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トヨタ アクア S新車試乗記(第652回)

Toyota Aqua S

(1.5リッター直4+モーター・179万円)

THS II をダウンサイジング!?
トヨタ最小ハイブリッドで、
エコカーの「未来」を考える!

2012年02月03日

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キャラクター&開発コンセプト

トヨタの最小ハイブリッド


東京モーターショー2011に出展されたアクア

2011年12月26日に発売された「アクア」は、ヴィッツクラスのボディに、1.5リッター直4エンジン+モーター+ニッケル水素電池を搭載したトヨタ最小のハイブリッドカーだ。燃費性能はJC08モード燃費35.4km/L、10・15モード燃費37.0~40.0km/Lと世界トップクラスを達成。また価格は169万円からで、ホンダのフィット ハイブリッドより10万円高いが、トヨタ製ハイブリッド車では最も安いモデルとなっている。

 

販売目標台数は、プリウスの月間1万台を上回る1万2000台で、つまり年間14万4000台。ちなみに昨年の販売台数で1位だったプリウスの実績は、震災の影響があったにも関わらず、夏から急速に盛り返して25万2528台を達成。2位がフィット(20万7882台)、3位がヴィッツ(12万8725台)だった。燃費、価格、サイズの面で上位3台の要素を兼ね備えたアクアが首位に立つのは、ほぼ間違いないと見られる。発売後1ヶ月の受注はすでに12万台を越えており、現行プリウスの登場時を上回る勢いになっている。

生産は関東自動車の岩手工場


こちらは東京モーターショー2011で関東自動車のブースに展示されたアクア(カスタムモデル)

車名「アクア」はラテン語で「水」のこと。生産拠点は関東自動車工業の岩手工場で、同社にとっては初のハイブリッド車になる。北米など海外には「プリウス c」の名で輸出される予定だ。

販売はプリウス同様に、トヨタ全店(トヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツ店)。なお、発売当初のテレビCMに使われたのは1979年のヒット曲、ブロンディの「ハート オブ グラス(Heart of Glass)」。車両キャラクターとCMソングの内容がここまで関係ない例も珍しい。

■トヨタ自動車>プレスリリース>新型車アクア発売(2011年12月)

価格帯&グレード展開

169万円からスタート。装備次第で200万円前後に


ヘッドライトはハロゲン(写真)が標準で、LEDロービームはセットオプション。いずれもライトユニット自体の見た目は同じ

グレード構成はシンプルで、以下の3つ。

「L(169万円)」
「S」(179万円) ※今回の試乗車
「G」(185万円)

特徴的なのは上位2グレードで、7つのパッケージオプションを自由に選べること。調子にのって選んで行くと、見積もりがえらく高くなりそうだ。この2つは15インチタイヤ、高遮音プライバシーガラスなどを標準装備。「G」はスエード調シート表皮のちょっとシックな仕様になる。

逆にエントリーの「L」は、14インチタイヤが標準で、唯一10・15モードで40.0km/Lを達成した燃費スペシャル。パッケージオプションは一切選べず、運転席シートリフターやテレスコピック機能、リアワイパーも省かれ、後席サイドウインドウは手回しになる。営業車向け?

パッケージング&スタイル

プラットフォームはヴィッツ譲り


ボディカラーはオレンジやイエローなど全10色。試乗車はクールソーダメタリック

プラットフォームは現行ヴィッツのフロントバルクヘッド回りからフロア前半を共有。駆動用バッテリーが搭載されるセンターフロア周辺を新設したもので、ホイールベースも40mmほど延長されている。

そうした床下構造の違い以上に目立つのが、最近のコンパクトカーでは珍しいほどの背の低さ。全高はヴィッツの1500mmに対して55mmも低い1445mmで、これはフィット(1525mm)より80mmも低く、低めのデミオ(1475mm)より30mm低い。後で触れるが、着座位置やアイポイントも全体に低めになっている。

ミニプリウス風だが、独自性もある

全体としては「ミニプリウス」風にも見えるアクア。なにしろ海外名は「プリウスc」というくらいだから、そう見えてもおかしくはない。例えば顔つき、ルーフライン、サイドまで回り込んだリアコンビランプなどに、プリウスっぽさが少し入っている。ただし限られたサイズの中で、空力やパッケージングを両立させつつ、アクアならではの独自性もしっかり盛り込まれている。見る角度によってラインがまったく違って見えるフロントバンパーもその一つ。

 

Cd値(空気抵抗係数)はプリウスの0.25には及ばないが、クラストップレベルの0.28を達成
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm)
トヨタ
ヴィッツ
3885 1695 1500 2510
マツダ デミオ
13-スカイアクティブ
3900 1695 1475 2490
ホンダ
フィット
ハイブリッド
3900 1695 1525 2500
トヨタ
アクア
3995 1695 1445 2550
トヨタ
プリウス
4480 1745 1490 2700

インテリア&ラゲッジスペース

質感はそこそこ。ただしデザインは技あり


「S」にはフレッシュグリーン内装とクールブルー内装(写真)を設定。内装色は他にアースブラウンとナチュラルグレーの計4種類

インパネは簡単に言えば水平基調だが、インパネ中央部の下端が助手席から斜めに降りてくるところなど、かなり個性的。スリット状に見えるセンターメーター、それに呼応して同じようにスリット状になった中央の吹き出し口など、なかなか芸が細かい。また小物入れが豊富であるなど、ユーティリティも一般のコンパクトカーに遜色ない。ただしシフトレバーはプリウスのような電子制御式ではなく、一般的なフロアタイプ。その意味ではプリウスよりも「普通のクルマ」っぽくなっている。

 

北米にも投入するということで、フロントシートは大柄。ポジションは低めだが、見晴らしは悪くない

質感はプリウスに比べて2クラスほど差が付いた印象。「ジオメトリックでモダンな面質」というのはiQにも通じるものだが、今ひとつ質感には貢献していない。試乗した「S」グレードの場合、シート地に大きく弧を描くラインが透かしのように入っているが、これがどうかするとシワのように見えてしまう。チャレンジングではあるが、少し好みを左右しそう。

普通のコンパクトカーに遜色ない後席。バッテリーはミッドシップに搭載


ドア開口部は大きく、足運びもスムーズにできる

全高は低めだが、後席の広さもまったく問題なし。フィットほどではないが、ヴィッツと大差ない感じで、デミオより広いかも。この手の空力志向型モデルではルーフが低いので乗降性が心配になるが、アクアの場合は大丈夫。男性だとちょっと頭を屈める感じになるが、気になるレベルではない。

バッテリーはミッドシップ?に搭載


後席を畳んだ状態。座面はもちろん固定になる

そしてアクアの場合、実は後席の下に駆動用バッテリー(プリウスと同じニッケル水素)が搭載される。プリウスにしろフィットハイブリッドにしろ、これまでのハイブリッド車は荷室床下(リアアクスルのやや後ろ)にバッテリーを積んできたが、アクアの場合は要するにミッドシップマウントだ。

となると後席座面のクッションストロークが心配になるが、座り心地は特に悪くない。もちろんバッテリーはアクア専用で、プリウスのものよりモジュール数を30%ほど減らし、小型化されている。また燃料タンクもヴィッツの42リッターから36リッターに小型化され、バッテリーの後方に配置されている。

ハイブリッドカーに見えない荷室


「S」や「G」グレードの後席背もたれは6:4分割式。「L」のみ左右一体式になる

駆動用バッテリーを荷室から排除したことで、容量はヴィッツを上回る305リッターを確保。デミオ(250リッター)はもちろん、VWのポロ(280リッター)も上回り、Bセグメントしてはフィットを除いて最も広いレベル。その代わり、後席は背もたれがパタンと倒れるだけで、荷室フロアとの段差が目立つが、これは純ガソリン車でもよくあること。知らなければ、もはやハイブリッドカーには見えない。

オプションでスペアタイヤを用意


上位グレードはパンク修キットが標準だが、オプションでスペアタイヤも選べる

上位グレードの「G」と「S」はパンク修理キット(電動コンプレッサー+修理剤)が標準だが、試乗車はオプションのテンパースペアタイヤ(1万0500円)に変更されていた。パンク修理キットより割高だが、修理キットが1回しか使えないのに対して、スペアタイヤは何度でも使えるし、バーストにも対応できる。というわけで、ベテランドライバーの間では今でも需要があるようだ。細かいことだが、テンパースペアタイヤはダンロップのインドネシア製だった。

基本性能&ドライブフィール

「ツーリングパッケージ」付は、言わばアクアRS?


試乗車は195/50R16タイヤと専用サスペンションを装備

試乗したのは中間グレードの「S」。車両本体は179万円だが、オプション込みで247万3130円という満艦飾な一台。走り出してまず、おおっと思ったのは、ものすごく足回りがシッカリしていること。「ツーリングパッケージ」(11万0250円)に含まれる専用サスペンションと195/50R16タイヤ(銘柄はヨコハマのデシベル)が効いているようで、そのシッカリ具合はスイフトスポーツと比べたくなるレベルだが、ボディが共振することはなく、ダンピングもよく効いている。この手のスポーツサスが好きな人には好かれそうな乗り味。ステアリングの反応もかなりクイックで、これは上位の「G」と「S」グレードに奢られるクイックレシオが効いているはず。少なくともツーリングパッケージ装着車の場合、足回りに限っては「アクア RS」と呼びたくなる。

 

逆にこの16インチ仕様で面食らうのは、小回りがめっぽう効かないこと。最小回転半径は標準仕様の4.8メートルから一気に5.7メートルに拡大。これはヴィッツRS(16インチ仕様)の5.6メートルを上回り、エスティマにも匹敵する大きさ。タイヤがワイドになった分、タイヤやチェーンのホイールハウス内への干渉を嫌って舵角が減らされているからだろうが、購入時にはよく納得してから選びたいところ。

バッテリーの搭載位置が効いている

ついでにワインディングでの走りに触れると、重心の低さと重量配分の良さが伝わってくる。前輪は上記のような理由でスパッとクイックに反応し、その後にグラッと来る感じやリアが腰砕けになる感じがない。これは約1.1トンという車重の軽さに加えて、リアミッドシップの最も低い位置に駆動用バッテリーを搭載したのが効いているはず。前後の重量配分そのものは690kg+420kg(62:38)と、まあ割と一般的なFF車の数値。ハイブリッド化によって、フロントとリアが同じように重くなっているようだ。

システム出力は100ps


インバーター(直流・交流の変換)とDC-DCコンバーター(電圧制御)で構成されるPCU(パワーコントロールユニット、銀色の部分)もプリウスより小型化

おなじみ「THS II」と呼ばれるハイブリッドシステムは、初代および2代目プリウスのものをベースに大幅に設計変更したもの。1.5リッターのアトキンソンサイクルエンジンは、「1NZ-FXE」という型式名こそ同じだが、約70%の部品を新設計。最高出力54kW(74ps)、最大トルク111Nm(11.3kgm)を発揮する。モーターはハイブリッドトランスアクスル共々、小型軽量化が図られたもので、最高出力は45kW(61ps)、最大トルクは169Nm(17.2kgm)。システム出力は現行プリウスの136psに対して100psだが、車重はそれより300kgほど軽い。

 

左が現行プリウス(排気量1.8リッター)、右がアクアのハイブリッドパワートレインと駆動用バッテリー。小型化されているのがよく分かる(東京モーターショー2011)

実際に走って感心するのは、プリウスと同じでエンジン始動時の音はほぼ皆無なこと。いつ掛かったのか音で判断するのはほぼ不可能で、エネルギーモニターで確認するしかない。またアクセルをよほど深く踏み込まない限り「ブォーン」と排気音が聞こえることもない。ただ走行中はロードノイズ(エンジン音も交じっているはず)が大きめなので、EVのような無音感覚は薄め。この点も現行プリウスに似ている。

 

ECOモードやEVモードはあるが、スポーツモードはない。シートヒーターはオプション

「エコモード」でも、動力性能は普通に走る限りは不足なし。特に動き出しは、プリウスほどではないが、モーターのトルクがあるので力強い。「エコモード」を切れば、トルク感がグンと増し、エンジンも若干高回転を維持するが、中間加速は思ったほど効かない感じもする。0-100km/h加速は10.7秒とのこと。2代目プリウスの10.5秒とほぼ同等だ。

また現行プリウスのようにEVモードでは55km/h程度までモーター走行が可能。満充電なら2km程度走れるようだ。車重が軽いので、このあたりの性能は現行プリウスに遜色ない。

 
    エンジン モーター システム
出力(ps)
10・15
モード
燃費(km/L)
最高出力(ps) 最大トルク(kgm) 最高出力(ps) 最大トルク(kgm)
トヨタ
プリウス
(初代・最終型)
72 11.7 45 35.7 31.0
トヨタ
プリウス
(2代目)
77 11.7 68 40.8 82 30.0~35.5
トヨタ
プリウス
(3代目)
99 14.5 82 21.1 136 35.5~38.0
トヨタ
アクア
74 11.3 61 17.2 100 37.0~40.0

試乗燃費は16.8~23.2km/L。JC08モードは33.0~35.4km/L

 

「アドバンストディスプレイパッケージ」(4万2000円)の5分間燃費グラフ。街中~郊外の一般道では20km/L台を前後することが多い

参考までに試乗燃費は、いつものように一般道と高速道路を様々なパターンで走った区間(約120km)が16.8km/L。一般道で燃費運転を心がけた区間の一回目(約30km)が23.2km/Lで、2回目(約35km)は23.0km/L。高速80~100km/h巡航時の燃費は20.2km/Lで、それ以上出すと20km/Lを割りそうな感じだった。そんなこんなで撮影も含めてトータルで371kmを走行。トータル燃費は18.3km/Lだった。

 

もしくはこんな感じ。平均燃費が30km/L超の区間は、渋滞区間(モーターのみで走行)か下り坂(エンジン停止)

なお試乗した「S」グレードの10・15モード燃費は37.0km/L。また冷間始動などが入るJC08モード燃費は、標準仕様では35.4km/Lだが、試乗車のようなオプション装着車(車重1090kg以上)は33.0km/Lに落ちる。さらに試乗車では16インチタイヤの影響も大きそうだ。

ハイブリッドは寒いのが苦手


これは一般道を35km走って、平均燃費23.0km/Lだった時の情報。外気温は4度Cとある。EV走行距離は59%に達している

先回のインプレッサに続いて、今回も気温0~6度Cくらいという寒い状況での試乗となり、エンジン暖機やヒーター性能確保のため、エンジン稼動時間が伸び、実用燃費に不利に働いた点を付記しておきたい。

ただし試乗車には、シートヒーターとのセットオプション(2万1000円)で排気熱回収器(触媒直後のエキマニから放出される熱で冷却水を早く温めるもの)が装着されていた。気温5度C程度でもかなり燃費に効果があるようだ。寒冷地仕様とのセットなら1万500円で装着できる。

ここがイイ

手頃なサイズ、デザインの良さ、高い実用性、居住性、しっかりした走り

小さなハイブリッド車であること。現行プリウスは人によってはもう「大きなクルマ」の部類に入ってしまう。アクアは初代プリウスと比べても、長さで300mmほど短く、幅は同じ5ナンバー枠いっぱいで、高さは45mm低い。これぞ日本で最も使いやすいサイズだ。そして居住性や小物入れ、荷室の広さなど、コンパクトカーとして不満がない。ヴィッツの代わりに買っても、まったく困ることはないはず。

コンパクトカーとしては低く構えており、スタイリングはよくまとまっているが、その割に室内は狭くない。インパネもセンターメーターや楕円ステアリングなど、プリウス伝統の未来感が継承されていて好ましい。シートも大柄で、太めのスタッフから小柄なスタッフまで良いシートという感想が得られた。

試乗したのが「ツーリングパッケージ」装着車だったせいもあるが、それを差し引いてもシッカリした走り。コンパクトカー、エコカーだからといってヘナヘナな足回りというわけでない。海外でも通用することを目指しているのだろう。

ここがダメ

物足りない実用燃費、インパネのデザイン細々、16インチ仕様の取り回し

プリウスよりも小型軽量で、排気量は初代&2代目プリウスの1.5リッターに戻り、さらに最新技術が盛り込まれたと聞けば、プリウスよりワンランク上の燃費性能を期待してしまうもの。しかし実際のところは、走り方や低温での試乗、オプション満載といった諸条件を勘案したとしても、実用燃費はプリウスと同程度。デイズで使い倒している初代プリウスの最終モノと大差ない。例えばJC08モード燃費でも、現行プリウスの30.4~32.6km/Lに対して、アクアはオプション装着車の数値を含めると33.0~35.4km/Lに過ぎず、仕様によってはほぼ差がないということになる。

内装の質感は、プリウスと比べて見劣りしてしまう。価格やクラスが違うから当たり前、というのがこれまでのトヨタ、もしくは国産車の考え方だが、VWアウディのようにクラスに限らず高い質感を与えるメーカーもあるし、VWアウディの場合、それが販売の好調さにも結びついていると思う。燃費もプリウスと同等であるなら、質感も同等とすればインパクトは大きかったはず。

 

インパネ形状では、ナビ位置が低過ぎることも残念。もう少し高い位置(空調の吹き出し口あたり)に欲しいし、できればセンターコンソールと一体化した造形にして欲しかった。試乗車の場合、純正オプションのナビは車両価格の1割以上を占める高価なもので、フリック操作も可能な通信タイプだったが、UI(ユーザーインターフェイス)はいま一つで、どうにも使いにくかった。

それからシフトレバーが昔のクルマ同様であるのも「後退」だと思う。ハザードボタンの下あたりに、ジャガーのようにせり出すタイプのダイヤルシフトセレクターがあったりすると高評価できるのに。ベストセラーカーのプリウスでやっと電制シフトが一般化してきたのに、なにやってんだか、と思ってしまう。

16インチ仕様の最小回転半径5.7メートルは厳しい。車庫入れやUターンでは、小さなボディサイズからくる取り回しイメージから隔たりが大きいため、ついついステアリングを切り遅れてしまう。せっかく買うなら、動きがクイックでスポーティな方がいい、と思っても、これでは買う気が失せてしまう。

総合評価

カタログ燃費より、クルマの本質

初代プリウス万歳な我々としては、それよりさらに小さなトヨタHV車は大歓迎。どんどん安くなるのも大々歓迎(いろいろとオプションを追加すると、同装備のプリウスと大差なかったりするが)。「質感を未来感でごまかす」なんて技がインテリアになかったのは残念だが、まじめに作られていることはよくわかるので、基本OKなクルマだ。日本人がもうみんなこのクルマに乗れば、久々に「一億総中流」という幻想が味わえるのではないか、と思ったりもするw。今の受注状況を見ていると、現実にそうなってしまいそうなのがちょっと怖かったりもするが。なぜ日本だけアクアという車名になったかといえば、プリウスcだと日本のクルマがほとんどプリウスになっちゃうからだろう。さすがにそれはまずいとトヨタも思ったのでは。

 

買おうとしている人が一番気にしているのはやはり燃費だと思うが、カタログ値と実際の燃費の違いは、悩ましく思うところだろう。これは性能を数値として繰り返しアピールすることが、一番分かりやすくPRできる、というか、プロパガンダできるというメディア社会の宿命。昔は最高速度とか、ゼロヨン加速何秒とかが謳われたものだ。そのために数値を表立って出すためには、厳格なルールに乗っ取った権威ある官製テストの結果(10・15とかJC08とかのモード燃費)が必要となる。そしてテストとなれば、それをクリアするワザが生まれる。

学校で優等生と言われた人たちは、頭の良さに加えて、「勉強の仕方」を身につけていたはず。いかにして試験でいい点を取るかということは、ひとつのテクニックだと気付いていたはずだ。本質とはあまり関係なく、点を取るテクニックが賞賛されるわけだが、カタログ燃費の話はこれに近い。クルマの本質とは関係なく、アピールするためのテクニックで作られた数字が今のカタログ燃費と言える。乗る側としては官製とも言えるこの数字に惑わされず、クルマの本質を評価することが重要だと思う。

もっと車両データを!


TFTマルチインフォメーションディスプレイ。これはエコ運転度を評価してくれる「エコジャッジ」画面

そこで今回特に思ったのは、走らせ方や外気温などの条件で燃費は大いに変わるということ。例えばモード燃費は基本的に空調OFF、外気温は25度C前後で計測されているが、現実の世界では夏場であればエアコン(冷房)を使うし、冬場であればヒーターを使う。現行プリウスやアクアの場合、冷房用のコンプレッサー(ACコンプレッサー)は電動化されているが、ヒーターは基本的にエンジン稼動によって生まれる熱を利用するので、外気温の低さも燃費悪化の要因になる。

また10・15モード燃費は最高速度70km/h、JC08モード燃費は80km/h程度で計測するが、今回の試乗でも高速道路をちゃんと法定速度内で走るか、燃費を意識して丁寧に運転すれば20km/L台は楽に出せた。燃費に関しては、機械(クルマ)のせいにしない、メディアのせいにしない、ということだと思う。


これは「エコウォレット」機能

そのためには、もっと車両からのデータが欲しいと思う。アクアのマルチインフォメーションディスプレイには様々な車両情報やエコ情報が表示され、中には「エコウォレット」という、比較対象車よりガソリン代がいくらお得になったかを表示する機能もある。

ただこのデータが車両内で閉じているのが残念だ。こういう情報こそ、スマホにデータが飛んできて、アプリで自由に表示できるようになるべきだろう。2月2日に発表されたトヨタ・ハチロクでは、グローブボックス内のUSBソケットに、別売りのデータロガーを差し込み、そこから車載LANである「CAN」の車両情報を30種類ほど(車速、位置情報、エンジン回転数、ステアリング舵角、ペダルストローク量、車両の前後加速度、横加速度、ヨーレート、ABSやVSCの作動など)をBluetooth(BT)でスマホに送って、これを専用アプリで見られるという。しかもこれを使ってゲームのグランツーリスモ内で車両の挙動をシミュレーションできるらしい。トヨタは「車両情報を得るためのソフトウェア開発キットを公開し、多くのソフトウエア技術者にアプリケーションを作ってもらえるようにしたい」とも言っているようで、これは画期的な話だ。

要するに、こんなおいしい話を走り屋に独占させておく必要はなく、当然エコドライブにも使うべき。CAN-BTはプリウスPHVで初採用されると聞いていた話で、本命は走りでなくエコの方のはずだ。CAN-BTが採用され、アクアの車両情報をスマホでいじれるようになれば、かなり多くの「好きもの」日本人が飛びつくはず。そして多くの人が、新たにクルマに興味を示すようになるだろう。

 

そしてこの話は、やがてスマートグリッドにもつながっていくはずで、その端末としてのアクア、という位置づけともなれば、クルマが生きていく新しい方向を示せる。プリウスPHVの次には、アクアPHVもいずれ出てくるだろう。そしてそのCAN情報をアプリで見ながら、エコ運転の方法をあれこれ工夫する、などという楽しみが新たなクルマの走らせ方になる日は遠からずやってくる。

今回アクアが、一気にそこまでの未来を見せてくれたらよかったのだが、まだそこまではいっていないのが残念。しかしアクアでハイブリッド車がまた一気に数を増やし、それによって次の世界につながる扉も少しだけ開きやすくなるだろう。試乗車のHDDの中にあったパフュームの音楽データを聴きながら、「音楽ではテクノが一般化したのだから、クルマでテクノが一般化するまで、もう少しの辛抱」などと思いつつ、マルチインフォメーションディスプレイを色々と切り替えてみたのだった。

試乗車スペック
トヨタ アクア S
(1.5リッター直4+モーター・179万円)

●初年度登録:2011年12月●形式:DAA-NHP10-AHXNB ●全長3995mm×全幅1695mm×全高1445mm ●ホイールベース:2550mm ●最小回転半径:4.8m ※試乗車の場合、ツーリングパッケージ(16インチタイヤ)装着により5.7m ●車重(車検証記載値):1080kg(-+-) ※試乗車の場合、SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ、シートヒーター&廃熱回収器、ツーリングパッケージの装着により各10kg増加し、1110kg(690+420)●乗車定員:5名

●エンジン型式:1NZ-FXE ●排気量・エンジン種類:1496cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:75.0×84.7mm ●圧縮比:13.4 ●最高出力:54kW(74ps)/4800rpm ●最大トルク:111Nm (11.3kgm)/3600-4400rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/36L

●モーター形式:1LM ●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター) ●定格電圧:-V ●最高出力:45kW(61ps)/-rpm ●最大トルク:169Nm(17.2kgm)/-rpm ●バッテリー:ニッケル水素電池

●システム最大出力:73kW(100ps)/-rpm ●システム最大トルク:-kgm(-Nm)/-rpm ●10・15モード燃費:37.0km/L ●JC08モード燃費:35.4km/L ※試乗車の場合、オプション装着により車重が1090kg超のため33.0km/L

●駆動方式:FF ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 トーションビーム+コイル ●タイヤ:195/50R16 (Yokohama decibel E70) ●試乗車価格:247万3130円  ※オプション:ツーリングパッケージ 11万0250円、スマートエントリーパッケージ 5万3500円、アドバンストディスプレイパッケージ+ナビレディパッケージ 7万4550円、ビューティパッケージ+シートヒーター&排気熱回収器 4万8300円、SRSサイド&カーテンエアバッグ 4万2000円、革巻ステアリング 2万6250円、プレミアムナビ G-BOOK mX pro 31万1325円、ETC 1万6905円 ●ボディカラー:クールソーダメタリック ●試乗距離:約370km ●試乗日:2012年1月 ●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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