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スズキ アルト ターボRS新車試乗記(第757回)

Suzuki Alto Turbo RS

(660cc 直3ターボ・5速セミAT・129万3840円~)

ターボ&AGSで
軽の可能性を体感せよ!

2015年04月24日

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キャラクター&開発コンセプト

ターボエンジン&5速セミATを採用


東京オートサロンに出展された「アルト ターボRS コンセプト」

2015年1月の東京オートサロンでコンセプトモデルを発表。同年3月11日に発売された「アルト ターボRS」(以下ターボRS)は、前年末に発売された8代目アルトがベースの高性能モデル。

アルトとしては15年ぶりにターボエンジンを搭載し、トランスミッションには5AGS(オートギヤシフト)」こと5速セミATを採用。車体に関してもボディ剛性アップや専用サスペンションの採用など、本格的に手が入ったモデルになっている。

目指したのは「心躍らせる、気持ちの良い本格的な走り」。広告キャッチコピーは「この走り、衝撃だ!」で、40代以上の方には往年の軽ホットハッチ「アルトワークス」(1987~2000年)の再来にも見える。

アルトの実用性や安全装備はそのまま

 

軽スポーツと言えば、最近はダイハツ コペンやホンダ S660といった2シーターオープンが話題を集めているが、ターボRSはあくまでも4ドアの4人乗りであり、型式名(DBA-HA36S)もベース車と同じ。つまりアルト譲りの室内空間や実用性はそのままであり、衝突被害軽減ブレーキ「レーダーブレーキサポート」をはじめとする充実した安全・快適装備もセールスポイントになっている。

月販目標は500台。ベース車の7000台と合わせて、アルトシリーズ全体では月販7500台が目標。

 

■参考記事
新車試乗記>8代目スズキ アルト (2015年2月掲載)

■外部リンク
スズキ>プレスリリース>新型「アルト ターボRS」を発売(2015年3月発表)

 

価格帯&グレード展開

FFが129万3840円。4WDが140万5080円


ターボRS専用色のパールホワイトは2万1600円高
(photo:スズキ)

基本的にはモノグレードで、FF(129万3840円)と4WD(140万5080円)を用意。4WDはワゴンRやハスラーと同じビスカスカップリング式になる。ミッションは5速AGSのみ。

また、1万0800円高でバックアイカメラ装着車を用意。これは別途、対応するナビゲーションシステムとバックアイカメラ用コントロールキットを装着することにより、普通の広角映像と、画像処理によって真上から撮ったように見える映像(車両周囲360度ではなく、後方のみ)の2パターンを表示できるものになる。

ボディカラーはベース車の8色に対して、ターボRSは専用色のパールホワイト、ベース車にもあるピュアレッドとブルーイッシュブラックパールの3色のみ。

快適・安全装備は全部のせ


ピュアレッドはベース車と共通
(photo:スズキ)

装備は驚くほど充実していて、レーダーブレーキサポート、誤発進抑制機能、ESP、ディスチャージヘッドランプ(ハイ/ロー)、オートライトシステム、フルオートエアコン、キーレスプッシュスタートシステム、本革巻ステアリング、運転席シートヒーター、15インチアルミホイール、イモビライザー&セキュリティアラームシステムは全車標準になる。4WD車に至っては、助手席ヒーターやPTCヒーター(電気式ヒーター)まで標準装備される。

 

ブルーイッシュブラックパールもベース車に設定がある
(photo:スズキ)

ただしオーディオ(ヘッドユニット)はオプションなので、標準装備のステアリングオーディオスイッチが使えるタイプを販売店オプション等から選ぶことになる。

なお、ベース車のアルト(全て自然吸気エンジン)は、アルトバンの5AGSが77万7600円~。乗用モデルの5AGSが84万7800円~、CVTが89万4240円~、最上級グレード「X」が113万4000円~。Xとの価格差は20万円弱だ。

 

パッケージング&スタイル

赤のストライプや専用アルミホイール等が目印

ベース車との違いでまず目立つのが、ボディの周囲に入ったストライプ。ボディカラーが白の場合は、いかにも和製アバルトという感じ。ドアミラーはボディカラーに限らず全て赤になる。

ターボRS専用ヘッドランプはプロジェクター式のディスチャージ。左右ヘッドライトをつなぐ「メガネガーニッシュ」はメッキ仕上げになる。また、フロントバンパーにはマルチリフレクター式のフォグランプが埋め込まれ、ベース車では縦4本だった通風スリットは、メッキで縁取りされた横3本に変更される。フロントバンパー下部の赤いチンスポイラー(懐かしい)が、いい感じ。

 

タイヤサイズはベース車の最上級グレード「X」と同じ165/55R15。15インチアルミホイールも基本的にはXと共通のエンケイ製だが、ターボRS用は切削加工とブラック塗装が施される。タイヤは専用開発のブリヂストン ポテンザRE050Aになる。

 

ターボRS専用のプロジェクター式ディスチャージヘッドライト(ハイ/ロー)は標準装備

アルトのホイールベースは今やスイフトより30mmも長い2460mm
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
スズキ アルト(2014~) 3395 1475 1475~1500 2460 4.2~4.6
スズキ アルト ターボRS (2014~) 3395 1475 1500 2460 4.6
スズキ ハスラー (2014~) 3395 1475 1665 2425 4.6
アバルト 500 (2009~) 3655 1625 1515 2300 5.6
スズキ スイフト スポーツ (2011~) 3890 1695 1510 2430 5.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

黒基調に赤のアクセント


ステアリングスイッチは全車標準。写真のナビはディーラーオプション

内装カラーはスポーツモデルで定番の黒基調で、アクセントとしてはエクステリア同様に赤が、吹き出し口のベゼル、本革巻ステアリングとシフトノブのステッチ、シート生地などにあしらわれる。また、空調パネルやドアスイッチ周辺をピアノブラック調とし、インナードアハンドルをメッキ仕上げにするなど、質感のアップも行われている。

ステアリングにはパドルシフトを装備。また、メーターはベース車の速度計+液晶ディスプレイから、タコメーター付の3眼風になり(右端は液晶ディスプレイ)、赤い指針と目盛りのスポーティな意匠になる。

 

パドルシフトはステアリングと一緒に回るタイプ。舵角が大きい時は見失いがち

タコメーター右下のインジケーターは通常はブルーで、エコドライブ中やアイドリングストップ中はグリーンになる
 

広さや荷室はベース車と変わらず


運転席シートリフターとチルトステアリングは標準装備。ただしテレスコはない

フロントシートはベース車と同じヘッドレスト一体型のハイバックシートだが、ターボRS用はサイドサポートが高く、クッションが硬めの専用品になる。ちなみに助手席の背もたれ背後にあるシートバックポケットもターボRS専用品。

その他、室内空間や小物入れ、荷室の使い勝手などは、ベース車と基本的に同じ。ワゴンRなどと違って凝ったシートアレンジ機能などはなく、シンプルな作りになっている。

 

荷室の作りは極めてシンプルかつベーシック。後席は左右一体型で、前後スライド機能もない

ターボRSは後席ヘッドレストを標準装備(普通のアルトでは上位グレードのCVT車にしか装備されない)
 

荷室の拡大は、背もたれをパタンと倒すだけのシングルフォールディングで行う

床下はパンク修理キット、ジャッキ、小物入れ
 

基本性能&ドライブフィール

PWRは現代の軽ではダントツの10.5kg/ps


エンジン上部にあるインタークーラーへの導風は、バンパーとボンネットの隙間から行われている

ターボRSのエンジンはスズキの軽でおなじみのR06A型ターボを改良したもの。高効率ターボチャージャーや、高タンブル(縦渦)吸気ポートを備えた新型シリンダーヘッドなどにより、従来のR06A型吸気VVT(可変バルブタイミング機構)付ターボエンジンと比べて、ターボラグは約20%抑制され、最大トルクは3Nm(0.3kgm)増しの98Nm(10.0kgm)/3000rpmにアップしている。最高出力は従来ターボと同じ64ps/6000rpmで、圧縮比も変わらず9.1だ。

車重はベース車のアルト(AGS仕様)より50kg増えたが、依然として超軽量の670kgしかない。これは、新型コペン(5MTで850kg、CVTで870kg)より180~200kgも軽く、S660(6MTで830kg、CVTで850kg)と比べても160~180kgも軽い。パワーウエイトレシオは現行の軽ではダントツの10.5kg/psを誇り、往年のアルトワークスに匹敵する。“現代の軽”でこれより速いのは、スズキ製のK6A型ターボを積むケータハムセブン160くらいだろう(あちらは自主規制なしの80psで、車重は490kg)。

“速さ”より“トルク”が気持ちいい

しかし意外にも、ターボRSを走らせて印象的だったのは、アルトワークス的な、やんちゃなバカっ速さではなく、低回転(3000rpmくらい)からしっかり湧き上がるトルク感。まるで1.0L~1.3Lクラスのコンパクトカーのような自然なトルク感と加速感がある。「そうか、だからワークスではなく、ターボRSなのか」と思う瞬間。

そして信号で止まればアイドリングストップ(ターボRSの場合は走行中ではなく、完全に止まってからアイドリングストップする)。また、普段は意識しないが、約5~30km/hの低速走行中に自動ブレーキを掛けるレーダーブレーキサポートも標準装備する。このあたりも、かつてのワークスとは異なるところだ。

いわばAGSのフラッグシップ機

AGS(オートギヤシフト)は、一般的にはセミATとか、AMT(オートメイテッドMT)、ロボタイズドMTなどと呼ばれもので、MTをベースにクラッチ操作とシフト操作をアクチュエーターで自動化したもの。欧州車では現行フィアット500をはじめ、多くのクルマに採用されているが、日本車ではトヨタのMR-Sやレクサス LFAくらいしか採用例がないというマイナーな存在だった……のだが、昨年からスズキは、新型キャリイを皮切りに、エブリイ、アルトでAGSを採用。今回のターボRSに至ってはAGSのみであり、言うなればAGSのフラッグシップ機という役目も担っている。

さて、その印象だが、ターボRSのAGSにも、やはりセミAT特有の、シフトアップ時の息継ぎ感は確かにある。ただしベース車のアルトAGS車同様にスムーズさは、セミATとしては最上の部類。また、ターボゆえに全域でトルクがある分、街中での走りにも段違いの余裕がある。

 

なお、直接比較していないのではっきりと体感はできなかったが、変速スピードはベース車のAGSよりも20%、マニュアルモード時にはさらに10%速いとのこと。また、マニュアルモード選択時には、加速時にレッドゾーンに達しても勝手にシフトアップせず、リミッターが作動するようになっている。

ちなみにセミATには、クリープのないタイプ(フィアット、VW、スマートなど)と、電子制御クラッチで擬似的にクリープを発生させるタイプ(プジョー・シトロエン車など)の2種類があるが、スズキのAGSは後者。クリープの力は弱いが、やはり多少あった方が乗りやすく、ATやCVTから乗り換えた時の違和感も少ない。

なお、坂道発進ではサイドブレーキを使って下さい、と説明書や内装のコーションラベルには記されているが、実際にはヒルホルダーが働くため、後ろに下がってしまうことはほとんどない。また、そもそもクラッチ操作が不要なので、MT車のようなコツは必要ない。

峠でも安心。ただし6速が欲しくなる

山道でもパワーは十分。一方で、過剰なほどのパワーはなく、車重も軽いので、仮にオーバースピード気味でコーナーに入っても、すぐに収束してくれるから初心者でも安心。スポーツに振りすぎたモデルにありがちな綱渡りしていくような危なっかしさはない。標準装備のESPは真剣に走るとけっこう介入してくるが、トラクションコントロールが作動するとスロットルオフ状態から復帰するまで一瞬待たされるので、そうなる手前で丁寧に走る方がいい。

タイヤは専用開発の165/55R15(ポテンザ RE050A)で、グリップは十分。ブレーキにはフロントに13インチベンチレーテッドディスクブレーキ(ベース車は非ベンチレーテッド)と専用パッドを採用。効きはこのパワーと車重に対しては必要十分に思えた。

そんな風にワインディングを走って気になったのは、ギアが5速しかないこと。ステップ比が大きいため、タイトなコーナーでも2速になかなか落ちてくれない。また、パドルでシフトダウンした時のブリッピングが大人しめであるなど、スポーツ性の“演出”は控えめ。このあたり、アバルト500的な刺激を期待すると拍子抜けする。なので、エンジンをガンガン回すというより、トルクを活かしてDのまま走った方がストレスなく走れるように思えた。

直進安定性はベース車とは別物

ボディのシッカリ感は、ベース車より一段上。VW up!のような「重厚でガッチリ」ではなく、「軽くて硬い」感じがある。ターボRSでは、スチールパイプ製ストラットタワーバーや、高剛性のフロントバンパーメンバーを採用したほか、カウルフロントパネルなどの板厚アップ、車体後部へのスポット溶接増し打ちを行っている。結果、車体のねじり剛性はベース車比で約5%アップし、ストラットアッパー部の横剛性は14%アップしたとのことだが、開発時には数値よりも感性評価を重視したという。

また、足回りには専用のKYB製ダンパーを採用するほか、ステアリング系のマウントやブッシュ類も専用品に変更。おかげでサスペンションはしなやかに動き、乗り心地も悪くない。そこもかつての“ワークス”とは異なる。

100km/h巡航は約3400rpm。JC08モード燃費は25.6km/L(FF)

100km/h巡航時のエンジン回転数は、5速トップで約3400rpm。追い越し加速は、軽とは思えないほど強力で、4速でレッドゾーンが始まる7000rpmまで回すと、リミッターが働く約140km/hに達するはず。感心したのが、直進安定性の高さ。ベース車では不満のあった項目だが、ターボRSでは強烈な横風にあおられる浜名バイパスのでも安心して走ることが出来た。

今回は浜松を起点に、一般道や高速道路などを約110km試乗。試乗燃費は、撮影とワインディング走行を含めて、あくまで参考ながら13.7km/Lだったが、普通に走ればおそらく15~17km/Lくらいは行くと思われる。

JC08モード燃費は、FFが25.6km/Lで、4WDが24.6km/L。タンク容量はベース車と同じ27Lで、もちろんレギュラーガソリンでOK。

 

ここがイイ

「一番いいアルト」的な良さ。充実の装備

アルトワークスの再来かと思いきや、実際にはトルクフルなエンジン、しっかりしたシャシーなどにより、新型アルトの最上級モデル、あるいは「アルトのトップグレード」的な、、「普通にいいクルマ」感があること。パワーと車体とのバランスが良く、操縦性もよくまとまっている。

車両価格の割に、装備が充実していること。走りの楽しさを追求しつつ、アイドリングストップ機能を標準装備し、夏には冷気をアイドリングストップ中でも持続させる「エコクール」、冬には運転席シートヒーターという具合に、快適性も事細かに配慮されている。4WD車に至っては、エンジン冷間時でも効く電気式ヒーターを標準装備。それ以外に、スマートキー、レーダーブレーキサポート、フルオートエアコンも標準装備する。

燃費もいいし、2ペダルでもあるので、奥さん用にしれっと買ってしまうのもあり。セミAT特有の癖さえ受け入れれば、非クルマ好きの女性も気に入ってくれるはず。

ここがダメ

AGSの認知度。事前のイメージとのギャップ。色数の少なさ。6速が欲しくなる

セミAT車としては、変速は最もスムーズなレベルにあり、違和感はほとんどないと言えるが、それでも一般的なATやCVTと比べれば癖はあること。スズキはユーザーや販社向けに「AGS カンタン まるわかり Book」という小冊子を作って配っているが、このあたりにも、まだまだ日本市場にとっては未知のモノだということが伝わってくる。

今回はこの勇ましいカラーリングと車名で期待させられた分、乗る前に持っていたスポーツイメージとのギャップを感じてしまった。この出来であれば、欧州製コンパクトカーに興味を持つような層に訴える、もっと大人っぽい「いい道具感」を打ち出す方向もあったのでは、と思う。その意味ではボディカラーも3色だけでなく、ミドル層に受けそうなシックな色が欲しかったところ。また、クルマ自体については、ザラザラとしたロードノイズが少し気になった。

 

逆にスポーツモデルとして考えると、尖った部分や演出に欠けること。エンジン音もスポーツモデルとして考えると物足りない。また、ステアリングの見た目や操作感は、ドライバーの満足度に大きく影響するので、もう少しセンターパッドが小さめで、スポーティなデザインの専用ステアリングが欲しいところ。あと、テレスコ調整はやはり欲しい。現状だとステアリングが少し遠く感じられる。

AGSのステップ比の大きさ。やはりどうしても5速(5段)では、1速から5速までのギアリングに無理を感じてしまう。ないものねだりだが、AGSのメリットを最大限に引き出すためにも、6速が欲しいところ。逆に6速になれば、AGSは大いに化ける可能性がある。

総合評価

もはや普通車と変わらない動力性能

アルトワークスの販売終了から15年。その間の21世紀は、世の中も大きく進化した。いや、実際にはあまりたいした進化などしていないか? アナログからデジタルになったテレビは、相変わらずの番組を垂れ流しているし、満員電車に揺られて会社に行き、居酒屋で酒を飲み、いい学校に子供を入れるため塾の心配をする、そんなサラリーマン生活も大きく変わっていない。こと日本人は、21世紀になってもたいした進化はしていないのではないか。

とはいえ大きな進化があったのは、検索やクラウドといったwebの世界、そしてスマホなどモバイル通信環境の進化だろう。2000年はグーグルが登場し始めた頃だし、クラウドなどのイメージも湧いていなかった。もちろんスマホ(当時はPDA:Personal Digital Assistantと呼ばれた)でナビができるようになるなんて、15年前にはとても考えられなかった。

 

そしてもう一つはクルマだ。クルマの進化は急ではなかったが、気付けばずいぶん進化している。ハイブリッド車はもはや販売上位を占め、プリクラッシュセーフティも急速に普及し始めている。わかりやすいところでは装備品だ。例えばクルマのキー。今やスマートキーが軽でも普通になってきた。ところが住宅の鍵はまだほとんど何10年前と同じもの。いまだに鍵穴にキーを差し込んでガチャガチャやっている。

そんなクルマの中でも、特に軽自動車は凄まじく進化して、この15年でいわゆる普通車と遜色がなくなったどころか、一部のクルマではそれ以上になっている。そうした進化の集大成とも言えるのがこのターボRSだろう。普通に走る分には、もはや普通車と変わらないと言い切れる動力性能を持ち、スポーティに走らせてみれば、下手な普通車以上に楽しめる。デザインも個性的だ。それがごくごくベーシックな軽自動車であるはずの「アルト」の一モデルとして設定されたのだから、たいしたものである。

上から下へ降りて来た

しかしこのクルマ、実は集大成といったものではないとも言える。集大成を超えて、軽自動車の次の姿へ一歩踏み出したクルマだと思うのだ。次の姿とは何か。日本的基準の軽自動車ではない、世界的基準のスモールカー、それのスタンダードな姿をこのクルマは提案しているように思う。なにせこのクルマは強力な小排気量ターボとギア式のATを持つ。これは上級の軽自動車ではなく、まさに次世代のスモールカーの主流となり得る方式だ。

このクルマに試乗していると、カッ飛びターボ車というものではなく、理想的なスモールカーに乗っている感覚のほうが強い。軽はこれまで下から上へ上へと向かっていたが、このクルマの場合は上から下へ降りて来て今の姿がある、という印象を受ける。軽にターボを付けて頑張ってます、ではなく、小型車をダウンサイジングさせました、という。

トルクがあるからか、シフトプログラムのせいか、AGSの違和感もかなり少なくなっている。AGSはCVTやトルコンATのような完全お任せATとは違い、ドライバーが積極的に操ることができるATであり、クルマを運転している感覚を強く感じながらドライブできる。クルマ好きとしては好きなタイプのミッションと言ってもいいだろうし、欧州の小型車なら割と当たり前のものだ。フォルクスワーゲンとの提携話があった頃、スズキはこのあたりも欧州車に学んだのだろうか。

突き抜けたクルマを作るため

キャリイ、エブリイ、そしてアルトにAGSを採用したスズキには、軽はCVTだけでいいだろうという安易さはなく、イバラの道を歩こうとも新しいものにチャレンジする、それによって突き抜けたクルマを作るという「次のクルマ」「クルマの進化」への強い意志が感じられる。そこにはもう大絶賛と大応援をしたい。過去のクルマで最大規模のリコールも出ているらしいが、気にしない気にしないと、当方としては絶賛応援中だw。

ただそうなると今の内外装イメージはちょっと走りに振りすぎていて、少し気恥ずかしくなってくる。ベース車のインテリアはセンスが良くて好みだったし、ヘッドライト周りのメッキやストライプなども、レスオプションが用意されているといい。それからタイヤハウスの空間がちょっと興ざめ。東京オートサロンに出展された「アルト ターボRS コンセプト」くらいに大きなタイヤとシャコタンならカッコいいのだが。

羊の皮をかぶった狼とは言わないまでも、ダウンサイジングスモールカーとして、このクルマに乗りたいと思う。近所の銀行は白いアルトの営業車を買った。それと同じ外観で、中身はターボRSという選択肢があったら、これは楽しいと思う。もちろん、シートはターボRS用の方がいいし、リアシートのヘッドレストもあった方がいい。この走りのまま、大人しい外観で、日本では軽の恩恵も受けられるスモールカー、となれば欲しいなあ。グリルも縦の方が好みなので、そこを変更するオプションも「あるといいなあ」なんて。毎回同じオチですみませんw

 

試乗車スペック
スズキ アルト ターボRS
(660cc 直3ターボ・5速セミAT・129万3840円~)

●初年度登録:2015年3月 ●形式:DBA-HA36S
●全長3395mm×全幅1475mm×全高1500mm ●ホイールベース:2460mm
●最低地上高:155mm ●最小回転半径:4.6m
●車重(車検証記載値):670kg(430+240) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:R06A ●排気量・エンジン種類:658cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・ターボ・横置
●ボア×ストローク:64.0×68.2mm ●圧縮比:9.1
●最高出力:47kW(64ps)/6000rpm
●最大トルク:98Nm (10.0kgm)/3000rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/27L
●トランスミッション:5AGS(5速セミAT)
●JC08モード燃費:25.6km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):トーションビーム+コイルスプリング
●タイヤ:165/55R15(Bridgestone Potenza RE050A)

●試乗車価格:-円 ※オプション:オーディオ -円、パールホワイト塗装 2万1600円、バックアイカメラ 1万0800円
●ボディカラー:パールホワイト

●試乗距離:110km ●試乗日:2015年4月
●車両協力:スズキ株式会社

 
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