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トヨタ アリオン A18 “S パッケージ”新車試乗記(第469回)

Toyota Allion A18 “S Package”

(1.8L・CVT・213万1500円)

2代目プレミオ/アリオンの
「All in one」ことAllionに乗って
その進化の真意を探る!

2007年07月07日

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キャラクター&開発コンセプト

「5ナンバーセダンの完成形」

2007年6月4日に発売された新型プレミオ/アリオンは、かつてのコロナ/カリーナの系譜にある上級コンパクトセダン。プレミオ/アリオンとしては2代目にあたる。

約5年半振りのモデルチェンジだが、シャシー自体は従来型の改良版。ボディサイズも5ナンバー枠をキープしている。コンセプトはずばり「5ナンバーセダンの完成形」だ。

心臓部はカローラ/オーリスと同じ

スタイリングはプレミオでは高級感を、アリオンではスポーティさを追求。エンジンは1.5リッター(1NZ-FE)および1.8リッター(2ZR-FE)の2種類で、従来の4ATから全車CVT(無段変速機)に刷新された。このパワートレインは現行カローラやオーリスとほぼ同じものとなる。07年冬には2リッターエンジンが追加される予定だ。おそらくは新型ヴォクシー/ノアで投入された新しい「3ZR」系だろう。

生産は堤工場(豊田市)で、月間販売目標はプレミオ/アリオン各3000台ずつの計6000台。CMタレントはプレミオに樋口可南子、アリオンに小林薫と「らしい」ところが起用されている。

価格帯&グレード展開

1.5と1.8で、170万円台から

今回試乗したアリオンは、1.8リッターの「A18」と1.5リッターの「A15」の2段構成。「A18」のみに、16インチアルミホイール+タイヤ、ディスチャージヘッドランプ、エアロパーツ、本革ステアリングなどの付いた「Sパッケージ」が、そして「A18」と「A15」両方に、シート表皮など内装の仕上げがいい「Gパッケージ」が用意される。

アリオンの価格は「A15」の174万3000円から、「A18 Sパッケージ」の213万1500円(今回の試乗車)まで。プレミオ(175万3500円~223万6500円)より少し安いが、これはプレミオの「EXパッケージ」が電動シートを備えるからだ。1.8リッター車には4WD(約21万円高)の設定がある。

パッケージング&スタイル

基本そのまま、デザインをアップデート

全長4565×全幅1695×全高1475mmは先代とほぼ変わらず。元を辿れば先代カローラ用から発展したシャシー(ホイールベースは新旧カローラ+100mmの2700mm)も同じだ。この辺の寸法は全長4.5メートル前後×全幅1.7メートル未満の3ボックス車である以上、変えようがないところか。

ミニクラウン(ロイヤル)的なプレミオに対して、アリオンはグリルと横長のライトがスポーティといえばスポーティ。ちょっとホンダ・アコードに似ている。外板はものすごく複雑な曲面になっていて、デザイナーの苦労がしのばれるが、5ナンバー枠のせいか、いわゆる「カッコよく見える角度」が狭い印象を受けた。

つや消しウッド調パネルを採用

ドア内側をえぐるなどして、5ナンバー枠のまま室内幅を+55mm拡大したインテリア。曲線を描くドアインナーハンドルや艶消しウッド調パネルなどデザインは凝っているが、全体的には日本の平均的住宅の居間のような、和める雰囲気だ。

トヨタ車では珍しい(初の試みか?)つや消しウッド調パネルは、木材の導管(水が通る細い管)の凹凸まで再現したもの。「ピカピカのウッドパネルこそ高級」という目で見ると面食らうかもしれないが、かなり本木っぽい。ただし運転席パワーウインドウスイッチのパネルに「ALL AUTO」と無造作にプリントしたのはどうかと思う。

シートの作りも独特だ。トヨタ車らしからぬ硬めのクッションでスポーティかと思いきや、ステアリングのテレスコ(伸縮調整)をいじってみても、体がいま一つ落ち着かない。おそらくほんのちょっとしたことなのだろうが、複数のデイズスタッフにも今ひとつ不評だった。

スタートボタンがステアリング右配置に回帰

意外だったのは、トヨタ新型車の象徴である例のスタートボタンがここ数年の流儀であるステアリング左ではなく、右に戻ったことだ。スタートボタンを最初に付けた2代目プリウスからゼロクラウン系、マークX、2代目ヴィッツまでは全て右配置だったが、それが左になったのは05年夏のレクサスGS/ISから。以後、発売順にラクティス、RAV4、エスティマ、カムリ、レクサスLS、カローラ、オーリス、ブレードまで、トヨタ/レクサス両者で左配置がずっと続いていた。

それをあえて今回「右に戻した」理由について、開発スタッフは「この方(右配置の方)が使いやすいし、国内専用車なので」と言っていたが、要するに「やっぱり左手でスタート操作はやりにくかった」ということだろう。となると今後は、左ハンドル仕様のあるクルマは左、国内専用車は右となるのか。それともレクサス車は左、トヨタ車は右となるのか。あるいは国内で売るクルマはすべて右となるのか。細かい話だが、ちょっと気になる。

「G-BOOK mX」を採用

装備面で新しいのはG-BOOKの最新バージョン「G-BOOK mX」だ。HDDナビの地図を最新情報に更新するサービス「マップオンデマンド」が加わり、これでもう開通したはずの有料道路が表示されない、ということも無くなるはず。また、他のG-BOOK mX搭載車からの情報をシェアし、渋滞情報の精度を上げるプローブ機能も遅ればせながら加わった。ユニークなのは3車線や4車線ある道路のどこを走っているかまで特定する位置情報表示の高精度化で、これはバックカメラで路面の「車線」を画像認識することで行なっている。

実用的になったリクライニング機構

新型で最も進化を遂げた部分が、このリアシートかもしれない。リクライニング角度は先代の1段階・20度から、7段階(2度刻み)・最大14度となり、しかも背中を浮かすと背もたれが定位置まで戻るスプリングがついて、「使えるリクライニング」となった。クラウン並みの快適性を求めない限り、ゲストからの不満は出ないだろう。また、前席背もたれを後ろに水平に倒して仮眠がとれるのも、伝統的な良さといえそう。

大人が寝れる?広大なトランクスルー

後席のダブルフォールディング機能は今回もあり、シートバックを倒して広大なトランクスルーが可能な点も、先代から継承。新型ではリアトレイを自立式とし、取り外す手間を不要とするなど、しっかり改良されている。何よりもトランクスルー開口部の大きさに注目されたい。

この時の最大室内長は1700mmということで、実際に身長170cm以下の大人なら足を伸ばして寝られるほど。トランク単体の容量も491Lと大型セダン並みで、小型セダンとしては最も積載性の高いモデルの1つだろう。多くの機能を詰め込んだ「All in one」(転じてAllion)の」精神は生きている。

基本性能&ドライブフィール

新世代エンジンとCVTのパワートレイン

試乗したのは1.8リッターの「A18」で、標準より1インチ大径の195/55R16タイヤを履く「Sパッケージ」仕様。走りに関する部分での違いは、それくらいのようだ。

新世代1.8リッターエンジン(136ps、17.8kgm)とCVT、電動パワステなどは、カローラアクシオやオーリスのものと基本的に同じ。そうしたことよりまず印象的なのが、今や貴重な5ナンバー幅のおかげで、道が狭いところでもストレスがないこと。それにしても今年(07年)上半期のモーターデイズ試乗記で乗った計23台中、数えてみたら5ナンバー車はたったの3台。しかもそのうちの2台は輸入車の新型MINIで、国産はスイフトだけだった。少し上級車になると国産車でも軒並み3ナンバー、というのが昨今の新型車事情ゆえ、「上級セダンなのにスリム」という感覚が妙に新鮮だ。

ボディの剛性感は十分だが

同じ5ナンバーのカローラアクシオに比べると、やはりアリオンにはワンランク上の上質感としっかり感がある、と言いたいが、これがカローラアクシオのラグゼール(同じ1.8リッターで199万5000円~)あたりが相手だと、その差はかなり微妙かも。価格差も少ないから、このあたりは主にホイールベース100mm(=後席空間)の差と考えた方がいいかもしれない。日常域での差は、条件を揃えて直接比べないと分からないと思う。

ワインディングをハイペースで飛ばした時など、路面から大きな入力が入った時の受け応えはしっかりしている。1.8リッターの「Sパッケージ」でも車高はノーマルと同じ、つまり4WD仕様のように腰高だが、それもサスペンションストロークを優先したがゆえだろう。例のトランクスルーのため、プレミオ/アリオンのリア構造は開口部だらけだが、走行中はほとんど意識しなかった。

少し気になったのは、日常域の乗り心地にしっとり感や落ち着きがいま一つないこと。舗装の荒れたところでは小刻みな上下動があり、時に強めのハーシュネス(突き上げ)が入ることもある。路面の平滑な場所でも接地感が薄いため、十分な高速安定性があるにも関わらずいわゆるどっしり感が伝わってこない。サスペンションの初期の動きが渋いような、そんな感じがあった。

実燃費は9km/L台

今回は高速道路や一般道をまじえながら、約300kmを走行。車載燃費計の平均表示は9.4km/Lから8.8km/Lまで上下しつつ、最終的には9.1km/Lに収まった。同じパワートレイン(1.8リッター+CVT)のオーリスやカローラアクシオ・ラグゼール試乗時の数字と比べても、割と現実的な数値と思われる。ちなみに10・15モード燃費は、アリオン(1.8リッター・FF)が17.0km/L、カローラアクシオ ラグゼールが17.2km/L、オーリス 180G “Sパッケージ”が15.6km/Lだ。

ここがイイ

先代同様のコンセプトを維持したこと。ユーザーになる中高年は長年セダンに乗っているはずだが、たとえば前席フルフラットシートあたりは、かつて室内でまったりと時間を過ごす習慣のあった世代にとって今だ魅力的で、ほとんどマストのアイテムとも言える。もちろん5ナンバーサイズや車両価格を含めたほどよい経済性は、大きな変化を求めない人の代替えにはもってこいだろう。

クルマ好きに訴えかける魅力はないが、とにかく完成度の高いパワートレイン。旧世代のトヨタエンジン+4AT時代とは雲泥の仕上がりで、これだけで旧カリーナ/コロナ/カローラ/スプリンター等々から代替する価値がある。いまだに乗られているクレスタ3兄弟あたりからの代替えも十分見込めるはずだ。

ステアリング・スイッチは、左にオーディオ、右にエアコン(新設定)と増えて使い勝手がいい。特にオーディオメニュー長押しで電源オフにできるのは便利だった。エアコンが最近の家庭用エアコン同様、高めの設定でよく冷える。外気温28度の場合だったら、25度に設定しておけばいい。今までは、たぶん23度とかにしていたはずだ。これはレクサスLSでもそうだったので、今後エアコンの主流になるだろう。ETCがコンソールセンターにあるのは便利だったし、パワーウインドウすべてがオートなのも、夏場の一斉換気に便利だった。

ここがダメ

少なくとも試乗した1.8リッターのSパッケージ仕様は、日常域の走りの質感がいま一つ。このクラスならもっと「しっかり」ならぬ「しっとり」感が欲しい。全体に軽い印象(特にステアリングが軽い)は意図的に作られたものと思うが、それがずっと続く。Sパッケージゆえ、よりそう感じるのかもしれないが、たぶん、チョイ乗り中心で使われることが多いことや、女性ユーザーを増やしたい、というあたりでこうした味付けになったのだろう。ステアリングの握りが細めなのも、女性を意識してか。

過剰とも言えるデザインは、内外装すべてにおよぶ。それでも数値の限界、実効サイズ拡大といった制約があるから、最終的には単純な「かっこいい」とか「きれい」に結実していない。たとえば外観は先代の方が普通にプレーンで美しいと思う。複雑なラインを駆使した今回のモデルは、5ナンバーで先代とは明らかに違う形を作れという命題に対する労作だとは思うが、特にアリオンは面に凹凸があってそれでいて幅が広くないから、見る角度を選んでしまう。

インテリアも、浮いたようなナビパネルは労作だと思うし、優美な曲線を描くドアインナーハンドルなど全体に新しい感じは確かにあるのだが、保守的な部類のクルマとしては、かなり冒険してしまったとも思う。立体的な樹脂パネル、ルームランプにもマス目を切るなど細部にわたってデザインは凝っているが、ゴテゴテした感じの方が強い。

運転席シートはフロント側が下がらず(角度固定のまま上下する)、いつものトヨタ車の運転姿勢がとれない。チルトとテレスコピックがあるのはいいが、このシートはちょっと疑問。全車標準のインテリジェントキーは確かに便利だが、後席の荷物をリアドアから出し、閉めてロックしようとすると、フロントドアの黒いロックボタンを押しに、少し戻らなければいけない。こうなるとリアドアにもロックボタンがほしくなる。昔のようにリモコンキーを手に持っているなら単にリモコンのボタンを押せばいいのだが、バッグの中からインテリジェントキーを出してボタンを押すのは面倒だ。

総合評価

これだけミニバンが増えても、そしてまたSUVがブームとなっても、かたくなにセダンにこだわる人がいる。もちろんその中でそれなりにお金や、乗るにふさわしい社会的ポジションがある人は、レクサスのようないわゆるプレミアムカーへいくのだが、そうではない大多数の「セダンがいい」「5ナンバーで経済的なクルマがいい」、それでいて「カローラでは社会的スタンスが許さない」という人の落としどころがアリオン(とプレミオ)ということになる。

昔のトヨタ車ヒエラルキーでいうと、部長がマークII、ヒラがカローラなら、その間を埋めるのが係長のクルマ(コロナ/カリーナ)だ。このヒエラルキーは、特にアリオンを買うであろう50代以降のサラリーマンの(たとえばトヨタ系の企業などの)間では、実は今でもけっこう生きている。それがまたアリオンの販売を支えていることは想像に難くない。クルマの良さとかより、セダンが選択肢で、セダンなら社会的ポジションからいってアリオン、ほかにこのクラスでは比較すべきクルマもないし、ということだ。旧モデルでも最後まで月間5000台を売っていたのは、そんな事情もあると思う。

では先代に比べて今回のアリオンはどうなのか。もちろん新しい方がいい、と言い切れないのが、セダンという保守的な形で、しかも5ナンバー枠など様々な制約の中で作られた商品の辛さ。室内はずいぶん広くなっているようにアピールされるが、前後席間の広さなどは変わっていないし、内装にしても曲線を使いまくったデザインやウッド調パネルの質感といった目新しさはあるものの、全体的な質感や使い勝手に大きな変化はない。ドライバーズシートの前部が下がらない、ナビ画面がやや下げられている(最近のトヨタ流で、エアコン吹き出し口の方が上にある)など、進化に疑問を感じる部分もある。

直噴ガソリンエンジンの初期のものであるD4と優秀な4ATの組み合わせが消え去り、可変バルタイとCVTの採用といった技術的進化(というか、燃費を稼ぐための方法の変更)があったことはまさにフルチェンジの所以だが、それとて、このクルマの多くのユーザーにはあまり大きな意味を持たない。それによって商品を選ぶわけではなく、買ってみたらこうなっていたというケースの方が多いだろう。

ところで、トヨタ首脳は新車が売れない現状に関して「原因は我々が数年前に、より新しいと思われる商品を多く出したので、ユーザーはそれがまだ古くなった気がしない。また、所得が伸びない中で自己防衛として買い換えをしない。さらに昨年は新型車の投入が少なかった」とアリオンの発表会で述べている。そこで今年は、見て比べて買ってもらう市場創造型の新車を投入していくという。そういうことで登場した新しいアリオンは、確かに見た目では新しくなった感がある。しかし実はD4の廃止など、動力部分の変更こそフルチェンジの核心であるように思われる。

いずれにせよ、今回は進化のためのモデルチェンジではなく、新しさをアピールするためのモデルチェンジだ。特に3割いるという女性ユーザー(中高年の女性)にアピールするための。さらにいえば新型登場をPRして巷に今だ数多く走っている古いセダンからの買い換えを促すことが目的だろう。トヨタが分析する日本の新車セダン市場は全体の15%(軽を除く)で、そのうち5%がミディアムセダン。つまり月1万5000台が超安定市場になっているという。ここは見方によっては放っておいても売れるところ。となれば、ちまたを走る古いセダンの代替えこそ、この市場を拡大する手段のはず。その戦略車がアリオンということになる。あとはこの見た目をユーザーがどう評価するかだ、と結ぶのはたやすいが、たぶんそこまでこのタイプのクルマのユーザーはシビアではないと思うので、目標のプレミア、アリオン合わせて月販6000台はかたいだろう。

試乗車スペック
トヨタ アリオン A18 “S パッケージ”
(1.8L・CVT・213万1500円)

●形式:DBA-ZRT260-CEXEK(S)●全長4565mm×全幅1695mm×全高1475mm ●ホイールベース:2700mm●車重(車検証記載値):1220kg(760+460)●乗車定員:5名●エンジン型式:2ZR-FE ● 1797cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 136 ps(100kW)/ 6000rpm、17.8 kg-m (175 Nm)/ 4400 rpm ●カム駆動:チェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/60 L ●10・15モード燃費:17.0 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:195/55R16(Bridgestone Turanza ER300 ) ●試乗車価格:245万8050円 ( 含むオプション:SRSサイド&カーテンエアバッグ 6万3000円、HDDナビゲーションシステム&バックガイドモニター 24万8850円、ETCユニット 1万4700円 ) ●試乗距離:300km ●試乗日:2007年6月

トヨタ公式サイト>アリオンhttp://toyota.jp/allion/

 
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