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マツダ アテンザ スポーツ新車試乗記(第225回)

Mazda Atenza Sport

 

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2002年06月22日

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キャラクター&開発コンセプト

「マツダ 626」の後を継ぐグローバルカー「マツダ 6」

2002年5月20日に発売されたアテンザは、トリビュート以来一年半振りとなるニューモデル。簡単に言えば、カペラの後継モデルだが、正確には欧米向け「マツダ 626」の、と言うべきだろう。1970年に初代がデビューしたカペラは今までも辛うじてラインナップに残りつつ日本では半ば忘れられた存在だったが、一方で79年に海外でデビューした626は、欧米で最後まで確固たる支持を得ていた。その626の後継である「マツダ 6」の国内バージョンが今回のアテンザだ。

フォードの世界戦略の中でマツダが担う役割

「走りの面でマツダのDNAが感じられるクルマ」というのが、アテンザのコンセプト。プラットフォームと4気筒エンジンはマツダの設計。ある意味、マツダの伝統である「走りへのこだわり」を親会社フォードが評価したわけで、それゆえマツダの力量が正面切って問われた形だ。ハンドリング面で目標に定めたのはFRのBMW・3シリーズとのことで、これに負けないFF車を目指している。

国内販売目標は、セダン/スポーツ/スポーツワゴン(6月24日発売)を合わせて、月間2500台。セダン市場を考えると強気ともとれるし、マツダが総力をあげた1年半ぶりの新型車としては控えめとも思える。

価格帯&グレード展開

セダン(4ドア)、スポーツ(5ドアハッチバック)、ステーションワゴンの3モデルで展開

スポーツとスポーツワゴンは3グレードで構成。「20F」、「23C」、そのスポーツバージョンの「23S」となる。スポーツワゴンには4WD(5速AT)仕様あり。価格は200~230万円。

セダンは4グレード構成。2.0リッター・ベーシック仕様の「20F」、その上位グレードの「20C」、そして2.3リッターエンジンの「23E」と豪華バージョンの「23E ラグジュアリーパッケージ」。価格は180~236万円となる。

海外向けには5速MTやV6+5速AT仕様もあり

日本仕様は今のところ、全車2.0&2.3リッター4気筒だが、ヨーロッパ向け「マツダ 6」には1.8リッター4気筒と2.0リッター・ディーゼルが加わる。アメリカ仕様は2.3リッター4発とフォード製3.0リッターV6(トリビュート用の改良版)の2本立て。また、欧米では全てのエンジンに5速マニュアルの設定があり(ヨーロッパではもちろんこちらが本命)、アメリカ向けV6には5速ATが用意される。

V6の日本市場導入は予定にないようだが、5MTは今年秋にも予定があるようだ。また、スポーツワゴンには4WD仕様が8月1日より追加される。4WDシステムは新開発アクティブ・トルク・コントロール・カップリング方式(湿式多板クラッチを電子制御するフルタイム4WD)で、こちらは5速ATとの組み合わせ。価格は「23C」が230万円。「23S」が250万円となる。

パッケージング&スタイル

5ドアハッチバックを主役に抜擢

スポーツ/セダン/スポーツワゴンとも、全長×全幅は4670×1780mm。全高はそれぞれ1445mm/1430mm/1440mmである。ホイールベースは共通の2675mm。サイズはコンパクトクラスの上限で、特に1780mmという横幅がアテンザのグローバルな性格を物語る。

最大の特徴は、日本で成功した例がほとんどない5ドアハッチバックを主力に据えた点。少なくともイメージの牽引役だ。5ドアは実用性の高さからヨーロッパでは人気の高いボディタイプ。もしアテンザ5ドアが日本で成功すれば、快挙と言っていいだろう。

エクステリアのデザインテーマは「アスレティック」。伸びやかなシルエット、張り出し感のあるフェンダー、低いボンネット、ライトが横4連で並んだヘッドライトユニット、丸みのあるリアなど、4ドアでなければ大型クーペと見間違えそうだ。実際、現在開発中のRX-8を彷彿とさせる。

ただし、ワイドな土台に小さなグリーンハウスを載せるというデザインは、どちらかと言えばオーソドクスな手法。プリメーラのような未来感はなく、アルテッツァのようなコンパクトな感じもない。とはいえ、久々にスタイリッシュなことを売りにできるデザインなのは間違いない。背が高く見えない分、広い年代層にアピールできるのではないだろうか。ちなみに5ドアとセダンのテールレンズ&バンパーは共通パーツだ。

デザイン性と機能性の両立を目指したインテリア

インテリアはセンターコンソールを上から下まで連続した曲面で構成。しかもその面を広くチタン調フィニッシュとしたのが大きな特徴。丸形で統一された各ダイアルと吹き出し口が整然と並ぶ。センター上部の一等席にはポップアップ式ナビ用モニター(もしくは小物入れ)とオーディオ&空調などのディスプレイを配置して視認性に配慮。ブラインドタッチができるようになればデザイナーが意図した通り、走行中の操作も容易になると思われる。ただし、ダイアルを回す操作感、手触り、操作ロジックには、デザイン優先の部分が感じられた。

ちなみに空調用ダイアルのリング部分を半透明樹脂で作り、照明を透過させるようにしたのも新しい試み。一方で、丸形のスピード&タコメーターがメッキリングで縁取られるのはRX-7やロードスターなどでおなじみの手法。

自由度の高いドラポジ。ヘッドルームはミニマムかも

「走り」にこだわるマツダは、ドライビングポジションにもこだわる。スライド量260mm、リフト量55mmと調節幅がとても大きい。リフターはよくあるダイアル式ではなく、レバーを上下させるラチェット式。レバーが短く少し力が入れにくいが、ダイアル式よりはやりやすい。前後方向にややスライドしながら、地面と並行を保ったまま座面が上下する。ただ前後が独立して高さ調整できるとなおよいだろう。もう少し座面後方を持ち上げたい気分だった。

前席は、スポーツセダンらしい低めのヒップポジションとドイツ車っぽい固めの座面を持つ。Aピラーの傾斜がかなりきつく、背の高い人は気になるかもしれない。センターコンソールが幅広く、高いこともありタイト感は演出されているが、総じて広々とした印象のコックピットだ。

後席の居心地も良い。スライド量の多い前席位置にもよるが、足元の広さは必要十分だろう。座面長がしっかり取られたシートの座り心地も良い。ヘッドルームに関してはスポーツワゴンが有利だが、適度な囲まれ感のあるセダンも捨てがたいと思った。ただし背が高い人はヘッドルームに圧迫感を感じる恐れがある。

ワゴン並みか、それ以上のラゲッジスペース

5ドアのラゲッジスペースは、広大の一言。新設計のマルチリンクサスペンションにより、ストラットの張り出しも小さい。印象的なのは「ラゲッジルーム・カブリオレ状態」の巨大な開口部。そして畳一畳分はあろうかと思う巨大なゲート。場合によっては開口部の狭いワゴンより応用が効きそうだ。荷室容量(VDA方式)/荷室長は、5ドアが492リッター/1877mm、ワゴンは505リッター/1906mm(発表値)とほぼ同じだ。

「KARAKURI(からくり)フォールド」とマツダが呼ぶ、荷室側のレバーでリアシートバックが倒せて、それに連動してリアシート座面が沈みこむ機構(スズキ・ワゴンRなどではすでにおなじみ)も、使い勝手や荷室のフラット化に大きく貢献している。レバーで倒す仕組みは日産ステージアにもあったが、大変便利なので、ワゴン系には今後積極的に標準化してほしい装備だ。

基本性能&ドライブフィール

ロータリーだけじゃない。マツダ渾身のレシプロ4気筒

試乗したのは5ドアの「スポーツ」の中で、最もスポーティなグレードの「23S」(230万円)。2.3リッターエンジンを搭載し、17インチアルミホイールを標準で履く。セットオプションとしてDVDナビ、インダッシュ6連奏CDチェンジャー、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロールシステム)&ブレーキアシスト、カーテン&フロントサイドエアバッグなど(37.5万円)が装着されていた。車両本体価格は計267万5000円。

イメージカラーである「カナリーイエローマイカ」のボディに潜り込み、走り出して「おっ」と思うのはエンジンの力感。V型6気筒の設計・生産はフォード行きとなってしまい、代わりにマツダが開発を任されたのが直列4気筒ユニットの方。2.0と2.3リッターの2本立てとなる新型エンジンは、いずれも量産エンジンでは少数派の、チェーン駆動式カムシャフト。2.3リッターの方は178ps/6500rpm、21.9kgm/4000rpmを発揮。特にトルク数値が高い。

実際にそんな数字など知らなくても、中回転域トルク感はなかなかのもの。「回すと速い」ではなく、「回さなくても速い、そして楽しい」エンジンだ。高回転域でも全く苦しい素振りはなく、7000rpmからというレッドゾーンに軽く飛び込んでいく。ホンダのVTECのように高回転で刺激的なエンジンではないが、吸気タイミングを無段階制御する「S-VT」機構を備えたエンジンの吹け上がりはなかなかシャープだ。入念にチューニングされたという、ツボを押さえた排気音も気持ちよい。ちなみに2.3リッターの4速ATにはマニュアルモードが付くが、その場合レッドまで回しても勝手にシフトアップはしない。

実際にワインディングをとばすと、このエンジンはトルクがフラットでとても走りやすい。スピードの落ちるコーナーで4000rpmを下回った時も、アクセルにしっかりエンジンが反応してくれる。

「オン・ザ・レール」という言葉通り

そんなエンジンと組むのが、アテンザの重大な(ひょっとすると最大の)セールスポイントであるフロント:ハイマウントダブルウイッシュボーン、リア:マルチリンクの足回り。コストのかかる複雑なサス構造の採用を、フォードの偉い方々に納得させたマツダのエンジニアらのハンドリングに対する並々ならぬ執念は、マツダのホームページなどで詳しく紹介されているのでご参考に。とにかく「目標はFRのBMW・3シリーズ」という言葉が、もっともわかりやすくアテンザの操縦性を表している。

ワインディングではとにかく安心して飛ばせるという印象。アンダーステアがFFの課題の一つだが、アテンザは重いV6ではなく直4ということもあってハンドリングは軽快。一方でリアの接地感もしっかりしている。「オン・ザ・レール」で走るFFだ。実際、いつものワインディングを、いつもよりかなり高いコーナリングスピードで走り抜けられる。挙動は安定しており、危なげないのが印象的。タイヤは215/45R17(ダンロップ・SP SPORT 8090)である。オプションのDSCが作動するような状況にも強引に持ち込んでみたが、少なくとも乾燥路であればDSC要らずの高い安定性が確保されている。ブレーキも非常によく効く。

少し不思議だったのは、据え切りでけっこう手応えのある油圧式パワーステアリングがワインディング走行中はかなり軽く感じられたこと。正確さは問題ないし、操舵力が軽くて不都合なことはないが、もう少し重めの方がスポーツカー好きにはウケるのではないかと思った。

街乗りでの乗り心地は、「スポーツセダン」と捉えれば、十分快適なレベルだろう。路面の荒れたところでは小さな上下動が出るし、道路の継ぎ目では後輪が時々「ビシッ」とくるものの、それぐらいはスポーツセダンとして欠かせない演出とも言える。高速道路での安定感も、当たり前だが全く問題はない。160km/h巡航も快適だ。

ここがイイ

カッコいいセダンというのは日本車では久々。元々は5ナンバー枠でデザインされたようだが、米国輸出のためデザイン途中で車幅を広げたことで、低く、広いという伝統的なカッコ良さをうまく表現できた。マツダはアンフィニ、ユーノスといったバブルブランド時代に、すばらしいエクステリアデザインを残したが、それに通じる見事なラインワークだ。背の高いセダンに辟易としている人には、グッとくるものがあるはず。

そしてそのスタイルにふさわしい、スポーツセダンと呼べるしなやかな足回りとトルクで走るタイプの4気筒エンジンがもたらす走りは、素人にもわかりやすい安全な速さを堪能させてくれる。気がつくといつもの2割り増しのハイペースで走っているという体験は、これまた久々。

5ドアハッチを開けてシートを倒し、中に入って横になったら、車中泊できるほどの広さがあった(実効奥行きは170cmほど)。この荷室の実用性は高く、高度な「走る、曲がる、止まる」に加え、「積める」が加わった5ドアは、乗用車としてはこれ以上はないものといえる。

ここがダメ

強いていえば、インパネのパネルの材質や室内全体の質感をもう一ランクグレードアップしてほしい。現在でも特に不満はないものの、逆に言えば特に良いということもない。フォードグループのクルマとはいえせっかく日本で作るのだから、さすが日本車という質感を示して欲しかった。

このクルマへの注文ではないが、シーケンシャルの+-位置は是非各社協議して統一してほしい。アテンザは手前が+のBMW式だが、現在多いのはその逆。どうにも使いにくかった。ATが5速以上になればパドルやステアリングスイッチが主流になると思われるので、その間は混乱を避ける意味でも手前-(ダウン)でいいのでは。

総合評価

世界市場におけるマツダのブランドイメージがどの程度のものかは実感としては分からないが、日本においてプレミアム性は高くない。現在そうしたブランドイメージの押し上げ工作が進んでおり、その一環でアテンザも登場したわけだが、ブランド力が先か、製品力が先かは難しいところ。つまりいい製品がブランドイメージを押し上げることもあり、逆にブランドが製品のイメージを引き上げることもある。FFのスポーツセダンといえばアルファ156が真っ先に浮かぶが、それとアテンザを比べてみると、製品としてはアテンザは互角か、それ以上といっていいだろう。ただし、ブランドイメージではアルファが圧倒的に高い。スポーツセダンという、日本ではすでにマイナーな商品の場合、このブランド競争力が価格競争力を大きくしのぐと思う。156は369万円で、アテンザは230万円。全く比較にならないと切り捨てることは簡単だが、果たしてそうだろうか。

アテンザに関していえば、試乗して不満がでるような部分は、ほとんど皆無に等しい。速く、楽しく、安全だ。2割り増しのペースで走れるというのは誇張ではない。そしてスポーツ性と実用性が高い次元で調和している。ほとんどのクルマ好きは、「これはよくできている」と評価するに違いない。しかし、そこから販売にどう結びつくかという点が、最大の問題だ。クルマ好きにとって気になるクルマは多い。もしお金があったら156かアテンザか、どちらを選ぶか迷う人は多いだろう。

現実にはお金がないということでアテンザの選択比率がグッと高まるはずだが、それはちょっぴり残念なことだ。元気の良さを、製品の良さをさらに積極的にアピールし、マツダブランドのブランド力の底上げを徹底して、製品の良さに負けないブランド力の育成を望まずにはいられない。バブル期におけるブランド展開の失敗のつけはまだ大きいと思われる。

その意味ではブランドイメージが日本とは異なっていると思われる欧米が、アテンザ(マツダ6)の主力市場になるというのは、わからないでもない。しかしフォードグループの中でマツダが独自性を発揮できるスタンスは、ジャガーやランドローバーより明確ではないとも思われる。製品はいいだけに、マツダにはブランドの明確化に向けがんばってもらいたい。自動車という商品がますますブランド商品と化している事実は否めないからだ。

  ●車両協力:東海マツダ販売株式会社

公式サイトhttp://www.mazda.co.jp/home.html

 
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