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スズキ アルト G新車試乗記(第337回)

Suzuki Alto G

(0.66リッター・3AT・84万円)

2004年10月09日

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キャラクター&開発コンセプト

6年振りのチェンジで6代目に

6年振りのフルモデルチェンジを受けて、6代目アルトが2004年9月13日に発売された。今や主力のワゴンR、若い女性に人気のアルトラパン(先代アルトベース)、新世代のMRワゴンといった多彩なラインナップの中で「自分の時間に気軽に使える親近感のわくクルマ」をコンセプトに開発。先代モデルを商用バンとして残す一方、新型はユーザーをミセスに絞り込んでいる。

セールスポイントは、エアコン、パワステ、AM/FMラジオ、ダブルエアバッグ、カラードバンパーを装着した3AT仕様で73万5000円(税抜70万円)の低価格や女性ユーザーをターゲットにしたデザイン。さらに軽自動車ならではの経済性や使い勝手の良さなど「日常の足」として磨かれた性能だ。販売目標台数は6000台/月。

25年で409万台

初代アルトは1979年に登場。「全国47万円」の低価格や「街はアルトで歩こう」のキャッチコピーと共に、女性ドライバーやビジネスユーザーを中心に大ヒット。25年で409万台というベストセラー車となり、現在の「軽自動車NO.1」であるスズキの基礎を作った。

価格帯&グレード展開

昔47万円、今65万円

グレードはシンプルに3種類。最も安い「E」(2WD・5MT車の68万2500円~)、中間グレードの「G」(同78万7500円~)、上級の「X」(4ATのみ。94万5000円~)。Eでもダブルエアバッグやエアコン、AM/FMラジオ、カラードバンパーを装備するが、ホイールキャップは付かない。主力のGには、キーレスやパワーウインドウ、パワードアロックが一通り付く。Xではオートマチックが4速に(他は3速)。装備の分だけ25年前より高くなっているが、それを省けばかつての47万円に近づくはずだ。

パッケージング&スタイル

先代より50mm高い

ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1500mm。ワゴンRよりずいぶん背は低いが、これでも先代より50mmも高い。ルーフ長も前に伸びて、その分だけ室内が広くなった。デザインテーマは「円と直線」。前後フェンダー、フロントフードなどが大きな円を描く。格子型グリルが可愛い。写真のボディカラーは香りをイメージしたムスクブルー。一見ソリッドに見えるが、わずかにメタリックが入っている。

微に入り細にわたって改良

何と言うこともない質感の室内だが、銀色に光るSマーク付きのステアリングや見やすい速度計など、作りは今時のリッターカーに引けを取らない。

改良点は実に微に入り細にわたっており、ドアミラー鏡面面積の拡大、前席シートのスライド調整段数を12段から16段へアップ、スライド量を60mmアップ、シート高を前席20mmアップ、後席25mmアップ、室内高を30mmアップと数多い。

ユーティリティを極める

機能性やユーティリティも充実した。運転席右と助手席足元、後席に二つと計4人分のドリンクホルダー、助手席のコンビニフック、ティッシュペーパーが取り出しやすいようにボックスが立てて入れられるグラブボックス、カードが出しやすいカードケースなどなど。アルト専用の「ママプロジェクト」という既婚女性チームが企画から車両評価まで携わったという。

大型ベビーカーのスペースを死守

室内を優先して広くしつつ、荷室は大型(A型)ベビーカーが積める広さをキープ。ちなみにA型ベビーカーとは、タイヤが大きく、ベッド状になっていて乳児の首がすわる前から使えるタイプだ。

基本性能&ドライブフィール

リッターカーに匹敵する乗り心地

試乗したのは中間グレードのGだが、第一印象は期待以上。現行ワゴンRが登場した時は進歩がそれほど感じられなかったから、これは少々予想外だった。どっしりとして路面の凹凸を飲み込む乗り心地はリッターカーのトヨタ・パッソを思わせるもの。トレッドの狭い軽自動車によくある横揺れもない。ボディ剛性は先代比で実に2倍で、さらにサスペンションをサブフレームに取り付けたのが効果的だったという。低速での乗り心地に関しては最上の部類だ。

最小回転半径は先代より0.1メートル縮んで4.1メートル。わずか10cmの短縮でも、切り返しせずに一発で曲がれるようになるからこれは大きい。死角の少なさは背の高いワゴン系より優れるから、駐車や狭い道での運転はこちらの方が楽だ。

自然吸気でも力感がある

エンジンはおなじみの660cc直列3気筒「K6A」(54ps、6.2kgm)。同じ自然吸気でもチューン違いで2種類用意することが多いスズキだが、今回のアルトは1種類。エンジンを一つに絞ったのはこれが初めてという。

このエンジンが実にいい。まず、発進する時にクルマがグッと前に出る自然な力感がある。後で聞くと、新型アルトは全車で電子制御スロットルを採用し、そのスロットル開度を発進時だけ大きくしたとのこと。ついに軽自動車も電スロが当たり前の時代になってきた。また、遮音材やエンジンマウントを工夫したからか、音も静かだ。例の3気筒独特のノイズ/振動もほとんど気にならなかった。

高速安定性は大きく進歩

この2~3年の軽自動車は普通に走るだけでは、ほとんど破綻を見せないので、いつものワインディングも少し走ってみた。小雨のぱらつく濡れた路面でも、リッターカーに遜色ない155/65R13のタイヤはよくグリップする。電動パワステは確かに電動っぽいが、かといって軽すぎることもなく、このクルマの性格からすれば不足はない。旋回中にブレーキを掛けても全く安定しているし、意外にキビキビ走る点もいい。

ボディ剛性が高くないと「ドカン」と突き上げる例の段差も、ソフトな足まわりで何のショックもなく通過してしまう。リアゲートからガタガタと音が出る、などということもなかった。

3ATなので(上級車は4AT)高速道路は苦手かと思ったが、問題ないと言っていいほど快適だ。静粛性が高く、100km/h巡航などまったくの余裕。そこからの加速は効かないが、最高速はリミッターが作動するという130km/h程度まで出る。多少下っている場所では、2名乗車でもメーター読み137km/hを確認した。その速度でも十分に安定感がある。以前の3ATとは比較にならない快適な高速クルージングだ。6年ぶりのフルチェンジはこういった部分に効く。軽自動車の高速巡航性能は大きく進歩している。

ここがイイ

6年ぶりのフルチェンジは、圧倒的な進化をもたらした。まずスタイリングが独自でいい。ミニバンタイプばかりになる軽自動車の中で、伝統的なハッチバックながら見事なおしゃれ感、未来感(コンセプトカーみたいだ)を出している。背を高くしてもミニバンぽく見えないし(ここがミラといちばん違う点)5ドアだけというのも潔い。

シャシーの性能向上は、まるで小型車のような乗り味を生み出した。柔らかめでしっとりとした乗り心地、みごとなボディ剛性感(ドアの音までいい)、静かな室内など、リッターカー並の基本性能だ。

室内も十分広いが、広すぎず落ち着く。インテリアの質感は高く、大きなシートは柔らかくて気持ちいい。女性のお尻に合わせてあるらしいし、ホールドも特に良くはないが、「チョイ乗り」には男性でもベストだろう。また、サイドシルの足が通る部分が少し切り込んで低くするといったあたりの小技も効いている。小物置き場も豊富で、特にティッシュホルダーがグローブボックスに内蔵されたのは素晴らしい。こういう当たり前の装備こそ欲しいものなのだ。エアバッグも全車標準装備になっている(これ重要)。

ここがダメ

量販グレードのGには、シートリフターがない。160センチ前後の身長だと、シート高が低めでポジションがうまくとれない。もう少し高く出来なかったのか。またリアシートに普通に座るとシートの外側端が崩れる(つぶれて体重を支えきれなくなる)ので真ん中寄り座らなくてはならない。これは早急に改善されるだろう。

またティッシュボックス置き場など、よく考えてはあるが、女性が使うとすればさらに以下のような装備は標準化すべき。それは「ゴミ箱」「傘立て」「バック置き場」「ケータイ置き場」。トヨタの一部車種ではこれらが装備されているわけで、女性向きのアルトは絶対フォローすべき。マップランプ(要はルームライト以外のスポットライト)もぜひ欲しい。

総合評価

50ccのミニバイク「チョイノリ」が5万円台、660ccのアルトが税抜き65万円ということで、普段チョイ乗りするものは1ccあたり0.1万円というスズキの開発姿勢には頭が下がる。これで不満ない性能・質感を持っているのだし、何より、中国製でなく日本(浜松)製だ。資料では、25年前の初代が47万円、今回が同じく消費税抜きで65万円からで、大学初任給が約11万円から現在は約2倍の約20万円なのに対して、アルトは約1.4倍に過ぎないという。この間のエアコン等の快適装備や走行性能の向上はすさまじい。「スズキの製品は、ここ数年話題のデフレ商品とは歴史が違います」。日本の製造業を支えるスズキに最敬礼。

軽自動車は地方では1世帯あたり0.8台の普及。家族のいる世帯なら、どこの家にも1台はあるクルマだ。スズキのある浜松あたりも公共交通機関は発達しておらず、生活の全てはクルマが支えている。そういうところで開発されたアルトは、そういうところの人たちの快適でおしゃれな生活のために作られている。地方だって今は結構おしゃれで、郊外の巨大でおしゃれなショッピングモールへ出かけるには、新型アルトくらいのおしゃれさが必要だ。

アルトの密かなライバルはパッソだという。正直なところ、横幅のわずかな差や後席の快適性を除いて、ほとんど同格のクルマになっているように感じた(装備など細かい差はあるが)。以前から軽に800ccくらいのエンジンを積むと理想の小型車になると言ってきたが、ここに来てアルトはそれを660cc(しかもNA)で達成してしまっている。デイズは初代ヴィッツを足にしているが、アルトはもうそれに並んでいる、あるいは追い越した感すらある。もちろん室内の絶対的な広さはヴィッツやパッソが勝つが、一人でチョイ乗りするなら、より小さい分、アルトの方がいい。軽自動車はいよいよ次の次元に入った。

試乗車スペック
スズキ アルト G

●形式:CBA-HA24S●全長3395mm×全幅1475mm×全高1500mm●ホイールベース:2360mm●車重(車検証記載値):740kg(F:460+R:280)●乗車定員:4名●エンジン型式:K6A●658cc・DOHC・4バルブ・直列3気筒・横置●54ps(40kW)/6500rpm、6.2kgm (61Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/30L●10・15モード燃費:20.5km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:155/65R13(FALKEN SINCERA SN-816c)●価格:84万円(試乗車:86万1000円 ※オプション:AM/FMラジオ付きCDプレーヤー&2スピーカー 2万1000円)●試乗距離:約350km

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/alto/

 
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