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アウディ A8 4.2 FSI クワトロ新車試乗記(第631回)

Audi A8 4.2 FSI quattro

(4.2リッターV8・8速AT・1160万円)

アルミボディ、クワトロ、先進装備・・・・・・。
全てを備えたアウディの旗艦、
新型A8に試乗!

2011年05月14日

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キャラクター&開発コンセプト

3代目に進化したオールアルミボディの旗艦セダン


新型アウディA8
(アウディ ジャパン)

「A8」は、ASF(Audi Space Frame)と呼ばれるアルミ製スペースフレーム構造のボディを備えたアウディの最高級セダン。初代がデビューしたのは1994年で、今回のモデルは3代目。日本では2010年12月15日に発売された。

「The Art of Progress (革新の美学) 」をコンセプトとする新型A8のセールスポイントは、「アートの領域にまで高められた美しいデザイン」や「数々の革新的テクノロジー」。具体的には、灯火類をフルLEDとしたクリーンな内外装、新開発の8速トルコンAT、新世代のクワトロシステム、最新の運転支援システム、指による手書き文字認証システムを備えた「MMI タッチ」などなどだ。

生産拠点はドイツのネッカーズルム工場。かつてNSU(1969年にアウディと合併)が本拠とした工場で、現在はA4、A5 カブリオレ、A6シリーズなども生産している。

※外部リンク
■アウディ ジャパン>ニュースリリース>新型A8発表(2010年12月)

価格帯&グレード展開

945万~1290万円。さらに豪華オプション多数


L(ロングモデル)の内装
(アウディ ジャパン)

海外には5.2リッターV10、6リッターW12、4.2リッターV8ターボディーゼルなどもあるが、今回導入された日本仕様は、3リッターV6スーパーチャージャー(290ps、42.8kgm)と4.2リッターV8(372ps、45.4kgm)の2本立て。またV8モデルには4人乗りのロングホイールベース版(+130mm)も用意され、計3グレードとなる。

変速機は全車8速ATで、駆動方式もクワトロ。「バルコナ」と呼ばれる特殊な“なめし”を行ったレザーの内装、HDDナビ、BOSEのオーディオシステムは標準装備となる。チャームポイントとなるLEDヘッドライトは、V8モデルには標準装備で、3.0 TFSI クワトロでは30万円のオプションになる。

豪華オプションも多数用意されるが、ぜひ装備したのが最新のACC(アダプティブクルーズコントロール)やナイトビジョン等、先進安全装備をセットにした「アウディ プレセンス(Pre Sense) パッケージ」。これが80万円する。

 

今回試乗したA8は、V8の標準ホイールベース

■A8 3.0 TFSI クワトロ   8AT  945万円
 ※10・15モード燃費:9.2km/L
■A8 4.2 FSI クワトロ   8AT  1160万円  今回の試乗車
 ※10・15モード燃費:8.3km/L
■A8 L 4.2 FSI クワトロ   8AT  1290万円
 ※10・15モード燃費:8.1km/L

パッケージング&スタイル

洗練されたデザイン、大粒のLEDヘッドライト


試乗車のボディカラーはアイビスホワイト

スタイリングはアウディらしいシンプルで上品なものだが、ボディサイズは隠せない。試乗した標準ホイールベース車でも全長は5145mm、ホイールベースは2990mmで、これがロングになると、それぞれ130mm伸びて5275mmと3120mmと伸びやか。全幅はレクサスLSより75mmも幅広く、1950mmとなる。とはいえ、ラージクラスセダンとしては順当なところで、際立って大きいわけではない。

 

奇をてらわないデザインの中で、一際目立つのがフルLEDヘッドライト。片側に10個並ぶ大粒のLEDがロービームで、その上の三角形の部分が同じくLEDのハイビームになる。ちなみにフォグランプのように見えるのはミリ波レーダーで(プレセーフ装備車)、この部分は間もなく日本で発売されるA7スポーツバックと共通だ。

 

Cd値はわずか0.26。ボディ下部は樹脂製のアンダーパネルで覆われている

その他、子細に観察すると、フロントエンドからリアエンドまでしっかり走るショルダーライン、エッジの立ったコーナー部分など、新しいデザイン処理を発見できる。アルミボディであることが分かりやすい形で「見えない」のが少し惜しいが、あえて分からないようにしているのかもしれない。

インテリア&ラゲッジスペース

これでもかと言わんばかりの豪華装備


ハンドル位置はV6が右ハンドルのみで、V8では左右用意される

高級車である以上、「贅沢だなあ」と思ってもらうのがその使命。当然ながらA8の室内にも、これでもかと言わんばかりの豪華装備が奢られている。

特に「アウディ デザイン セレクション」が装着された試乗車には、白のラインやパイピングが入った「バラオブラウン」のレザー内装のほか、艶消しウッドとアルミ製パネルのダッシュボード、アルカンタラ張りのルーフ等が備わる。

 

電子制御式シフトレバー。左下はエンジン始動・停止ボタン

しかし全体としては、アウディらしいロジカルな空間で、迎える人を圧倒しようとか、高級感を見せつけようとかいった意図は、あまり感じられない。夜になるとLEDの照明(白、アイボリー、ルビー&白の3種類からMMIで選べる)が車内のあちこちに点灯するが、あくまでクリーンな雰囲気が保たれる。

なお、一見シフトレバーは普通に見えるが、実際には軽く前後させるだけで各ポジションを選択できる電子制御式。。例えば「D」レンジから手前に引いた場合は、引く度に「S」(スポーツモード)と「D」を行き来する。素速くリバースに入れる、といった操作にはちょっと慣れが必要だったが、操作自体に予備知識は不要だ。

新開発の「MMI タッチ」を採用


新開発の「MMI タッチ」。写真は通常モードで、ラジオの選局ができる状態

標準のHDDナビ自体は、電動昇降式のモニターこそ8インチと大画面だが、地図自体は見慣れたもの。海外仕様では通信機能を備えてGoogleマップから地図を読み込むようだが、日本市場では残念ながらSIM等の関係で通常のナビとなっている。おなじみのMMI(マルチメディアインターフェイス)はデザインが一新されて、ちょっと複雑になってしまったが、慣れればスムーズに操作できる。

 

MMI タッチで電話番号を入力中。こんなにちゃんと書けなくても人間が読める程度なら、認識してくれる

「MMIタッチ」と呼ばれるように、手書き入力機能のあるタッチパネルを備えているのが、これの売り。日本仕様では数字のほかに、ひらがなも手書き入力できるとのことだが、いかんせん右ハンドル仕様だと、左手で書くのはなかなか難しいし、助手席に座って右手でやってみてもちょっとコツが必要だった。数字くらいなら何とか書けるし、車両側も認識してくれるが、いずれにしても走行中の入力は難しいので出番は多くない。なお入力モード以外の通常時は、ラジオの選局などができるタッチスイッチになっている。

オプションで運転席マッサージ機能やバング&オルフセン


V8モデルのシートはベンチレーション機能や11ヶ所もの調整箇所(22way)を標準装備

フロントシートのマッサージ機能は、「アウディ デザイン セレクション」に含まれるもの。フロントシートに付くのは珍しいが、背もたれに10個のエアチャンバーを備えるなど機能はけっこう本格的。その揉み味は家電製品と比べると穏やかで、物足りない向きもあるだろうが、おかげで運転に支障を来すほどではない。

 

試乗車にはさらに、オプションのバング&オルフセン(1400W・19スピーカー)も付いていた。「いい音だなあ」と呑気に感心していたら、後でこれが84万円だと知って驚愕。ただし標準装備のBOSE(14スピーカー・600W)でも音は十分に良く、純粋に好みでBOSEを選ぶユーザーもいるようだ。

標準WBでも後席は広い。オプションで冷蔵庫も


サイド&リアガラスの電動ブラインドは全車標準

試乗車は標準ホイールベース車だったが、後席のスペースは十分。ショーファードリブンとして使うなら、2人掛けのロングモデルの方が「らしい」が、一般的には3人掛けの方が使いやすいはず。ただ、ロングモデルになると、リクライニングやシート角度、空気調整式のランバーサポートが付く上に、ベンチレーション機能やマッサージ機能も備わる。

ちなみに前後のドアはV6モデルを除き、電磁式のクローザーを標準装備。ドアをバタンと閉める必要はなく、半ドア状態からでも、しずしずと引き込んでくれる。

 

奧に深く、1000mlの瓶が2本ほど入るクールボックス

試乗車にはセンターアームレストの奧にクールボックス(16万円)も装備。庫内は-6度~+6度に調整可能で、ワインボトルが2本ほど入る。ま、16万円もあれば、けっこういい大型冷蔵庫が買えそうだが。

容量は510リッター。電動トランクリッドも全車標準


試乗車はオプションのクールボックス付で、こんな感じ

トランク容量は、先代より10リッター増えて510リッター。標準仕様では、このクラスでは珍しく、アームレスト部分の貫通トランクスルーも出来るし、カバンや買い物袋を吊り下げられるフックも付いている。とはいえ、このクラスになると居住性重視だから、「引っ越しにも使えそう」みたいな積載性は絶対条件ではない。

 

床下にはしっかりスペアタイヤを搭載

トランクリッドは電動で、直接ハンドルを操作、もしくはリモコンのスイッチを押すだけでグィーンと開く。またリッド部分のボタンを押すと自動で閉まり、最後はクローザーでグイッと引き込む。

 

基本性能&ドライブフィール

あくまで上品。物腰も柔らかい

試乗したのはV8の標準ホイールベース車「4.2 FSI クワトロ」(1160万円)。センターコンソールのスタートボタンを押すと、「クククク」と軽快にスターターが回り、シュウゥンと静かに火が入る。ポルシェのパナメーラのように、エンジンが掛かる度にバオン!と雄叫びを上げたりはしない。なお、新型A8にアイドリングストップ機能はない。

走り出してもA8は上品で、物腰が柔らかい。段数でレクサスLSやBMW 7シリーズに追い付いた8速トルコンATは、メーター内に表示される使用ギアの数字を見ない限り、変速したのかどうかすら分からないくらいスムーズ。同時に今どきの多段トルコンATらしく、ロックアップ領域が広いため、DCTのようなダイレクト感もある。

 

パドルを引いてエンジンを高回転まで回せば、軽やかなV8サウンドと共に、何の抵抗感もなくサラァーと加速。排気量がライバル車に多い5リッター級ではなく、4.2リッターの自然吸気なので、超パワフルというわけではないが、それでも最高出力は372psもあるので、高速域では速そう。100km/h巡航では8速トップに入り、約1600回転でクルーズし、最高速はリミッターで250km/hに規制される。

車重は試乗車で1960kgとそんなに軽くないが、スペースフレーム構造のアルミボディは231kg(ロングで241kg)しかなく、実に通常のスチールモノコックに比べて約40%軽いという。新型A8にはBピラー付近に歴代A8で初めて高張力鋼板が使われたらしいが、実際のところ、その車重は一回り小さくてスチールモノコック製のA6やA7スポーツバックと大差ない。ちなみに、アルミ製ボディという先入観を持って乗ると、鋭い突き上げが入った時などにカキーンと受け止める感じがして、「やっぱアルミだなあ」と思う。気のせいかもしれないが。

サスペンションは全車エアサスで、もちろん車高調整も可能。シトロエンみたいに派手な動きはないが。制御モードが「自動」ないし「コンフォート」なら、当然ながら乗り心地は最上級。「ダイナミック」に入れっぱなしでも特に問題ない。言うまでもなく静粛性も高い。

「ダイナミック」モードでスポーティに変身


タイヤサイズ(4.2 FSIの標準WB車)は265/40R20。試乗車は珍しくグッドイヤーのイーグルF1だった

スポーティに走る場合は、シフトレバーを一回手前に引いて「S」モードを選び、さらにパドルを引いてマニュアルモードを選択したい。加えてMMIのメニューから「ダイナミック」モードを選択しておくと、エンジン、ミッション、パワステ、エアサスの設定が変更され、ぐっと動きがシャープになる。

フルタイム4WDのクワトロは新開発の機械式センターデフを使ったもので、通常時には前40:後60と、やや後ろ寄りに駆動力を配分。さらに状況に応じて60:40~20:80の範囲で可変する。基本的に電子制御は介在せず、メカニカルなのが面白い。

重量配分は前軸が1090kg、後軸が870kgで、56:44。まったくフロントヘビーではないし、実際にワインディングで走らせてみると、フロントはかなり軽く感じられる。FRベースのクルマと違ってリアで蹴ってる感じが薄い分、安心感は高い。積極的にアクセルを開けて4輪で駆動力をかけて行くような走りをすると楽しいが、なかなか日本の道でそんなチャンスはないかも。

ステアリングギア比を可変する「ダイナミック ステアリング」は、試乗した4.2の標準WB車にのみ標準装備。これはBMWのアクティブステアリングみたいに低速でクイックにハンドルが切れるので、すぐにそれと分かる。ただ、オッと思うのは最初だけで、しばらく乗っていると慣れてしまう。もちろん高速域では危険回避のため、微妙にカウンターステアも切るようだ。体感するのは他社のものと同様、まず無理だが。

ちなみに試乗車にはなかったが、この4.2 標準WBでは後輪左右の動力配分を制御する「リヤスポーツディファレンシャル」もオプションで選択できる。ここ最近、他社でも採用が増えてきたものだが、これは油圧式アクチュエーターでリアデフ内のクラッチを電子制御するもの。

【アウディ プレセンス パッケージ】・・・ACCからナイトビジョンまで


フォグランプと思いきや・・・・・・、左右に一基ずつ備わるミリ波レーダー

「アウディ プレセンス パッケージ」は、80万円という価格にふさわしく、かなり内容が濃い。例えばACC(アダプティブクルーズコントロール)は停止から全車速域(0~250km/h)での追従走行が可能。その作動マナー(車間や加速の度合いなど)は、MMIのメニュー画面によって「コンフォート」から「ダイナミック」まで選択できる。

またミリ波レーダーをフロントに2基も積むだけに、いわゆるプリクラッシュ機能も備えている。衝突危険性が高まるとシートベルトの引き込みなどを事前に行い、さらにアウディは積極的にアピールしていないが、衝突回避、つまりブレーキ制御なども行うようだ。

同パッケージオプションには、車線逸脱を防ぐ「アウディ レーンアシスト」も含まれる。これはカメラで車線を読み取り、それを無意識に(事象としてはフラフラ~と)踏み越えると、ステアリングを振動させてドライバーに警告するもの。また死角となる斜め後方の車両を知らせる「アウディ サイドアシスト」も装備。ボルボのBLIS同様、ドアミラー付け根のランプが点滅して、自車のドライバーに警告する。この二つはいずれも、かなり頻繁に作動する。

 

ナイトビジョンの作動イメージ。これは危険性が生じていない状態(歩道を歩いている場合など)
(アウディ ジャパン)

最もハイテク感があるのは、夜間の安全性を高める「ナイトビジョン」だろう。これはフロントグリルの奧に配置したサーモグラフィ(熱感知式=遠赤外線)カメラによって、前方の映像をメーター内の液晶モニターに表示するもの。主な目的は、熱感知によって前方15~90メートル内にいる歩行者を画像解析で識別し、ドライバーに警告を与えることだ。通常は白黒映像の中に、人間と判断された人影を黄色のラインで囲んで強調表示するだけだが(写真)、衝突の危険性が生じた場合には、赤で強調表示し、さらにアラームで危険を知らせる。熱感知式であること、そして画像解析によって人と判断して強調表示する点は、もう7年も前になるがホンダの4代目レジェンド(2004年)に搭載された「インテリジェント・ナイトビジョン」に近いと思われる。

レジェンドのものに比べると、A8のナイトビジョンは照射範囲が広く、映像が鮮明なのがいい。今回試乗中に試した限りでも、歩道にいる歩行者の検知は、場合によってはドライバーよりも早く、精度は想像以上に高かった。アウディの資料によると、弱点は放射される体温と周辺温度との差がないと、検知が難しくなることだという。自動ブレーキとの組み合わせなど、今後の進化が待たれる。

■モーターデイズ>新車試乗記>ホンダ レジェンド (2004年11月更新)

試乗燃費は6.3~8.3km/L。10・15モードは8.3km/L

今回は約200kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路をまじえて走った区間(約90km)が6.3km/L。さらに一般道を無駄なアクセルを控えて走った区間(約50km)が8.3km/Lだった。

ちなみに10・15モード燃費も8.3km/Lで、先代A8 4.2 FSI クワトロ(8.3km/L)との比較では、約26%も良くなっている。その要因としては、先代の6速ATから最新の8速ATになったことで約6%向上したほか、エンジン自体の改良やエネルギー回生システムの採用、空力の改善、転がり抵抗の低減といったあたりか。指定燃料はもちろんプレミアムで、タンク容量は90リッターとなっている。

ここがイイ

軽快な走り、センスのいいデザイン、MMIタッチ、先進装備、お買い得感

車重2トン弱とは思えないほど軽快な走りとクワトロによる精神的な安心感。フットワークの軽さはレクサスLS460 バージョンSZ以上。にもかかわらず、大幅に良くなった燃費。

メルセデス・ベンツ SクラスやBMW 7シリーズ、あるいはレクサスLSとも明らかに異なる、若々しくて端正なたたずまい。そしてセンスのいいインパネおよび内装デザイン。威圧感のないインパネや電動収納式のナビ画面が、室内空間をスマートに見せている。

使い勝手の良し悪しはともかく、新型シフトレバーやMMIタッチといった新型インターフェイスの積極的な採用。パソコンの世界にも、マウス、タッチパッド、トラックポイント、トラックボールと様々なポインティングデバイスがあるが、ノートPCで一番メジャーなのはタッチパッド。それを限定的ながらもクルマに持ち込んだMMIタッチは、トラックポイント的なものを持ち込んだトヨタのリモートタッチと並んで、いいチャレンジだ。

2基のミリ波レーダー、赤外線カメラ、そして多数のCCDカメラによって車両の周囲を監視する先進安全装備。高級車らしく最新の技術や装備が惜しみなくつぎ込まれている。

そして何より、アルミボディ、クワトロ、オプションのハイテク装備を込みで、1000万円少々から買えること。庶民が手を出せる価格ではないが、内容からすると「安い」と思う。

ここがダメ

右ハンドル車の左足もとの狭さ。「プレセンス」は装備すべき

右ハンドル化による弊害。せっかくのタッチパッドも大多数の右利きには左手操作が辛い。特に文字入力。左利きの人の苦労がわかる。そしてもはや気にしなくてもいいレベルではあるが、それでも運転席の左足あたりには余裕といえるほどの空間はない。運転しているかぎり、これ以上の空間は必要ないのも確かだが。

ACCやナイトビジョン等をセットにした「プレセンス パッケージ」は全車に80万円でオプション設定されるが、このクラスなら標準装備でも良かったと思う。ターボで100psとか200ps上乗せするより、投資としてずっと意味がある。

総合評価

目立たないのがいい

新旧2台のA8の写真を見比べてみると、エッジが立ったショルダーラインなど、明らかに変わっているのだが、「アウディのセダンって全部同じに見える」という人は、たぶん今も少なくないはず。細かいラインは変わっても全体のシルエットはあまり変わっていないし、A4を引き伸ばして広げればA8になりそう、といった具合に、アウディセダンはボディサイズにかかわらず、大から小までワンテイストのスタイリングとなっている。

逆にいえば、これを守る限りスタイリング的な失敗はないわけで、新型が出ると目が慣れるまで、どうにも違和感がある昨今のメルセデスやBMWあたりと違って、いきなりの安心感がある。それは日本だけじゃなく、たぶん世界的にも通じる話だろう。前回のA1試乗記でも書いたとおり、EU25ヶ国の2010年販売台数では、アウディ60万台、BMW 58万8000台、メルセデス・ベンツ 57万1000台と、アウディはついにプレミアムブランドのトップに踊りでている。それはこのスタイリングが一因であるように思える。セダンに関して、アウディはまさにコンサバで、奇をてらわず、目立たないところがいいのだ。

 

日本市場でも昨年アウディの販売実績が過去最高となったのは、そんな「目立たない外車」であることが大きいと思う。お金があっても目立ちたくないという人に、うってつけだからだ。前にも書いたが、地方の共働き公務員の家庭など、このご時世ともなると地域ではかなりの高額所得者になることが多い。そういう家庭のクルマ好きである主人が、例えばメルセデスやBMWを買うと、さすがに肩身が狭くなる。しかしA4あたりであれば、さほど違和感を抱かれないというわけだ。さらに新型に買い換えても、多くの人はたぶん気がつかない(苦笑)。その伝統?は昔からで、30余年前に接触事故を起こした相手、アウディ100のオーナーも当時、そういう事を言っていたのをはっきりと憶えている。

アウディは「中身」で勝負

そんな金太郎飴的スタイリングのアウディも、そのアイデンティティたる巨大なシングルフレームグリルのデザインが少しづつ変わってきている。2004年に登場したシングルフレームグリルは、アウディの控えめさを否定するようなデザインで、日本では当時かなり物議を醸したが、今となってはこれが正解だったことは否めない。今回、そのシングルフレームグリルの上部左右コーナーに、微妙だが新たに角が追加された。四角の台形が、六角形になったわけだ。スタイリングを変えず、エッジを立てていく流れにあるデザインで、今後はこれに統一されていくはず。ということで、フルチェンジしてもデザインテイストが大きく変わることはない。アウディのフルモデルチェンジは、まさに「中身」が勝負だ。

実燃費の向上、新しい操作系を追求する変わらぬ向上心、スポーティさと上質感の調和といった中身の充実ぶりは、本文にある通りで素晴らしいのだが、ここではあくまで主観ながら、若干持て余し気味になった印象にも触れておこうと思う。まずボディサイズは、やはり日本の都市部で気軽に乗り回すには大きすぎる。立体駐車場、コイン駐車場といった施設への駐車は、相当に気を使う。慣れれば、何とかなるものかもしれないが。

そんなボディサイズを、全く感じさせない軽快な身のこなしは、このクラスでもスポーティであることをコンセプトの中心に置くアウディの面目躍如。しかしながら、さすがにこのサイズとなると人馬一体感には欠け、乗せていただいている感が強い。高速走行においても、100km/h巡航はあまりに平和すぎる。その5割増くらいであれば走っているという実感が得られるが、それは日本では許されない。年に一度行くために豪華別荘を持つことがお金持ちの贅沢だとしたら、過剰なまでの性能を備えたクルマを所有することも同じことなのかもしれないが、日常的に使うのがセダンというクルマだとすれば、お金があったとしても欲しいとは思えないというのが実感だ。これはもちろん、A8に限ったことではないが。

高級ブランド車だけが可能な領域

先日、某誌にドイツの自動車専門誌「アウト・モーター・ウント・シュポルト(auto motor und sport)」が行ったブランドイメージ調査の結果が掲載されていたが、仕上げ品質では独伊仏でアウディが1位となり、信頼性、安全性、先進性といった項目でも多くで上位を占めている。面白いのはリセールバリューの項目で、独伊ではやはりポルシェが1位だが、仏ではなんとアウディが1位だ。もう一つ、モータースポーツという項目でもアウディは独伊仏で2位と安定している(ル・マンでの活躍のおかげだろう)。反面、スポーティという項目では、意外やほとんど登場しないのだが。いずれにしてもこの調査を見る限り、アウディが今やメルセデスやBMWとは互角、あるいはそれ以上の地位であることがはっきり分かる。

そういう意味で、新型A8の過剰なまでの性能は、ブランドのフラッグシップとして当然必要なもの。その過剰性能をごくたまに使うことこそ贅沢というもので、許された人だけが乗れるクルマというわけだ。例えば1000万円のクルマの場合、つい計算してしまのだが、6年で法定償却するとして月額償却は14万円弱。この金額は日額にすると4600円ほど。一日30km乗るとして、1kmあたり150円!。むろんこれにはガソリン代や諸経費も加わるから、実際には200円を超える。1000万円超の高級車に乗れる人は、移動にこれくらいの経費を使える人だけだ。またクルマというものは所有していると、どんどん資産価値を減らすから、1000万円といえども資産足りえない。つまり日々入ってくるお金を税金に取られるくらいならクルマで使ってしまおう、という人でないと乗ることは難しい。ただ、6年後でも200万円くらいの値はつくだろうから、売却する時点で実は200万円の利益を生むものでもある。

なんだかよく分からないと思うが、そんな計算が成り立つ人、お金が日々入ってきて困ってしまうという人が乗るのが高級車だ。だからA8にはさらに贅沢な、そしてハイテクな装備を強化して、高級セダンというものの高みを極めていってほしい。それは日本車にはまずできない、高級ブランド車だけが可能な領域なのだから。

試乗車スペック
アウディ A8 4.2 FSI クワトロ
(4.2リッターV8・8速AT・1160万円)

●初年度登録:2011年2月●形式:ABA-4HCDRF
●全長5145mm×全幅1950mm×全高1465mm
●ホイールベース:2990mm ●最小回転半径:5.8m
●車重(車検証記載値):1960kg(1090+870) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:CDR
●排気量・エンジン種類:4163cc・V型8気筒DOHC・4バルブ・直噴・縦置
●ボア×ストローク:84.5×92.8mm ●圧縮比:12.5
●最高出力:372ps(273kW)/6800rpm
●最大トルク:45.4kgm (445Nm)/3500rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/90L
●10・15モード燃費:8.3km/L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:フルタイム4WD
●サスペンション形式:前 5リンクサスペンション ウイッシュボーン+エアサスペンション/後 トラペゾイダル ウイッシュボーン+エアサスペンション
●タイヤ:265/40R20( Good Year Eagle F1 )
●試乗車価格:1396万円(概算) ※装着オプション:Audi プレセンス パッケージ【Audi プレセンス プラス、アダプティブ クルーズコントロール、Audi サイドアシスト、Audi レーンアシスト、ナイトビジョン】 80万円、Audi デザインセレクション【デコラティブパネル、専用レザーシート、マッサージ機能など】 35万円、バング&オルフセン アドバンスト サウンドシステム 84万円、電動サンルーフ 21万円、クールボックス 16万円 など)
●ボディカラー:アイビスホワイト
●試乗距離:約200km ●試乗日:2011年5月
●車両協力:アウディ名古屋中央

 
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アウディ 名古屋中央

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