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ダイハツ アトレー7新車試乗記(第137回)

Daihatsu Atrai 7

 

2000年09月01日

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キャラクター&開発コンセプト

軽の拘束を外れた7人乗りマイクロミニバン

アトレー7は、軽自動車のアトレーをベースにボディを拡大し、1.3lエンジンを搭載した、軽サイズの小型車コンパクト1.5BOXワゴンだ。7とは7人乗りを表したもの。2-2の4人乗りのアトレーに対して、アトレー7は3列目シートを追加して2-3-2の多人数乗車を実現しているのが最大のセールスポイントだ。

ライバルは、同車と同じ手法で多人数乗車を可能とした、三菱タウンボックスワイドとスズキ・エブリィプラス。98年の規制改正で、軽自動車そのもののサイズや快適性、安全性が向上したことで、この市場は確立されつつあり、今回ダイハツも競争に参加したわけだ。

リアドアは両側スライド式を採用。エンジンの位置は前席真下で、駆動は後輪。すなわちMR(ミッドシップエンジン・リアホイール)。この2WDの他に4WDも用意される。ギアボックスはコラム式の4速ATもしくはフロア式の5速MTが組み合わせられる。

価格帯&グレード展開

価格は軽自動車よりおよそ15万円高の121.3~172.1万円

グレードは装備の違いによる「CL」(129.8万円)と「CX」(143.3万円)の2タイプで、前者のみ5MT(8.5万円安)が設定されている。また、4WDは2WDの16万円高となっている。

装備が充実しているのは「CX」のほう。「CL」に対し外観ではメッキグリル、カラードドアハンドル、メッキライセンスランプガーニッシュ、電動格納ドアミラーなどが追加される。内装では、前席がベンチ型となり、床下収納ボックス、タコメーター、スライドドアイージークローザー、デュアルエアコンなどが追加される。これだけの装備の差があって、価格差は13.5万円。奮発して「CX」を買った方が満足度は高いだろう。また、「CL」にはデュアルエアコンとアルミホイールを追加した「リミテッドパック」が8万円高で用意されている。一方、「CX」には専用シート、ルーフスポイラー、大口径マフラーなどスポーツアイテムを追加した「スポーツパック」が10万円高で用意されている。

ライバルの価格は、エブリィプラスが142.0万円、タウンボックスワイドが139.8万円。装備内容、エンジン排気量の違いだけでなく、アトレー7が最もお買い得感の高い内容といえるだろう。なお、秋ごろからはトヨタビスタ店でも販売される予定。ストーリアとデュエットの関係と同じだ。これで販売台数は飛躍的に伸びるだろう。

パッケージング&スタイル

大型バンパーとメッキの多用で存在感を増したエクステリア

ボディサイズは全長3765mm×全幅1515mm×全高1895mm、ホイールベース2420mm。ベースとなったアトレーよりもそれぞれ370mm、40mm、45mm拡大されており、ボディパネルはドアを除き、全て専用品のようだ。タイヤも12もしくは13インチから14インチに大径化され、トレッドもワイド化されている。また、車格感をだそうと、随所にメッキが多用され、リアはテールランプの間に大型のガーニッシュが装着されている。

全方位ほぼ“四角”だけに、当然、サイズ以上に大きく見える。一昔前なら、軽の派生車とは思えないぐらいの堂々とした風格だ。でも、車名にアトレーと付くだけに、印象はアトレーそのもの。視覚的な違いはオーバーフェンダーが装着されていることと、リアのオーバーハングが極端に長くなっていること。そしてナンバーの色、その程度。とはいえ、小型車というよりやはり軽の雰囲気が残っていることは否めない。

オーバーハングの延長により室内空間を向上。そこに上級ミニバン顔負けの充実装備をギュッと凝縮

室内空間はリアオーバーハングの延長と、ハイルーフの採用によって、アトレーよりも広くなっている。ただし、全幅はほぼアトレーのまま。ボディの全幅拡大分はオーバーフェンダーによるものだからだ。

運転席周りは基本的にアトレーと同じで、コラムシフト+足踏み式パーキングブレーキの採用で、左右ウォークスルーを可能としている(5速MTはフロアシフトで、シートはセパレート型)。

ちょっと驚かされるのが、軽の流用品となるインパネ。質感の高さは間違いなく、クラスを越えたもの。特に皮風の表面シボは、一世代前の上級車に準ずるものがある。そして数世代前の上級車、と懐かしんでしまうのがCXスポーツパックのみに採用されるソート表皮。糸クズがすぐにまつわりつくケバケバしたやつ、とでもいえば分かってもらえるだろうか。とにかく古くさい。同社ではこれをスポーツシートと呼んでいるが・・・!?

その他、タコメーター(CXのみ)やインパネ最後部のナビ、ドア側に配置されたドリンクホルダー、2列目左上のリアエアコン、スライドドアイージークローザーなど、上級ミニバン顔負けするほどの充実した装備が、所狭しと押し込まれている。軽の拡大版というより、上級ミニバンの凝縮版といった感じだ。

シートの座り心地は、どれも中途半端

では、それぞれの席での居住性、快適性はどうなのか。まず、1列目は、ホイールハウスの出っ張りが足の置き場を制限してしまうのが気になるところ。特に運転席側はペダルが中央寄りオフセットされてしまっている。また、座面部もやっとお尻が据えられる程度の大きさで、設計上の制約が垣間見られる。

3人掛けの2列目は480mmのロングスライド機構を備えており、これを最後端にセットすれば、足を組めるほど膝元空間はタップリだ。アームレストも備わっている。ただし、座面がフロアに対して低く、座ると立て膝気味の姿勢を強いられるのも確か。有り余る頭上空間をもてあそばしている感じを受ける。

意外だったのが3列目が「マトモ」な点。スパシオやプレマシーよりも無理している感じがなく、実際、広い。惜しいのはアクセスの仕方。どうしても2列目をまたぐ要領で乗り降りしなければならない。ま、このあたりは中堅クラスのミニバンでも似たり寄ったりの状況だから、これは素直に諦めるしかないだろう。

何かと弊害もあるけど、一応、多彩なシートアレンジを実現

興味深いのは、タウンボックスワイドとエブリィプラスを含めた3車は、同じ3列シートでも、シートセッティングがそれぞれ違う点だ。タウンボックスは全席セパレート型の2-2-2の6人乗り。エブリィプラスは1、2列目がセパレート型となる2-2-3の7人乗り。この後席のセパレート型シートというのは、よく快適だと謳われているが、それは大型ミニバンに限った場合。こと、このクラスになるとシートの大きさが不十分で、所詮、観光バスの補助席ぐらいでしかない。シートアレンジも限られてしまう。

その点、全席ベンチ型の2-3-2の7人乗りとしているアトレー7は、真ん中の心理的にも余裕あるスペースを3人掛けとしており、最も自然に多人数乗車できる。3人掛けのところを2人だけで使えばより広く、シートアレンジの自由度も高くなる。また、3列目を畳んでしまっても5人乗りができるというのは、ライバル2車には望めない大きなメリットだ。さらにアトレー譲りのハイダウェイ機構を駆使すれば、2、3列目はきれいに床面と平行に格納でき、26インチ自転車をそのまま載せることができるほどの広大な荷室を作ることができる。アトレー7のシートセッティングが最も良くできていると思う。

基本性能&ドライブフィール

軽の倍の排気量を手に入れたエンジンと4速化されたAT

前席の床下に搭載されるエンジンは、テリオスと同じDVVTを採用する1.3l直4DOHC。最高出力90PS/6000rpm、最大トルク12.5kgm/4400rpm。組み合わせられるATは、アトレーの3速に対して4速となっている。

エンジンスペックは、同じ排気量のエブリィプラス(タウンボックスワイドは1.1リットル)と比較するとアトレー7の方が上回っている。が、車重は1060kg(CX・2WD)と80kgも重く、パワー/トルクウエイトレシオに換算すれば、特筆するほどのアドバンテージがあるわけではない。それでも同社のデルタワゴンとほぼ同じのパワー/トルクウエイトレシオを確保しているだけに、車格相応の加速は望める。

乗り心地はピョコピョコと跳ねるような軽自動車の安っぽさがなく、予想していたよりはずっと上質だ。比較的アクセルに良く反応するキックダウン時のシフトショックも許容できるレベルだ。特にトレッドのワイド化とタイヤのサイズアップ化が安定感に貢献しており、安心してコーナーをぬけることができる。普通の乗用車についていけるコーナリングはなかなか好感が持てるところ。旧規格軽のキャブ1BOXと比べれば、飛躍的な進化を成し遂げている。

高速では100km/hなら静かで直進性も悪くないが、それ以上の速度になると、速度に比例して直進性の不安が出てくる。150km/h近くまで出るが、フロントが浮いたような感触はMRならでは、といったところ。そんな速度を出すことはこのクルマの本意ではないと思うのであまり考えなくてもいいだろう。いずれにせよ、軽とは比較にならない高速での余裕が頼もしい。

気になったのは低速域でのトルクが若干足りないこと。エンジンの吹け上がりが軽いこと、そして小排気量ということもあり、すぐに3000、4000といった中回転域を常用してしまう。今回の試乗は一人乗車だったので、上り坂発進などでも苦にはならなかったが、多人数乗車の時の考えると、きっとつらいだろう。また、アクセルを全開にすれば、8000回転あたりまでスムーズに回る一方で、5000回転あたりからのパワー感は打ち止めで、音だけが騒々しくなるだけ。このあたりはさすがに中堅クラスのミニバンにはかなわない。

逆にアトレー7が大きく勝っている部分は、市街地での優れた機動性だ。FF全盛の中にある中堅クラスのミニバンは、今、最小回転半径は5.5~6.0mといったあたりが相場となっている。その点、MR駆動&コンパクトサイズのアトレー7は4.4m。同格のエブリプラスよりも0.1m、タウンボックスワイドよりも0.4m、小回りが利く。また、そのライバルよりも燃費性能は15.0km/l(2WD・AT)とほぼ同じながら、燃料タンク容量が6リットル大きいということもアトレー7のセールスポイントの一つといっていいだろう。

ここがイイ

軽のサイズ的なメリットを生かした上で、多人数乗車、余裕ある走り、静かな室内、多用なユーティリティを実現していること。特にシートアレンジは秀逸で、セカンドシートは背面テーブル→ひっくり返して床下収納が可能、サードシートはひっくり返してセカンドシートスペースへ床下収納でき、これがかなり簡単。シート自体が小さくて軽いから、あまり苦労しないのもいい。室内は横幅こそミニマムだが、足元や天井方面の余裕は上位ミニバンにも劣らない。

ここがダメ

とはいえ、シート自体が小さく、絶対的にはやはりミニマムなミニバンにすぎない。フル乗車時にはサードシート後ろのスペースはないに等しく、荷物は乗らない。これは試乗車(スポーツパック)にいえることだが、シート生地の選択、インパネをシルバーで塗装したセンス、素材は上質だが完成したインテリアのなぜかチープな印象など、ちょっとあか抜けない感じは否めない。

また、価格設定も気になるところ。軽のアトレーやライバル他車を考慮すれば妥当な値付けといえるが、実際には大幅値引き敢行中のステップワゴンと大差ない実価格となってしまう。

総合評価

軽に余裕のエンジンを載せ、小さくても、多目的に使えるマルチパーパス・ミニカーというのは、「理想のクルマ」の一つの姿だろう。実際このクルマ、小回りが効いて、いつでも、何にでも便利に使える。走りも十分だ。オプションでサイドエアバッグまで用意しており、安全性もかつての軽の比ではない。

国民の半分くらいがこのクルマを使えば、ずいぶん地球に優しい社会になるに違いない。ところが日本人はもはやこれでは満足できないだろう。もっと広く、もっと高級な、何よりもっと貧乏くさくないクルマが欲しいのだ。で、このクルマは日本だけでなく、アジアや欧州で売られる。そちらが主市場となるのだ。

アトレー7は真面目ないいクルマだ。それゆえ、高橋良伸(巨人軍)を使ったCM展開(巨人の星ネ)は何だか大きく外しているように思う。誰が買えばいいクルマなのかさっぱり分からない。もっと正攻法で、クルマの良さを伝える展開が望まれる。何より流行のミニバンルックであることは間違いないので、あとは走りや機能の出来の良さを分かりやすく、スマートに訴えると、もう少し人気がでると思う。アメリカのCMのように、高橋をキャスター仕立てにして、マジメに機能説明をさせるなんてのはいかが。

 

公式サイトhttp://www.daihatsu.co.jp/atrai7/

 
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