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アルファロメオ アルファ スパイダー 3.2 JTS Q4 Qトロニック ディスティンクティブ新車試乗記(第461回)

Alfa Romeo Alfa Spider 3.2 JTS Q4 Q-Tronic Distinctive

(3.2L・6AT・4WD・600万円)

ロメオよ、ロメオ。
仮にロメオと言わずとも、
カッコよさはついぞ変わらず。

2007年05月12日

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キャラクター&開発コンセプト

6AT「Q-トロニック」を備えた新型スパイダー

新型スパイダーは新世代アルファの159シリーズ、直接的にはブレラをベースとした2シーターオープンスポーツだ。日本では2006年10月14日に2.2リッターと3.2リッターの6MTモデルが発売されたが、今回採り上げるのは07年3月17日に追加された3.2リッター・6ATの「Qトロニック(Q-Tronic)」仕様だ。

アルファと言えばセミATの「セレスピード」がおなじみだが、今回159、ブレラ、スパイダー、159スポーツワゴンのV6モデルに一斉に設定されたQトロニックは、アイシンAW製のトルコン6ATだ。VW・アウディやMINI用も含めて、量産FF用6ATは今のところこのアイシンAW製のみとなる。156シリーズのV6にあった4AT「Qシステム」も同社製だったから、Qトロニックはまさにその後継ミッションにあたる。その意味で今回の試乗記は、Qトロニック試乗記でもある。

アイシン・エィ・ダブリュ公式サイト>プロダクト>FF車用AT

アルファロメオ・スパイダーの歴史

「スパイダーこそはアルファロメオ(Spider is Alfa Romeo)」という30年ほど前に使われたキャッチコピーの通り、スパイダーは同ブランドを代表するモデル。その始祖と言えるのが1955年のジュリエッタ・スパイダー(写真)だ。架空のドゴール暗殺未遂事件を描いた映画「ジャッカルの日」(1973年)で、プロの暗殺者ジャッカルがさっそうと運転していた白のジュリエッタ・スパイダーに見覚えのある人も多いだろう。
(右写真:フィアット・オート・ジャパン)

続いてジュリアをベースとした新型スパイダー(1966年)がデビュー。「デュエット」を呼ばれた初期モデル(69年まで)のスタイルは、イタリア語でオッソ・ディ・セッピア、英語でカトルフィッシュ・ボーン(cuttlefish bone=コウイカの甲)、もしくはボートテールと呼ばれた美しいもの。ダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」(1968年)にも登場した。その後は69年にコーダ・トロンカ(coda=テールを、tronca=切り落とした)デザインとなり、さらに排気量やデザインを変えつつ、93年まで延々と生産された。前輪駆動の先代スパイダーが登場したのは95年(日本発売は96年)となる。

歴代スパイダーはすべてピニンファリーナがデザインし、生産も同社が行なっている。なお、スパイダーとは通例、2人乗りの軽快なイタリアン・オープンスポーツのこと。由来は諸説あるが、アルファロメオのプレス向け資料によると英語の「speeder(スピーダー)」から変化したもの、だそうだ。

価格帯&グレード展開

459万円から607万円で、Qトロニックは600万円

ラインナップは以下の通り。試乗したQトロニック仕様は3.2リッターV6(260ps)・4WDの最上級グレードのみとなる。他は2.2リッター(185ps)・左ハンドル・6MTのFF仕様だ。

■アルファ・スパイダー 2.2 JTS プログレッション
(6MT・左ハンドル・459万円)
■アルファ・スパイダー 2.2 JTS ディスティンクティブ
(6MT・左ハンドル・486万円)
■アルファ・スパイダー 3.2 JTS Q4 ディスティンクティブ
(6MT・左ハンドル・607万円)
アルファ・スパイダー 3.2 JTS Q4 Qトロニック ディスティンクティブ
6AT・右ハンドル・600万円) ★今回の試乗車

なお、4人乗りクーペのブレラは436万-584万円で、Qトロニックは580万円だ。

パッケージング&スタイル

言わばブレラ・スパイダー

全長4400×全幅1830×全高1395mmのボディサイズは、ベース車であるブレラとほぼ同じで、全長で-15mm、全高で+15mmしか違わない。2530mmのホイールベースもブレラと同一だ。デザインもフロント部分はほぼ同じで、テールランプやマフラーも共通と思われる。ジュリエッタ・スプリントに対するジュリエッタ・スパイダーという50年代の命名法なら、新型はさしずめブレラ・スパイダーだ。

もちろんデザインはブレラがジウジアーロ(イタルデザイン)、スパイダーは伝統通りピニンファリーナだ。幌以外にブレラと大きく違うのはリアフェンダー上部の膨らみで、これはピニンファリーナが昔から好む手法であり、スパイダーらしいロマンチックな形状だ。膨らみの下には「pininfarina」のバッジ。上に載る王冠マークはピニンファリーナのファクトリーで生産されたことの証となる。

幌の開閉は約30秒

定員が2人減った以外は、ブレラとほぼ共通のインテリア。電動シートの座面高があまり低くならず、座高が高い人だと傾斜の強いフロントウインドウ上縁が少し気になる。トピックはリアウインドウが先代スパイダーのビニール製から、ついにガラス製になったことか。電動ハードトップが主流になりつつある今、これは最低条件ではある。2層構造の幌はもちろん電動で、ロックまで自動のフルオート式だ。

幌の開閉は、停車してサイドブレーキを掛け、センターコンソールのボタンを押し続けて行なう。所要時間はカタログ値で30秒、実測で30秒弱だった。開閉動作が複雑なカバー付きタイプゆえ多少遅いのは仕方ないが、BMW・Z4(フルオート)やホンダS2000(ロック手動)の電動幌が10秒以下なのを知ってしまうと少々不満だ。

というのも「完全停止で30秒」では、信号待ちの間に操作を完了させるのが難しく、動作が完了できないのが心配で踏み切れないからだ。ポルシェ911カブリオレのように、走行中(50km/h以下)でも操作可能ならいいのだが。

2シーターオープンとして実用的

スパイダーのよき伝統が、背もたれの後ろに手回り品を置くスペースを備えるところ。先代のそれはきれいな半円形で、宝石箱のようにしゃれた作りだったが、新型のそれは少しそっけない作り。広さはゴルフバッグも置けそうなくらいで、左右にキー付きの小物入れも付いている。ボクスターやホンダS2000、新型マツダ・ロードスター(NC型)だと、室内には助手席以外にほとんど物が置けないものだ。

容量235リッターのトランクは開口部が狭く、底は井戸のように深い。二重底の一番下に小物を入れてしまったら、取り出すのはたいへんそうだ。絶対的な容量はZ4(260L)やボクスター(前130L+後130L)あたりと同程度で、現行ロードスター(150L)の約1.5倍。先代同様スペアタイヤはなく、パンク修理キットを搭載する。

基本性能&ドライブフィール

3.2リッターV6の4WDで、車重は1860kg

試乗した「3.2 JTS Q4 Q-トロニック」はその名の通り、ブレラや159と同じ3.2リッターのチェーン駆動・オールアルミ製の直噴V6(260ps、32.8kgm)を積み、「Q4」すなわちフルタイム4WDの「Qトロニック」=6ATとなる。

159やブレラと同様、V6エンジンはGMオペルの流れを汲むもので低回転で強力なトルクを発揮する。野太いサウンドこそスポーティだが、高回転で面白いエンジンではない。V6エンジン、4WDシステム、オープン化と重量増の3要素が揃ったおかげで、車重は1860kgとかなり重い。ちなみにブレラのQトロニックは1780kgなので、単純に言うとオープン化で約80kg増えた計算だ。

穏やか志向の6AT

なので4気筒ツインスパークの先代スパイダーみたいな軽快感を期待してはいけない。むしろ助手席の女性に心地よいスピード感だけを感じさせる、穏やかさな走りが新型スパイダーの(少なくとも3.2の)身上だ。

6ATのギアリングや変速プログラムもあくまで穏やか。というか、マニュアルモードで自動シフトアップするのはいいとして、シフトアップのタイミングが早く、逆にシフトダウンをなかなか受け付けてくれないから、エンジンブレーキは期待できない。スパイダーは過度なエンジンブレーキを抑制するMSR(Motor Schleppmoment Regelung:エンジンブレーキ制御機能)を備えており、それとも多少関係あるのかもしれない。

困ったのはシフトレバーをマニュアルモード(シーケンシャルモード)に入れないと、ステアリングスイッチが効かないこと。この手のものは毎回書いているように「Dモードでも、パドル/ステアリングスイッチを操作すれば即座にマニュアルモードに移行。しばらく放置すればDモードに自動復帰」というロジックが一番使いやすいし、またそれが主流なのだが…。ステアリングスイッチも小さ過ぎて、どうにも操作しにくい。一言で言って、積極的なマニュアルシフトを想定していない作りだ。

デートカーとしては○、スポーツカーとしては△

4輪に常時トルセンC型デフで駆動力を配分する正調フルタイム4WDゆえ、コーナリング時の安定感やトラクション性能は十二分だが、一方で無理をするとフロントが外に逃げそうな感覚が強く、あまり飛ばす気にはならない。前61:後39の重量配分や、43:57を基本として72:28-22:78の範囲で前後トルク配分が変化するセンターデフの特性もあるかもしれないが、根本的にはやはり車重と重心の高さが要因と思われる。また、絶対的な制動力が少々物足りないのも、これのせいと思われる。デートカーとしては○、スポーツカーとしては△といったところか。なお、4気筒で前輪のみを駆動する2.2 JTS(6MT)の車重は1650kgと3.2より210kg軽く、ブレラなどの経験からすればもっと軽快なハンドリングが楽しめるはずだ。

スパイダーというよりGTカー

高速道路を走ると、新型スパイダーが、少なくともこの3.2がグランドツーリング方向へ進化したことがよく分かる。大排気量エンジンと4WDシステム、十分な車重による安定感ある走りは豪華クルーザー的だ。120km/hあたりまでならフロントのウインドウスクリーンが低い割に、風の巻き込みも少ない。パワー感はやや希薄で、メーカー参考値の最高速こそ235km/h(6MT)だが、実際には160km/hあたりでもう十分という気になる。ちなみに2.2 JTS(185ps、23.4kgm)の最高速は217km/h(6MT)だ。

今回は2泊2日ほどで約220kmを試乗。車載燃費計は最後まで平均5km/Lを割り込んでしまった。3.2のV6、1860kg、4WD、AT、大径ワイドタイヤという条件を並べていけばあり得る数値か。高速走行の割合が増えれば、もう少し伸びそうだが。

ここがイイ

幅が若干広いだけで、ほぼコンパクトカーのサイズだから、日常的に使うのはとても楽。もちろん右ハンドル・Qトロニックなので、まったく日本車同様に使える。それでいながら、非日常感のあるスタイル。ブレラよりも、ポルシェよりも注目度は圧倒的に高い。特に荷室カバーと小さなロールバー、張り出したリアフェンダーが作り出す斜め後方・やや上からの眺めは、本当に美しい。

そして屋根を閉めてしまえばGT並みの快適性。当然リアウィンドウはガラスだ。オープンにしてもロールバーの間の透明なボードが効いていて、シートへの風の巻き込みはごくわずか。座面もあまり低くない分、小柄な人が乗っても埋もれた感じがない。助手席の女性にもきっと喜ばれるオープンカーだ。

ここがダメ

30秒というルーフの開閉時間。メタルトップならまだしも、ソフトトップとしては遅すぎる。出来ればZ4のようにシフトポジションを「D」にしたまま低速で、願わくばポルシェのように走行中(50km/h以下)に開閉できれば、サンルーフ感覚で気軽に開けられるし、雨が降ってきてもすぐに閉められる。カバー無しの開閉速度を優先したタイプも選べるように出来るといいのだが。

軽快に走るには重過ぎるボディ。V6エンジン、4WDシステム、ドイツ車並みの剛性を得るための補強を追加してゆくうちに雪だるま式に重くなった感あり。せめてあと200kg軽かったら、と思わずにはいられない。そしてスポーティな走りをまったく想定していないのでは、と思える6AT、特にそのマニュアルモード。ただ、おしゃれなGTカーと考えればこれらがダメではなくなるということは一言付け加えておきたい。

昨年末に159の2.2にはセレスピード仕様が出たが、スパイダーやブレラの2ペダル車は600万円もするこの3.2だけ。あとは全部左ハンドルのマニュアル車だ。クルマの性格を考えると「パワーも4WDも要らないから、400万円台で買えるAT車が欲しい」という人が多いはず。

総合評価

かつてのFRスパイダーとはまったく価値観の違うクルマ。ゆえにクルマに何を求めるかで評価は大きく異なるだろう。実際、スポーツドライビングを求めるなら、何もこのクルマに乗る必要はない。スポーツ志向のクルマはいくらでもあるし、当然ながらより剛性感の高いクーペのブレラに乗ればいい(スパイダーのボディ剛性も十分に高いが)。

それより、この「異様なまでに」美しいデザインを愛で、「とてつもなく」風を巻き込まない(オープン120km/h走行も可能)コクピットで空を眺め、今や「ごく普通の」トルコンATに身をゆだねて、四駆で右ハンドルという安全安楽仕様でデートにいそしむ人生お楽しみ型「ラテンノリ」グッズであることを認識すべきだ。

となれば、マニュアルモードの問題も幌の開閉速度も「気にしない」ことだ。細かなことはいわずに、遊び道具としてのクルマを素直に楽しみたい。人目を引くという点では下手な1000万円カー以上だし、使い勝手の面でもどうしても不満な点はない。ハンドリングは良く言えば重厚、乗り心地も快適な部類に入る。インテリアも十分高級だし、何よりスタイリングが素晴らしい。「なんて美しい」とウットリできるクルマは最近では滅多にないのだから。

それにしても、なぜこう美しいクルマをアルファは作れるのだろう。日本車にはまったくといっていいほど美しさを誇るクルマがない。クルマを所望するとき、スタイリングが決め手になるのは昔から変わっていないにもかかわらず、居住性だとか空力だとかを気にした日本車の機能的なデザインワークは、美しさの追求をまったく忘れていると思う。先日、某誌の付録の国産車オールカタログを眺めていて、美しいクルマが皆無なのに愕然としてしまった。かつての日本車(いわゆる旧車)には美しいクルマがいくつも存在していたと思うのだが。MR-Sが生産中止になるように、効率を追求していけば美しいクルマなど何の価値もないのかもしれないが、走りや居住性すら捨て去って、ひたすら美しさをを追うクルマが日本でも一台くらいあってもいい、と強く思った。下降する若者の自動車への興味は、そんなクルマの出現とその話題性で復興のきっかけがつかめるのではないか。

とはいえそんな近頃の日本車のデザインも、中国ではコピーされる対象という。どうせコピーするならアルファスパイダーをやれよ、といいたくなるが、中国と日本の美的メンタリティはやはりどこか共通するのだろうか。アジアンビューティー!? いや単にイタ車より個性希薄でコピーしやすいだけなのかもしれない。

いずれにしてもQトロニックの出来には不満がない。アイシン製と聞けばさもありなんではあるが、イタ車に気軽に乗れるのはひとまず歓迎すべきだ。これによりイタ車得意のセミオートマの存在意義はとても希薄になっている。古典的なMTは今もマニアックに人気があるし、トルコンがいやなら、VWのDSGのようなものも登場している。トルコンATでもマニュアルモード付の多段タイプなら、すでに十分楽しめるものになっている。Qトロニックのマニュアルモードがあまり良くないのは、意図的に既存のセレスピードの延命を図っているためかもしれない。フィアットは時代の、あるいはマーケットの要請で嫌々ながら載せたQトロニック(トルコンAT)ではなく、セミオートマこそアルファの、あるいはイタ車のアイデンティティと今も思っているのではないか。

普通のATに慣れてしまった極東のイタ車好きにとって、Qトロニックは朗報以外の何物でもない。これでチョイ悪オヤジたちも真剣にアルファを手に入れようとするだろう。実際この美しさ(と快適さ)が600万円で手にはいるなら、例えば同価格帯のボクスターなど相当色あせてみえる。今後イタ車にどんどんトルコンATが載るようになるとドイツ車優位の輸入車業界地図が若干塗り変わるかもしれない。アルファのQトロニック搭載はそれくらい、大きな出来事だと思う。

試乗車スペック
アルファロメオ アルファ スパイダー 3.2 JTS Q4 Qトロニック ディスティンクティブ
(3.2L・6AT・4WD・600万円)

●形式:GH-93932S ●全長4400mm×全幅1830mm×全高1395mm ●ホイールベース:2530mm●車重(車検証記載値):1860kg(1130+730)●乗車定員:2 名●エンジン型式:939A ● 3195cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 260ps(191kW)/6300rpm、32.8 kg-m (322Nm)/ 4500rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/69 L ●10・15モード燃費:-km/L ●駆動方式:4輪駆動(フルタイム4WD) ●タイヤ:235/45R18(Bridgestone Potenza RE050A ) ●試乗車価格:-円( 含むオプション:-) ●試乗距離:約220km ●試乗日:2007年4月 ●車両協力:アルファロメオ 天白

アルファ ロメオ公式サイトhttp://www.alfaromeo-jp.com/

 
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