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メルセデス・ベンツ Aクラス新車試乗記(第47回)

Mercedes-Benz A Class

 

1998年10月30日

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キャラクター&開発コンセプト

メルセデス初のコンパクトカー

全長3.6mあまりの小柄なボディに、Cクラスと同等の居住性、メルセデスならではの安全性や環境性、社会適合性を盛り込み、そしてミニバンに匹敵するユーティリティも備えたコンパクトカーがAクラスだ。

ヨーロッパでいうAカテゴリーに新しい価値観をもたらし、そのクラスをリードすることを目指している。また、いままでのメルセデスにはなかった新しいコンセプトのクルマを投入することで、新たなオーナー層の獲得を狙っており、メルセデスの世界戦略を象徴するクルマのひとつでもある。なお、FFコンパクトカーというのはメルセデスにとって初挑戦だ。

価格帯&グレード展開

メルセデスなのにお値段265万円

日本に導入されたAクラスは、本国のA160のアバンギャルドがベース。1.6リットル直4ガソリンエンジンにスポーツシフト付き5ATを組み合わせた右ハンドル仕様となる。デュアル&サイドエアバッグ、ABS、ESP、エアコン、6スピーカーオーディオなど、ほとんどの安全&快適装備は標準となる。これで価格は新型ゴルフも驚く、265万円。

4枚の薄いパネルで構成されるジャバラ状の大きなサンルーフ(ラメラルーフという名称)は、オプションで15万円となる。

パッケージング&スタイル

ショート&トール、そしてワイドなボディ

ボディサイズは全長3605mm×全幅1720mm×1575mm。全長は新規格軽より20mmばかりしか長くないのに全幅は3ナンバー枠となり、今の日本車ではちょっと考えられないサイズとなっている。ホイールベースは2425mm、前後のオーバーハングは極端に短い個性的なスタイリングだ。グリルには堂々としたスリーポインテッドスターがさん然と輝き、強烈な存在感をアピールする。

街中での注目度は予想通り、抜群。サラリーマンからOL、はたまた主婦までが「あれが転んだベンツよ」という目で? こちらを見ている(ように思えた)。暴論ではあるが、転倒事故の一件も今となっては知名度を上げる強烈な宣伝効果となったようだ。

まったく新しい発想で開発、メルセデスの最新技術を駆使

数々の新技術が凝縮されているAクラスだが、その中で最も重要なもののひとつが2重フロア構造の「サンドイッチフロア・コンセプト」。エンジン、トランスミッション、駆動軸からなるドライブレーンの一部を床下に潜り込ませ、キャビンとパワートレインを上下に分離させるという手法だ。最大のメリットは、前面衝突時にパワートレインが床下に滑り落ちることで衝撃を吸収し、Eクラスと同等の衝突安全性を確保しているということ。サイドからの衝撃にも強固なフロアが対処し、しかも位置が高いため、ぶつかってくる相手のバンパー位置に上手くあたる仕掛けだ。

もうひとつのメリットは、限られたサイズの中で有効な室内空間を確保できると言うことだ。フロア上は全部室内といってもいいほどで、室内長は、ボディ全長の約70%に相当する1830mmを達成しており、これはCクラスとほぼ同等の数値となっている。

例の転倒事故の一件で、Aクラスは足まわりを中心に直ちに対策が施された。その対策のポイントとなっているのがESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)の標準装備化。コーナリング中の横滑りを防止するハイテクデバイスだ。

チープな内装だが、使い勝手はRV的

内装は、T型の未来的なデザインのインパネをはじめ、各部がプラスチッキー。メルセデスのイメージからすると安っぽいというのは事実だが、機能性、装備に関しては何ら不足のないもので、小型車なのだからこれで十分といえる。オペルなんかと同じくらいの質感だ。パワーウインドウスイッチとサイドブレーキの位置が下すぎるのがちょっと不満。特にサイドブレーキは左ハンドルと同じ位置なので、ちょっと使いづらい。

シートポジションはフロアが底上げされているので、必然的に高くなる。ミニバン的アイポイントで気分はいい。シートは小柄な日本人にはちょっと中途半端な高さという感じになり、決して乗降性は優れているとは言い難い。ウインドガラスが肩レベルよりも下にあるので、見晴らしはよく、運転はしやすいといえる。

フロントシートのクッションはドイツ車らしい硬めのものだが、サイズは小さく、サポート性もイマイチ。シートリフターがあるが、いまいちしっくりこなかった。リアは足元はまあまあのスペースとなるが、ヘッドルームはミニマム。180cmの人が乗ったら頭がついてしまうだろう。

Aクラスの魅力は、多彩なシートアレンジと優れた荷物の積載性能。運転席以外(助手席も)のシートが取り外すことができ、後席は6対4分割可倒式のダブルフォールディング機構が付く。これらを駆使すれば、72通りのアレンジが可能だという。また、通常の荷室は容量350リットルと、ミニマムだが、シートを取り外すことで、最大1700リットルまで積載能力がアップする。シートの取り外しは一見便利だが、日本では取り外したシートを置いておくところがないから結局使われないという議論が多い。頻繁につけたりはずしたりするのでなく、必要に応じて2シーター、3シーター状態で使うというのが正しい利用法だろう。個人的には助手席をはずして、モバイル系のラックを置きたいところだ。

基本性能&ドライブフィール

マニュアル操作ができる「ティップシフト」を採用、ハイギアードなセッティングだ

搭載されるエンジンは102馬力/15.2kgmを発生する1.6リットル直4SOHC。これは全く新たに新設計されたもので、主要コンポーネンツはアルミ製で軽量化が図られている。ちなみにメルセデスにとって1.6リッター未満の排気量エンジンを製造するのはこれが初。組み合わせられるトランスミッションは5速AT。これは、高速走行での燃費経済性を重視したためで、ギア比全体もハイギアードな設定になっているのが特徴だ(レブリミットは6000回転)。Dレンジにセットしたセレクトレバーを左右に動かすことにより、マニュアルチェンジができる「テッィプシフト」を採用している。慣れると上下に動かすタイプより使いやすい。ただ、理想はステアリング上の親指シフト。実現を望む。

力的には必要十分程度、気になるところはいくつかある

まず気になったのは、Dレンジの状態でのアイドリング振動の大きさ。ブルブルとくる振動はちょっと興ざめだ。試乗車固有のものならいいのだが。メルセデスのアクセルは相変わらず深く踏み込まないとスロットルが開かないらしく、重い印象。ステアリングも重く、復帰力が弱いため、チョイ乗りするには扱いにくいかもしれない。それでも4気筒にありがちなガサツキ感は一切なく、SOHC、小さな排気量というハンデがありながらも、キャパをフルに活用しているので、必要にして十分のパワーを発揮する。6000回転付近までスムーズに回り、一旦、流れにのれば良く走る(それまではちょっとかったるいが)。中間加速や急坂などでは、シフトを左に2回押し込む必要(2段速ダウン)はあるが、それがかえってスポーティーな感じなのも確か。

次に気になったのが、発進時や急加速時に見られるギクシャクしたシフトチェンジ。恐らくシフトプログラムが原因なのであろが、あまり快適ではなかった。ショックも大きめ。

足まわりは例の一見で改良され、乗り心地はやや硬め(50偏平のタイヤのせいもある)。コーナーではロールも小さく、大きな段差や突起に出会うと、ボディーがあおられ気味になることもあるが、タイヤの接地感はしっかりと残っており、不安を抱くことはない。倒れそうどころか結構スポーティな感すらある。ただ、ESPが効くと、不自然な操舵感が残る。

高速での直進性も悪くないが、最高速は160km/h程度ともう少し走って欲しい感じ。静粛性は、欧州小型車(あくまでも欧州車という条件付き)の中ではトップクラスといえるほど優秀だ。100km/h巡航のエンジン回転数は2600回転と、1.8リットルのゴルフIVより低く、静か。たださすがに120km/h以上になると風切り音が騒がしくなる。

また、最小回転半径5.2m、燃費(10・15モード)13.2km/リットルというのも特に優れた数値ではない。まだまだ熟成域に達するには多くの課題が残っているといえそうだ。

ここがイイ

コンパクトなサイズの中に、一応必要なものはすべて用意されている。取り回しは確かに悪くないし、視点が高い分、乗っていて小型を感じさせない。シートアレンジも自由だし、メルセデスのブランド性もある。乗り心地もそこそこだし、走りもそこそこ。ティップシフトは楽しいし、世の中このように小さいクルマで十分、とメルセデスが言いはじめると、世界中のメーカーは困ってしまうのでは。

ここがダメ

アイドリング振動がある。シフトショックが大きい。Dレンジでの走りがかったるい。内装の質感が低い。リアのヘッドスペース不足。シートがしっくり来ない。カーナビが設置しにくい。

総合評価

ここがダメの部分がこれから改善されていくと(リアの居住性だけはきついが)パーフェクトになってしまう。エンジンをちょっと大きめに変え、シフトを見直し、革シート仕様を導入し、カーナビは広いダッシュ部分に貼り付ければいい。と考えると、完成度が高まる2年後位がAクラスの買い時か。最初はちょっとアラが目立ったが、乗っているうちにだんだん欲しくなってきたのは確かだ。現状でもメルセデスブランドなら価格には合っていると思う。ただし、わざわざこれを買わなくても、乗って快適、快速、高級なクルマはこの金額なら日本車にいくらでもある。その意味ではいまや付加価値(コンセプトやブランド性)こそがクルマの価値になってしまったという印象だ。

 

公式サイトhttp://www.mercedes-benz.co.jp/

 
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