キャラクター&開発コンセプト
驚くべき隠し球登場。足も心臓も欧州仕込み! 大人の官能スポーツセダン
ご存知アコードはホンダの基幹車種である、FF小型セダン。'97年に登場した現行型には、大きく分けると、北米市場、欧州市場、日本仕様の3タイプのボディが存在する。このうち、欧州市場向けには、ホットバージョンの「タイプR」が存在していたのだが、その日本仕様ともいえるモデルが「ユーロR」だ。
インテグラなどに代表されるカリカリチューンのセミレーシング仕様たるタイプRでなく、敢えてユーロRを名乗るのは、アコード/トルネオ本来の性格を考えて、あくまで日常ユースを前提とした4ドアセダンに仕立てたため。欧州アコード・タイプRの熱い血が受け継がれているが、性格は大人のためのスポーツセダンだ。
価格帯&グレード展開
価値ある253.3万円。ライバル車を意識した価格設定
マイナーチェンジ後のアコードの価格帯は155.3~264.8万円。お買い得グレードや豪華装備グレードも様々に追加されている。しかしセダン受難の時代だけに苦戦中。
ユーロRのパワートレーンは2.2リッターエンジン+5MTのみ。充実した装備に、数々のスポーツアイテムを満載しており、価格は253.3万円。2リットルエンジンを搭載するSiRよりも35万円ほど高いが、十分価値ある内容といえる。なお、トルネオもアコードと同様のグレード構成、価格設定となっている。
ユーロRのライバルは、ご想像のとおりFRのアルテッツァRS200(250万円)、スカイライン25GT-V(259.5万円)、4WDのレガシィB4・RSK(264.3万円)だ。
パッケージング&スタイル
フェンダーモールで3ナンバー化、過剰に飾らない控えめなルックス
ボディサイズは全長4680mm×全幅1720mm×全高1405mm。全長は専用バンパーの装着によって45mm長くなっており、全幅はホイールアーチモール(一種のオーバーフェンダー)の装着により、25mm拡大されている。また、ローダウンサスの採用で全高は15mm低くなっている。
メッシュタイプのグリル、前後とサイドのエアロパーツ、軽量16インチアルミ、両側2本出しマフラーもユーロRの専用アイテムだ。リアウイング(オプション設定)すら付かないその姿は、派手にデコレーションされた三菱やスバルのWRC仕様車はもちろん、実際のライバル車達と比べてもグッと控えめ。でも、スマートなカッコ良さは確かにある。特にガンメタに塗られたアルミホイールは、ボディを引き締める効果に一役買っており、イメージカラーである「ミラノレッド」との相性は抜群だ。この味わい深い? のカッコ良さは大人向けを標榜するだけのことはある。
なお、アコードの兄弟車、トルネオにもユーロRを設定しており、グリルとテールランプのデザインで差別化を図っている。前後バンパーにカラードモールが付くのもアコードとの違いだ。
内装もタイプRとは違う、落ち着いた大人のスポーツセダンを演出
シックなインテリアでまず目を奪われるのがRECARO製バケットシートの存在だ。ショルダー部まで大きく張り出しており、4点式シートベルトにも対応する本格的なものだが、インテグラやシビックのタイプRに採用されるレカロよりもサポートが若干マイルドになっており、乗り降りのしやすさなど、日常ユースでの使いやすさが考慮されている。実際に乗り降りしても、ほとんど普通のシート並に使えた。カラーは例の鮮烈な赤ではなく、落ち着きのある黒のみの設定。見る角度を変えるとゴールドにも見えるこの生地は、後席も使われており、インテグラよりも車格が高いということを、さり気なく物語っているようだ。
その他、MOMO製ステアリング、アルミ製シフトノブ、ホワイトメーターなど「R」専用アイテムを標準装備。スポーツイアイテムだけでなく、オートエアコン、オーディオ、リモコンキーといった快適アイテムの充実ぶりも見逃せないところだ。
シートポジションは想像するよりも高い。もっと低いとスポーティーだが、実際の道路状況ではこの方が使いやすく、個人的には好印象。ただ、レカロシートの背もたれが巨大なために、振り向いた時の後方視界は悪く、後席では前が見えなくてかなり閉鎖感がある。
基本性能&ドライブフィール
あくまで一般路での快適性を確保して、ホンダ「R」流チューンを注入
アコード・ユーロRは実質的には前モデルでラインナップされていた「SiR」のMT仕様「SiR-T」の進化型ともとらえることができるが、中身は欧州アコード・タイプRゆずりだ。その筆頭に挙げられるのが、2.2リッター直4VTECエンジン。すでにヘッドポートのハンド研磨という、手間暇かけた調律が施されているのにも関わらず、ユーロRではさらに細部に渡ってチューニングの幅を広げている。最高出力、最大トルクは欧州アコード・タイプRを凌ぐ220馬力/7200rpm、22.5kgm/6700rpm。高回転型というのが、いかにもホンダ流。
この性能をより効率的に引き出すのが、2~5速までをクロスレシオとした専用5速MTだ。シフトアップの際、回転のつながりをスムーズにさせ、軽快な加速フィールを実現。さらにシフトのショートストローク化により、小気味よいシフトチェンジを可能にしている。なお、ATの設定はナシ。潔い選択だ。
足回りも欧州アコードタイプRゆずりのチューニング。15mmのローダウン化が図られた。またマイナーチェンジで行われたボディ各部の強化で、ボディ全体のねじれ剛性は約23%アップされているという。ブレーキ容量の拡大化にともないタイヤは205/50R16サイズ。加えてヘリカルLSDも標準装備。抜かりはない。
快適でスポーティー、これぞスポーツセダンの真髄
エンジンはタイプRのような荒々しさはなく、全ての回転域にわたり、質感の高さを感じさせながら軽快に回るもの。VTEC効果によって5000回転あたりからさらに軽快さが増し、レッドゾーンの7500回転まで一気に上昇する。郊外では高回転を維持して走らせることも楽しく(もちろん速度はヤバイ領域になってしまうが)、官能的な音色で気持ち良く走らせて、ついつい燃費を悪化させることとなってしまうほど(市街地中心の実燃費は6.1km/リットルだった)。
3速では、タコメーターとスピードメーターの針が平行して動き、それが見事にレッドゾーンの7500回転まで続く。微妙なアクセル操作をすれば、エンジンも敏感に反応。短くカチッと決まるシフトも気持ちいい。もちろん絶対的な加速や力強さは280馬力ターボにはかなわないけれど、高回転まで伸びる滑らかなエンジンフィーリングは、ライバル車を完全に凌駕するものだ。
タイプRとは異なって遮音材もちゃんと有るため、高速巡航でも騒音はさほど高まらず、直進性も超高速域まで不満がない。高速クルーザーとしても問題なく使えるだろう。試乗車にはオーディオからカーナビまで装着されていたため、これならどこへでも行ける。
乗り心地は固くはなく、しなやか。もちろん柔らかくはないが、突き上げを足回りだけで吸収できる柔軟性を持ち、日常の足としての快適性は全く損なわれていない。ファミリーカーとしてもしてもこれなら使えるはずだ。
コーナリングは終始、安定指向。タイヤの接地感が高く、クセもなく、挙動変化の乱れも把握しやすい。ここまで完成度が高ければ、FFスポーツセダンの優等生といってもいいだろう。ただ、優等生というのは面白みに欠けるというのも確か。要するに刺激は足りない。まぁ、これもタイプRでなく、ユーロRということの証だろう。走りに徹したいなら別のクルマがある。
ここがイイ
素晴らしいエンジン、感触の気持ちいいシートとステアリング、控えめな外観。そして快適性、実用性、見てくれと、走行パフォーマンスの絶妙のバランス。スポーツ心を忘れず、毎日快適に走らせることができるという点で、ライバル車同様、完成度が高い。
ここがダメ
このクルマにダメ出しをするのは難しい。唯一、人によってダメという部分があるとすればFFであることだろう。さらに言えば、走りか快適か、はっきりしたクルマがいいという人には中途半端に映るだろう。
総合評価
FRのスポーツセダンがある以上、FFであることは、実際の性能ではなく、印象として弱い。S2000がFRであるように、ホンダとしてはいずれFRセダンのユーロR(タイプR?)を出したいのだと思う。今はじっと我慢か。
同様にタイプRでなくユーロRとしたことも印象として弱い。社内にタイプRの規定があるのかもしれないが、もう少しタイプRに振った作りの方が結果としてアピールしやすいのでは。性能の良さと裏腹に、印象がどうも中途半端に感じられるのが残念だ。こういうクルマを買おうとする人は、快適性は少し犠牲になっても刺激のあるマシンが欲しいのだと思う。同じタイプRでもシビックでは子供っぽい、インテグラでもまだまだ、アコードなら堂々と乗れるという大人はいるだろう。もっともその場合ファーストカーではなく、セカンドカーとしてということになり、実際に日本の市場でどれだけ売れるかに疑問がつくのは当然。しかしそんな常識的マーケティングを超えたところにヒット作というものが存在するのでは。
とはいえ、現実に走りのセダンが欲しい、特にホンダ党のお父さんにはいい贈り物だ。アルテッツァは子供っぽい、いまさらスカイライン?、4WDではスポーツできないでしょ、とライバルを蹴散らせていけば、ユーロRが俄然光ってくる。
公式サイト http://www.honda.co.jp/ACCORDEURO-R/



