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新車試乗記 第439回 トヨタ オーリス 180G Sパッケージ Toyota Auris 180G S Package

(1.8L・CVT・208万9500円)

「カローラハッチバック」から
ヨーロッパ戦略車として
生まれ変わった新型Cセグ車に
“オーラ”はあったか?

日時: 2006年11月11日

 

キャラクター&開発コンセプト

欧州戦略用の新型Cセグメントカー

2006年10月23日に発売されたオーリスは、主として欧州向けに開発された新型ハッチバック車。VWゴルフやプジョー307などと同じ、いわゆるCセグメントに属するモデルだ。先代カローラランクス/アレックスの実質的な後継車だが、プラットフォームは新型カローラ(アクシオとフィールダー)とは別物のワイドトレッド版を採用。これによって1760mmの横幅を持つ堂々たるボディを得た。国内仕様のエンジンと変速機(CVT)は新型カローラと共有する。

販売目標は月間3000台で、販売チャンネルはネッツ店のみ。生産は関東自動車・岩手工場が先陣を切る。欧州での販売も2007年春から始まり、最終的には日欧合わせて年間20万台以上が目標。車名(英語の「Aura(独特の雰囲気、霊気)」が由来)も日欧共通だ。

価格帯&グレード展開

1.5で160万~180万円台、1.8で190万台~

全車CVTで、1.5リッター(162万2250円~185万8500円)と1.8リッター(191万6250円~208万9500円)がある。4WDは21万円高。装備は極めてオーソドクスで、カローラアクシオと違ってレーダークルーズやプリクラッシュも用意されず、VSC&TRCさえオプションになる(サイド&カーテンエアバッグと込みで12万6000円)。Bluetooth 対応ハンズフリー機能付きHDDナビもオプションで31万9200円~とそれなりに高価だ。

パッケージング&スタイル

ゴルフやプジョー307と対等に

ボディサイズ(先代比)は全長4220mm(+45)×全幅1760mm(+65)×全高1515mm(+45)と、今やVWゴルフやプジョー307とまったく同格だ。特に横幅の広さは、骨格そのものが先代ランクス/アレックスはもちろん、カローラアクシオとも違うことを物語る。2600mmのホイールベースは、ゴルフ(2575mm)と307(2715mm)のちょうど中間。全高は高めで、パッケージングは307に近い印象を受ける。

デザインは「大きなヴィッツ」

外観デザインは「2代目ヴィッツの兄貴分」風の、典型的なハッチバックスタイル。たまたま駐車場でヴィッツと並ぶ機会があったが、背の高さはほとんど同じで、ホイールベースとオーバーハングの長さが目立った。デザインはヴィッツ同様にフランス・ニースのデザインスタジオ「EDスクエア」が手掛けたもの。Cd値はハッチバック車としては優秀な0.29を謳う。

ゴシック様式のセンターコンソール

室内で目を引くのは、欧州の教会建築で見られるゴシック様式の「フライング・バットレス(flying buttress)」がモチーフのセンターコンソールだ。全体の質感は特に高くないが、狭い面積にナビモニターや空調スイッチをまとめた手際の良さはトヨタらしい。収納スペースも天井のオーバーヘッドコンソール、収納式のドリンクホルダー、上下2段のグローブボックスなど豊富にある。ステアリングにテレスコ(伸縮)があるのもありがたい。新タイプのHDDナビはBluetooth対応の携帯電話さえあればハンズフリーはもちろん、新しく始まったG-BOOK ALFAの永年無料サービスが利用できる。ダッシュ上面中央の網はスピーカーではなく、フレッシュエアをダッシュ上面から吹き出すアッパーベントだ。

使い勝手は日本風

リアシートはフラットフロアの足元から頭周りまで特に不満なし。背もたれは6°だが、リクライニングが可能だ。中央席に独立したヘッドレストがなく、シートベルトも2点式となるのは欧州戦略車らしからぬところ。

荷室容量は354LとゴルフV(350L)と同程度でクラストップを謳うが、ハッチゲートの傾斜が強く、床も今時の「プレミアム・コンパクト」風に少し上げ底で、ガランとした広さはない。後席の折り畳みは、背もたれを倒すと座面も沈み込むワンモーション・チルトダウン式。ダブルフォールディングにこだわる欧州車に比べて、操作はだんぜん簡単だが、最大容量は少なめになる。

基本性能&ドライブフィール

「直感」シャシー「性能」

試乗した「180G」はカローラアクシオの「ラグゼール」と同じ1.8リッター直4「2ZR-FE」(136ps)を積むモデル。「Sパッケージ」仕様だが、性能に関するものはタイヤ径が1インチアップの205/55R16であることくらいで、その他は同じだ。ブレーキも1.5リッター車を含めて、全て4輪ディスクになっている。

CVTはカローラアクシオと基本的に同じもので、ギア比や最終減速比は変わらない。車重はセダンのアクシオ(1190kg)より80kg重い1270kgだ。ところがパワー感は遜色なく、むしろオーリスの方が全体に剛性感があって頼もしく、加速感も自然だ。開発時のキーワードに掲げられた「5mインプレッション」「直感性能」(走り出した瞬間に性能の良さが分かる)とはこのことか。駆動系が一緒にも関わらず、車検証数値で比較すると前軸で+70kgも重いのは、要する衝突安全などの絡みもあって、ボディがそれだけ強化されているということだろう。

攻める走りは不得手

鋭い突き上げこそ無いが、乗り心地はけっこう固め。ボディ剛性を生かした欧州風のシャシーセッティングで、凹凸のある路面ではグイグイと体が揺すられる。ブラシレスモーターを使った電動パワステの応答性もけっこうシャープだ。一方でワインディングを走ると、確かに限界は高いものの、腰高感が気になってくる。路面にピタッと吸い付く感じがなく、限界もつかみにくいので、スロットルオフやブレーキングで振り回すような走りは不得手だ。最後の最後でオプションのVSC(カットオフスイッチは無い)が介入する時もアクシオより緊張感がある。もちろん8割くらいのペースで走れば問題ないし、それでも十分に速い。

プラットフォームは現行RAV4が採用した前輪駆動ミディアムクラス用のものに近いようで、FF用のリアサスはトーションビーム、4WD用はRAV4とよく似たトレーリングアーム式のダブルウイッシュボーンになる。いずれも剛性確保には配慮したようだが、同じトヨタ車でも全車のリアサスにダブルウイッシュボーンを奢ったカルディナの如きコーナリングマシンではない。

100km/h巡航はCVTらしく約1900回転という低回転でこなし、ロードノイズや風切り音もほとんど気にならない。その気になれば180km/h巡航もストレスフリーだ。高速道路では直進安定性と快適性の高さが実感できる。燃費は撮影等を含みながら3日間で250km走り、車載燃費計と満タン法のいずれも8.6km/Lに落ち着いた。これは借り出す時に残っていた生涯燃費(走行1000km程度だが、おそらくメディア向け試乗会で稼いだもの)と偶然同じで、ほとんど最低保証と考えていいだろう。というのも、交通の流れに乗って走るだけなら、簡単に平均12~13km/L台を維持できるからだ。

ここがイイ

カローラと同じエンジン、同じCVT(ナビ協調制御もされる)なのに、こちらの方が立ち上がりにトルク感がある。5mインプレッションのためにかなりチューニングされたと思われるが、カローラより重くてこんなに良いのなら、カローラもやったらいいのに、と思う。とりあえずオーリスは、静かなエンジンと低回転を維持するCVTの恩恵で、高速走行は素晴らしく快適。同様に直進性も高速安定性も光る。このCVTならマニュアル王国の欧州でも売れると思うのだが、コストが問題なのだろうか。

欧州車らしくたいへんきちんとした座り方になるシート。チルトとテレスコも標準だ。ルーズな姿勢を拒否するこのシートは、たぶん一部ユーザーには不評だろうが、断固支持したい。カローラもこうだといいのに、とこれもやっぱり思ってしまう。アップライトな姿勢は視点が高いから見晴らしがいい。ドアが大きく開き、シート座面高も600㎜弱だから乗り降りがしやすいのもいいところ。

内装のデザインは奇抜だが、シフト位置はいい感じ。欧州では当然マニュアルなので、この位置のスポーティさは評価されそうだ。日本でも7速のマニュアルモード時になかなか使いやすい。それから室内がとても静かだ。ボディ剛性を高め、さらに防音材がしっかり奢られている。吹きつけ式の防音材も新たに用いられているという。衝突安全ではユーロNCAPで5ッ星を目指しているらしいし、目に見えない努力のあとがいろいろと仕込まれているのは、さすがに新開発だけある。

ここがダメ

絵に描いたようにカッコいいスタイルだと思うのだが、オーラを感じるほどインパクトがないのは何故だろう。たぶん、シャープさや攻撃性が足りないのだと思う。どう猛な感じだとか、速そうな感じだとかがないのだ。といって、ほのぼのとしているわけでもない。ヴィッツクラスならこれでもいいが、このクラスともなれば、もうちょっと強い個性が欲しい。

横幅は大きくなったが、室内は特に広くはない。もちろん4人には十分広いから別にかまわないのだが、居住性にもプラスアルファの驚きが欲しい。またブレーキレバーは使い慣れた「アタマにリリースボタンがある」タイプではなく、ちょっと下の方にスライドスイッチ的にボタンがあるから、戻す時は引く時よりちょっと下の方を意識的に持つ必要がある。これ、かなり違和感。パーキングブレーキはペダル式の方がもはやスタンダードだとも思う。

新型カローラ以後の発表車で、さらにカローラより上級車なのに、カローラにあったハイテク装置がないのにはがっかり。トヨタならすべてのクルマにオプション装着可能、として欲しいところだ。軽の(ダイハツ)ムーヴにもあるくらいなのだから。また安全系の装備もオプションなのはいただけない。衝突安全性はかなりがんばっているのだから、装備面もそこまでやるべきなのでは。もちろん「価格が高くなりすぎる」と売れないというジレンマの結果だとは思うが。

トヨタ車やレクサスでおなじみのスマートキーだが、オーリスではドアハンドルのセンサー(ロック解除に必要)と黒いロックボタン(施錠に必要)が運転席ドアにしか付いていない。つまりキーを持った人が助手席からドアを開ける時は、リモコン操作の必要がある。ささいなことだが「普段とは違う操作を要求される」のはあまり気持ちよくない。スマートキーに慣れれば慣れるほど、気になるような気がする。

総合評価

日本でオーラがあると思われる欧州車は、いわゆるブランドカーが多い。長年培われてきたブランド力が目に見えない魅力(オーラ)を発散してクルマ好きを引きつけるわけで、そこへ切り込んできたオーリスというネーミングはかなり大胆だ。まあ、日本にいるからそう思うだけで、欧州のトヨタ車にはそれなりのブランドオーラがあるのかもしれない。いや、そうしていくためのクルマがオーリスなのか。

試乗して感じたのは、日本ではオーラを発散するどころか、オーリスは街にすんなり溶け込んでしまうということ。目立たない。カテゴリーとして不人気な小型ハッチバック車が商品として存在意義を示すには、もうちょっと強い個性が欲しいと思う。ヴィッツなどあれだけ売れまくっても、それなりに存在感があるのは、スタイルに強い個性があるだからだろう。

そう思っていたら、どうやら年内には兄弟車ブレードが登場するようだ。2.4リッターエンジンと4WD同様の足回りに加え、スタイリングにはちょっと「エグめ」の味付けが加えられるという。なるほど、欧州の絶対的な販売目標台数に比べて、日本が3000台とかなり少なめなのは、そういう事情があるということか。つまりオーリスは欧州車そのもののコンセプトを日本でも販売する(アベンシスなんかと同じ)というプロジェクトなのだろう。それゆえ、ハイテク装備もうたわれないわけだ(販売もアベンシス同様のネッツ店)。

それでも新エンジンとCVTという日本向けの組み合わせによって、アベンシスのようないかにも欧州車という走りではなく、トヨタ車らしい、日本の風土に合った快適なクルマになっている。欧州車の良さ(オーリスならシートとか高剛性ボディなど)と日本的な走りの性能(正直なところあまりスポーティとはいえないけれど)が合体して、とても完成度の高いクルマになっている。つまりカローラよりベターなカローラハッチバック。買っての満足度は高いはず。

さて、では誰が買うのかだが、トヨタでは40代、50代の子供のいない(巣立ってしまった)夫婦を想定しているようだ。かつての「赤いファミリア」世代。アクセラも同様のところをねらっていたと思うが、マーケティング的にはそこに月3000台の市場があるのだろう。快調なティーダやアクセラ潰しという側面もありそうだし、すべての(市場の)隙間を埋め尽くす世界最大の自動車メーカーという観点で見れば、さもありなん。

総支払い価格的にはウィッシュあたりより高くなりそうだから、ミニバン世代には見向きもされないはず。いや、意外にそうでもなさそうで、子供さえいなければこの手のハッチバックが欲しいという、若い頃を中古ゴルフで過ごした30代は多い。そんな世代が次の代のオーリス予備軍ゆえ、10年後くらいにハッチバックブームが来る可能性はかなり高いと思う。また、すでに一部報道によると欧州でいすゞ製ディーゼルエンジンをトヨタ車に搭載する話があるようだが、その頃のオーリスにはトヨタと提携したいすゞ製ディーゼルが載っているのかもしれない。ディーゼルとCVTの相性は悪くないはずだから、この組み合わせは今後、かなりの有望株になると思う。

試乗車スペック
トヨタ オーリス 180G “Sパッケージ”
(1.8L・CVT・208万9500円)

●形式:DBA-ZRE152H (-BHXEK-S)●全長4220mm×全幅1760mm×全高1515mm●ホイールベース:2600mm●車重(車検証記載値):1270kg(F:820+R:450)●乗車定員:5名●エンジン型式:2ZR-FE●1797cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置●136 ps(100kW)/6000rpm、17.8 kg-m (175Nm)/4400rpm●カム駆動:チェーン●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/50L●10・15モード燃費:15.6km/L(Sパッケージ装着車) ※180G 標準車は 16.8 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:205/55R16 (YOKOHAMA ADVAN A460)●試乗車価格:254万9400円(含むオプション:VSC&TRC + SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ 12万6000円、HDDナビゲーションシステム〔オーリス・ライブサウンドシステム+6.5型ワイドディスプレイ+Bluetooth対応ハンズフリー機能+G-BOOK ALPHA 対応+TVアンテナなど〕31万9200円、ETCユニット 1万4700円 ) ●試乗距離:約200km●試乗日:2006年11月

公式サイト
http://toyota.jp/auris/

 
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