km/L、9.7km/Lだった(いずれもエアコンはオン)。

なお、「2.8 FSI」の10・15モード燃費とJC08モード燃費は共に11.8km/L(セダンとアバントで共通)。V6エンジン、フルタイム4WD、車重1.8トン超の非ハイブリッド車としては優秀な数値では。

また「3.0 TFSI」の10・15モード燃費は11.2km/L(セダンとアバント共通)、JC08モード燃費はセダンが11.4km/L、アバントが空力性能の差か、少し落ちて11.0km/Lになる。燃料タンク容量は65リッターで、もちろんハイオク仕様。

ここがイイ

いかにも高級車らしい上品な乗り味。クワトロの安心感。アイドリングストップの装備

いかにも「金持ち、喧嘩せず」といった感じの上品の乗り味。パワー感はそこそこだが、エンジンを上まで回した時の音はいいし、その気になれば十分速い。雨天の高速道路では、安心感という点でほとんど無敵であろう。アバントなら荷物も積めるし、暴力的な速さ以外の全てが揃っている。

アイドリングストップをぬかりなく標準装備としてきたこと。発進時に若干のショックはあるものの、このクラスのアイドリングストップ機能としては、ハイブリッド車を除いて最も洗練されたものの一つでは。アイドリングストップ中にオーディオ(標準装備のBOSEでも音は十分に良い)の音量がさりげなく下がる気遣いも嬉しい。まるで日本車みたいだ。

ここがダメ

MMIタッチの使い勝手。フットレストの遠さ。先進安全装備が全車標準ではないこと

MMI タッチの使い勝手。デフォルトの状態でパッドに触れた場合は、ラジオの選局が出来るが、選局くらいなら何もタッチパッドではなく、ステアリングスイッチの方が簡単だし、MMIコントローラーでも操作出来る。またナビ画面にしている時は、MMIタッチで地図のスクロールが出来るが、この時もデフォルトはラジオの選局で、スクロール操作に切り替えたい場合はMMIコントローラーでメニューボタンをクリックする必要があるなど、いちいち面倒。手書き入力についても、右ハンドル車では左手ですることになり、いかにもやりにくい。そういったわけで、タッチパッドの将来性は否定しないが、今のところは出来ることが限定的で、発展途上のデバイスと言える。

 

運転席の左足もとが狭く、またフットレストが遠いこと。かなり足が長くないと、フットレストで左足を踏ん張るのは難しいのでは。短足日本人としては思わず「ゲタ」を履かせたくなる。

2.8 FSIの場合、戦略的な価格とするためではあるが、アダプティブクルーズコントロール、アウディサイドアシスト、ナイトビジョン、リアサイドエアバッグといった「一つ上の」安全装備はすべてオプション。レザーシートこそオプションでいいから、こういった高級車ならではの安全装備が標準で欲しい。

総合評価

日本でもまさに「カンパニーカー」

今回の試乗車はアバントだが、まずはA6 セダンの話から。いつも書く通り、このクラスのアウディ製セダンは100の時代からスタイルが地味だ。でも地味な方が正解だと思う。保守的と言われてもいいから、地味な方がいい。なぜって、人目につくこと、目立つことは、セダンにとってはあまりよろしくないことだから。派手なクルマに乗りたいなら、選択肢は他にいくらでもある。セダンは人目につかないことが肝要。

特にこのクラスは地味であることが求められる。欧州ではカンパニーカー(役員に与えられるクルマ。主に高級車)らしいし、日本でもほとんどそうだからだ。要は日本だと中小企業のオヤジが乗るのに最もふさわしいクラスということ。価格もクラウンの最上級グレードと大差ないから、中小企業の経費でも買いやすい(セダンなら経費で落とせます)。クラウンからメルセデス・ベンツ、BMWに乗り換えるのは目立つが、アウディなら大丈夫だろう(税務署的にも、たぶん)。またこれまで旧A6に乗ってた人なら、新型に買い換えてもほとんど気づかれない(これも、たぶん)。

 

それでも分かる人には「おっ、新型だね」とか、「内装に高級感が出たねえ」とか言ってもらえて、クルマ好きであればクルマ談義が盛り上がるはず。実際その仕上がりのクォリティは日本車をしのぎ、まさに世界の一流品だ。所有する満足度は高い。商談にゴルフにと乗り回す、日常使いのクルマでもあるから、サイズ感が大き過ぎない点もいいし、距離を走るから燃費も良いほうがありがたい。こんな世の中でも会社の景気がそこそこ悪くない中小企業は多く、そこの社長さんにとって新しいA6は、本当に「ちょうどいい」クルマだろう。その意味で、このクルマは日本でもまさにカンパニーカーだ。

確信犯的な「保守」

で、セダンではなく、今回試乗したアバントであれば、なおよろしい。ワゴンとなればステイタス感は一段と高まるし、日本車にはこのクラスのワゴンは存在しない。フランス車のワゴンはいかにもエンスー、いかにもマイナー(笑)だが、A6 アバントは何となくオシャレで、スーツでもジーンズでも乗れる。ちょいワル(今や死語?)な中小企業オヤジの日常使いの愛車としては、これほど決まるものはない。そんなちょいワルオヤジが実はまだまだ多いからか、アウディの販売は今も絶好調だ。特にこのA6は一見、地味めのクルマゆえ都会の人だけでなく、地方在住の人でもそう人目を気にせず買えるというのが強みだろう。

で、実際にA6 アバントに乗ってみると、これがもう「昔からのいいクルマ感」がいっぱい。地に足がついた感のあるクワトロのロードホールディングは、これまでいろいろなクルマに乗ってきたクルマ好きなら、率直に「いいクルマだなあ」と思えるだろう。

 

また走行モードを切り替えれば適度なスポーティさが味わえるし、「おつりが来ない」安定したハンドリングも心地良い。欧州車らしく少し硬めで、それでいて快適な乗り心地は昔からの輸入車乗り、そして昔からのクルマ好きなら思わず笑みが出るほど納得できるもの。先回レポートした新型BMW・3シリーズが新しい走り味を模索していたのとは真逆の、実に保守的な「いいクルマ感」に満ちた走りだ。内装の高級感も一切奇をてらわず、教科書通り。ナビモニターも必要ないなら格納できる。そう、このクルマの場合、スタイリングから走りまで確信犯的な「保守」が貫かれている。まさに保守本流のセダンであり、ワゴンだ。

アナログを愛するオヤジへ

そこをよしとするかどうか。よしとする人には、おそらく何一つ不満はないが、よしとしない場合は、例えば操作インターフェイスにおいて、MMI はもはや古いと感じたり、せっかくのタッチパッド(MMI タッチ)は右手で操作しないと無理でしょ(右利きの場合)とか思うのでは。また、せっかくアウディに乗るなら、A7とかA5とか、スタイリングにもっと華のあるクルマが欲しいとも思う。

しかしまあ、そういったことを思わないのであれば、このあと5年、何の不満もなく乗リ続けられるだろう。そしてたぶん5年後に現れる新型車は、今のクルマとかなり変わっているはずだから、その頃に新しいテイストのクルマ(ハイブリッドなのか、EVなのか、ディーゼルなのか、はたまたガソリン車でも画期的なクルマなのか)がたくさん出ているはず。とはいえ、このクルマに5年も乗ると、そういうクルマには乗りたくない気持ちがより強まるような気もするが。

 

iPadを使いこなすようなIT系中小企業のオヤジは、たぶんこのクルマを好むことはないだろう。アナログな機械物を愛する人、いわゆる本物志向の人、そういう人になら、気に入ってもらえるはずだ。昨今は中小企業のオヤジもクルマにばっかり時間をかけていられない(はず)。その意味ではクルマは保守的な輸入車でかまわないので、仕事の方に時間をたっぷり割いて「革新的な何か」を生み出してもらいたいものだ。日本の未来のためには、中小企業のオヤジにがんばってもらうしかない。A6はそのご褒美だ(という締めも相当アナログならぬ、アナクロかも…)。

試乗車スペック
アウディ A6 アバント 2.8 FSI クワトロ
(2.8リッターV6・7速DCT・640万円)

●初年度登録:2012年3月●形式:DBA-4GCHVS
●全長4940mm×全幅1875mm×全高1495mm
●ホイールベース:2910mm ●最小回転半径:5.7m
●車重(車検証記載値):1830kg(990+840) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:CHV
●排気量・エンジン種類:2772cc・V型6気筒DOHC・4バルブ・直噴・縦置
●ボア×ストローク:84.5×82.4mm ●圧縮比:12.0
●最高出力:150kW(204ps)/5250-6500rpm
●最大トルク:280Nm (28.6kgm)/3000-5000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン
●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/65L
●10・15モード燃費:11.8km/L ●JC08モード燃費:11.8km/L

●駆動方式:フルタイム4WD
●サスペンション形式:前 5リンク ダブルウイッシュボーン+コイル/後 トラペゾイダル ウイッシュボーン+コイル
●タイヤ:245/45R18(Bridgestone Turanza ER300)
●試乗車価格:693万5000円  ※オプション:オプションカラー(パールエフェクト) 8万5000円、LED ヘッドライト 30万円、バーチャルペダル付きオートマチックテールゲート 15万円
●ボディカラー:ファントムブラック パールエフェクト
●試乗距離:200km ●試乗日:2012年4月
●車両協力:アウディ名古屋中央

 
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アウディ 名古屋中央

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