キャラクター&開発コンセプト
誰がどう見てもアルテッツァのワゴン。でもワゴンとは謳わない新ジャンルのクルマ
今年初めにデトロイトショーにおいて米国名「スポーツクロス」で先行発表されたのがアルテッツァジータ。キーワードは「クロスオーバー」。美しさと機能性を合わせ持つ先進のデザインと、定評あるFRスポーツセダン・アルテッツァの走りの資質を高次元で融合し、既存のセダン、クーペ、ステーションワゴンにはない新たな魅力を生み出した新ジャンルのクルマ。と、プレスリリースにはあるが、その実はアルテッツァのワゴンといえそう。ちなみにジータはとは、イタリア語で「小旅行=Gita」の意味。本格ワゴンでなくアルファスポーツワゴンみたいなクルマと思えばいいだろう。
ジータに搭載されるエンジンは従来の2リッター直6と、アルテッツァの北米向けモデル「レクサスIS300」同等の3リッター直6の2種類。また国内専用の4WDモデルも追加し、セダンとは違うプレミアム性をアピールする。ミッションは2リッターが6速MTと4AT、3リッターのFRがマニュアル操作可能な「ステアシフトマチック」付き5速AT、4WDは4速AT。乗車定員は5名だ。
価格帯&グレード展開
価格帯はセダンより10万円アップとなる218~328万円
グレードは2リッターモデルが「AS200」、3リッターモデルが「AS300」。それぞれ廉価なものから順に「Nエディション」「標準グレード」「Zエディション」「Lエディション」が用意される。このうち、「Nエディション」はAS300の4WDモデルのみに、「Zエディション」はAS200のみに用意される。
価格はAS200が最も安い218万円~272万円。AS300は276~328万円となる。セダンのAS200が208万円からだから、ワゴン化に伴う価格アップは10万円。機能性が増えたことを考えれば、十分納得できる設定だ。
装備はAS200「標準グレード」を中心に考えると、「Zエディション」は15インチタイヤが17インチタイヤ+アルミホイールとなり、プライバシーガラス、フォグランプ、本革巻きステアリングホイール、アルミペダル、クロームメッキインサイドハンドル、CDチェンジャー/MD付きオーディオなどが追加で標準装備され、価格はざっと30万円アップ。AS300「標準グレード」はこの「Zエディション」とほぼ同じ内容だ。
さらに25万円アップとなる「Lエディション」には本革&エクセーヌ地のパワーシート、クロームアルミなどが加わる。
同じ300万円でもジータは220馬力+FR、レガシィツーリングワゴンは280馬力+4WD
ライバルは国産車ではレガシィツーリングワゴン、ランサーセディアワゴン。輸入車ではBMW3シリーズ、アルファスポーツワゴン、ボルボV40あたり。ジータのイメージリーダーである「AS300 Lエディション」の価格は300万円だから、輸入車に対しては確かに安い。しかし、国産車と較べてしまうと割高。セディアワゴンは一番高くても210万円程度だし、300万円も出せばレガシィツーリングワゴンの280馬力モデルが買えてしまう。しかもレガシィは4WDモデル。それでもトヨタは強気で月間の目標台数2500台。ちなみにセダンのほうは最初だけは盛り上がったが、最近は月1000台ほどと伸び悩んでいる。
パッケージング&スタイル
スタイリング重視の系統であることは分かるのだが、カチッとまとまったセダンのバランスが崩壊
ボディサイズは全長4505mm×全幅1725mm×全高1420mm。セダンと較べて全長で105mm、全高で5mm拡大されている。全長の差は前後オーバーハングの延長によるもの。全長の差はルーフアンテナの基盤によるものだ。
ラゲッジ部分に対する意識は普通のワゴンとは異なり、機能性よりデザインや走りを重視したもの。積載性は5ドアハッチバック以上ワゴン未満。スタイリングはセダン以上クーペ未満。このどちらでもない(どっちつかず?)な姿こそが“クロスオーバー”――新ジャンルのクルマというわけだ。もっとも、そのような手法は既にインプレッサがスポーツワゴンという名で、アルファロメオ156がアルファスポーツワゴンという名で具現化しているわけで、それほど目新しいものではない。
フロントデザインは一見、セダン同様に見えるが実はバンパーが専用。彫りを深くし、開口部を拡大してワイド感を強調。サイドはリアウインドウスクリーン後端をキックアップさせて躍動感を演出している。そして注目すべきリアのデザインは、セダンのイメージを残しつつスタイリッシュにまとめあげているのが特徴だ。スカイライン亡き後、丸4灯リアテールはアルテッツァのものになった。
リアランプはセダンがタレ目なのに対してジータはツリ目と、形状こそ違うものの、ターミネーター風という点では同じ。テールゲートの傾斜を強くすることで、ワゴンボディにありがちな見た目の重たさが消されている。しかし、これだけデザインに主眼が置かれているのに、なぜかカッコイイとは感じられない。そもそもセダンがカッコイイ(個人的に)と感じられたのは、オーバーハングを極端に切り詰めたカチッとしたところにあった。それがジータにはない。特にバンパーが出っ張りすぎ。アルファスポーツワゴン、改めてさすがだなと思う。
ワゴンならではの小技が光る、実用装備の数々
室内は基本的に先にマイナーチェンジしたセダンとほとんど同じと考えていいだろう。ゴテゴテとしたインパネは樹脂感をなくすために柔らかなソフトフィール塗装が施され、内装地には淡いベージュ色が用いられている。セダンで当初指摘されていた品質感の粗さが、幾分改善されているようだ。
さて気になるラゲッジだが、容量は390リッターと、思った通りというかやっぱり狭い。しかし、後席に6:4分割可倒機構を、助手席にはシートバックテーブル機構を付加することで、セダンとは比べものにならないくらいに拡大することができる。自らワゴンと名乗っていなくても、トノカバーやアンダーボックス、アクセサリーソケットといったワゴン必須アイテムは揃っている。
さらに注目したいのがラゲッジを囲む部分の質。フロア、バックドア、サイド、リアシートのバックボードにいたるまで全てがファブリックで覆われ、プレミアム性を謳うこだわりを見せつける。また、荷物の出し入れでキズ付きやすい部分であるリアフロアフィニッシュプレートには金属素材を採用。非常に丁寧で贅沢な仕上がりと言っていいだろう。
なお、居住空間は寸法的にもセダンと全く同じだが、ルーフの延長が後方からの直射日光を遮る助けとなっており、後席の快適性は良くなっている。後席中央に3点式シートベルトを採用した点も高く評価したい。
基本性能&ドライブフィール
セダンとは違うプレミアム性を与えた3リッター直6エンジン
エンジンは2種類。ひとつはセダンのAS200と共通の2リッター直6(160馬力/20.4kgm)で、スペックも同じ。組み合わせられるミッション(4ATと6MT)も、ギア比を含めて同じだ。
そしてもうひとつがシリーズ初となる3リッター直6。スープラやアリストと同じもので、最高出力は220馬力/5800rpm。セダンRS200(6MT)と較べて10馬力アップに止まるものの、最大トルクは30.0kgm/3800rpmと一気に8rpmも向上。またパワー、トルクの最大発生域が低回転側に移行されている。さらには組み合わせられるステアマチック付きの5速ATのファイナル比がローギアード化されており、市街地での発進加速の扱いやすさを向上させている。
足回りは前後ダブルウィッシュボーン。形状こそセダンと共通だが、ワゴン化にともない剛性の見直しが図られている。特にリアサスは積載性を配慮した硬めのセッティングになっており、タイヤは前215/45ZR17サイズに対して、後ろは225/45ZR17サイズという前後異径サイズとなった。
また駆動方式にFRのほか、3リッターモデルには、クラウンやプログレなどに採用される上級FR用4WDシステム「i-Four」が選べるようになったのも嬉しいところ。また、3リッターモデルにはアルテッツァ初の横滑り制御システム「VSC」がオプションで用意される。
低回転域のトルクが大幅に増えたことで走りは、セダンから激変
試乗したのはAS300(5速AT)。3リッターエンジンが載ったことによる最大の魅力は、なんといって圧倒的なゆとりだ。“走りの刺激”という点ではRS200に劣るものの、分厚いトルクに裏付けされた線の太い加速が十分味わえ、さらにアクセルをグイッと踏めば、軽やかなビート感あるサウンドとともにパワーが盛り上がる。セダンでは荒々しかったフィーリングはまるで別物のように洗練されており、音質もクリアになって室内の静粛性が向上している。
単に2リッター直4と較べてでなく、3リッター直6として世界的なレベルで見ても、パワー、フィーリング、振動や騒音の低減レベルにいたる全ての要素において「熟成された究極のエンジン」といっても過言ではないだろう。5速ATの変速プログラムはセダンらしさを残す。キックダウンによる反応が過敏で、すぐに2段下のギアまで落ち、落ち着いた走りはできないが、スポーティな感覚は楽しめる。
乗り心地もかなりかなり上質になっている。恐らく先のマイチェンでセダンの方も改善されているのだと思うが、セダンのデビュー直後に乗ったRS200とは硬めという点では同じでも、路面の段差やうねりによってボディが前後左右に揺れることがなくなり、フラットさが向上している。全体としては2ランクアップの車格になったという感じ。3リッターにはVSCが装着されることからも分かるとおり、セダンより穏やかな走りの性格が与えられているわけだ。
かといって走りそのものが退屈になったというわけではない。車重は1490kgとセダンRS200よりも110kg重くなっているものの、ワゴン化に伴う重量増だけをみれば50kg。その残りほとんどがエンジン単体によるもの。つまり前後の重量バランスはRS200とほぼ同じ。そのため走りのバランスは大きく崩れておらず、クルマの重さを感じるときはハイスピードでカーブ時やブレーキ時ぐらい。よほど限界域まで攻めない限り、車重増によるデメリットはほとんど感じられないと思っていいだろう。軽快感はそのままだ。
タイヤの接地感は明確に感じられるし、リアが粘る傾向も薄れており、旋回するときのコントロールはむしろセダンよりしやすい。FRの美点であるナチュラルなコントロール性をしっかり味わうことができる。“単なるセダンのパワーアップ版”ではなく、しっかりと大人の感性を刺激するプレミアム性が与えられている。走りの良さに関しては上半期の大穴的存在といえる。素晴らしい。
ここがイイ
しなやかさに満ちた足まわり、不足を感じさせないトルク感溢れた加速、軽快さを失っていないフットワーク。アルファスポーツワゴンと比べると、官能的という点では劣るが、軽快感やエンジンの噴けでは明らかに勝ち。VSCも介入する場面は少なく、実に気持ちいい走りが堪能できる。ステアシフトマチックもワインディングでは手頃に使え、これまた結構。
ここがダメ
スタイリングは、むろん趣味の問題もあるだろうが、とてもいいとはいえない。セダンが完成しつくしているカタチだけにデザイナーも苦労したとは思うが、奮闘むなしく結果は×という感じだ。
総合評価
3リットルを心待ちにしていたアルテッツァファンはこのクルマを買うだろうか。セダンだったら、という気持ちが強いと思う。セダンのカタチはあまりに素晴らしいゆえ、ワゴンにするのは難しい(プリメーラもアルファ156も同様だ)。セダンの販売実績を見れば、営業的にワゴンが欲しくなるのは分かるが、それをやっちゃあおしまいでしょ、という感は否めない。まあ、ワゴンの方がいいという人もいるはずなので、販売的なテコ入れには確かになり、フルラインナップ(隙間つぶし)を徹底するトヨタとしては正統な方法論なのだろうが、やっぱりトヨタは心意気より商売だな、という批判がでて、トヨタ嫌いを増やしてしまいそうだ。まあ出てしまったものは仕方ないので、とにかくセダンにもこのエンジンを載せてもらいたいものだ。同時に助手席シートバックテーブルの設定もお願いしたい。ただセダンに乗せるとかなりフロントヘビーになる恐れがあるので、それゆえ載せないとトヨタが明言するなら、それは支持したい。ただ助手席シートバックテーブルだけはぜひ全車に設定して欲しい(以前からの一貫したお願い)。
公式サイトhttp://toyota.jp
