キャラクター&開発コンセプト
「すべてがエコカー」の7代目
47万円という低価格で初代アルトが登場したのは1979年。それから30年目となる2009年12月16日、7代目となる新型アルトが発売された。
従来モデル同様、セダンタイプのシンプルなデザイン、乗りやすさ、高い経済性を売りとするが、新型が前面に打ち出すのはやはり今風に「省資源・低燃費」。キャッチコピーは明快に「すべてがエコカー」だ。
具体的には、4WDを含む全グレードがエコカー減税対象車。つまりは全車が購入補助金(13年経過した車両の廃車を伴う場合は12万5000円、それ以外は5万円)の対象となるほか、自動車取得税と重量税が4AT車で50%減税、5MTとCVT車では75%減税となる。
また上級グレードには、パレットのマイナーチェンジ版(2009年9月発売)で世界初採用となったジヤトコ製の副変速機付CVT(無段変速機)を搭載。2WD車では10・15モード燃費24.5km/Lを達成している。
新世代プラットフォームを採用。海外向けアルトとは別物
ボディに関しては、現行ワゴンRと同じホイールベース2400mmの新世代プラットフォームを採用。前後サスペンションも基本的にはワゴンR譲りだ。
なお、インドで生産し、欧州でも2009年から販売しているグローバル向け新型アルト(インドでの車名は「Aスター」)とは、デザインが似ていることから基本的に同じクルマと思われがちだが、実際にはエンジンからプラットフォームまで別物となる。
目標販売台数は7000台。これはワゴンR(スティングレーを含めて月間1万8000台)の4割程度だが、ラパン(4000台)よりは多め、というところ。デフレ時代でこそモノを言う低価格がアルトの武器だ。

スズキからOE供給されるマツダ・キャロル。ボディカラーはデミオ似の緑色(シャイニーグリーンメタリック)も含めてアルトと共通の全6色
なお、アルト発売の翌日には、そのOEM車であるマツダ・キャロルも発売された。こちらはフロントグリルの開口部がマツダ共通の5角形となるほか、乗用タイプのみとなる。キャロルの目標台数は月間800台だ。
■参考リンク
・過去の新車試乗記>スズキ アルト G (2004年10月)
価格帯&グレード展開
主力は80万8500円の「F」以上。上級グレードにCVTを用意
エンジンは自然吸気の直3・658cc「K6A型」(54ps、6.4kgm)のみで、変速機は5MT、4AT、CVTの3種類。先代では4ATと共に主力だった3ATがついに全廃されたのが、なかなか感慨深い。
価格は商用(4ナンバー)の「アルトバン」を含むと、67万7250円からスタート。5ナンバー乗用では、73万2900円(5MTおよび4AT)からスタートする。とはいえ、一般ユーザーの購入対象としては、AM/FM・CDプレーヤーと2スピーカー、キーレス、パワーウインドウ、パワードアロック、カラードバンパー、樹脂製ホイールキャップ等を備えた「F」の80万8500円(5MTおよび4AT)以上がメインだろう。
その上の「G」には、5MTの代わりにCVT(4ATの5万7750円高)を用意。実は「G」でCVTを選ぶと、4ATではオプション(2万6250円)のABSが標準装備されるので、実際の価格差はもっと少ない。
そして今回試乗した最上級の「X」はCVTのみで、ABSはもちろん、チルトステアリングやシートリフターなどが備わる。4ATとCVTの比率は、現行ワゴンRではだいたい半々とのことだが、アルトでも迷うとすれば、変速機のチョイスだろう。どちらがいいかは、燃費をどれだけ重視するか(普段の走行距離が多いか否か)や運転感覚の好みにも依るが、装備面ではCVTの「X」が理想的だ。
■アルト バン VP 67万7250円(5MT)/75万6000円(4AT) ※4WD(4ATのみ):12万8100円高
■アルト E 73万2900円(5MT)/73万2900円(4AT) ※4WD:15万4350円高
■アルト F 80万8500円(5MT)/80万8500円(4AT) ※4WD:15万4350円高
■アルト G 89万2500円(4AT)/95万0250円(CVT) ※4WD:12万8100円高
■アルト X 102万9000円(CVT) ★今週の試乗車 ※4WD:12万8100円高
パッケージング&スタイル
デザインはグローバル向けアルト譲り
プラットフォームは違えど、外観、特に愛嬌のあるヘッドライトを備えたフロント回りは、グローバル向けアルトにそっくり。男性にはちょっと可愛らし過ぎるきらいはあるが、全体に丸みのあるスタイルで、ふっくらとした量感がある。円弧、四角、直線を組み合わせた先代も意欲作ではあったが、新型の方がまとまりはいい。2009年度のグッドデザイン賞を受賞している。
ボディサイズ(先代比)は全長3395mm(同)×全幅1475mm(同)×全高1535mm(+35)。ホイールベースは2400mm(+40)。やはりクルマの平均身長が伸びる昨今、セダンタイプのアルトも少し背が高くなったが、立体駐車場の目安となる1550mmは下回っている。ちなみにアンテナはドライバーが乗ったまま収納できる昔ながらの伸縮式だ。
ホイールベースが伸びて、横から見たときの安定感も増した。新型では風洞実験やコンピューター解析で空力性能にも配慮したというが、確かに空気抵抗は少なそうだ。リアはスイフトやスプラッシュにもちょっと似ている。タイヤの張り出し感がもう少しあれば、欧州Aセグメントカーといった感じだ。
内装色はベージュで統一。質感は先代の水準をキープ
内装色は全車ベージュに統一。ブラックなら見た目の質感を出しやすいが、あえて広々感や女性の好みを意識してベージュにしたという。一方、シート地は先代のベージュ無地から茶色のパターン入りに変更。これはデザインのほか、汚れの目立ちにくさを考えたとのことだ。
5年前に先代を見た時は、リッターカー並みの質感に驚いたものだが、今や軽自動車でも普通車並みが当然になってしまったので、あらためて驚きはない。質感自体は先代レベルをおおむねキープ、もしくは助手席エアバッグ展開用の切り欠きが隠されていない点など、ちょっと合理化されたようにも感じられる。
デザイン的には、センターコンソール全体が大きな円弧の中に収められ、先代では丸型だった中央の空調ルーバーが扇形に変更された。試乗車にはキーを携帯するだけで施解錠も出来る「キーレスプッシュスタートシステム」が付いていたが、これは最上級の「X」のみ。
メーターは文字盤の一部がホワイトになり、さらに瞬間燃費計や平均燃費計、航続可能距離が分かる液晶モニターが採用された。ラパンのようなタコメーターモードはない。
小物入れもずいぶん増えた。先代では助手席エアバッグが埋まっていたところに、棚状の小物入れを設置。前席にはショッピングフック、3個分のドリンクホルダー、気付きにくいがステアリング下の小さなトレー、そしてA4サイズの地図が入るフロントドアポケット等が装備されている。
チルトステアリング&シートリフターは「X」のみ
前席シートのスライド量は先代と同じ240mmだが、調整段数は先代の16段階(15mm刻み)から、新型では24段階(10mm刻み)にアップ。また前席のヒップポイントは先代より10mm高い580mmで、見晴らしも良くなった。先々代の5代目(1998~2004年)の535mmと比べると、実に45mmも高い。
さらに最上級の「X」には、チルトステアリング、シートリフター、シートベルトの肩口の高さを調整するショルダーアジャスターも装備されているが、出来ればこれらは、せめてもう一つ下のグレードにも標準装備として欲しかったものだ。
乗降性をさらに向上。十分な居住性
先代でも十分広かったリアシートだが、ホイールベースが40mm長い新型では、さらに余裕が増したようだ。1475mmの全幅は同じなので横方向の狭さというか「ドアが近い感じ」は多少あるが、圧迫感はなく、前後方向の余裕はほとんどカローラとか、VWゴルフ並み。シートの座面も大きく、クッションの厚みもあり、着座姿勢も自然で、快適性はほとんど助手席と変わらないと思う。
ドア開口部も若干だが広くなり、チャイルドシートの付け外しに配慮。リアステップ部のサイドシル高を25mm下げるなどして、乗降性も向上させている。リヤドア開度は80度で、ダイハツ自慢の90度ほどではないだが、実用的には十分だろう。ドアを全開にする機会はそうそうない。
また片手で簡単に装着できる自立式のシートベルトバックルも採用されている。ただし後席のヘッドレストは「X」だけの装備だ。
A型ベビーカーが積める荷室
正確な数値は不明だが、見た目は大きく変わらない荷室。先代同様、4人乗車時でも大型のA型ベビーカーが収納できるという。ただ、空間はやや上すぼまりで、背もたれの角度も調整できないので、背もたれを立てたままだと、有効に使える奥行きは狭めだ。なお背もたれを左右別々で倒せるリアシートも「X」だけの装備で、他はすべて左右一体式になる。
床下には応急用スペアタイヤと車載工具が搭載されるほか、ちょっとした収納スペースがある。