キャラクター&開発コンセプト
グランビア系に代わる高級ミニバン
アルファードは従来の「グランビア」、「グランドハイエース」、「レジアス」、「ツーリングハイエース」を一挙に統合する高級ミニバン。基本的に同じ成り立ちのクルマを違う名前で販売していたわけでトヨタ関係者もさすがに混乱していたらしい。また、1997年登場の日産エルグランドが乗用オンリーの高級感で大ヒットし、販売台数ではエルグランドの1車種に対してグランビア4兄弟でほぼイーブンと、トヨタからすれば不満が残る状況だった。
車台はエスティマと共有
というわけで名前もパッケージングも一新したのがアルファードだ。FRシャシーを捨て、前輪駆動ベースの車台をエスティマと共有。「最上級ミニバン」の割に手持ちの素材でまとめた感はあるが、「名を捨てて実を取った」とも言える。
車名のアルファードは「星座の中で最も明るい星を意味するギリシャ語のα(alpha)に由来する造語」とのこと。トヨペット店向けの「G」、ビスタ店向けの「V」があるが、違いはフロントグリルの仕上げやバッジだけだ。目標台数は合わせて月間4000台。すでに発売から2週間で目標台数の3倍となる約1万2000台を受注したという。
価格帯&グレード展開
300万円台が中心。2.4の4気筒モデルも選べる
価格は2.4リッター車が265万~318万円。3.0リッター車が279万~399万円。4WDはプラス24万円。いずれも上位グレードで7人乗りと8人乗りが選べる。3.0リッター車に限れば、3.5リッターのエルグランド(289万~418万円)と価格的にはほぼ互角。車台とパワートレインが同じでもエスティマ(229.5万~337.5万円)とは完全にクラス違いだ。
パッケージング&スタイル
エスティマとの違いは天井の高さ
試乗車のボディサイズ(カッコ内はエスティマ比)は全長4800(+50)×全幅1805(+15)×全高1935(+165)mm。ホイールベースは2900mm(同じ)。エスティマと差が大きいのは背の高さで、スタイリッシュなエスティマに対してアルファードは「国産ミニバン最大級」の室内の広さが圧倒的。天井高は125mmも高い。
より乗用車ライクに
運転席ヒップポイントは885mmとエスティマより125mmも高いのは見晴らしのためだが、これでも乗降性に配慮してグランビアより60mm低いという。しかし両手がふさがっているとこの高さでは運転席に乗り込めない(2列目シートは開口部が広いため可能)。875mmのエルグランドもこの点は同じだ。
前席中央に張り出したセンターコンソール部分により、普通のシート位置だとウォークスルーしにくい。せっかくFF化したにもかかわらずここは残念。その代わりにゲート式のシフトレバーは操作しやすい。より、乗用車ライクにしてあるわけだ。
高級旅館風のインテリア
インテリアは木目調パネルの豪華センターコンソールがハイライト。モダンなエルグランドに対して、木目(調)、革、メッキと言った定番素材で勝負する。木目調パネルはフェイクに見えないように複雑な造形を避け、クロムメッキで縁取るなど工夫を凝らした。そのかいあって立派に見える。
シートは8人乗りと7人乗りがある。当然フルフラットや対面モードなど様々なシートアレンジが可能。2列目/3列目のスライド機構もエルグランドとおおむね同じだ。
移動ミニ・シアター
試乗車はオプションで「シアターサウンドシステム」を装備。前席6.5型モニター、後席7型モニターと共に、DVDビデオを5.1チャンネル、10スピーカーで再生する。サウンドに関してはまさに「移動映画館」で、dtsシステムを備えた最新映画館のような臨場感がある。残念なのはモニターの小ささで、前席は6.5インチ、後席は7インチ。リアに関しては「もう少し大型だったら」と思った。
その他、新機軸としては電動バックドアを設定。また、アルファードもエルグランド同様に左側に電動スライドドアを採用。右側が手動なのは安全面(コスト面?)からだろうが、試乗中、何度も不便を感じた。両方電動でもいいんじゃない?
基本性能&ドライブフィール
穏やかなアルファード
試乗車はアルファードGの最上級グレード「3.0MZ」“Gエディション”4WD仕様(423万円)。これにメーカーオプションのDVDナビ、レーンモニタリングシステム、レーダークルーズコントロールを備えて、車両価格はしめて486万8000円だ。
トヨタ車定番の3.0リッターV6「1MZ-FE」(220ps、31.0kg-m)の走りはかなり穏やか。もちろんその気になれば十分に速く、Dモード全開では1速で60km/h、2速では110km/hまでスムーズに加速する。他のトヨタ車同様、勝手にシフトアップしないゲート式マニュアルモードはなかなか扱いやすい。
安定した走り
100km/h巡航時の回転数は約2500rpm。5ATのエルグランドに比べると400rpmほど高めだが、静粛性は十分。現実的なスピード域で4ATが不利という印象は受けなかった。追い越し加速も十分で、100km/hからスロットル全開にすればショック皆無でキックダウン、気持ちよく加速体制に移る。1名乗車ならリミッターを効かせることは難しくなく、直進性も問題ない。
乗り心地は悪くないが、肝心な2列目、3列目では試せていない。試乗車がH∞TEMS付きだったこともあり、クルマの性格の割に安定した姿勢が印象的。VSC&TRCを装備する4WDだったこともあり、ハンドリングは基本的に安定サイドで、意図的に無理をしても不安定な挙動は出なかった。
今回は高速道路を主体に全開加速や渋滞走行、撮影などをしながらおよそ160kmを走行。ハイオク29リッターを消費し、参考値ながら燃費は約5.5km/Lだった。10・15モードは8.6km/Lとある。
ここがイイ
トヨタらしい満願全席ミニバン。破綻のない走り(走りの刺激は少ないが、安定感ではエルグランドより上だろう)、どのメーカーより一歩先をいく室内の高品質感(本文では和風と書いたが、高級ホテルがイメージされている)、充実の装備(フロント左右とリアが映るカメラはこのクルマには必需品)、広い室内(運転席は商用ベースのグランビアより広くなってやっとまともな空間になった)。運転席(運転していてもバス運転手の気分にならずにすむ)を含め、どの席に座った人もその席なりの満足感に満たされるはず(特等席は2列目シートで、オットマン付)。ゆったりといい音でDVDなどを堪能していると、はっきりいってセルシオのリアシートには座りたくなくなる。対価格比でいってもコストパフォーマンスは超高い。
電動リアドアも便利だが、何より、3列目シートが左右はね上げ式になったことがいい。これで奥行き170cmほどのフラット荷室ができるため、マットを敷けば快眠できる。
ここがダメ
スタイリングは残念ながらいいとは言えない。エスティマ系の未来感をシャープなプレスラインでワンボックス形状のボディに与えたということなのだろうが、かえってウルサイ感じになってしまった。さらに、営業的には大型メッキグリルをつけることが命題であるため、ますます泥沼化。タイヤの張り出し感もなく、全てが中途半端な感じとなってしまったと思う。このクラスはムリをせず、ごくプレーンに作った方がいいだろう。そうした伝統的ミニバンルックに近いものを欲する人々がこのクラスの購入層のハズだ。
総合評価
トヨタはミニバン確信層が存在するとして、アルファードを手がけたという。どんなクルマよりミニバンが一番、すべてにおいて勝っていると考える人達だ。実際のところ、同じサイズで考えれば、ミニバンに勝るパッケージングはない。アルファードもアリスト程度の縦横サイズだが、その使い勝手はアリストの比ではない。子供がいようといまいと「自分のクルマにするならミニバン」という人は確実にいる(デイズの水野もそういう一人)。そういう人達が、もっとも高級で、もっとも広くて、もっとも安全で、もっとも快適なクルマを求めると、グランビアはどうにも許し難いクルマだったはずだ。しかしこのアルファードによって、ついに全ての希望は叶った。ほぼ何一つ不満がない、究極の(日本の)ミニバンができあがった、といえる。
一番評価したいポイントは必要十分のパワーながら燃費が許容範囲キリギリであることだろう。ディーゼルエンジンの搭載をやめたことからFF化が可能となったわけだが、その代わり燃料代の負担がユーザーには重くのしかかる。しかしそれもリッター5km走るのであれば、あきらめもつくというものだ。FF化による軽量化が大きく効いている。
もう一つ、標準グレードの中に2列目助手席側シートのサイドリフトアップ仕様があることも評価したいところだ。老人が増える今後の社会で、こうした装備はミニバンならではのものとして障害者向け車両以外にもどんどん標準化されるべきだろう。それこそがミニバンの存在価値といえる。
後部座席では各ピラー上部にLEDによる間接照明があり、夜間など実に映画館的な空間が演出されている。これで20インチくらいのディスプレイがあれば完全に映画館なのだが、いかんせん7インチでは悲しすぎる。映像入力端子と100V電源はあるので、大型液晶ディスプレイ用の出力端子をぜひ装備して欲しいところだ。
ともあれ、最終的にはこのクラスも、スタイルこそが販売の要となる。その意味では今回もエルグランドの後塵を拝している感は否めない。「スマートさより無骨さ」こそが古今東西、高級車の要件であるはず。そしてセルシオのデザインはかなりそれを意識しているはずだ。その意味ではミニバン最高峰のアルファードも、古典的な無骨さを外観にもっと打ち出して欲しかったと思う。
公式サイトhttp://toyota.jp

