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ダッジ アベンジャー SXT新車試乗記(第480回)

Dodge Avenger SXT

(2.7リッターV6・4AT・413万7000円)

マッスルカーのスタイルと
「普通のアメリカ」を合わせ持ち、
アメリカに生まれ、
そして日本にやってきた。

2007年09月28日

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キャラクター&開発コンセプト

「ダッジ」のFFミドルクラスセダン

アベンジャーは2007年6月に日本で販売が始まった「ダッジ」ブランドのFFミッドサイズセダン。米国ではトヨタ・カムリ、ホンダ・アコード(米国版)と同じクラスに属し、米国ではポピュラーなクライスラー・セブリングの兄弟車にあたる。メーカーは「ダッジの伝統であるアメリカン・マッスルカーをグローバルなミッドサイズセダン市場に導入するもの」と定義している。

生産はセブリングと同じミシガン州のスターリングハイツ組立工場(Sterling Heights Assembly Plant、SHAP)で2006年からスタート。2.7リッターV6エンジンはウィスコンシン州のケノーシャ・エンジン工場(Kenosha Engine Plant)で生産されている。つまり(部品単位はともかく)生粋のアメ車だ。

4ドアセダンとして復活

正確に言えば今回のアベンジャーは2代目。初代(1999~2000年)は三菱エクリプス(米国生産)との兄弟車で、つまりクーペだった。後継をダッジ・ストラトスクーペに譲った後、今回6年振りにダッジ・ストラトス(セダン)の後継として復活、という流れになる。

車名「Avenger」は「復讐者」のこと。一時日本で流行ったリベンジ(revenge)も「復讐」だが、avengeには「正当な理由によって仇を討つ」というニュアンスが生じる。

価格帯&グレード展開

装備満載で413万7000円

米国には2.4リッター直4+4ATの「SE」や、3.5リッターV6+6ATの「R/T」(FF/4WD)もあるが、日本に導入されたのは中間グレードである2.7リッターV6+4ATの「SXT」(413万7000円)で、右ハンドル・FFのみ。なお、ダッジのセダンは米国でもアベンジャーとチャージャー(写真右下)の2車種しかない。

 

ダッジ チャージャーSRT8

400万円超ということで装備は豪華だ。アルパイン製HDDナビ、MD・CD・DVDプレーヤー、ボストン・アコースティック製6スピーカー、レザーシート(運転席は電動)、サイド&カーテンエアバッグ、ESPを標準装備する。ディスチャージヘッドライトは設定がない。

パッケージング&スタイル

チャージャーそっくりのリアビュー

遠目ではチャージャーと見間違えそうなほどよく似ているのがアベンジャーだ。チャージャーの「逆スラント」フロントグリルやボンネットの盛り上がりこそアベンジャーには無いが、サイドからリアにかけては、ほぼ相似形。ボディ後半でキックアップしたショルダーラインなど、ダッジらしいマッスルカースタイルになっている。

一方で、アベンジャーのボディサイズは全長4855×全幅1850×全高1485mmと現行トヨタ・カムリ(4815×1820×1470mm)あたりと大差ないもので、全長はチャージャー (5100×1895×1475mm)より245mmも短いほどだ。アメ車としてはそう大きい方ではない。

迫力のスタイルに対して少々小さく見えるタイヤだが、これでもサイズは215/55R18。とはいえ「買ったらすぐに20インチ」という人は多いだろう。ちなみにチャージャーSRT8は、20インチの9Jホイールに245/45ZR20を履く。

清潔感のあるインテリア

3連ホワイトメーター(夜間はブルーに光る)、ウォームグレーの樹脂パーツ、シルバーのメタル調塗装、メッキパーツなどで、清潔感のある雰囲気のインテリア。特に高級ではなく、日本人的な尺度ではつっこみどころもあるが、センス自体は下手な日本車より好感が持てる。とはいえ樹脂パーツにキズがつきやすそうなのが心配。

LEDの白色ピンスポット照明もワザとらしくないし、助手席シートが水平に倒れてテーブルになるなど意外に器用な面も。ステアリング左右の裏にはオーディオ操作スイッチがある(シフトボタンじゃなくて残念)。

アメ車的なフワフワ、フカウカと決め付けてシートに腰を落としたなら、そのあまりの固さに驚くはずだ。固さだけとれば、メルセデス・ベンツのそれに匹敵するほど。つい先日までのダイムラー・クライスラー時代の名残りがここにある。

保冷はもちろん、「温め」も

室内装備で面白いのは、助手席グラブボックス上の冷蔵庫。場所も大胆で便利だが、容量も500mLペットボトルや缶が4本入るというアメリカンなものだ。

もっと面白いのが、センターコンソール(写真)の「ヒーター&クーラー付」ドリンクホルダー。2個あるうちの1個は、ホルダー内側がセラミック製で、最高60度Cまでの「加熱」(単に保温ではない)と約1度Cまでの冷却(空調を使ったもの)が可能という。ここまで来ると、冷凍庫と電子レンジが欲しくなる。

広さも安全装備もアメリカ基準

このサイズのFFセダンゆえ、後席はもちろん広い。クッションの当たりはやはり固めで、アメリカンラクシャリーな包まれ感はないが、シート構造や着座姿勢がちゃんとしているのでそれなりに快適に過ごせる。ドア開口部が広く、乗り降りもしやすい。カーテンエアバッグと3人分の3点式シートベルトを備える。

当然ながらトランクスルー

リアシート背もたれを60:40のシングルで畳んで、トランクスルーが可能。容量自体は438Lと平均的。リモコンキーの「×2」ボタンを2回連続して押すとトランクリッドは開くが、オープナーが無いのは残念だ。

なお、多くのアメ車や仏・伊車と同じように給油口を開けるのにもキーが必要。防犯のためだろうが、ドアロック連動タイプに慣れているとかなり面倒に思える。

基本性能&ドライブフィール

スタイルほどパワフルではない

2.7リッターV6(186ps、26.1kgm)は、DOHC・4カムの近代的ユニット。車重は1560kg、パワーウエイトレシオは8.4kg/psと常識的。実際、そのマッスルなスタイルが期待させるほどパワフルでもトルキーでもなく、明らかに「回してパワーを稼ぐ」タイプだ。回転上昇は滑らかで、エンジンサウンドはシュイーンと澄んでいる。

物足りないのはATが4速であること。変速ショックは気にならないが、やはりステップ比の大きさは気になる。加速時にすぐ3000回転以上回ってしまうのもそのせいだろう。総じて動力性能は不満なしというレベルだ。

NVHの低さがセールスポイント

長所は意外にも静かさやフラットな乗り心地といった快適性の高さだ。要するに目指しているところは、(当然ながら)トヨタ・カムリなどの米国向けFF中型セダンの世界。メーカーも資料で、ボディ剛性の高さや、構造接着剤、遮音材、吸音材、防振材の使用によるNVH(ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス)の低さをアピールしている。

ワインディングでは215/55R18タイヤがサイズ相応のグリップを発揮せず、ハイペースでコーナーに入るとESPが盛んに介入してくる。タイヤは韓国製のクムホー。カムリだったら60扁平の16インチタイヤが付いてくるところで、グリップ自体はそれよりは上といったところか。良くも悪くもカッコとコストパフォーマンスを重視したタイヤ選択だ。

今回は120kmほどを試乗。3000円分(約20L)のハイオクを消費し、いつもの通りあくまで参考ながら、燃費は約6km/Lとなった。10・15モード燃費は9.0km/L。

ここがイイ

セダンとしてのカッコ良さ。平均的な日本人の目で見ても、十中八九カッコいいと言われるはず。セダン不況の日本では、こういう「4ドアハードトップ」風はもう出てこないと思うので、その意味で貴重。ハードウエア的にはアメ車のイメージを裏切る作り。ダイムラー基準でもって、日本車をベンチマークにして開発したという感じ。普通の、よきアメ車の姿がここにある。

ここがダメ

スタイリングのイメージより速くないのは残念。ドイツ製や日本製の高性能セダンのようなハンドリングは求めずとも、マッスルカーらしい、日本風に言えば直線番長的な加速感は欲しいところ。本国にある3.5リッターV6「R/T」は面白そうなのだが。

価格の割にはチープと感じる内装の質感。これがアメリカ基準といわれればそれまでだが。

総合評価

愛憎半ばのアメリカ観

日本人(の若い人)はアメリカに対して愛憎半ばの感情を持っていると思う。60年前の戦争中は反米だったとしても戦後は一変。それでも10年もすると「安保反対」で反米感情が渦巻き、その嵐が過ぎると雑誌「ポパイ」が象徴するアメリカン・ライフスタイルにあこがれる親米派の若者が増えた。バブル時代は経済的にアメリカを征服できるような気にさえなったものの、そんな夢も破れてからは、ヒップホップなどアメリカ黒人系文化への憧憬が強まっている。そんな様々な時代を経ながら成長してきてきた人が現在の社会を構成し、今に至っているように思える。アメリカ好き、アメリカ嫌いは半々、といったところか。

日本の伝統文化はアメリカとは相容れないという人もいれば、いっそ日本はハワイに次ぐアメリカの州の一つになってしまえばいいとまでいう人もいる。現在の平和憲法はアメリカの押しつけだという人も、政治的にはアメリカに隷属しなくてはやっていけないのを自覚しているし、その憲法を守れという陣営は、どちらかというと反米だ。憲法改正を叫ぶ右翼陣営も反米か親米かで割れているくらいで、今後アメリカにさらに寄っていくか、寄っていかないかが、日本社会の今後を占う上で重要な課題となるだろう。

「どんなクルマ好きか」で評価は異なる

クルマでもアメ車に対するそんな愛憎がある。アメ車が好きか嫌いかはクルマ好きとしては微妙な問題。ライフスタイルがアメリカンな人は多分にクルマも好きで、アメ車にも抵抗がない。また強そうなクルマ、高そうなクルマが好きなクルマ好きも、アメ車は好きだ。逆にエンスーなクルマ好きはアメ車に抵抗がある人も多い。今回アベンジャーを評する上では「どんなクルマ好きか」で、まるで評価が異なってしまいそうだ。

アメ車好きには、このスタイルがたまらない。強そうで高そうなのもいい。プラスチッキーな内装もアメ車好きなら気にならない。右ハンドルだが、それ以外はまったく日本仕様になっておらず、アメリカで売られているままのクルマだ。そこが「アメリカン」でいいと捉えるか、否ととらえるか。冷静に見れば、このクラスのセダンとしてはずいぶん良くなっていると思う。確かに欧州高級車のような上質感、日本車のような仕上げの良さはないが、走る、曲がる、止まるはごく普通だし、広さも問題なしで、静粛性も高く、快適さはなかなか。ここまで完成度のあるものがアメリカ国内で生産されているわけだ。それだけでもすごいことだろう。ダイムラーとクライスラーの提携は悪いことばかりじゃなかった。

アメリカ車の今を知るにはもってこいのクルマだが、欧州車好きのエンスーな人や普通の日本車ユーザーから見ると、評価は180度変わってしまうだろう。クルマとしてこれはどうよ、というつっこみを入れたくなるところは多いし、費用対効果でいえば日本車とは比較にならない「高いクルマ」でもある。アメ車を好まない人には、たぶん何の魅力もないといった類のクルマだろう。

また正直なところ、アメ車好きにとっても不満は出てくる。V8 HEMIか、せめて3.5リッターV6は載せてくれと。いやこれは誰もが感じることかもしれない。パワフルなエンジンが載れば、エンスーなアメ車嫌いにも、ちょっと気になるクルマとなったかもしれないのだ。今の仕様はごくごく普通のアメ車という感じ。環境面(燃費)では厳しいと思うが、日本でアメ車を好きにさせたいならやはりオーバー3リッターは絶対条件。チャージャーとの関係もあるとは思うが、そこはちょっと惜しい。

アベンジャーは常識的な現在の「モロにアメリカン」なクルマだ。これぞアメリカンスタンダード。アメリカの常識は世界の非常識、などと揶揄されることもあるが、選択肢がずいぶん増えた昨今、このアメリカンスタンダードを受け入れるかどうかは、まさに個人の選択にゆだねられるといえるだろう。

試乗車スペック
ダッジ アベンジャー SXT
(2.7リッターV6・4AT・413万7000円)

●初年度登録:2007年8月●形式:ABA-JSD27 ●全長4855mm×全幅1850mm×全高1485mm ●ホイールベース:2765mm ●最小回転半径:5.6m ●車重(車検証記載値):1560kg(970+590) ●乗車定員:5名●エンジン型式:2 ● 2735cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 186 ps(137 kW)/ 5500rpm、26.1 kg-m (256 Nm)/ 4000 rpm ●カム駆動:- ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60 L ●10・15モード燃費:9.0 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前ストラット/後:マルチリンク ●タイヤ:215/55R18( Kumho Ecsta KH11 ) ●試乗車価格:413万7000円( 含むオプション:-)●試乗距離:120 km ●試乗日:2007年9月 ●車両協力:中京・愛知クライスラー株式会社

 
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