キャラクター&開発コンセプト
5ATの採用や「補助確認装置」の追加
アルファードはトヨタの最高級ミニバンとして2002年に登場。室内の広さや豪華な仕立てで人気を集め、販売ランキングはこの3年で9~10位をキープ。実績も月平均でおおよそ7000台と当初の目標4000台の1.7倍以上をキープしている。
今回試乗したのは05年4月にマイナーチェンジしたモデル。メカ部分で目立つ変更は3.0リッター車に5ATを採用したこと(従来は4AT)。目に見える部分ではフロントグリルや灯火類のデザイン、ボディカラー、インテリア素材、メーターデザインが変更された。さらにG-BOOKの高機能化(G-BOOK ALPHA対応)やスマートキー、AFSも設定追加。また、フロントフェンダーにはSUVのような補助確認装置(サイドアンダーミラー)が追加された。販売目標は7000台に上方修正されている。
価格帯&グレード展開
おおよそ300万円台から400万円台
価格は2.4リッター車が283万5000円~315万円、3.0リッター車が310万8000円~432万6000円。4WDは25万2000円高。いずれも7人もしくは8人乗りが選べる。主力はおおよそ300万円から400万円だが、試乗車のような最上級車フルオプション仕様は500万円超とレクサス級だ。
パッケージング&スタイル
AFSとサイドアンダーミラーを追加
試乗車のサイズは全長4840mm×全幅1805mm×全高1935mm。バンパー形状の差で40mm長くなったが、印象に大差はない。上級グレードで標準装備となったAFS付きのディスチャージドヘッドライトが目立つくらいだ(マルチリフレクターからプロジェクターに変わっている)。
サイドアンダーミラーは必要?
もっと目立つのがフロントフェンダーに生えたサイドアンダーミラーだ。実は新型車なら05年1月1日以降、継続生産車なら07年1月1日以降の生産車で、規定の視認性を確保していないものは、輸入車も含めて対策すべし、という保安基準が2年前に導入されている。アルファードの他には7月に小改良されたライトエース/タウンエースバンにもこのサイドアンダーミラーが追加されている。
国土交通省>道路運送車両の保安基準等の一部改正について
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/09/090707_.html#1
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/09/090707/090707.pdf
相変わらず豪華
相変わらず豪華に見えるインテリア。メッキやウッド調パネル、樹脂の質感など日本人の心をくすぐる高級感がある。マイナーチェンジでウッド調が濃い茶色から明るいバーズアイメープル風になった。それ以外はオプティトロンメーターの採用、スイッチの数が増えたことくらいで大きな変化はない。5AT化でジグザグゲートが1段増えた。
快適なセカンドシート
試乗車は2列目キャプテンシートの7人乗り。広さや高級感は言うまでもなく十分。乗降時のステップは確かに高めだが、この見晴らしの良さや広さがあれば許容範囲か。ただ、年配者がひんぱんに乗り降りするのはおっくうかも。乗ったら降りたくなくなるほど快適であればよいが。スライドドアはもちろん両側電動。3年前はこれが当然ではなく、右側は手動だった。
ミニバンのシートベルト
広さもサイズも十分なサードシート。窓の見晴らしもよく、インテリア内張りも前席と同じ作りで気分がいい。乗り降りしやすいし、キャプテンシートならセンターウォークスルーで出入り可能だ。
いちおう3人掛けシートだが、中央は当然座り心地が悪いし、ヘッドレストもない。ついでに言えばサード中央のシートベルトはELRなしの2点式だ。衝突安全の基本がシートベルトであることや、車外放出による死傷事故の多さを考えると、後席シートベルトの着用を促す方策(欧州車のような後席用のシートベルト警告音や義務化)も検討すべきだ。サイドアンダーミラーが義務化される一方で、この点は出遅れている。
基本性能&ドライブフィール
5ATの採用でギア比を超ワイド化
試乗車は3.0リッター4WDの豪華版。車重2030kgは軽くないが、V6・3.0リッター「1MZ-FE」(220ps、31.0kg-m)は十分に力強い。マイナーチェンジで4ATから5ATに格上げされ、ギア比が40%以上ワイドになったことが大きい。出足はより俊敏に、高速巡航はより静かに、変速はより滑らかになった。10・15モード燃費の数字は特に変わってはない。
乗り心地の点でもかなり熟成が進んだ。初期モデルはフロントを軸にフワフワ上下するピッチングが若干あって、ボディの後ろに行くに従って揺すられ感があった。新型ではそれがかなり抑え込まれ、TEMSをスポーツモードにすれば心持ちシャキッとした走りに振ることもできる。ステアリングのレスポンスがミニバン的なことを除けば、洗練具合はちょっとした高級セダンに負けないくらいだ。
「G-BOOK ALPHA」を搭載
試乗車にはAFSだけでなく、レーンモニタリングシステム(バックモニターで車線を読み取り、外れかかるとブザーで警告)やレーダークルーズコントロールなど、一連の先端装備も備えており、ロングドライブや高速巡航は素晴らしく快適だ。
また、今回のアルファードはG-BOOKの進化版「G-BOOK ALPHA」を搭載している。これは、分かりにくかったG-BOOKをシンプルに整理し直し、個々の機能を際だたせながら新たなテクノロジーを注いだもので、初年度無料(もちろん一部有料のサービスもあるが、大半が無料)で使えるものだ。詳しくは総合評価の欄で。
ここがイイ
ミニバンのセルシオといった雰囲気は、世界のどこにも存在していないもの。高級ミニバンの分野ではメルセデスもまったく太刀打ちできない状況なわけで、レクサスブランドにしたら、世界の憧れのクルマになること必至だと思う。という意味では「ここがダメ」でもある。
5ATの採用、足回りのチューンでここまで走りが良くなったこと。ドロンとした腰高な走りがシャキッとした。
ここがダメ
「補助確認装置」。確かに車高の高いクルマはボディ左下の死角が大きくなるが、何だか二昔前の「ドアミラー禁止」時代の再来のようで気味が悪い。レンジローバーの新型車にもすでに付いており、「せっかくのデザインが台無しだ」と嘆いている関係者もいるようだ。そもそも、このアルファードの2面式ミラーは鏡面が狭くて何がどう映っているのか分かりづらい。改正内容には「鏡、画像等により間接に視認できること」とあるから日産のサイドブラインドモニターはOKなようだ。実際、昨年発売された日産ムラーノには付いていない(ドアミラーに小さな補助ミラーは付いている)。まあ、無いよりは安全に寄与すると考えると「ここがイイ」に入れるべきか。そうなると100km/以上でキンコンキンコン鳴る警告音とかも復活させた方が良くなり、何だか違うぞ、と思わざるを得ない。
サードシート跳ね上げは、日産セレナのダンパー付を知ってしまった現在、軽い操作への改良を求めたいところ。
総合評価
グリルは過剰に華美になっておらず(十分華美ではあるが)、やっとアメリカンミニバンコンプレックスから抜け出して、日本の高級ミニバンとしてのアイデンティティを確立したようだ。今後はステップワゴンのように妙に走りの方向へ行ってしまうことなく、世界に冠たる「高級」ミニバンの世界を更に磨き上げて欲しいと思う。長年のミニバン好きとしては究極のクルマだ。
そして何より、思ったように進んでいないテレマティックスの世界を、トヨタが捨てていないことが喜ばしい。このクルマから搭載が始まった新しい通信カーナビのG-BOOK ALPHAは、これまでG-BOOKにあった機能を整理して、より実用的で分かりやすいサービスとなっている。もちろん新機能もいくつか盛り込まれた。要である車載通信モジュールDCMも「堅牢なユニット内には、DCMを統合管理するCPUの配下に、音声通話と高速データ通信(2.4Mbps)を可能にするCDMA2000 1xEV-DOの通信モジュール、及び緊急時やセキュリティアラーム発生時にデータを発信するモジュールが組み込まれています(トヨタ)」と進化。通信速度が実用域に達している点に注目だ。
さて肝心の機能だが、事故や急病のSOS発信システムのヘルプネット(エアバッグ連動)と、不意のエンジン始動と連動した点が新しい。遠隔盗難アラームのGセキュリティは、以前からあったものだが、それぞれ機能が高まっている。またオペレータが遠隔でナビ設定してくれたり情報検索してくれるオペレーターサービスやハンズフリー電話も以前からあったが、これらを分かりやすい便利機能としてG-BOOK ALPHAのメインメニューに押し出しているのがいい。
まったく新しい機能はGルート検索で、これは過去のデータや現在の渋滞情報を元に、道路情報の短期(目前の渋滞情報)・中期(現在と似た過去の道路状況)・長期(過去の渋滞情報)の3予測を複合して最良ルートを検索するもの(特許申請中)。刻々と入る道路情報や進行する事で変わる現在地点の位置情報などを、過去のデータと照らし合わせながら、最良のルートを常にさぐるという仕組みだ。
もうひとつは音楽系の機能。ナビのハードディスクにあらかじめ暗号化されて入っている最新楽曲1000曲以上(CDで今後追加あり)やカラオケ、BGMを、特殊なライセンス・キー(ダウンロードしたあとはクルマに内蔵)で聞けるようにしようというもの。試聴は無料、1曲1日利用30円~80円、毎日聞き放題100円から315円などの料金となり、料金は通信機能で決済できる。この暗号化技術やコンテンツ供給先との交渉を自前でやってしまうあたりがトヨタのすごさだ。もっとも、これは真っ当なコンテンツ料金を取ろうという試みだけに、MP3全盛の昨今、なかなか厳しいサービスかもしれない。
他にもG-BOOK同様の様々なメニューがある。グルメや観光スポットなどのコンテンツも大半が無料で、高くても月315円。ニュースやメール、スケジューラーなど音声読み上げ可能なサービスも大半がほとんど無料だから、これなら使えるだろう。そうはいっても無料なのは最初の1年だけで、2年目からは3600円~最大3万3000円の年間費用がかかる。1年でユーザーが便利さを実感できるかが勝負だろう。楽しみ方を解説したスタートアップキットも用意されている。
ただ、地図更新に関しては、初期のG-BOOKではコンビニでダウンロードしたデータをメモリーカードに移し、それで書き換えができたが、この機能がなくなっているのは残念だ。またwebブラウザーも搭載されていない。これは是非欲しかった。
アゼストのオートPCが消え、カロッツェリアのエアナビがサービス休止となった昨今、自動車メーカー純正のテレマティックスだけでも是非がんばってもらいたいが、提携しているダイハツや富士重工は伸び悩んでおり、三菱自動車も経営再建のためか撤退決定。いよいよトヨタが自前で伸ばすしかなくなっている。こうなると特にレクサスでの展開が今後の肝となりそうだ。
レクサスではG-BOOK ALPHAがG-Linkという名でサービスされる(具体的にどこが違うかはまだ不明だ)が、これはレクサスのサービスの中で重要な位置を占める模様。特にコンシェルジェサービスともいえるオペレーターサービスの強化が肝となっており、お金のあるわがままな熟年層の厳しい要望に対するオペレータの苦労が予測されるところだ。分かっている最大の違いは新車登録から3年間は無料で使えることで、車両価格にG-Link対応HDDナビ、エアバッグ連動型DCM、サービス利用料がセットになっているようだ。納車説明でもこのG-Linkの取説に多く時間が割かれると言うし、世界の先端を行くテレマティックスをレクサスの大きな付加価値とするつもりであることは間違いない。
実際これまでは、いくらいいテレマチックスが開発されても、パソコン事情と同様にそれを使いこなせない人間側が最大の問題だった。ディーラーの人間も何も知らないのが普通。しかしレクサスの販売員がテレマティックスをまったく理解していない、ということはないだろう。こうしてクルマが誰でも乗れるように、テレマティックスもテレビのように誰でもが使えるようになれば、一気に普及する可能性は高い。レクサスはクルマもいいが、それよりテレマティックス(この言葉は今や死語だが)が便利だから買った、と3年後に評されるようになることを期待したい。
試乗車スペック
トヨタ アルファード MZ”Gエディション"
(3.0リッター・4WD・457万8000円)
●形式:TA-MNH15W-PFAQK-G●全長4840mm×全幅1805mm×全高1935mm●ホイールベース:2900mm●車重(車検証記載値):2030kg (F:1130+R:900)●乗車定員:7名 ●エンジン型式:1MZ-FE●2994cc・V型6気筒DOHC・4バルブ・横置●220ps(162kW)/5800rpm、31.0kgm (304Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L●10・15モード燃費:8.3km/L●駆動方式:4輪駆動(フルタイム4WD)●タイヤ:205/65R16(GOODYEAR NCT5) ●価格:457万8000円(試乗車 536万250円 ※オプション:レーダークルーズ・コントロール 8万4000円、HDDナビゲーションシステム 59万4300円、G-BOOK ALPHA専用DCM 6万3000円、ETCユニット 4万950円)●試乗距離:約200km
公式サイトhttp://toyota.jp/alphardg/index.html