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ルノー アヴァンタイム新車試乗記(第257回)

Renault Avantime

(3.0リッター・5AT・500万円)

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2003年02月21日

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キャラクター&開発コンセプト

ミニバンとクーペの融合

欧州系ミニバンの先駆者である同社の「エスパス」をベースに、2ドアクーペ風に仕立てたのがアヴァンタイムだ。ジャンル分け不可能な、まったく新しいコンセプトと現代アートのような前衛的デザインを盛り込んだ、ルノーのイメージリーダーとなるモデルだ。

1999年のジュネーブショーで初めて現れた時は、誰もがコンセプトで終わると思ったが、ほぼ同じ形のまま2年後には市販された。デザインは80年代末からルノー・デザイン部門を引っ張るパトリック・ルケマンが担当。その外板にはアルミとプラスチック樹脂を使用し、巨大なサンルーフとピラーレス構造で、ミニバンらしからぬ非日常性と、クーペにあるまじき開放感を演出する。日本では本国から約1年遅れの2002年11月に発売された。

価格帯&グレード展開

右ハンドルの3.0リッター・5ATで500万円

グレードは1種類で、価格は500万円。ボディカラーは4色(ブルー、ブラック、グリーン、パープル)、インテリアはブラックとベージュの革となる。右ハンドル英国仕様に絞っていち早く導入したのは英断だ。

欧州には、3.0リッターの6MTや2.0リッターのターボ、2.2リッター・コモンレール式ディーゼルもある。グレード展開も4種類と多彩で、ボディカラーも10色以上。日本と違って欧州ではそれなりの販売台数を見込むようだ。

パッケージング&スタイル

アヴァンギャルドな宇宙船

全長4660×全幅1835×全高1630mmというボディサイズは、まさにちょっと短めの大型ミニバンだ。エスパスIII(現行エスパスはIV)をベースにした「前衛的クーペ」ということだが、普通の路上で見ると異様な存在感がある。

試乗車をデイズの駐車場に入れた時の様子は、ほとんど「不時着した宇宙船」という感じ。カッコいいとか悪いとか、そういう次元を超えた迫力がある。パトリック・ルケマンが手掛けたトゥインゴ、セニック、新型メガーヌ、ヴェルサティスなどの革新的なデザインは、まるで未開の地を一人まっしぐらに切り進んでいるようだ。

開発・生産は名門マトラ

銀色のAピラーとルーフ部分は、見た目どおりアルミ合金製。その他の外板はほとんどプラスチック樹脂製だ。だから前後フェンダーとドアは、押すとボヨンボヨン凹む。このアヴァンタイムの設計・開発・生産を行なったのは、ミサイルでも有名なマトラ社で、こうしたプラスチック樹脂のボディワークも同社が得意とするところだ。同じ構造の先代エスパスの生産も同社が請け負っている。マトラは一時期、F1やルマンで活躍、小型軽量スポーツカーも生産していた名門だ。

アンティークのモダンファニチャー

内装も外観に劣らずアーティステックだ。左右対称ダッシュボードやシートベルト内蔵の重厚な革シートには、モダンファニチャー顔負けの存在感がある。ダッシュボードからドアまで水平に横切るアルミニウムのプレートは、昔のラジオみたいなレトロ調デザイン。プレートの素材が薄いせいか簡単に凹みが出来てしまうが、そうやって「味が出る」ようにしてあるとしか思えない。未来的というよりは、「近」未来的だ。

1.4mもある巨大なドアは、ダブルヒンジを使って開けた時の張り出しを抑えてある。おおげさに言えばボディと並行に開くような感じだ。よって乗降性は大きなドアの割りには良好と言えるかもしれない。ドア自体は相当重いが。

ボタン一発でカブリオレ状態

カブリオレ並みの開放感も大きな特徴だ。巨大なサンルーフ、そして「クーペ」にしては大きなサイドウインドウは、ボタン一つで一斉に開く。そうすると後に残るのはAピラーとルーフの細い枠のみで、まさにパノラマビューが楽しめる。開放感はほとんど4シーターカブリオレかそれ以上で、つまり走行中は風がビュービューと吹きすさぶ。このモードは、景色の良いところで停車中に利用すると良さそうだ。

後席はオマケっぽい

ゴージャスな造りの後席だが、空間自体は足元も頭上も余裕がない。いちおうハッチバックなので、ダブルフォールディングで分割可倒できる。安全性にこだわる最近のルノーらしく、安全装備は充実。6エアバッグ、EBD付ABS(アシスト付き)、ESP(オフスイッチ付き)、シート一体式プリテンショナー&フォースリミッター付きシートベルトなどを装備。

円柱を半分に割ったようなリアゲートを開けると、その姿はまさにタイヤが付いた現代オブジェ。ラゲッジ自体はボディ寸法の割に広くないが、そういうことに文句を言う気にはならないクルマだ。

基本性能&ドライブフィール

運転のしやすさに安心

路上で見るアヴァンタイムはそうとう変だが、運転した感じはかなり普通で、ある意味ホッとするもの。見晴らしがたいへん良く、運転はとてもしやすい。オーディオやオンボードコンピューターの操作に予備知識が必要だが、走るだけなら取扱い説明書は不要だ。

走りは日本製の大型SUVに近いかもしれない。17インチタイヤとロールを抑えた足まわりでシャキッとはしてはいるが、どことなくユサユサ感が付きまとう。足まわりの構造は先代エスパスと同じ前ストラット、後トーションビームで、見た目と違ってオーソドクス。1.8トンもあるので乗り味は重厚だ。

アイシン製ATでもう一安心

エンジンはルノーで定番の3.0リッターV6「L7X」ユニット(207ps)。トランスミッションは最近フォルクスワーゲン/アウディ、ポルシェなど、欧州で採用が多いアイシンAW製の5速ATだ。その変速プログラムは加速時には6000回転オーバーまで引っ張り、減速時はエンジンブレーキをガンガン効かせるフレンチな設定で、何度か「マニュアルモードに入れたまま?」と勘違いした。ま、これはフランス車に乗るときによく思うことだ。ゲート左側にはシーケンシャルモードを備える。

デジタルバー式の大ざっぱな目盛りのせいで正確な回転数は分からなかったが、100km/h巡航は5速トップで2000回転くらい。最高速(メーカー発表値)はV6・3.0リッターで、220km/h(MT/AT共通)。その気になれば速い、ということか。

ちなみにルノーのもう一つの旗艦、ヴェルサティスは日産のVQ35DEエンジン(3.5リッターV6・245bhp)を搭載する。ならばアヴァンタイムにも名機VQを、と試乗前は思っていたが、試乗してみると「このクルマにはこれでいいのではないか」と思い直した。高回転・ハイパワー型のVQは、このクルマのゆったり感やクラシカルな雰囲気、そして何よりこのどことなくゆるい感じのシャシーに合わない気がする。実際にはスペースの関係で搭載は困難らしいが。

ここがイイ

その圧倒的なムダ。ミニバンベースで実質2+2のクーペを作るという発想は、効率主義の日本車では絶対出てこないはず。ユッタリとした乗り心地、適度な非力感もフランス車らしい。「緩い、遅い、柔らかい」という、いつもながらのフランス車らしさゆえ、いわゆるフランス車オタクにすんなり受け入れられるはず。外板が樹脂製というあたりも、かつてのシトロエンBXみたいだ。もしVQが載ってモリモリ走ったりすると、この雰囲気は台無しになるだろう。その意味でまさにフランス車だ。逆に日産の血が入ったヴェルサティスなどはフランス車らしさがなくなっていそうで怖い。

ここがダメ

モダンなインテリアにはカーナビが似合わない。そもそもカーナビを組み込むつもりはないと思われるデザインで、1DINスペースどころかオーディオ自体が表になく、設置のしようがない。センターの大きな物入れ部分にモニターを設置して、ふたを開けると出現、が理想だが、ふたは上に開くだけにそれも難しそうだ。

シート高が中途半端に高く、小柄な日本人には乗り込みにくい。シフトのマニュアルモードの動きは、アップ側が特に渋かった。せっかくの5速なのだが、積極的に使う気になれないのは残念。

総合評価

見たとたん、「こりゃ、シトロエンDSの再来だな」と思ってしまった。サイズ的にもスタイリング的にもDSっぽい。一見モダンでありながらどことなくレトロな雰囲気は、50年代の流線型カーにも通じる。プジョロエンと揶揄されるようになったシトロエンにはもうこんなクルマは作れず、その意味で古き良きフランス車らしいクルマを作れるのは、もはやルノーだけかもしれない。そして、日産の血が入っていないルノーの新車はこれが最後だろうか。

販売店で聞いてみると、40代の会社社長がアリストの代替えでアヴァンタイムを購入したとか。日本の新車アリストオーナー像を想像してもらい、そういう人がフランスにもいるとすると、このクルマの市場が見えてくる。プジョー607、シトロエンC5、ルノーサフランといった、あたりまえのフランス版VIPカーに飽き足らない人にとって、アヴァンタイムはいい選択肢なのだろう。

で、日本で500万円で売れるとなると、本国では300万円台か。そこでエルグランドをベースに日本版アヴァンタイム(高級ミニバンクーペ)を作り、日本国内で300万円台で売ったら案外まんざらでもないと思う。日本人は皆ミニバンに乗り慣れていて、カッコいいクーペは好きだし、子供が大きくなって実際に欲しいが(例えばZやスカイラインクーペね)、いまさら低くて狭いのはたまらない、という人はけっこう多い。

一見では企画モノにも思えるアヴァンタイムだが、これって実は新しい市場を切り開くクルマなのでは?ウィッシュの大当たりの次に来る新形式ミニバン(のようなもの)のヒット作は、日本版アヴァンタイムかもしれない。

試乗車スペック
ルノー アヴァンタイム

●形式:GH-EL7X●全長4660mm×全幅1835mm×全高1630mm●ホイールベース:2700mm●車重:1790kg(F:-+R:-)●エンジン型式:L7X●2946cc・DOHC・V型6気筒・横置●207ps(152kW)/6000rpm、28.5kgm(280Nm)/3750rpm●10・15モード燃費:ーkm/L●タイヤ:235/50R17(Michelin Pirot Primacy)●価格:500万円(試乗車:500万円)

公式サイトhttp://www.renault.jp/

 
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