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アウディ A8 L 4.2 クワトロ新車試乗記(第422回)

Audi A8 4.2 quattro

(4.2リッターV8・6AT・1134万円)



2006年07月08日

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キャラクター&開発コンセプト

アルミボディの最高級・高性能セダン

アウディA8は、ASF(Audi Space Frame)と呼ばれるオールアルミ製ボディを備えた同ブランドの最高級セダン。初代は1994年に欧州でデビュー。今回試乗したモデルは2003年に登場した2代目だ。日本には04年2月に上陸した。シャシーは引き続きASF、エンジンは先代後半から投入された4.2リッターV8「5バルブ」の改良版を採用。さらにフルタイム4WD「クワトロ」を標準とし、全天候型の走行安定性を確保。これにより主に後輪駆動であるライバル車に差を付けている。

3.2、4.2、6.0とラインナップを拡大

05年3月にはアウディの新しい顔「シングルフレームグリル」を採用すると同時に、6リッターW12(450ps)を追加。同年5月には3.2リッターV6直噴(260ps)のエントリーグレードを投入するなどしてラインナップの充実を図っている。

なお、06年6月に日本で公開された映画「トランスポーター2」では、前作のBMW・7シリーズ(E38型)に代えて、2代目A8 6.0クワトロが主人公の商売道具に。ついで言えば「RONIN」(98年)で初代S8(A8ベースの高性能モデル)が爆走するシーンも見ものだった。

価格帯&グレード展開

V6の849万円から、W12の1660万円まで

2005年から3.2とW12の6.0が加わり、現在は以下の5グレードで展開する。全車6速ATのクワトロ。Lはロングホイールベース版だ。

「3.2 FSI quattro」(849万円)
「4.2 quattro」(1045万円)
「L 4.2 quattro」(1134万円)※今回の試乗車
「6.0 quattro」(1480万円)
「L 6.0 quattro」(1660万円)
また、06年6月から新開発5.2リッターV10 FSI(450ps)を積んだ辛口高性能モデル「S8」(1460万円)も加わっている。

パッケージング&スタイル

長いけどスリム

試乗車は4.2のロングモデルで、全長5185mmと当試乗記でもベスト(longest?)スリーに入りそうな長さ。しかし幅は1895mmと意外にスリムだ。よってバックや駐車時以外はあまり大きさが気にならない。最小回転半径は6.0メートルだが「体感」小回り性能も悪くない。

アルミスペースフレームを採用

スタイリングはアウディらしく端正で、精密感あふれるもの。アウディ独自の「ASF」はNSXのような電気溶接のモノコックでもなく、ジャガーのような接着&リベット止めモノコックでもなく、もちろんエリーゼのようなバスタブ型アルミフレームでもない。アルミ押し出し材を使ってカゴ状の強固なフレームを形成し、さらにアルミパネルで強度を出すものだ。アウディ傘下で開発されたランボルギーニ・ガヤルド(03年)もASFであり、ボディ自体の生産も同じアウディのネッカースウルム工場で行われる。また、最近のフェラーリもASFとは言わないが、これに近い構造だ。いずれも軽量なのと高剛性なのが特徴だ。

ホイールベースはロング版で3075mm

標準ボディのホイールベースは2945mmだが、写真のロングは+130mmの3075mm。長いことは長いが、このクラスでは標準的なもの。前後重量配分は試乗車で58:42(1140kg:830kg)。

電気仕掛けの数々

いかにもという感じのウッドパネルが張られたインテリア。面白いのは電気仕掛けの数々だ。ソアラ(現レクサスSC430)を彷彿とさせる電動収納式モニター&電動リッド(作動が素早い!)をはじめ、今やこのクラスでは当然かもしれないが、シートベルト引出し口やヘッドレストの高さ、ランバーサポートの位置、背もたれの上半分、座面の長さまで、すべて電動調節できるのはいかにも「最高級車」。フロントシートもベンチレーション機能付きだ(10万円のオプション)。

2003年デビューながら電動パーキングブレーキをすでに装備。他メーカーのものと同様、坂道発進アシストや緊急ブレーキ機能も備える。BMWのiDriveに似た「MMI(マルチ・メディア・インターフェイス)」コントローラーもまずまず使いやすい。

ドアロックの操作やエンジン始動は、キーを携帯するだけで可能。エンジン始動スイッチの位置は変則的ながら、左ハンドル車ならやりやすいセンターコンソール上だ。ドアを開けたところのBピラー付け根に、アルミフレームの証「ASF」バッジが付く。

ソーラーベンチレーションが復活!?

ロングゆえ当たり前だが、後席は文句無しに広い。これなら国産豪華ミニバンも要らないと思える(コストパフォーマンスはともかく)。空調の操作パネルのほか、リアはもちろん、横の窓にも電動!のサンシェイド、天井にはメイクアップ用の鏡が左右に備わる。その前にあるサンルーフはソーラーパネル付で、真夏の駐車時にベンチレーション機能が働くらしい。うん? これは昔マツダ車(センティア、ミレーニアだったか)にあったものだが、こんなところで再び出会えるとは・・・・。

いちおう5人乗りだが、中央席の体に当たる部分にはほとんどクッションがなく、座り心地はポルシェの後席以下。よって実質4人乗りと考えるべきだ。最上級の「L 6.0 quattro」では、ウッドパネル付のセンターコンソールが付く正真正銘の4シーターが標準になる。

基本性能&ドライブフィール

すべてを手の内に

5バルブの4.2リッターV8(335ps、43.8kg-m)は、特に新味があるユニットではないが、回した時のフィーリングはBMWのV8と比べたくなるくらいスポーティだ。1970kgのボディを街中では「ウァーン」という密なサウンドを響かせて軽く走らせる。いわゆるV8的な鼓動感は高級車らしく巧妙に消されている。

クワトロのおかげかパワーオンでグリップを失わせるのは、公道の乾燥路では不可能に近い。その意味では「トランスポーター」的なハイパワー感は薄く、完全にすべてを手の内に収めた風のシャシーだ。なお、A8のクワトロはトルセンセンターデフを使った手堅いもので、通常50:50から、75:25~25:75の範囲で駆動配分を行う。

足回りは4種類からお好みで

電子制御のエアサスはリフト(車高アップ)、コンフォート、オートマティック、ダイナミックと4種類から好みでチョイスできるが、基本的にはどれでも快適かつ、そこそこ安定して走れてしまう。しかし車高が明確に変えられるのは面白いし、便利だ。重量配分は少しフロントヘビーだが、運転中はまったくそうは感じない。荒れた路面もソフトにやり過ごすが、ピッチングの類いは皆無だ。スチール素材より静止ねじれ剛性で60%向上したというアルミボディだが、乗っていてアルミっぽさは良くも悪くも感じない。

一方、静粛性はロードノイズのほか、エンジン音の侵入もあって、それほど高くはない。超高速域はいざ知らず、この点は徹底して無音を目指したトヨタ/レクサスの旗艦とは違う点だ。

輸入車ならではのレーダークルーズ

試乗車は「アダプティブ・クルーズコントロール」、すなわちレーダークルーズコントロール(オプションで27万円)が付いていた。大まかに言って、国産車の一般的なレーダークルーズと同じ感覚で使えるが、最高200km/hまで設定できるところが輸入車ならではのメリットだ(ご存知の通り、国産では最高115km/hくらいまでしか設定できない)。空いた高速の、実際の流れに近い130km/hあたりでちゃんと使えるのは、たいへんありがたいもの。前走車が速度を落とした時も自動でかなり減速してくれるし、都市高速での急なコーナーでも前走車に接近していればちゃんと追従してくれた。

100km/h巡航は6速トップで1750回転。レーダークルーズを使ってのんびり走れば燃費は良さそうだが、撮影、街乗りをしながら170km走ったトータルは車載モニター上で4.9km/Lだった。

ここがイイ

控えめなエクステリアにシングルフレームグリルをつけたことで、存在感が増したこと。フラッグシップらしくなった。軽快でスムーズな乗り味、操縦性。小気味よい加速。クワトロの安心感。インテリアもすごく高級。というか、作りが緻密な感じでピンと張り詰めた上質感があって、これはレクサスGSあたりより完全に上。当然ながら後席の圧倒的な広さ、快適性は素晴らしい。

ほどよいハイテク。インパネセンターの木目パネルがひっくり返って7インチディスプレイが出てくるMMI(マルチメディア・インターフェイス)はセンターコンソール部にあるMMIターミナル(スイッチ)で操作するのだが、意外に使いやすい。もちろん日本製カーナビにはかなわないが、この手のものとしては悪くない。ボタン式のパーキングブレーキやインテリジェントキーもいい。特にインテリジェントキーは、カギを出して刺せば普通のキーとしても使える。オジさんでも違和感がないし、何よりキーそのものをなくすことが少ないはず。

実用速度で使えるアダプティブ・クルーズコントロールは、高速移動が多いオーナードライバーには絶対おすすめ。輸入車ゆえ、100km/hまでなどという無粋な設定はしてないので、実用になる(であれば高額を出して装備する意味もあり、より多くのクルマに装備されればさらに普及・発展していくはず)。最低設定速度は30km/hからで、これによって一般道でもうまく使える。この1点で、国産ではなく輸入車にする、という人がいても納得できる。

ここがダメ

クワトロのメカによる影響か、前席センターコンソールが張り出しており、運転席足もとが狭い。こんなでかいクルマなのに狭い部分があるとは。もちろんタイトな感じは走りのためにはプラス印象だが、意図したものではないだろう。また、クルマの性格と価格を考えると、ロードノイズは大きめ。オプションでタイヤは18インチや19インチがあるが、試乗車は標準の18インチ(BSポテンザ)だ。人を乗せる機会が多いなら「レグノ」を奢ってみたくなるところ(それで消えるかどうかは分からないが)。

ナビの操作性は前述の通り、悪くはないという程度。またモニターの角度が今一つ。電動のフタより、調節機能が欲しい。またバックモニターがないのも残念。昨年のモーターショーでアウディAG社長が手書き入力ナビを搭載する話をしていたが、あれを聞く限り、「わかっていない」感が強い。アウディにはアイシン・エイ・ダブリュが採用されているはずだが、プランを出すアウディ側も作るアイシン側もなかなか思い通りにいっていないようだ。

総合評価

地方のディーラーで話を聞くと、アウディユーザーは公務員が多いらしい。不況でも安定した収入のある公務員ならちょっと高めの輸入車でも手が出る。でもさすがにベンツはまずい。が、アウディなら、という免罪符となるブランドだ。さらにクワトロは雪の多い地域でも優位に立つ。ボルボなどもこのジャンルに入るのだが、いかんせんボルボには走りのイメージが希薄だ。このところシングルフレームグリルになって存在感を増したアウディが、他の高級車を蹴散らして最高売上高を更新しているのも納得ができる話だ。

さて、映画に出ていた事もあって、遅ればせながらの試乗となったA8。デビュー時のダブルグリルは地味な印象で、フラッグシップとしての華が弱かったが、現在のシングルフレームグリルは、かなり「強そう」なイメージがあり、フラッグシップにふさわしい存在感がある。A4とかだとシングルフレームもちょっとエグい感があるが、さすがA8となればこれでちょうどいいバランスだ。

全体のデザインはクーペっぽいスポーティな印象で、小さく見える。変な威圧感がなくて好ましいのだ。でも、たまたま旧メルセデスSクラスと駐車場で隣り合ったら、実際の大きさにびっくり。並べてみたら二回りも大きなクルマだった。特に試乗車はロングホイールベース車だったので、駐車場に頭を突っ込んだらSより遙かにテールエンドが出る。こりゃでかいわ。

そんなでかいクルマがワインディングで軽快なのに、これまた驚き。ショーファードリブンなホイールベース3メートル超のセダンがこの走り。しかも四駆。ジャガーXJもそうだったが、スポーツカー瀕死状態の昨今、走りを楽しむなら高級セダンに乗れということか。もはや多くの日本の若者に走りを楽しむ趣味はないみたいだから、昔から走っていたオヤジが乗るクルマこそ、走りを売りにできる唯一のジャンルなのかもしれない。

話がずれるが、カスタムカーのショーに暴走族(のような観客)が集まることがなくなって久しい。確かにドレスアップミニバンの世界では、走りは二の次。エアロや内装を壊さないようにおとなしく走り、せいぜいでかい音で世を騒がせる程度。昔は走り屋やら(一般人から見れば暴走族と同列)、本当の族やらがショーの駐車場で騒ぎ、警察沙汰になったものだが、最近はまったく平和だ。

ところが先日、暴走族(のように見える集団)が自動車ショーで暴れていた。このショーはなんとノスタルジックカーショー。ケンメリやZ(もちろん旧車の)のオバフェン・シャコタンがウジャウジャ。乗っているのはもちろんいい「オジさん」。走りへの憧れを持つ人は、もはや年配だけということを象徴していた。若い頃からの憧れのまま、ケンメリに乗る人はさすがに特殊だが、同世代の健全なオジさんたちでも、走りにこだわってクルマ選びをする人は多い。もちろんそこそこお金のある人もいるから高級車が売れるわけで、走りといえば高級車という時代だ。高級車=スポーツカー=セダンという図式か。

そんなオジさんにA8はピタリとはまるはず。若者が走りに興味をもたない以上、今後オジさんセダンはどんどん先鋭化していくだろう。あのクラウンですら、ゼロクラウンとなってからは見事にスポーティなのだから。走りを気にするクルマ好きにとっては、まがいなりにもスポーティカーが死滅しないことがありがたい。将来どうなるかは別として、今は素直にこの状況を喜ぶべきだろう。

試乗車スペック
アウディ A8 L 4.2 クワトロ
(4.2リッターV8・6AT・1134万円)

●形式:GH-4EBFML●全長5185mm×全幅1895mm×全高1450mm●ホイールベース:3075mm●車重(車検証記載値):1970kg(F:1140+830)●乗車定員:5名●エンジン型式:BFM●4172cc・V型8気筒・DOHC・5バルブ・縦置●335ps(246kW)/6500rpm、43.8kg-m (430Nm)/3500rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/90L●10・15モード燃費:7.5km/L●駆動方式:フルタイム4WD●タイヤ:255/45R18(BRIDGESTONE POTENZA RE040)●試乗車価格:1171万円(含むオプション:シートベンチレーション<フロント> 10万円、アダプティブクルーズコントロール 27万円)●試乗距離:約170km ●試乗日:2006年6月 ●車両協力:アウディ名古屋中央

公式サイトhttp://www.audi.co.jp/audi/jp/jp2/new_cars/a8.html

 
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アウディ 名古屋中央

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