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メルセデス・ベンツ A170新車試乗記(第359回)

Mercedes Benz A170

(1.7リッター・CVT・252万円)

  

2005年03月25日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

初代の欠点を解消

欧州では2004年、日本では2005年2月に発売された2代目Aクラスは、初代のサンドイッチ構造をはじめとする設計思想を受け継ぎつつ、不評だった質感や走行性能、居住性などの高めたニューモデル。ガソリンエンジンは従来ユニットの排気量拡大・改良版を搭載するが、AT車の変速機はメルセデス・ベンツ初のCVT(無段変速)「Autotronic(オートトロニック)」を採用する。

Aクラスとは? メルセデス初のコンパクトカー

初代Aクラスは1997年にメルセデス・ベンツ初のコンパクトカーとして登場。全長3.6メートルのボディ、二重フロアのサンドイッチ・コンセプト、同社の乗用車としては異例の前輪駆動など、冒険的なアイディアを満載した。デビュー直後は、エルクテスト(鹿を避ける緊急回避テスト)で転倒するという一件が全世界に報じられ、よくもわるくも一躍有名に。すかさず全車にESP(横滑り防止装置)を装備するなど対策を施し、さらに改良を行いながら欧州を中心に110万台を販売した。

価格帯&グレード展開

252万円~309万7500

日本仕様は3種類で、1.7リッター(116ps)のA170(252万円 ※今回の試乗車)、装備が充実したA170エレガンス(288万7500円)、2リッター(136ps)のA200エレガンス(309万7500円)。

キセノンライト(10万5000円)やレザーシート(28万3500円 ※エレガンスのみ)、ポリカーボネイト製サンルーフ「パノラミック・ラメラルーフ」(14万7000円)などはオプションで用意される。A200は排気量が2034ccなので、自動車税が1ランク(年間5000円ほど)上がることに注意。

ライバルは「プレミアム」(高級)をうたうドイツ製コンパクトカー。価格的に近いのはゴルフ(240万4500円~)、オペルアストラ(265万円~)。あるいはアウディA3(283万円~)、BMWの1シリーズ(288万8000円~)など。同じベンツのCクラスは399万円からと、かなり開きがある。

パッケージング&スタイル

どっしりしたスタイル

ボディサイズは全長3850mm×全幅1765mm×全高1595mm。初代より20センチ以上長く、実質的に、01年から追加されたロングモデルとサイズは近い。どこから見てもおむすび型の、どっしりしたスタイルだ。

初代の特徴だったサイドに回り込むリアウインドウはオーソドクスなものに変更。代わりに、フェンダーやドアに施されたイタ車風の抑揚や鋭いキャラクターラインが「プレミアム」をアピール。先代よりはカッコよくなっていると思う。

劇的に質感向上

内装も大きく進化した。先代末期でもかなり今ひとつだった質感は「一体どうしちゃったの」というくらい大幅に向上。アウディA3、ゴルフ、アストラと比べても負けてないと思われる。ドアに付いたパワーウインドウ・スイッチ(4枚ともオート)など、まるで日本車のように使いやすい。上級のエレガンス仕様だとウッドパネルまで備わる。

一方、サンドイッチ構造ゆえ、スポーツカーのように足を前に投げ出すドライビングポジションはしっかり継承。先代ほどではないものの最初はしっくり来ない。慣れるとチルト(上下)とテレスコ(伸縮)が効くステアリングや、上下調整が大きく効くシートのおかげで、それなりの姿勢が取れる。

重々しさは過去のもの

後席の広さも十分で、足元が一段低くなって自然な姿勢で座れるようになった。折り畳みは欧州車らしい座面跳ね上げ式で、クッションも犠牲にならず座り心地はいい。上級のメルセデスに通じる上質さだ。ただし走行中は、荷室で多少ゴトゴトと音がする。

 

真っ四角な荷室は387リッターと大きめ。使い勝手も日本車のように気配りが細かい。まず、フロアボードの高さが片手で簡単に2段階で変えられるのがいい。後席はダブルフォールディングだが、ヘッドレストを抜く必要がなく、操作力も拍子抜けするほど軽い。

 

またフロアボードが上段ならば、ステーションワゴンのように敷居から奥までフラットになる。これらが日本人的尺度で見ても軽い感覚でできるわけだが、初代Aクラスやバネオの取り外し式シートや、重々しく無骨な操作手順を良しとしてきたメルセデス流は、いよいよ過去のものとなったわけだ。

基本性能&ドライブフィール

ベンツ初のCVT

試乗車はベーシックなA170。独特のポジションに慣れるまで少し時間がかかるが、走り始めの印象は想像より違和感がない。

まず、メルセデス・ベンツ初となる「オートトロニック」と舌をかみそうな名のCVT(ベルト式無段変速)がスムーズだ。ロックアップ付きのトルコンが間に入るのでクリープがしっかりあるし、低回転が得意なエンジンとのマッチングがいい。旧世代のCVTは回転上昇と加速感のズレが気になるが、これは回転上昇と一緒にスピードをじっくり上げる。Dモードだと少々かったるいが、違和感は少ない。

取り回しはまずまず

モノフォルムというデザインゆえ、Aピラーの死角は気になるところ。ドアミラーの視野もやや狭い。それでも、最小回転半径は5.3メートルとまあまあ小さく(5ナンバーのフィットでも4.7メートル)、そもそも全長がフィットや新型ヴィッツRSあたりとそう変わらないから取り回しは楽だ。全幅は5ナンバー枠を65mmオーバーするが、通常の走行ならこの程度の幅はほとんど問題にならないはず。

街乗りで少し気になったのは、信号の右折などで出足が良くないこと。これはCVTだからと言うより、メルセデス伝統の「急な飛び出しを防ぐ」というあれか。感覚的にはアクセルレスポンスに直結してないので違和感が残る。

粛々と仕事をするエンジン

エンジンは先代の1.6リッター直4からちょうど100cc排気量を上げて、可変吸気システムを追加した1.7リッター(116ps、15.8kgm)。スペックが語る通り、このAクラス専用ユニットは低中回転で粛々と仕事をする。急ぐときはメルセデス流にシフトレバーを左右に振って7速マニュアルモードに入れ、マウスをダブルクリックするように2つか3つ、シフトダウン。そうやってやっと高回転まで回せる。スポーティ感は薄く、回し続ける気にならないところはメルセデス流の味付けか。車重が1310kgあるので速くはないが、大きな不満もない。ぐっと高くなった静粛性は良い点だ。

美味しいサンドイッチ構造

走行中にAクラスの個性を強く感じたのは、サンドイッチ構造のシャシーの部分。正面衝突時にエンジンがフロア下に潜り込んでクラッシャブルゾーンを確保、というのが名目の2重フロアで、独特のフロア剛性感がある。

さらに、走り命のスポーティなライバル車と違い、ソフトで曖昧なサスペンションのおかげで乗り心地もいい。フロントは新開発のストラット、リアは新開発の「スフェリカル・パラボリック・スプリングアクスル」という独特の形式。ハードな走りにはワンテンポ遅れて反応するが、挙動は徹底して安定している。手応えの自然な電動パワステもおっとり系。いずれにしても初代Aクラスとは別物の印象。

高速巡航は100㎞/h時で2000回転というところ。ここからの加速はマニュアルモードで3つほどギアを落とすと、それなりに不満なくこなす。とはいえ、アクセルとの直結感が薄く、モワーっとした加速。CVTの常で速度に乗ればエンジン回転も低く快適だが、トラックに追いついて再加速といった走行を繰り返す場合は、もうちょっとがんばれ、とつい声をかけてしまった。

ここがイイ

一見して質感が上がったインテリアは、素晴らしい。これでライバルと互角になった。クロームパーツの使い方などは何となくアウディっぽく感じたが、これはアウディから人が移籍して担当したとのこと。なるほど。後席用エアコン吹き出し口もある。

荷室のフロアボードは、スプリングが仕込んであり、片手で軽く上下できて、半開き状態の固定も可能(スペアタイヤの取り出しに便利)なのがよい。同じグループだった三菱コルトの影響が感じられる部分。CVTの出来も初めてとは思えない完成度。マニュアルモードの反応もよく、加速もリニア。これもコルトの影響か。

乗り心地の重厚さはまさにメルセデス。スイッチ類の操作系もメルセデスユーザーなら、とまどわないはず。加えてオーディオやインフォメーションディスプレイが操作できるマルチファンクションステアリングは便利。携帯電話のハンズフリーもついている。オーディオの音もいい。

ここがダメ

一番気になったのは出だしのもたつき感。交差点の手前で停止寸前の速度に落ち、そこから右折して加速するようなとき、一瞬失速感がある。そんなときにはAピラーまわりの視界の悪さも気になるところ。

シート高そのものはそう高くないが、降車するときに地上が遠く感じられるのは足が短いせいだけではないと思う。ちょっと前のミニバンのような感じだ。シートポジションは改善されているが、構造的にしかたないところか。

メルセデス流のDレンジから左へ動かしてシフトダウン、右へ動かしてシフトアップというマニュアルモードは初めてでも使いやすいが、やはり普遍的ではない。特にD固定レンジがないため、Dのつもりで6速だったということも(軽くアクセルを踏んだくらいではキックダウンしない)。7速もある場合はDレンジが別に欲しいと思った。同時にステアリングにもシフトスイッチが欲しい。

総合評価

ファーストカーとしてライバルのゴルフなんかと比べた場合、ワンモーションフォルムで小さく見えるデザインを気に入ることができるかが課題かも。リアから眺めるとキャラクターラインとテールランプの食い込みが矢印みたいに見えるあたりは個性的だが、全体的なデザインに強い個性は感じられない。よくあるハッチバックみたいで、ベンツのオーラの出方は少なめ。

安全性を強調するサンドイッチコンセプトも、ここに来て存在意義はあやしい。110のクラッシュテストを経て入念に開発されたというが、新型ヴィッツも普通のFFで高い衝突安全性を主張しているし、サンドイッチコンセプトでなくてもやれるところまで世の中的には来ていると思う。フロア高とか、重量とかのデメリットを相殺するだけのメリットを見いだすことは難しいだろう。

とはいえ広くなった室内、質感が上がったインテリア、大きめのシート、CVTの出来の良さ、乗り心地の良さなど旧Aクラスを大きく凌ぎ、不満も少ない。価格もそこそこだし、ベンツユーザーがセカンドベンツとして使うには最適。そして日本車じゃ嫌、でも今さらゴルフなんか、という人向けだろう。その市場はそうとう大きい。そこではメルセデスブランドが強力な吸引力となるはずだ。

試乗車スペック
メルセデス・ベンツ A170 (1.7リッター・CVT・252万円)

●形式:DBA-169032●全長3850mm×全幅1765mm×全高1595mm●ホイールベース:2570mm●車重(車検証記載値):1310kg (F:770+R:540)●乗車定員:5名●エンジン型式:266●1698cc・SOHC直列4気筒・横置●116ps(85kW)/5500rpm、15.8kgm (155Nm)/3500-4000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/54L●10・15モード燃費:12.2km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:195/55R16(Continental PremiumContact ※オプション装備)●価格:252万円(試乗車:267万7500円 ※オプション:メタリックペイント 5万2500円、パッケージオプション<16インチアルミホイール、本革巻ステアリング&シフトノブ> 10万5000円)●試乗距離:約120km

公式サイトhttp://www.mercedes-benz.co.jp/passenger/car_lineup/a-class/index.html

 
 
 
 
 

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