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トヨタ オーリス RS “S パッケージ”新車試乗記(第673回)

Toyota Auris RS “S Package”

(1.8リッター直4・6MT・225万円)

2代目に進化した欧州戦略車、
その6MTモデル「RS」は
FFのハチロクだった!?

2012年10月05日

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キャラクター&開発コンセプト

2代目は「スポーツハッチバック」に進化

トヨタの欧州戦略車「オーリス」は、2006年にデビューしたCセグメントのハッチバック車。欧州市場をターゲットにした3ナンバーボディを採用するなど、従来のカローラ派生モデル(カローラ ランクスとアレックス)とは一線を画したコンセプトで登場。英国など海外でも生産され、初代の累計販売台数はグローバルで約113万台。うち欧州は78万台、日本は11万台だったという。

 

新型トヨタ オーリス RS “S Package”
(photo:トヨタ自動車)

そのオーリスが2012年8月20日、6年ぶりのフルモデルチェンジで2代目になった。トヨタによれば、新型は「直感性能を磨き上げたスポーツハッチバック」とのことで、同じく「直感性能」をキャッチコピーとした先代よりも強くスポーツ性を打ち出している。具体的には、先代比で全高を55mm低くしたほか、ダブルウィッシュボーン式リアサスペンションを新採用(1.8リッター車)。また先代後期型に引き続き、6速MT仕様のトップグレード「RS」を設定している。

月販目標は2000台

従来モデルの生産は、関東自動車工業(現在のトヨタ自動車東日本)の岩手工場だったが、新型はトヨタ自動車の高岡工場(愛知県豊田市)。販売チャンネルは従来通りネッツ店で、月間販売目標は先代デビュー時(2006年)の3000台から2000台に修正された。発売から一ヶ月後(9月19日時点)までの受注台数は約4000台とのこと。

■外部リンク
トヨタ自動車>ニュース>オーリスをフルモデルチェンジ (2012年8月20日)

■過去の新車試乗記(トヨタのFF中型スポーツハッチバック関連)
レクサス CT200h (2011年2月更新)
トヨタ ブレイド マスター G (2007年11月更新)
トヨタ ブレイド G (2007年1月更新)
トヨタ オーリス 180G Sパッケージ (2006年11月更新)
トヨタ カルディナ 2.0ZT (2002年10月更新)
トヨタ カローラ ランクス (2001年2月更新)

 

価格帯&グレード展開

1.5&1.8リッターで171万~225万円。6MTの「RS」も設定


パノラマルーフ装着車。ボディカラーは新色「アバンギャルドブロンズメタリック」など全7色

欧州仕様にはデイーゼルターボやハイブリッドもあるが、日本仕様は108ps(4WDは105ps)の1.5リッター直4(1NZ-FE)と143ps(6MTは144ps)の1.8リッター直4(2ZR-FAE)の2種類。1.5リッターの「150X」は全車CVT(無段変速機)だが、1.8リッターにはCVTの「180G」に加えて、6MTの「RS」が用意される。

150X、180G、RSの各グレードには、16インチタイヤ&アルミホイールなどの装備が充実した“S パッケージ”を用意。逆に150Xにはスマートキーがなく、エアコンもマニュアルの廉価グレード“Cパッケージ”が用意される。

また一部グレードを除き、オプションでパノラマルーフ(10万5000円)も選択可能。またアイドリングストップ機能(5万4600円)も、1.5リッター車(4WD車と廉価グレードのCパッケージを除く)にオプションで用意される。ディスチャージヘッドランプ(AFS機能付)+LEDクリアランスランプは、各グレードの“S パッケージ”および180Gに標準装備。

 

180Gや150Xではベージュ内装も選べる(SパッケージとCパッケージを除く)

■150X “C Package”(CVT)  171万円(FF)/189万9000円(4WD)
■150X (CVT)          179万円(FF)/197万9000円(4WD)
■150X “S Package”(CVT)  198万円(FF)/216万9000円(4WD)

■180G(CVT)          206万円(FF)
■180G “S Package”(CVT)  221万円(FF)

■RS(6MT)            202万円(FF)
■RS “S Package”(6MT)    225万円(FF)

パッケージング&スタイル

「キーンルック」を採用。全高を低めてスポーティに


ボンネットは歩行者保護性能を確保するため高くなりがちだが、新型オーリスでは低めに抑えられている

フロント部分にトヨタの新しい顔となる「キーンルック」(keen=鋭い、鋭利な)を採用した新型オーリス。台形のラジエイター開口部は「アンダープライオリティ」、全体のデザインテーマは「スマートダイナミズム」と呼ばれるなど、相変わらずトヨタのデザイン用語は難解。全体的には現行ヴィッツを一回り大きくしたという感じでもあり、リアコンビランプは新型レクサス GSにちょっと似ていたりもする。

 

試乗車は6MTの「RS “Sパッケージ”」(225/45R17タイヤ装着車)。トヨタ車では珍しく、タイヤがホイールアーチギリギリまで張り出し、踏ん張り感が出ている

ボディサイズは全長4275mm×全幅1760mm×全高1460mm。先代オーリス同様、欧州Cセグメントのド真ん中を行くサイズだが、新型は全高を55mm下げているのがポイント。しかし下記の表を見ても分かるように、むしろ先代の全高が欧州車の中では高めだったとも言える。

また外寸自体は、2600mmのホイールベースを含めて、レクサスのCT200hに近く、両モデルがプラットフォームの基本部分(基本的には先代オーリスや今春に販売終了したブレイドと同じ)を共有することが分かる。Cd値はクラストップクラスの0.28(CT200hと同値)。

 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
VW ゴルフ 4210 1790 1485 2575 5.0
先代トヨタ オーリス 4245 1760 1505~1530 2600 5.2
新型トヨタ オーリス 4275 1760 1460~1480 2600 5.2~5.4
レクサス CT200h 4320 1765 1450~1460 2600 5.0~5.2
アルファロメオ ジュリエッタ 4350 1800 1460 2635 5.5
トヨタ カローラ フィールダー 4360 1695 1465~1500 2600 4.9
マツダ アクセラ スポーツ 4460 1755 1465~1505 2640 5.1
 

インテリア&ラゲッジスペース

着座位置が40mm下がり、よりスポーティに


内装カラーは、ブラックとグレージュの2種類を設定

メタル調の加飾を随所に施すほか、ダッシュボード上部やドアトリムにソフトパッドを採用するなど、質感に気を配ったインテリア。オーディオ周辺のメタル調塗装の縁取りは、ラジエイターグリルのデザインと呼応しているようにも見える。ただし先代オーリスではセンターコンソールをブリッジ状にするなど、かなり攻めのデザインだったが、新型は水平基調・絶壁風のダッシュボードとするなど、少し揺り戻した感は否めない。

 

「RS」には赤いステッチ入りの専用シート表皮を採用。チルト&テレスコは標準装備

全高が55mm低くなって、着座位置も40mm下がり、ドライビングポジションは低め。このあたりは現行の3代目ヴィッツと似たような感じ。ヒップポイントの低下に伴い、ステアリングの取り付け角度は2度、寝かされた。欧州市場の場合、やはりこのクラスのコンパクトカーでは、ゴルフやフォーカスのように低重心や安定感のある低めのドラポジが好まれるようだ。特に試乗した6MT車の場合は、シートを低めにした方がペダル操作しやすい。

 

欧州戦略車ではあるが、日本仕様のエンジン始動ボタンはステアリング右側に配置

「RS」の6MTシフトレバー。リバースはリングを上げて左奥
 

中央席にもヘッドレストと3点式シートベルトを装備


リアクォーターガラスの追加によって、後席の閉塞感が減っている

ホイールベースは先代と同じだが、新型は前席に薄型シートバックを採用して、後席のフットルームを拡大。後席はシートアレンジより座り心地を重視したもので、クッションは分厚い。また3人分のヘッドレストや3点式プリテンショナー&フォースリミッター付シートベルトも備わる。ちなみに先代の日本仕様は、リア中央席にヘッドレストがなく、シートベルトも2点式だった。前席用のサイドエアバッグおよび前後席用カーテンシールドエアバッグは、4万2000円のオプションになる。

背もたれがフラットに倒れる


後席は背もたれがパタンと倒れるだけ。座面は固定になる

荷室容量は先代の354リッターから360リッターに拡大。また先代では、後席の背もたれを前倒しすると座面も同時に沈み込むワンモーション・チルトダウン式だったが、背もたれは完全に水平にはならなかった。一方、新型は単に背もたれが倒れるだけなのに、ほぼ水平に倒れるようになった。フィールダーでも斜めになるので、ここはポイント高し。

その代わり、荷室フロアとの段差が10センチほど生じるが、それは取付位置を上下2段階で選べるアジャスタブルデッキボードで解消している。

 

「アジャスタブルデッキボード」を下段にした状態

「アジャスタブルデッキボード」を上段にした状態。後席はフラットに倒れる
 

パンク修理キットを標準装備。スペアタイヤはオプション(1万0500円)
 

基本性能&ドライブフィール

街中でも小気味いい加速

試乗車は6MTの「RS “S パッケージ”」。最近めっきり少なくなったMT車の試乗だが、特にトヨタ車では久しぶり(86は6ATに試乗し、6MTはBRZで試乗した)。どれだけ久しぶりかと思ったら、2001年に試乗した初代ヴィッツの5MT・アイドリングストップ付以来で、実に11年ぶり。妙なもので、新型オーリス RSの6MT車にアイドリングストップは付かないが。

 

エンジンは改良型の1.8リッター「バルブマチック」。6MTのRSは、ハイオク仕様になる

クラッチを床までしっかり踏み込み、エンジン始動ボタンを押せば、一瞬の間があってスターターが回る。エンジンは粘るし、クラッチのミート感覚も分かりやすいので発進はイージー。ただ、低回転トルクが強力なわけではないので、場合によっては半クラッチを少し当てたくなる。

1速でアクセルを踏み込めば、トルクステアもホイールスピンも皆無のまま、シュゥーーンと爽やかに、そして一気呵成に加速する。レッドゾーン手前の6500回転まで引っ張って約50km/h。2速で引っ張っれば約90km/h。しかし軽く気持よく走らせるだけなら、1速で軽く引っ張り、2速でも軽く(4000回転オーバーまで)引っ張って、3速にシフトアップすると約60km/h。そこでエンジン回転数はポトンと3000回転くらいに落ちる。そこから加速せずに、4速、5速に上げてもいい。先代よりローギアード化された6MTのギア比は、一般道ではドンピシャ。常用速度域でも十分にパワーバンドを使った小気味のいい加速が楽しめる。

というわけで、パワフルな走りを期待すると「あれっ?」となるが、そういった先入観がなくなってくると、とても気持ちよく走れる。ライトウエイトじゃないけど、ライトウエイトスポーツ的。86/BRZほどパワフルではなく、また高回転型でもない分、一般道では安全に楽しめる。

パワーウエイトレシオは8.8kg/ps

1.8リッターの自然吸気「バルブマチック」エンジンは、基本的に先回乗った新型カローラ フィールダーの1.8Sと同じもの。ただしRS用エンジンのチューニングは若干異なり、最高出力はフィールダーより4ps増しの144ps、最大トルクは0.9kgm増しの18.4kgm。またオーリスの180G(CVT)と比べても、最高出力は1ps多いだけだが、最大トルクは0.8kgm増し。実は、この中でRSのみ、指定燃料がハイオクになる。圧縮比はこれらすべて10.6で共通なのだが。

とはいえ、RSのパワーウエイトレシオ(PWR)は車重1270kg/144ps=8.8kg/psだから、パワー感はそこそこ。MINIで言えば1.6ターボのクーパーSではなく、自然吸気のクーパー(6MT)に近い。と思って調べてみたら、クーパーのPWRは1130kg/122ps=9.3kg/psで、数値的にも近い。また、スズキ スイフトスポーツ(同じく1.6リッターの自然吸気)の6MTも頭に浮かんだが、こちらはオーリスより220kgも車重が軽いので、乗り比べた場合は、明らかにスイフトの方が速いと思われる(スイフトスポーツのPWRは1050kg/136ps=7.7kg/ps)。ちなみにこの3車は、すべてプレミアムガソリン仕様。

リアサスのダブルウィッシュンボーン化で、滅法しなやかに

プラットフォームは先代ベースだが、1.8リッター車のリアサスペンションはトーションビームからダブルウィッシュボーンに格上げ。要は先代オーリスの4WD車や欧州仕様、上級モデルのブレイド(前述の通り販売終了)のシャシーが採用された形だが、とにかく1.8リッター車のシャシー性能は明らかにワンランク上がった。

走り始めて気付くのは、サスペンションが滅法しなやかに動くこと。バネレート自体は、例えばフィールダーの1.8S エアロツアラーより柔らかそうだが、無駄な揺れがぜんぜん残らないし、ストローク感もたっぷり。エンジンが軽いせいか足取りは軽く、フランス車みたいな懐の深さも感じられる。舗装の荒れたところを突破する時などは感動的。また先代比で約10%向上したというボディ剛性も、確かにまったく不満ない

ただしエンジン同様、スポーツモデルだと思ってビシッとした足回りを期待して乗ると、拍子抜けするかも。足回りについても、やはり感じが近いのは、MINIで言えばクーパーSではなく、クーパー。ゴルフで言えばGTIではなく、中間グレードのTSI コンフォートラインあたりになる。

 

試乗車のタイヤはオプションの225/45R17。グリップに不滿はなく、ロードノイズも静か

とはいえワインディングでも、MINI クーパーやゴルフ TSI コンフォートラインのように、オーリス RSも徹頭徹尾しなやかに、安定したまま走り抜ける。もちろん軽量コンパクトなMINIほど「ゴーカートフィーリング」はないし、ゴルフのような熟成感(ステアリングの操舵感とか、その気になればリアを少し流せそうなところとか)はないが、こういった安定サイドのセッティングもトヨタ車らしいところか。トヨタのリリースには「コーナーで狙ったラインをスムーズにトレースできるコーナリング性能を実現」とあるが、確かにそんな感じ。またフロント16インチの専用4輪ディスクブレーキもよく効く(ブレーキダストは多めな印象)。ペダル位置の関係で、ヒール&トウはやりにくいが、慣れてくれば何とかなる。

また試乗車のタイヤはオプションの225/45R17(ヨコハマのアドバン デシベル)で、このクラスの国産車では久しぶりにちゃんとグリップした。おかげでVSCの介入はウエット路面を含めてほとんどなく、発進時に若干トラクションコントロールが作動する程度(VSCはオフにしても50km/h以上で復帰する)。たぶん標準の205/55R16タイヤ(グッドイヤーのエフィシエントグリップらしい)も十分にグリップすると思うが、逆にこの17インチタイヤでも過剰な感じはない。

1500~2000回転も回せば、街中では十分

この新型オーリス、自然吸気エンジンの、トルクフルとは言えない低回転を上手に使いながら、のんびり走るのも意外に面白い。トルクフルではないと言っても、粘りは十分で、例えば6速トップで約1300回転、速度にして約50km/hでも、スムーズに走ってくれる。さすがにそれ以下だと振動は出るが、1500~2000回転をキープすれば十分で、それはそれで運転は楽しい(小まめなマニュアルシフトを厭わなければ)。また瞬間燃費計を見ていると、そのあたりが燃費的にもスイートスポットなのが分かる。6MTのシフトフィーリングは、ストロークがそこそこあり、また操作感もちょっとカチャカチャしているが、軽くて操作しやすい。

100km/h巡航時のエンジン回転数は、5速で約3000回転、6速で約2600回転。追越時は、5速に落としたいところだが、シュゥーンと爽やかに回る特性もあって、かったるさはない。高速域でも静粛性は問題なし。電動パワステにもう少しに重みがあってもいいかな、と思う程度。

試乗燃費は9.8~14.9km/L。JC08モード燃費は14.4km/L(RS)

今回はトータルで約320kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつものように一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が9.8km/L。また街中でも、そこそこ気前よく回して走っていると、だいたい10km/L弱だった。

逆に、空いた一般道を極力エンジンを回さず走った区間(約30kmを2回)は、14.6km/Lと14.9km/L。また、高速道路での80~100km/h巡航では19km/L台だった。エンジンを回した時の燃費は、一昔前の同クラス・マニュアル車と似たようなものだが、エコ運転した時の伸び方は、「エコカー」と呼びたくなるもの。

なお、「RS」のJC08モード燃費は14.4km/Lで、同じ1.8リッターでもCVTの「180G」は16.0km/L、1.5リッター(CVT)は18.2km/L、1.5リッターのアイドリングストップ機能付は19.2km/L(1.5リッター・CVT・4WDは16.4km/L)。

燃料タンク容量は50リッターで、前述の通り指定燃料は6MTの「RS」のみがハイオク。他はレギュラーになる。

 

ここがイイ

貴重なMT、爽快な走り、手頃な価格

いまどき、このクラスのトヨタ車では貴重なMT車。そんなにパワーはないが、ライトウエイトスポーツ的なエンジンを、6MTをで適度に回せば、爽快で安全な走りが楽しめる。またパワーロスのない、ダイレクトな伝達感が味わえるのは、やはりマニュアルならでは。メガーヌRSやゴルフ GTIのような、高性能FFモデルではないが、MT派で「普通のFFハッチバック」を足に使いたい人なら、かなり気に入ると思う。

しなやかなサスペンション。1.5リッターの方は試乗していないので分からないが、リアサスがダブルウィッシュボーンになる1.8リッターのシャシーはよく出来ている。しかも素のRSなら200万円ちょっと(202万円)。ヘッドライトはAFS付ディスチャージではなくハロゲンになるし、ホイールもアルミではなくスチールになるし、エアコンもオートではなくマニュアルになるが、「そんなものは要らない。いいシャシーとエンジン、そして6MTがあればいい」という人なら、これで不足ないはず。そういう意味では、86以上にマニアックなクルマかも。

ここがダメ

パンチ不足のエンジン、アイドリングストップ機能の一部グレード未設定、操作系など

この内容で中間グレードなら文句なしだが、最もスポーティな(あるいはマニアックな)グレードとしては、エンジンがパンチ不足。またこの6MTのみハイオク仕様である点も、ノッキング対策だと思うが、その割にはパワーが、と思ってしまう。ヴィッツ RS同様、トヨタにとって「RS」はそれほどマニアックなモデルを指すわけではないようだが、せっかくの6MT、スポーツモデルゆえ、もう少し辛口の方が分かりやすかったと思う。

1.8リッター車にアイドリングストップ機能がないこと(1.5リッターでもオプション)。必要なしとドライバーが判断すればオフにすればいいわけで、最初から無いのは、今どきの新型車の場合、どうなのだろうか。特にトヨタ車の場合は、エンジンオフボタンを押すと、オーディオも含めて全て電源が落ちてしまうため、手動でアイドリングストップする気にならない(ドイツ車はオーディオの電源は落ちない物が多い)。また、プリクラッシュセーフティとか、自動ブレーキとか、日本車お得意(だったはず)の先進安全装備が何もないこと。

 

細かいことを言えば、内装デザイン、電動パワーステアリングのフィーリング、走りの重厚感などは、ゴルフにまだ水を空けられていると思う(そのゴルフは先ごろ7代目が本国で発表された)。また上から踏み降ろすようなペダルレイアウトも気になるし、シフトはもう少しストロークを詰めて、タッチに剛性感も欲しいところ。せっかくの6MTなので。

さらに細かいことを言えば、新型ポルテ/スペイド同様、昼間時のアナログメーターはもう少しくっきり表示して欲しい。オプティトロンメーターを採用する上級モデルと差があり過ぎ。

ステアリングにオーディオ操作用のスイッチが付いていたが、運転中にモード変更ボタン(AM、FM、テレビ、外部入力等の切り替え)に手が触れて、勝手に押されてしまうことが何度かあった。もう少しボタンを「硬く」してもいいと思う。

総合評価

CMのインパクトは強烈だが

新型オーリスのCMには驚いた。トヨタがこんなお下劣な事やっていいの、という感じ。とはいえ、それなりのインパクトがあったから、オーリスという名前が、いくぶんでも知られたには違いない。なにせオーリスという車名、まだまだ認知度が低いと思う。デビューから6年も経ったのに、知られていないトヨタ車名の上位に入るのではないか。先代がデビューした後も、「大きなリス」が登場する脱力CMが作られたくらい、告知には苦しんだようだ。世界市場で直接のライバルであるゴルフより、日本車のくせに日本国内での知名度が低い。しかしまあ、今や多くの車名が、一般にはほとんど知られていないという現状もあるのだが。

 

で、強烈なインパクトのCMで車名を覚え、実際のクルマを見てみると、先代より背が低くなって確かにスポーティだが、はっと目を引くほどではない。自慢のキーンフェイスもこれがカッコイイのか、当方には正直よくはわからない。オーリスの形には、これだ、というものが感じられないのだ(どことなく昔のカルディナにも似ている)。デザインが際立って個性的な他のCセグメント車と比べると、逆にそこがトヨタらしいとも言えるのだが。

デザイン的な不満はインパネも同様。先代で採用された馬の背コンソールの造形があまりに先進的だったせいか、今回は2世代以上、過去に戻ったかのよう。助手席前の加飾パネルは最近流行りのようだが、どこがいいのかよく分からないし、ソフトパッドを上面に使ったダッシュボードの形状も、今ひとつピンとこない。こちらの感覚がずれているのだろうか。新型ゴルフのダッシュボードを写真で見るとホッとするのだが。

FFのハチロク

それでも、走らせてみると印象は一変、これはかなりいいのでは、ということになる。乗り心地がいいのに、ワインディングもしっかりこなす。低重心のおかげか、ダブルウイッシュボーン・リアサスの恩恵か、という感じ。RSはMTなので、ある意味、トランスミッションに関する不満はほぼない(踏み下げるようなクラッチペダルはいまいちだが)。試乗車がCVTであれば、たぶん凡庸な印象になると思うが、MTであったがため、欧州車に比すると感じた。鼻先軽く、エンジンは程よくアンダーパワー。完全に足回りが勝っているので、オンザレール感覚でコーナリングを楽しめる。追い込めば、それなりに挙動も出るが、当然VSC介入で安全だ。この楽しげな感覚、何かに似ていると思ったら、86(BRZ)のMT車に近い。トヨタには、FFのハチロクを作ったという意識もあるだろう。トヨタ的なスポーツ感覚ではある。

 

先代オーリスは、欧州戦略車を国内でも販売するというクルマだった。今回もまた、そのパターンのようで、MTならライバルの欧州MT車に負けないだろうし、DCTを持たないトヨタとしては、MTなら互角ということもあるだろう。ただ、直噴ターボエンジンのないトヨタで、何が決定的な武器かといえば、それはやはり欧州仕様にあるハイブリッドだろう。このシャシーにハイブリッドシステムが載れば、欧州でも勝機はあるのではないか。それに対して日本では、ハイブリッドは食傷気味なくらいなので、「走りのMT」でニッチなマーケットを攻めるということになる。

そして新型オーリスの国内向けが作られるのはトヨタの聖地「三河」である。三河にも近い「世界の亀山」からは、シャープが液晶テレビ撤退をきめてしまったが、三河では日本製ハイテクの(いまや最後の?)砦である「ハイブリッドカー」も作られている。これはぜひ勝ち残ってもらいたいもの。やがてPHVのオーリスが登場すれば、素晴らしいシャシー性能とPHVが融合した、欧州車を超えるクルマになるだろう。
 

 

試乗車スペック
トヨタ オーリス RS “S パッケージ”
(1.8リッター直4・6MT・225万円)

●初年度登録:2012年8月●形式:DBA-ZRE186H(-BHFNP-S) ●全長4275mm×全幅1760mm×全高1460mm ●ホイールベース:2600mm ●最小回転半径:5.4m ※225/45R17タイヤ装着車。標準の205/55R16タイヤの場合は5.2m ●車重(車検証記載値):1270kg(790+480) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:2ZR-FAE ●排気量・エンジン種類:1797cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:80.5×88.3mm ●圧縮比:10.6 ●最高出力:106kW(144ps)/6200rpm ●最大トルク:180Nm (18.4kgm)/3800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:14.4km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 ダブルウィッシュボーン+コイル ●タイヤ:225/45R17(Yokohama Advan dB decibel) ●試乗車価格(概算):255万3083円  ※オプション:225/45R17タイヤ&17×7J アルミホイール 4万4100円、マッドガード 4200円、SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ 4万2000円、エクセレントナビ G-BOOK mXモデル 19万5825円、ETC 1万6958円 ●ボディカラー:レッドマイカメタリック ●試乗距離:320km ●試乗日:2012年10月 ●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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