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新車試乗記 第34回 トヨタ ビスタ アルデオ Toyota Vista Ardeo

 

日時: 1998年07月24日

 

キャラクター&開発コンセプト

セダンとワゴン、2つの新世紀ベストパッケージを追求

'82年の誕生して以来、ずっと目立たないミディアムセダンであったがビスタが、名前以外は全く関連をもたないほどドラスティックな変貌を遂げた。5代目となる新型ビスタは、新開発のプラットホームを使って、先進のパッケージングにより、ラージクラスに匹敵する室内空間を実現。ハードトップを廃してステーションワゴンのアルデオをラインアップに加えた。人間の使い勝手を最優先した内外のデザインワークは、これまでのセダンおよびワゴンの概念を大きく変えるほどインパクトがあり、まさに21世紀のスタンダードを目指したトヨタの意欲作となっている。

価格帯&グレード展開

低公害、低燃費をウリにした2つのエンジンをラインアップ

基本グレードは「アルデオ180」と「アルデオ200」。前者は新開発のオールアルミ1.8リットルエンジン(燃費17%向上)、後者はコロナプレミオにも搭載されている2.0リットル直噴エンジンD-4が搭載される。また、アルデオ200には通常2.0リットルEFIエンジンの4WDもラインアップする。これらの基本グレードに装備内容の異なるE/L/S/Gセレクションが用意され、価格は179.8~262.3万円。

この他、エアロパーツを装着したスポーツ志向のアクティブスポーツ(236.0~262.5万円)や身体障害者のために改良されたウェルキャブシリーズ(219.6~276.4万円)なども本カタログに記載されている。

パッケージング&スタイル

時代の変化を感じさせるニュースタイルパッケージ

外観上、最も目をひくのが1515mm(セダンは1505mm)という全高。これまでのセダンが狙っていた「スタイリッシュさ」とは全く方向性が異なるもので、一連のライバルと比較しても100mmほど高く、ウインドシールドの下端を100mm以上前進させ、ルーフやサイドの前後をほとんど絞り込んでいない塊感のあるデザインは、パッケージ効率優先の処理と解釈できるもの。立体駐車場にも難なく入れるという巧みなパッケージングであり、この前後を切りつめたショートオーバーハングに背の高いプロポーションこそがアルデオ最大の個性といえる。背の高いクルマはどうしても腰高になる傾向が強いが、そんな印象は受けず、ピラーの太さと相まって非常にどっしりとしていて悪くない。フロント、リアのデザインがあまりにも保守的で、新しさを訴えるのには少し寂しい感じもするが、プリウスのような特別なクルマではなく、比較的多くの人に乗ってもらうクルマだから、このくらいの処理でちょうどいいのかもしれない。

センターメーターを採用した未来感覚のインパネ

photo_3.jpg個性的な外観に負けず劣らず、インテリアも超個性的。先にプリウスで見せた左右対称センターメーターを遂に大衆車ビスタで実現させているのが最も注目すべきところ。シフトポジションインジケーターはドライバー正面に配置するが、スピードメーター、タコメーター、燃料系などはセンター部のディスプレイに映し出され、ナビ画面もここに納まるというもの。視線移動が少なくて済み、ナビのスイッチも手元のセンターコンソールにあるので、使い勝手もいい。未来的なインパネデザインとマッチしたオーディオや電気式3連ダイヤル型空調パネルは、見栄え、操作感ともに2重マル。加えて内装色の淡いミストグリーン(ベージュ色もある)もこれまでにない新鮮なもので、未来を予感させるには十分な演出だ。

ワゴンなのにミニバン的なキャビン、使い勝手はミニバン以上

前後左右にウォークスルーを可能(セダンも可能! )としたキャビンはむやみに全高を高くし、頭上空間だけを稼いだわけではない。綿密な実験を重ね、前席ヒップポイントを35mm、後席ヒップポイントを40mmも上げ、着座姿勢そのものを見直している。シートスライドと連動する大型センターコンソールも面白い試みだ。ビッグなシート自体もかなり気合いの入った構造で、分厚いクッションは何となくフランス車風。もう少しフィット感が欲しいところだが、座ったときの感触はいい。リアも当然だだっ広い。左右分割でシートスライド可能で、最高端にセットすればセルシオ並の足元空間が確保できると言うことだが、感覚的にはそれ以上の広さを感じるもので、ミニバンに乗っている錯覚さえする。

ラゲッジの使い勝手もいい。ラゲッジフロアは若干高めだが、フロア下のサブトランクが深く大容量を誇っている(灯油缶が上手く納まる設定がおもしろい)。狭い場所でも開閉できるガラスハッチは手荷物の出し入れに重宝する。ここで高いフロアが逆に活かされ、小柄な人でも無理な姿勢をとらずにすむというわけだ。リアシートバックを倒せば広大なラゲッジルームが出現するが、シートバックは水平にはならない。荷物満載のヘビーユーザーには向かないが、大抵のユーザーならこのスペースで十分事足りるはずだ。

基本性能&ドライブフィール

実用域でのパワーは十分。ただリアシートに振動が伝わる

2.0リットルのFFモデルにはコロナプレミオに採用された直噴ガソリンエンジンD-4(135PS・20.0kgm、10・15モード燃費15.4km/リットル)が搭載されるが、試乗した1.8リットルエンジン1ZZ-FE型もなかなかの優れモノである。レギュラーガソリン仕様で最高出力130PS/6000rpm、最大トルク17.4kgm/4000rpm、10・15モード燃費15.0km/リットルを誇り、4気筒エンジンとしてはプリウスに続くオールアルミ製だ。従来型スチールブロック製に比べ、約30kgの軽量化が達成され、車両重量も2.0リットルモデルより60kg軽いため、通常考えられる走行では全く不満を感じることのない十分な出力を獲得している。現代のクルマらしくトルクは低中速重視の設定で扱いやすく、3000回転くらいまでなら、エンジン音もほとんど気にならない。フィーリング的にはモーターみたいな感じのエンジンだ。中間加速ではシフトショックが多少認められ、エンジン回転数も高くなり、それなりに騒音が聞こえるものの、音質的には嫌味のないもの。路面の継ぎ目を通過するときに発せられるノイズが大きいのが気になるくらいで、不快感は薄い。

と、気を良くして後席に乗り込むと、「あれま!」アイドリング時から振動がけっこうお尻に伝わるではないか。ベスト・パッケージだけにちょっと残念である。

上質なタッチで平凡な乗り味だが、高速走行は安心

全体的な印象は「ま、トヨタとしてはこんなもんだろう」である。FFモデルの前後サスペンションは基本的にプリウスと同様の足をもった新型ビスタだが、プリウスほどの感動は得られない(当たり前だが)。それでもトヨタの中核を埋めるべき重要モデルだけに、足まわりはしっかりしており、高速巡航では安定した走りを披露。150km/hを超えても全然安心。これは評価できる。乗り味もちょっぴり柔らかい上質なもの。

試乗したSパッケージにはステアリングのスイッチでマニュアル操作が楽しめるというステアマチックが装備されている。コラムシフトなので、こういった装備は走り好きの人にとって有り難い装備に写るが、実際に使ってみてこのクルマの性質上、特に必要ないな、と感じた。またスイッチが裏表にあるのはやっぱり使いやすくない。表にまとめるべき。

ここがイイ

とうとうこのクラスにまで手をつけ始めたトヨタの未来車提案。内外装ともにまったく今までと違うコンセプトで作られていることはすごいとしか言いようがない。インパネは単なるメーターからディスプレイの時代への変更を意味し、パッケージは従来のセダンやワゴン、ミニバンといったカテゴリー分けを曖昧にしていくだろう。使いやすい新しいカタチの「21世紀カー」がだんだん出来上がってきている。トヨタのFFプラットフォームはビスタのものがこの先スタンダードになるようだし、コロナも、カリーナもみんなこんなカタチになっていくのだろう。トヨタは世界中のどのメーカーより完全に数歩先を行き始めている。乗り降りを楽にする、メーターを見やすくする、障害者のための福祉車両ウェルキャブシリーズを用意するなど、間近に迫る高齢化社会をも見据えたトヨタの姿勢は、評価云々よりただただ感心させられ、他のメーカーが心配になってしまう。

ここがダメ

具体的にいくつかあげよう。まず、センターコンソールボックスは全車オプションにしてウォークスルーを優先して欲しい。またキチッと座るとシートがどうにも馴染まなかった。ちょっとルーズに座るとちょうどいい感じ。これは困る。カーナビがないセンターディスプレイは相当マヌケ。数字がクルクル変わるバーグラフタコメーターは10数年前に否定された代物。カーナビを低価格で有無を言わさず標準装備にすべき(もちろんモネ付きで)。

総合評価

photo_2.jpg21世紀を見据えた「提案型商品」であるプリウス、プログレは、どちらかといえば特別な存在であり、別に売れなくても(売れるにこしたことはないが)構わないクルマだが、同じ「提案型商品」でもある新型ビスタになると事情はガラリと変わる。ビスタは多くの一般ユーザーをターゲットとしており、そうした状況に投入された新型ビスタだけに、特にセダンは、プリウス、プログレよりも圧倒的な未来性を表現していると思う。なぜビスタなのか? 恐らくビスタを扱う「ビスタ・チャンネル」がトヨタの販売チャンネル中、最も若く、過去のこだわりが薄いということなのだろう。それにもはや誰も振り向いてくれないビスタを大胆に変えても、悲しむ人は最小限で済む。いきなりコロナをこうしちゃうというのは、さすがにトヨタも怖かったので、数の少ないビスタでまず試してみたということのなのだろう。

 

公式サイトhttp://toyota.jp/

 
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