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アウディ TT クーペ 1.8T新車試乗記(第252回)

Audi TT coupe 1.8T

(2WD 6AT 399万円)



2003年01月18日

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キャラクター&開発コンセプト

98年のデビュー以来、世界中でヒット

TTのスタディモデルが発表されたのは1995年のフランクフルトショー。予想を上回る大反響を得て、3年後の98年には欧州で、日本では99年に発売された。ほぼコンセプトカーのままという、クールで斬新なデザインが年産5万台のヒットとなった第一の理由だろう。ちなみにTTとは往年のレースイベント「ツーリスト・トロフィー」の略称である。

一方、初期モデル、特にクワトロにおいてはアウトバーン等で事故が頻発し、その高速安定性が疑問視された。アウディは99年末に空力の改善(リアスポイラー追加)、サスペンションの設定変更(よりハードに)を行ない、日本仕様にも、2000年途中から反映された。また、それ以前のモデルについても無償で「レトロフィット」された。2000年5月には本国での仕様変更を受けてESP(エレクトリック・スタビリティ・プログラム)が標準装備となっている。

なお、アウディは客観的評価として南ドイツTUV(技術検査協会)に調査を依頼し、TTが「競合他車と比較して、平均的なスポーツカーの水準を凌ぎ、最高の水準を維持している」という発表を得ている。少なくとも現在販売されているTTは、以上の仕様変更を受けて、かなり安定サイドに振られたようだ。

ついにオートマチックが登場!

日本には1999年発売のクーペ・クワトロを始めとしてTTは4モデルあったが、これらはすべて5速ないし6速のマニュアル車。これまでATは存在しなかった。これによって、小さめでおしゃれなクルマにもかかわらず、女性にとっては敷居の高いクルマになっていた。

しかし2002年11月1日、TTのオートマチック版がついに発売された。5速マニュアルに代えて、日本のアイシンAW製となる最新型6速AT「ティプトロニック」を搭載。これで前輪駆動のMTモデルはロードスターだけになったが、これもおそらくいずれATになるだろう。クワトロは従来通り左ハンドルの6速マニュアルのみとなる。

AT発売によりTTの昨年12月の販売台数は'99年の発売以来、過去最高を記録したという。日本市場ではスポーツカーと言えど、何は無くともオートマチック、のようだ。

価格帯&グレード展開

計4モデルで399~500万円。

TTは現在4モデル展開。クーペ(FF・右ハンドル・6AT・399万円)、クーペ・クワトロ(4WD・左ハンドル・6MT・480万円)、ロードスター(FF・右ハンドル・5MT・400万円)、ロードスター・クワトロ(4WD・左ハンドル・6MT・500万円)。

今回の6AT版は従来のクーペ1.8T(FF)の仕様変更。よってFFクーペの5速マニュアル車は販売終了となった。変更点はほかにフロントグリルのデザイン変更(桟が粗くなった)、ホイールデザイン変更(5アームから7アームへ)、ボディカラー追加(6色から9色へ)など。

オプションはキセノンヘッドランプ&ヘッドランプウォッシャー(10万円)、フルレザーシート(10万円)、17もしくは18インチホイール(10~20万円)など。ロードスターにはハードトップ(25万円)を用意。また、アウディには「アウディ・エクスクルーシブ」というプログラムがあり、ボディカラーや内装などを自分好みに細かくオーダーすることも可能だ(納車まで約半年かかるが)。

3.2リッターも登場!

本国では2003年半ばに3.2リッターV6エンジンを搭載した「TT 3.2クワトロ」の投入が発表されている。エンジンは日本でも発売されたゴルフR32などと同じ横置き用のバンク角15度狭角タイプ。パワーは少し上乗せの250ps、32.6kgmとなる模様。「DSG」と呼ばれる新型セミATが合わせて搭載されるようだ。

パッケージング&スタイル

ニュービートルのホットロッド版?

TTのデザインに影響を与えたのは現在フォード・グループに在籍して新型サンダーバードなどを手掛けているJ・メイズと言われている。95年までVW・アウディに在籍していたメイズの代表作は、スーパーカーコンセプトのアウディ・アヴス・クワトロ、そしてニュービートルのプロトタイプなど。確かにサイドから見たデザインには、アヴス、ニュー・ビートル、TTに多くの共通点がある。大径ホイールを強調する大きなフェンダーアーチ、丸い全体フォルム、弧を描くルーフ、そして特徴的な前後対称デザインなど。言わばTTは、アヴスの市販版であり、屋根を切り詰めて車高を低くした「チョップド・ニュービートル」という感じか。

シャーシはVWグループのFFシャーシ

TTのプラットフォームはアウディA3/ゴルフ4/ニュービートルと共有されるもの。ただしTTのホイールベースである2425mmは、上記3モデルより90mmも短い。ボディサイズは全長4060mm×全幅1765mm×全高1340mm。ニュービートル(4090×1730×1500mm)よりわずかに長くワイドで、圧倒的に低い。

スポーツカーとしての資質やアウディ自慢のクワトロシステムの搭載を考えるとエンジン縦置きのA4のシャーシがベターなように思えるが、それだとこの短く低いフロントセクションが実現できないので見送られた、という、ウソかホントか分からない話もある。

安全よりカッコ

アウディと言えば空力だが、TTのCd値は初期モデル(スポイラー無し)で0.34。全長が短くリアが丸いため、空力的にはかなり不利なスタイルだが(空気抵抗が大きく、リアには揚力が発生する)、あくまでもデザインを優先。揚力対策のリアスポイラーにしても「言われたからイヤイヤ付けました」という感じ。カッコのためには命も惜しまないという、考え様によっては今時珍しく潔いクルマだ。サッシュ(窓枠)レスのサイドウインドウは密着性向上のためドア開閉時にわずかに上下する。TTが初採用ではないが、他メーカーのスポーツカーが最近そろって真似ているシステムだ。

クワトロとFFの外観の違いはホイール(17インチか16インチか)やリアの「quattro」エンブレムの有無、マフラー(2本出しか1本出しか)など。

独創性溢れる操作系

内装も外観と同じで円のモチーフを反復。黒い樹脂と本物のアルミを多用して超クール。特に素材が高級なわけではないが、仕上がりには価格以上のものがある。まさにデザイナーの力を感じさせる仕事振りだ。

で、機能的にどうかと言うと、やはりデザイン優先なので慣れが必要な部分もある。例えばダッシュボード中央の「飛び出して回す」式スイッチ、空調コントロールは回すではなく「クリック」。パワーウインドウスイッチも独特。TVRタスカンほどではないが、ちょっと考えないと操作が分からないところはオーナーにとっては逆に楽しいポイントだろう。

意外にも優れた視界、高い実用性

グリーンハウスは極端に小さいが、意外にも閉所感は少ない。少なくとも空冷時代のポルシェより明らかに広々。サイドウインドウの小ささは驚異的で笑えるが、周囲の視界は心配するほど悪くない。Aピラーがまったく邪魔にならない点で、ニュービートルより優れているとも言える。ヘッドルームもこの種のクーペとしては余裕があり、圧迫感はほとんど感じなかった。

当然ながら後席は物入れレベルで、大人が「座る」ことはまず不可能。しかしTTはクーペと称しながら実はハッチバック型で、後席を畳めばそこそこ大物も積載可能。実用性は高い。

基本性能&ドライブフィール

ごく普通に、誰でも運転可

今回試乗したのはTTの最新型である6速AT「ティプトロニック」搭載のFFクーペモデル(399万円)。「右ハンドルのオートマ」ということで、気構えは不要。シフトレバーをDに入れて軽くアクセルを踏み込めば、ブォーというくぐもった音を立ててごく普通に加速。エンジンはA3の1.8Tなどと同じ1780cc・DOHC直列4気筒5バルブターボ(180ps/5500rpm、24.0kgm/1950-5000rpm)。ボディは1330kgとクワトロより110kg軽い。

1950~5000回転まで常に最大トルクを発揮するエンジンはなかなかトルキー。レッドゾーンは6500回転からだが、回しても回さなくても音もフィーリングも大差はなし。ゴルフGTi (150ps)もそうだが、このエンジンはあまりターボターボしていないのが特徴。ハイプレッシャーターボカーのように、ブーストが上がった途端の吸い込まれるような加速はない。が、逆にターボラグもなく低速でもモタつかない。エンジン音は「低音で迫力がある」と言えなくもないが、官能的でないのがちょっと残念。

アイシン製6速ATの操作方法はポルシェ流

ポルシェや他のアウディ同様、ティプトロニックと呼ばれる6速ATはステアリングスポークにボタンが付く現行ポルシェとまったく同じ方式。操作感はポルシェのティプトロニックSに遜色ない。この6速ATはこれから順次フォルクスワーゲン車にも採用される予定のアイシンAW製で、ちなみに最近発売されたポルシェのカイエンも同社製の6速ATとなっている。変速ショックもなくレスポンスに優れるが、やはり信頼性の高さが最大のポイントだろう。シフトレバーを右に倒すとマニュアルモードだが、ステアリングのボタンを押すだけでもマニュアルモードになったり、しばらくマニュアル操作しないと自動的にDモードに復帰したりするあたりが、使いやすい。同時にメーター内のモード表示は「PRNDS」から、使用ギアを示す「123456」に変更される。マニュアルモードでも自動シフトアップするなど、基本的にはポルシェのティプトロニックSと同じロジックだ。

シフトゲート横には、現行ポルシェでは消えてしまったシーケンシャルモード(レバーを前後させて変速)も備わる。こちらはワインディングでは使いやすいが、Dモードでマニュアル操作した場合、ニュートラルに入るという誤操作の原因にもなるので一長一短とも言える。

ワインディングでの走りは、ショートホイールベース、ワイドトレッド、低重心、固められた足ということで、かなり敏捷。逆に言うとポルシェのようなどっしりとしたスタビリティはない。また、ターボエンジンとオートマチックの組み合わせは悪くないが、やはりアクセルを踏み込んだ時の切れ味は、日産ZなどNAに比べて鈍いと言える。運転感覚はどことなく「スポーツカーチック」。朝5時に起きて箱根に行く、というタイプではない。

高速巡航は楽しく快適

得意とするのは高速道路で、トルキーなエンジンにモノを言わせつつ、こまめにシフトダウン&アップで自由自在に高速巡航が可能だ。アウトバーン並みの速度でも安定性、快適性は高く、普通のドライバーなら最新型ポルシェ911(996型)よりリラックスして走れそう(それがスポーツカーとして良いかどうかは人によるが)。試乗車は初期モデルとかなり異なるはずだが、同じ形をしたクルマが事故を頻発したとはとうてい思えない、というのが率直な印象。もっとアブナいクルマ、世の中にはいっぱいあるし。最高速は6ATモデルで225km/hと発表されている。

ロードノイズやエンジン音はともに低く、あえて言えば一番気になったのは風切り音。とはいえ、100km/h巡航時2400rpmの6速トップなら、オーディオで音楽が楽しめる。乗り心地はハードだが、そう悪くはない。初期のクワトロについては小刻みなピッチングを指摘する専門誌もあるが、今回試乗したモデルではまったく感じられなかった。

燃費は計測できなかったが、10・15モード燃費は10.0km/L。従来の5速マニュアルモデルは11.8km/Lだったので、AT化により15%ほど悪化したことになる。ちなみにクワトロ(6速MT)は11.6km/L。今回の6速ATモデルはお財布には少し厳しいかもしれない。

ここがイイ

6速ATは楽しい。もちろんマニュアル操作ができるから。CVTには疑似6速、7速、8速があるが、それをギアで行っているわけで、リアル感が違う。正真正銘の6速ギアをクロスさせ、親指の力加減で操るのは、3ATの時代のATとは隔世の感がある。4速が主流とはいえ世の多くの人は、まだATに対し3AT時代のイメージを持ったままではないだろうか。特にマニュアル信奉派にその傾向が強いようにも思える。

ここがダメ

掃除機みたいな音のターボエンジンに代表される、リアルスポーツ感の不足。官能的なフィーリングがない、なんて言葉に置き換えてもいいかもしれない。スポーツカーのはずだが「ウォー、おもしれぇー」というクルマではない。乗っていて残念ながらアドレナリンがでてこないのだ。形は見るからにそういうムードなのだが、走りは残念ながらそうではなく、その点ではパイクカーといってもいい。

総合評価

リアルスポーツとして出したら操縦安定性でミソが付き、かといってパイクカーと開き直ることもできなかった、というのがこれまでのTT。そしてここに至ってATが載ったことで、モデル後期はパイクカーとして売りまくるつもりだろう、と考えるのは意地が悪いか? しかしATを載せ、右ハンドルで400万円を切るTTは、おしゃれな女性のブランド品の一つになる資格を十分得た。単なる4速では当初のスポーツコンセプトが生かせなくて渋った開発陣も、6速が開発されたことでメンツが保たれたというわけだ。

米国でもTTはいっぱい走っており、砂漠のど真ん中のパームスプリングスという、日本で言うと軽井沢みたいなリゾート地を老夫妻が夜中、黒のTTロードスターの屋根を開けて走ってたのを目撃したことがあるが、カッコよかった。こういうシチュエーションではATでもいっこうかまわない。というか、どちらかというとATであるべきだろう。ATのTTをパイクカーといってしまうとネガティブな印象もあるが、こうしたクルマが持つドラマ性をよりイージーに実現させるというのは間違った方向ではないと思う。さらにマニュアルモードで誰もが楽しめるFan to Driveは、よりドラマを盛り上げてくれるはずだ。ATによってTTは本来あるべき姿になったといえるのではないだろうか。

試乗車スペック
アウディTTクーペ
(2WD 6AT 399万円)

●形式:GH-8NAUQ●全長4060mm×全幅1765mm×全高1340mm●ホイールベース:2425mm●車重:1330kg(F:ー+R:ー)●エンジン型式:AUQ●1780cc・DOHC直列4気筒5バルブターボ・横置●180PS(132kw)/5500rpm、24.0kgm(235Nm)/1950-5000rpm●10・15モード燃費:10.0km/L●タイヤ:205/55R16(ミシュラン Pilot Primacy)●価格:399万円(試乗車:399万円)

公式サイトhttp://www.audi.co.jp/models/TT_C/

 
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