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シボレー アストロ LT 4WD新車試乗記(第310回)

Chevrolet Astro LT 4WD

(4.3リッター・4AT・405万円)

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2004年03月19日

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キャラクター&開発コンセプト

アストロがスズキのお店で

米国GMグループの一翼を担うスズキは2004年1月9日、SUVのトレイルブレーザーとミニバンのアストロというシボレー2車種の輸入販売を発表、トレイルブレーザーを同日、アストロを3月上旬に発売した。

従来、シボレー車は主にヤナセやスズキアリーナ店が販売していたが、2003年10月に輸入権がスズキに移管されたのを機に、今後はシボレー専売店のGMシボレー店(旧GMオートワールド店)などが加わり、取り扱い車種も再編されるようだ。ただし、コルベットは引き続きヤナセと、GM独自の販売チャンネルとなるキャデラック店が販売するという。

20年にわたるロングセラーモデル

シボレー・アストロ(兄弟車はGMC・サファリ)は、1985年発売の商用バンベースのミニバン。米国で「バン」と言えば、GMで言えばエクスプレスといったフルサイズバンが一般的なので、一回りボディが小さくてV6エンジンのアストロは「ミニバン」となる。

そして今やミニバンと言えば、モノコックボディや前輪駆動車が一般的になりつつあるが、アストロの場合はラダーフレームで、後輪駆動がベース。発売以来20年近く経つ間に質感や操作系、電子制御などは進化したが、基本構造は大きく変わっていない。今回の2004年モデルもアルミホイールのデザインが異なる程度だ。

一方で室内の広さや運転のしやすさ、スタイルなど、「これじゃなきゃ困る」と感じるユーザーは多いようで、日本での目標販売台数も年間800台と、その需要は侮れない。

価格帯&グレード展開

314~424万円。標準LSと豪華版LT

グレードは基本的に3種類。8人乗りの「LS」(2WD:314万円、4WD:364万円)、7人乗りの「LT」(4WDのみ:405万円)となる。LTには本革シート仕様(424万円)の設定がある。

LSとLTを同じ4WDで比べると、41万円差で主に内装まわりが違うだけ。具体的には、前席(LS:ハイバック、 LT、ヘッドレスト別体バケット)、2列目(LS:ベンチ、LT:キャプテン)、3列目(LS:背もたれ左右一体、LT:同左右独立)、リア席用オーディオスイッチ、革巻ステアリングなど。キャプテンシートと革内装にこだわらねば、LSで十分、という内容だ。

パッケージング&スタイル

走るアメリカ製冷蔵庫?

ボディサイズは全長4805mm×全幅1960mm×全高1930mm。幅は完全にアメリカンだが、全長はけっこう短いし、幅と高さがほぼ同じのため、見た目のバランスが良い。

何と言うことのないカタチだが、工業デザインとして秀逸だし、少数派になりつつある箱型ボディが今や個性的だ。試乗車のボディカラーがソリッドの白だったため、巨大な冷蔵庫とか洗濯機とか、米国製のいわゆる白モノ家電を思わせる。ただしGE (ゼネラル・エレクトリック)製ならぬGM製だ。

近代化&熟成の操作系

操作系や計器はそれなりに近代化されているインテリア。例えばライトスイッチは1990年代前半のスイッチ式から、欧州車で一般的なダイアル式に変更されている。エアコンはマニュアル式で、もちろんリアクーラーを装備。パーキングブレーキはトヨタの上級セダンやメルセデス・ベンツ等と同じ、足踏みの手戻しだ。コラムATは、重い荷物を運んだりトレーラーを牽引する時に、不要なシフトチェンジを抑える「トー/ホール」(tow=牽引、haul=運搬)モードを備える。

シフトレバーをP位置から動かすと、自動的に集中ドアロックが掛かる。P位置に戻すとロック解除。つまり、Dにいれたまま停車して同乗者が降りる時は手動でロック解除する必要がある。ただし、これは標準設定で、取扱説明書に従って自動ロック無しに設定変更できる。

サンバイザーは横からの日差しも遮るダブル式。バックミラー付近もカバーする補助バイザーも付く。太陽を遮るものが無い場所で同じ方角を走り続けることが多いアメリカならではの便利装備。大型ドリンクホルダーも使いやすい。

習うより「慣れる」

ギリギリまで室内空間を広げたため、駆動系が室内に侵入。おかげで助手席の足元は驚くほど狭い。センターコンソールがドライバーに向かって傾くこともあって、助手席乗員は少し冷遇された感じを受ける。

 

運転席は6方向(前後、上下、座面角度)を電動で調整可能。スイッチがまったく取って付けたようで操作しやすいとは言えないが、すぐに慣れる。リクライニング調整はレバー。座面横のダイアルは座面の高さ調節かと思いきや、なぜかランバーサポート用。ロジカルな欧州/国産車に比べると、良くも悪くも設計思想の違いは歴然としている。

楽々ウォークスルー

前席と作りが大差ないキャプテンシートの2列目。床面が高く、天井も思ったほど高くないが、ウォークスルーはすごく簡単だ。全幅1960mmのなせる技で、国産ミニバンとの大きな違いの一つと言える。

数少ない短所の一つが、スライドドアが右側しかない点。ライバル車もつい最近まで片側だけが多かったから、これは仕方のないところ。左側に101リッターのガソリンタンクがあり、ゼロから設計変更しない限りドアを付けるのは難しいからだ。

脱着式サードシートは座面こそ短いが、二人で使うなら座り心地はまずまず。横方向、縦方向の空間は十分で見晴らしも良く、バスみたいだ。走行中も排気音はほとんど聞こえず、ロードノイズも気にならない。また意外に縦揺れが少なく、乗り心地も良好だ。

まさしく冷蔵庫

リアゲートは3分割の「ダッチドア」(上下別々に開くドア)を採用。ガラスを跳ね上げるだけで荷室床にちゃんと手が届くし、下のドアを開ければ両開き冷蔵庫のように荷物の出し入れができる。荷物の散乱を防ぐカーゴ・コンビニエンス・ネットが付属する。

基本性能&ドライブフィール

案ずるよりも運転するが易し

とても運転しやすいというのが第一印象。大きなクルマを運転するぞという気負いは、タイヤが転がり出した瞬間から消える。大きさの割に、という注釈は必要ない。短いボンネット、見切りが良いボディ、軽々と回るパワーステアリング、最小回転半径:6.5メートルという数値がウソのように感じられる取り回しの良さ、低回転からトルクフルに反応するエンジンなどなど。運転に自信がない人でも一度ステアリングを握れば、運転のしやすさに驚くはずだ。

目線の高さもその理由の一つ。高い位置に座ってる感じはそれほどしないが、まわりを見渡すとトヨタ・アルファード、日産エルグランドなど、世のほとんどのミニバンを上から見下ろせる。4トントラックと同じ目線。大型観光バスや10トントラックには、さすがに負けるが。

最新に負けないローテク

基本設計は1985年当時と同じと思われる4.3リッターV型6気筒OHVエンジン(193ps、34.6kgm)は、絵に描いたような低速トルク型で、タコメーターがないので回転数は分からないが、V8っぽいV6サウンドをマイルドに響かせながら、2120kgのボディをゆったり引っ張る。回転でパワーを稼ぐエンジンと違って、せかせかした感じがない。ローテクな機械が持つ、スペックには表れない快適さがある。

乗り心地はまさにバスのよう。ゆったりした加速、前後、左右の揺れが意外に少なく、それでいてボディが荒れた路面でブルッと揺れるあたりがそうだ。つまり、ガチッとした剛性感や驚くような静粛性はないが、なんとなく快適というものだ。

法定速度で最適化

今回は高速道路を300kmほど試乗。快適な速度域は80~120km/hくらい。これは米国の郊外の道路に多い制限速度の時速55~75マイル(約90~120km)に匹敵する。彼の地ではスピード取り締まりが厳しいのでこれ以上飛ばすことはまずない。3車線以上が多いので慌てて追い抜く必要もない。つまりクルーズコントロールで一定速度で走る時の快適性が重要で、アストロはその要求にピンポイントで応える。条件としては日本の高速道路に似る部分があるから、こうした点も人気の理由の一つだろう。

試乗車の場合、ルーフレールの可動式横バーが共振を起こすのが気になり、あまり飛ばさなかったが、その気になれば 150km/hも可能。しかし、そのスピードだと心地よいゆったり感がなくなり、すぐに飽きる。パワーステアリングのフィールが曖昧かつ過敏なのも気になった。もう少し中立付近でビシッとしていれば高速巡航がさらに楽になりそう。

山道はマイペース

操縦性は基本的にはFRベースらしい素直な挙動。トレッドが広いのでロール感は小さいが、パワステのフィールがおぼつかないので山道でのペースは上がらない。ブレーキ性能もそこそこ。そもそも、絶対性能を使い切って走るような設計思想ではない。サスペンションは前がダブルウイッシュボーン式コイルスプリング(試乗車の4WDは同じダブルウイッシュボーンながらトーションバースプリング)、後ろがリジッドのリーフスプリング。

燃費に触れると、参考値ながら付属の瞬間燃費計は100~120km/h巡航で約8km/Lを表示。試乗車の4WDの場合、10km/Lは難しかった。撮影や都内の渋滞も含めて、最終的には6km/Lあたり。指定燃料はレギュラー。アメ車は大食いという先入観はあるが、実際のところ国産/欧州製の同クラスと実用燃費では大差ないかもしれない。

10年10万kmを経ても不変!?

ところで、この04年モデル試乗の二日後、11年落ち、93モデルのアストロに乗る機会があった。当たり前というか驚くべきというか、その印象は良くも悪くも「基本的に変わってない!」というもの。明らかな違いは、細かいスイッチ類の近代化や質感の向上くらい。エンジンの好ましい力感、パワステのかるーいフィール、運転のしやすさ、ブルッと震えるボディなど、10年10万km経っても大きな変化なし。ある意味、これは凄い。

ここがイイ

幅が広い割に乗りやすいこと。というか、幅の広さって普通に走っている限り、実はあまり関係ないということを再認識させられた。小型車枠と較べれば駐車場など様々なシーンで不便が生じるが、道路を走ったり、コンビニに寄ったりという場面では、たかだか30cm(片側にしてみれば15cm)ばかりの幅は別にそう気にならないのだ。もちろんこれは、四角くて見切りのいいボディ、視点の高さ、超軽いステアリングなどがもたらすもの。家の前に止めておいて、ちょっと買い物に行くなんて時にも、日本車並みに使える。確かにこれはミニバンだ。

ドロンとしたエンジン、ふわふわした乗り心地、ブカブカしたシート、何より誰もがイメージするミニバンそのもののボディデザインは、まさに旧き良きアメリカン・テイスト。次期アストロが出るならもっと日本車チックな無国籍性が高くなるはず。その意味ではこのアメリカ臭さは好きな人にはたまらない。こんな古くさいアメ車がまだ新車で市販されていることはかなり貴重なことだと思う。

ここがダメ

最新のミニバンに乗ったことのある人で、アメ車に思い入れのない人には、まったく意味のないクルマで、全面的にダメ。しかし、アメ車のミニバンに思い入れのある人には、ダメなところなど特に何もないだろう。あえて言えば、もう少しビシッとしたパワステでもこの走りの雰囲気を損なわないのでは。

工業製品としてはかなりアバウトなので、信頼性の面はやはりちょっと気になる。ヤナセから代わったアフターサービス体制の一層の充実が望まれるところ。

総合評価

古くはイージーライダー、少し新しくなって白バイ野郎ジョン&パンチなんかで、フリーウェーを走るアメリカンバンは、向こうではただの商用車なのだが、日本にはない形だけにかなりカッコよく見えた。マガジンハウスの雑誌「ポパイ」が提唱したカリフォルニアライフでは、VW ビートルと並んで、カッコよかったのがアメリカンバン(当時は商用バン)だったのだ。

また、昭和の名車、ホンダステップバンのデザインイメージは、まさにアストロバン。四角い箱に短いノーズという古典的なミニバンルックは、現在の40代から20代までのアメリカ好きにとって、DNAに組み込まれていたかのように「自分のもの」として感じられる。


そこでアストロの新車に乗ってみると、「そう、昔はこれが欲しかったんだ」と感慨ひとしお。日本製ミニバンがまだない20年近く前に「こういうクルマあれば最高なんだが」と思っていたクルマが、いまだに新車で手に入るのはすごい。

とはいえクルマとしてどうかというと、運転席はドア側へ寄せられて狭いし、エンジンや乗り心地などすべて緩すぎ。最新設計車とはまったく比較にならない。しかし味の面ではデイズスタッフが言うところの「ミニバン界の空冷ポルシェ911あるいは旧ミニ」。これ、まさに言い得て妙。加えて旧ビートルか。

どれもすでに新車はないが、アストロだけは幸か不幸か、まだある。そして変わらぬ伝統の味を維持している。10年以上前のアストロと乗り比べても大差ないと言うことが、それを実証している。アメリカは新しい国、伝統のない国なんて言われるが、ことクルマに関しては世界のどこより古くから普及し、その意味では独自の伝統もある。アストロはそんなアメリカの伝統を体現する一台だ。アメリカ車のニューモデルは最近、回顧趣味ともいえる現象へ陥っているが、アストロは回顧趣味でなく、まさに古い。ここに大きな商品価値がある。もちろん、毎日使えるだけの性能は持っているのだから、欲しい人は早いうちに買っておくべきだろう。

試乗車スペック
シボレー アストロ LT 4WD
(4.3リッター・4AT・405万円)

●形式:GH-CL14G ●全長4805mm×全幅1960mm×全高1930mm ●ホイールベース:2820mm ●車重(車検証記載値): 2120kg(F:1160+R:960) ●エンジン型式:4G ●4295cc・V型6気筒OHV・縦置 ●193ps(142kW) /4400rpm、34.6kgm (339Nm)/2800rpm ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/101L●10・15モード燃費:- ●駆動方式:自動切替式4WD ●タイヤ:215/70R16(ブリヂストン DUELER H/T) ●乗車定員:7名 ●価格:405万円(試乗車:424万円 ※オプション:本革シート仕様 19万円) ●試乗距離:約400km

公式サイト http://www.chevrolet.co.jp/astro/index.html

 
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