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新車試乗記 第138回 トヨタ アリスト Toyota Aristo

 

日時: 2000年09月08日

 

キャラクター&開発コンセプト

トヨタが新しいFRパッケージとして投入した高級スポーツサルーン

車格的にはクラウン相当にあたりながら、保守的な高級サルーンにありがちな旦那ムードを払拭した高級スポーツサルーンがアリストだ。2代目にあたる現行型の登場は97年8月。ショートオーバーハングのアグレッシブなスタイルに、ドライバーのためのコックピット。そしてキレのある走り。同クラスでは異例といえるほどスポーティー&スペシャリティ色が強く、それでいて質感はトヨタ製高級サルーンそのもの。アメリカでもトヨタの高級ブランド「レクサス」から発売されており、世界に通じる高級スポーツサルーンとして認められつつある。

今回のマイナーチェンジではあまり外観には手は加えられず、もっぱら走りを中心とした中身の充実に力が注がれている。その一例が、NAモデルの「S300」に採用された5速ステアシフトマチックだ。なお、駆動方式はFRで、搭載されるエンジンは3l直6のNAとターボの2種。乗車定員は5名となる。

価格帯&グレード展開

価格は全体で数万円アップ、S300にウォールナットパッケージを新設定

グレード構成はターボ版の「V300」(442.0万円)とNA版の「S300」(366.0万円)の2本立てで、価格は従来より前者が6万円、後者が10万円アップとなっている。V300の装備はS300に対し、ディスチャージヘッドライトの採用、オーディオの高性能化、タイヤサイズのインチアップ化、木目パネル色のダーク化など、かなり差別化が図られている。

これらに従来と同じく17インチメッキホイール、ダーク木目調パネル、ディスチャージヘッドライトなどをセットにした「ベルテックス・エディション」が13~21万円アップで用意されているわけだが、今回の最大のトピックスは、別に木目パネルをウォールナット製とした「ウォールナットパッケージ」がS300に新設定されたことだ。オシャレ度が増して価格はベースより36万円高い402万円。

パッケージング&スタイル

内外装のデザインは小変更に止まる

まず、外観デザインの変更点は、フロントグリル、テールランプ、アルミホールのデザインとマフラーフィニッシャーの口径が拡大されたぐらい。あと、ヘッドランプも塗装処理が施されているとのことだが、そう指摘されても分からないほど、外観はほとんど変わっていない。ボディサイズも変更なし。強いて分かりやすい識別ポイントを挙げるなら、テールランプということになる。

ほとんど変わっていないといないといってもデビュー当時の新鮮味は全く失われていない。そもそもアリストは国産高級車にショートオーバーハング&ロングホイールベースを採用した先駆け的存在。個人的に現行型のスタイルが気に入っているからか、街中でアリストを見かけると、どんな人が乗っているのかが気になってしまう。ちなみに筆者の周りでは、昔ならセド/グロに乗っていそうな、ちょっとした不良中年がアリストを支持している。

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こってり肉厚感漂うインテリアでは、メータークラスターがグレーメタリックに変更され、ベルテックスエディションのシート表皮をブラックに統一させるとともに質感を向上させている。また、盗難対策のために電子キーの一種「イモビライザー」や、安全性向上のための「カーテンシールドエアバッグ」も採用されている。

登場当初の試乗から3年ぶりに乗り込んでみて、まず感じたことが、「外観の斬新さに比べ保守的」ということ。ここ2、3年の間でトヨタは、センターメーターの採用などスゴイ勢いで斬新なデザインをインテリアまでに取り込んでいるものだから、アリストのインテリアが、はやくも古めかしく見えてしまうのだ。特にセンタークラスターに収まるナビとエアコンの配置。特にナビ位置が低すぎるのは誰の目からも明らかだろう。さらに試乗車を借り出したのが(運悪く? )ニューセルシオの発表会の時期ということもあって、シート表皮をはじめとする質感まで古くささを感じてしまう。こうなってしまうと白色に基盤が浮かび上がる独立3眼メーターも、どこかオモチャっぽい。とはいえ冷静に考えれば、機能的には高級車として不満はないわけだし、包み込まれるようなタイトな運転席もスポーティーといえばスポーティーで、それなりにワクワクさせるものはある。他メーカーと比べれば、まだまだ一級品だ。

基本性能&ドライブフィール

パワースペックに変更ナシ。S300にステアシフトマチック5速ATを採用

搭載されるエンジンは「S300」に3.0l直6(最高出力230PS/6000rpm、最大トルク31.0kgm)と、「V300」にそのツインターボ仕様(280PS/5600rpm、46.0kgm/3600rpm)。どちらもスペック的な変更はないが、S300のNA仕様は平成12年基準排出ガス25%低減レベルを達成し、環境性能を向上させている。また、ブレーキマスターシリンダーの大型化など、両車ともにブレーキフィーリングやダンパーの減衰力など走行性能に関わる細かな部分を改善してある。

そしてAT。従来と同じ4速のままのV300に対し、S300はスーパーインテリジェント機能採用の5速ATが新たに搭載されることになった。実は、これが今回の目玉。おそらくクラウンの3.0lD-4エンジンと組み合わせられている5速ATからの流用で、減速比は微妙にローギアードとされているものの、変速比は全く同じだ。また、トヨタ独自のステアシフトマチックも採用されており、操作方法はトヨタのロジック通り、表が「ダウン」、裏が「アップ」となっている。

操る楽しさはV300よりもS300のほうが上

試乗したのは今回の主役、S300。乗り心地、操作フィーリングともに、このクラスのクルマとしては他と一線を画す味付けだ。路面からのインフォメーションはよく伝わり、パワステもこのクラスのクルマとしてはかなり重め。ステアリング操作に対する応答性が正確そのものであり、スポーティーという点ではクラウン・アスリートよりも一歩上をいく。それでいながら、走りに全く荒々しさはなく、不快な突き上げも全く伝わってこない。高級車の快適性、静粛性は微塵も損なわれていないのがいい。

加速はNAとはいえ十分に速い。どの速度域からアクセルを踏んでも、欲しいだけの加速感は得られる。確かにV300は目が覚めるような力強さで刺激的ではあるが、結局は速いだけで、それに慣れてしまえば、あとは退屈。その点、S300のほうがずっと面白みがある。例えばV300だと、どうしても思った以上の加速となり、その分、微妙な自制心が必要となり、知らず知らずの間に気を遣う運転となる。その点、S300の加速感はドライバーの意志にズレがない走りで、自然体で運転することができる。また、コーナリングでは、V300だとVSCの制御が過剰気味でパワーをもてあそんでしまうところでも、S300だったらフルに近い性能を引き出すことができる。パワーを十分使い切って走れる快感はS300の方が強い。

何よりそのスポーティーな走りをさらに楽しませてくれるのが、ステアシフトマチック5速ATだ。レッドゾーンの6500回転までキッチリ回すことができ、勝手にシフトアップしないから、そのまま高回転を維持して走らせることもできる。また、4速よりも5速の方が当然、回転の落ち込みが小さく、シフトショックも小さいので、それがかえって快適性の向上にもつながっている点も見逃せないところ。

ただ、残念なのは、クラウン・アスリートも全く同じだったが、任意のギアを完全に固定できないこと。例えば「3」にすると1速~3速の間で勝手にシフトチェンジをしてしまう。これでは普通のATと何ら変わりない。それでも従来型より積極的にシフトチェンジをしてやろうという気になるのも確か。S300ではスポーティー車といえるだけの、このクルマ本来の操る面白みが確実に増している。

ここがイイ

S300にシフトマチック5速ATが採用されたこと。これまでアリストというとバカッ速いV300ばかり目立った存在だったが、今回のマイチェンではS300とV300との魅力の差が縮まり、商品力が増した。これで発進加速においても、中間加速においても、やっとシフトマチックを操っているという感触が持てるようになったのだ。53:47の前後重量比でハンドリングも素直だ。パワステも重めでいい感触。今回からVSCは実際の限界近くまで動作しないようになり、この安全マージンを保ちながら、シフトマチックでコーナーを攻め込めるのは、なかなか未来っぽい。

ここがダメ

そのシフトマチックが不満なのは皮肉。やはり表裏で押し分けるのは直感的でなく、表ですべて済ましてしまいたい。トヨタの場合、昨年のモデルあたりからボタン位置が改善され、裏表でもずいぶん押しやすくなったが、ステアリングを回せば、いずれにせよ使えなくなってしまう。3本スポークのステアリングにして、3カ所にスイッチを置き、親指の腹だけで押し分けられる、というのが理想、というか希望なのだが、どのメーカーも実現してくれないのはなぜ?

総合評価

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走り良し、スタイル個性的、高級感十分、ステイタス感もアリ、とくれば全方向死角なしの高級セダンだ。ちょっと小金のあるオヤジや、VIPカー志向の若者にウケルのもよくわかる。ベルテックス・エディションのメッキホイールが象徴するように、ヨーロピアンというよりアメリカンなマッスルカーというムードも、今の時勢にマッチしているところ。

230馬力をフルに使って走ることができるだけに、公道では確かに充実感がある。が、走りこむうちにここ一番のモアパワーが欲しくなってきた。こうなるとツインターボを選べば、ということになるが、V300は残念ながら4速ATのまま。その意味では、今回NAはもう少しパワーアップして登場してもらいたかったところ。とはいえ、アリストといえばターボ、という印象はこれできれいさっぱり消えた。一度試乗してみることをオススメしたい。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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