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スズキ エリオ新車試乗記(第162回)

Suzuki Aerio

 

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2001年03月03日

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キャラクター&開発コンセプト

スズキの新世紀カー、1.5リッターで世界戦略は狙う

スズキが軽ナンバーワンの座に甘んじることなく、小型車戦略を強化するためにゼロから開発したのがエリオだ。広報資料には「取り回しのしやすいコンパクトな車体」、「室内は前席、後席とも天井が高く足元の広いゆとりあるレイアウト」、「スポーティーで快適な居住空間」とあるなど贅沢なコンセプトだが、簡単にいえば、ちょっぴりミニバンテイストのコンパクト5ドアハッチ。言わばスズキ版ニューシビックだ。

室内は2列シートの5人乗り。フロアシフトを採用するため、センターウォークスルーはできない。エンジンは1.5リッターのみで、組み合わせられるミッションは4ATと5MTが用意される。駆動方式はFFのほか、4WDも設定する。乗車定員は5名。

スズキにとっての小型車は、イコール世界戦略車でもある。提携先であるオペル、GMへのOEM供給はいまのところないようだが、欧州、北米、アジアへはスズキ・ブランドで投入される。特に欧州を中心とし、年間3万台を輸出する。また日本ではカルタスに代わるワゴンRのステップアップ車として、21世紀のファミリーカーをねらう。

価格帯&グレード展開

価格帯125.0~167.6万円

グレード展開はベーシックな「G」と豪華仕様の「X]の2種類。Gのみ4WDが用意される。Xのみに与えられる装備は、外観ではアルミホイール、マフラーカッター、ルーフエンドスポイラー、カラードハンドル&ドアミラー、スモークガラスなど。室内では2DINサイズMD/CD/カセットステレオ、、電動格納式ドアミラー、運転席リフレクター、リアスピーカー、サブトランク、助手席アンダートレイ、リアカップホルダー、フロントシートヒーター(4WDのみ)、ヒーテッドドアミラー(4WDのみ)など。価格は「G」の134.8万円(FF・4AT)よりも14.8万円高い149.6万円。対抗馬のシビックと比べて平均で10万円ほど安い設定となっている。

パッケージング&スタイル

ホイールベースの短さは全高の高さでカバー

ボディサイズは全長4230mm×全幅1690mm×全高1550mm。スラントしたノーズから大きく傾斜したAピラー、そしてルーフへと続くモノシェイプデザインによって、キャビンスペースを大きく確保したのがエリアの特徴だ。金属調塗装のグリルでハイテク感を演出した。特にリアビューはユニークかつ斬新。バックドアのV字型デザインは、好き嫌いは別として、一度見たら忘れられないほどオリジナリティがある。コンセプトカーみたいといえば、そうも見える。

しかし、この種の背高ワゴンはもはや珍しくはなく、なかでも三角をテーマとしたフロンマスクはシビックそっくりで、少々平凡なもの。平凡なデザインだから長くつき合えるというのも一理あるが、フロントとリアのバランスは素人目に見てもチグハグ。開発初期モデルではフロント、リア共に斬新だったが、フロントだけ普通になってしまったのでアンバランス感が出てしまった。残念。

ボディサイズはシビックと比較すると、全長が50mm短く、ホイールベースは200mmも短い。パッケージング的には不利な印象を受けるが、全高をシビックより55mm高い1550mmに設定して、ホイールベースのハンディを補っている。1550mmという数値は言うまでもなく立体駐車場の入庫を考慮した結果。そこから割り出された室内高は1275mm。シビックより45mmも高く、ちょっとしたミニバン以上の数値を確保する。

ここがスズキっぽくて、そこがスズキっぽくない

シートは「軽のスズキ」とは思えないほど大ぶりで、背もたれがしっかりと肩の高さまでカバーする。適度な硬さがあり、サポート性にも優れる。地上高590㎜で乗り降りもしやすい。後席は足下空間こそシビックに大きく水をあけられるものの、リラックスな姿勢を十分に保つことができる。

ラゲッジの床面を少し高く設定したことで、底の深いサブトランクの設置が可能となったこともポイントのひとつで、スズキお得意の(?)取っ手付きバケツも用意される。このほか、ドアトリムのアームレストも膝を乗せやすい絶妙な高さに設定してあるなど、空間に無駄がない。限られた制約の中で、最大限の快適さを追求するという手法は、まさに「軽のスズキ」ならではと言っていいだろう。

インパネは外観に合わせて三角をモチーフとし、世界市場を意識した左右対称のデザインとなる。センターパネルはナビ搭載を前提としたもの。ステアリングも未来的な専用デザインだ。ハイテクがぎっしりつまった先進的イメージ(あくまでイメージ)は、プリウスにも通じるものがある。 中でも目を奪われるのが運転席正面のクラスターに収まる薄型のデジタルメーターだ。庇がなく、キーをONすると表示が映し出される仕掛け。これといって珍しくもないが、スズキとしては一応、初の試みである。

一方、質感はかなり高くなってはいるが依然「軽のスズキ」を感じさせる。インパネのシボが「ツルツル」「サラサラ」「ザラザラ」の3つを要所要所で使い分けているのだが、それが逆にチグハグした印象となり、ねらいどおりの効果を出していない。特に残念なのが、葉っぱをイメージしたというベージュの内装色とその生地パターン。葉っぱと言うよりは枯れ葉。これではせっかくのハイテクイメージが台無し。

基本性能&ドライブフィール

気合い入ってます、パワートレーン&ボディはオールニュー

プラットフォームは全くの新設計で、エンジンはスイフトの1.3リッターM型のボアアップ版である1.5リットル直列4気筒エンジンが搭載される。可変バルブタイミング機構(VVT)を備えたオールアルミ製だ。最高出力、最大トルクはカローラシリーズの1.5リッターと全く同じ110馬力、14.6kgmとなる。

組み合わせられる4速ATにおいて注目したいのは、NS(ニュートラル・スリップ)制御が採用されている点だ。Dレンジで停止した際、無駄な燃料消費を低減させるためにミッションを自動的にニュートラル状態に近づけるというもの。これと同じ発想のATはオペルの「ニュートラル・コントロール・システム」がある。

加速は十分

1160kgという車重は、カローラランクス/アレックスよりも90kgほど重い。しかし、実際にはそんなハンデを感じさせない十分な加速をみせる。むしろエリオのほうが、吹け上がりはシャープで、リニア感がある。低回転での力強さは1.5リッターを感じさせないもので、ボリューム感のあるボディをキビキビと走らせることができる。恐らくファイナル比がややローギアード化してあるのが、敏感な加速性能の一因なのだろう。それでいて10・15モード燃費はランクスより0.6km/L低いだけの16.0km/Lと、なかなかの好燃費なのも感心できる。

NS制御のおかげか、アイドリング時の振動はほとんど気にならない。とはいえ、走り出すと低回転から騒音が高まるのも確か。耳障りな高周波は抑えられているものの、遮音が少々物足りない。走りの質感がここで大きく左右されるからだ。

乗り心地は固め

印象的だったのが足回りの味付けだ。ヨーロッパで鍛えたという4輪ストラットの足回りは硬め。それに合わせてステアリングもやや重くなっている。乗り心地を重視したカローラとは明確な違いが実感できる部分といっていいだろう。タウンスピードではちょっとゴツゴツした当たりの強さを感じるので、わずかな段差でもそれが続く路面になるとちょっと不快になってくる。それも走りの質感を落としている一因であり、もう少ししなやかさが欲しいところだ。個人的にはエリオのほうがずっと好感が持てるし、運転しているという感覚はエリオのほうにある。

というのもこの固めの足がコーナリングでは生きる。パワーが控えめのFF車らしいその素直な接地感は、エンジンを回しながら低速域でコーナリングが楽しめるのだ。ロールも少なく、背の高さを感じさせない。欧州がターゲットと言うだけあって、日本車というより欧州車に近い味付けとなる。走りにしっかり感を求めるならエリオ、快適性を求めるならカローラということになるだろう。

高速巡航もさすがに1.5リッターともなると100km/hあたりでは何も不満がない。やかましくないし、直進性も高い。ただ横風にはさすがにこのカタチなので、セダンほど強くないのは確か。このまま速度を上げていくと、140km/hあたりが快適に走れる限界となり、150km/hで我慢を強いられる。これ以上速度を上げるのは心理的に辛い。カローラはこのあとさらに速度を上げられるのだが、そこが大きな違いだ。むろん、日本の道路事情ではあまり意味のない部分だが。

ここがイイ

5ナンバーサイズ、タワーパーキングに入るギリギリの高さで(アンテナは取り外さなくてはならない)取りまわしが楽。さらにチョイ乗りから高速移動まで一台でこなせるマルチ性。斬新でナビの設置しやすいインパネ、シートの座り心地は抜群、チャイルドシート取り付けのISOFIX対応、リア荷室下に潜んだバケツ、広い室内、そして固めのしっかりした足。

ここがダメ

斬新で頑張ってはいるが、どこかイマイチ地味な外観デザイン(スズキスポーツのエアロ顔にするとリアとのバランスがとれる)。シートの柄と色。

細かいことを言えば、最近のスズキのキーレスエントリーは感度もよくなったが、いかんせん2ボタン式で、キーのボタンが小さい。どっちを押したか、手探りではわかりにくいのだ。トヨタはキー一体型の1ボタン式で、ホンダはキーとは別体の1ボタン式リモコンで、共に使いやすい。2ボタンの他メーカーもこれはぜひ一考をお願いしたい部分だ。1ボタン式が絶対に使いやすい。

総合評価

予期せず登場してきたクルマだが、その出来はとてもいいと思う。1.5のベーシックな5ドアハッチとしては、その使い勝手やパッケージングには大きな不満はない。質感もほどほどにはあるし、走りも欧州調。デザインの好みは分かれるものの頑張っている。

ところがこのクラス、ライバルが異様に強力。例えばシビックにはフラットフロアやインパネシフト、広大な室内があるし、カローラランクス/アレックスには一クラス上の質感がある。一言で言うとカローラは上級車から下りてきた1.5クラス、エリオは軽自動車から上がってきた1.5クラスという違いだ。自分のクルマとして使い始めれば、いっこうに苦にならないだけの出来の良さがエリオにはあるが、比較してしまうと、ライバルに分があるのは認めざるを得ないだろう。

とはいえ、価格も装備もライバルといい勝負。どうせ代えるアルミやオーディオを標準とせず(Xグレード=149万6000円の場合)、もう少し安めの価格にすると競争力が高まると思う(カローラは値引きしないようだし)。特にナビゲーションのディスプレイに最もいい位置に鎮座するCD/MDデッキは無用の長物。この2つをレスして10万円ダウンできないものか。

5ドアハッチが、ポストミニバンになるかは微妙な情勢だが、確かに子供が大きくなったりしてミニバンが必要なくなった人には、いい選択肢となりそうだ。RVの便利さを知ってしまった人が、今さら狭くて使い勝手の悪いセダンへ回帰するとは思えない。といって小さめのクルマで十分と考えたとき、5ドアハッチへ目を向ける可能性は高い。日本ではウケないとされ続けてきた5ドアハッチも、ワゴンブームを経たことで、やっと欧州並みの評価を得ることができそうだ。かつてはステーションワゴンなど日本で売れないとされたものだが、大ブームとなった実績があるだけに、今後ハッチバックが売れる可能性は高いと思う。クルマとしては一番合理的なカタチであることは、誰の目にも明らかだから。

 

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/lineup/aerio/index.htm

 
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