新車試乗記 第291回 トヨタ アベンシス セダン Li Toyota Avensis Sedan Li

(2.0リッター・4AT・275万円)

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日時: 2003年11月01日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    トヨタ初の欧州からの輸入車

    中型セダン/ワゴンの新型アベンシスは、欧州戦略車の第3弾。1997年発売の初代アベンシスは累計59万台の実績を残したが、基本的にはコロナ/カルディナの欧州版であり、現地での評価は必ずしも高くなかったようだ。

    そこで今回の2代目は100%欧州基準で開発。ミドルクラス市場で、VW、プジョー、欧州フォードなどに真っ向勝負を挑んでいる。生産は英国のトヨタ工場で行われ、現地では2003年3月に発売。それから約半年間で7万台を販売したという。

    日本に輸入・発売されたのは約半年遅れの2003年10月6日。導入の理由は、「今までトヨタ車に目を向けなかったお客さまに乗っていただきたい」(岩月副社長)ためだ。

    ライバルとしてVWのパサート、プジョー406(あるいは次期407)の名が出るなど、国内で5%ほどの輸入車マーケットが狙いとされる。広告コピーは「Toyota From Europe」で、TVコマーシャルも欧州と共通となっている。アメリカから輸入されたトヨタ車は今までもいくつかあるが、欧州からは初となる。

    ビスタ/ビスタアルデオの後継

    開発テーマは「欧州車を超えるトヨタの欧州車」。欧州トヨタ(レクサスではなく)のフラッグシップとして、専用開発したという。特徴は欧州風スタイルとパッケージング、欧州仕様そのままの高速性能、EuroNCAP(外部機関による欧州の衝突安全テスト)で5つ星の安全性、そしてイギリス製ではあるがトヨタならでは高い信頼性だ。アベンシス(Avensis)はフランス語の「Avancer(前に進む)」からの造語という。

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    トヨタ・ビスタアルデオ
    (photo:トヨタ自動車)

    生産は英国のTMUK(Toyota Motor Manufacturing (UK)Ltd.)。使用部品の80%以上は欧州調達だが、エンジンと変速機に関しては、日本から輸出して、また戻ってくる「逆輸入」となる。英国仕様と異なるのはウインカー位置、4WDの設定、エンジン環境性能などだ。

    販売目標は月間2000台で、販売はトヨタビスタ店が行う。実質的にビスタ/ビスタアルデオの後継車となる。

    価格帯&グレード展開

    4グレードで220~290万円

    セダンとワゴンのグレード体系は同じ。セダンは豪華仕様「Li」(275万円)、外観がわずかにスポーティな「Li “スポーツパッケージ”」(262万円)、標準車「Xi」(220万円)、そして「Xi」の4WD(233万円)となる。

    ワゴンはセダンのプラス10~17万円。「Li」(290万円)、「Li “スポーツパッケージ”」(272万円)、「Xi」(237万円)、「Xi」の4WD(250万円)だ。

    最も安い「Xi」はアルミホイールやHIDヘッドランプこそ付かないが、ニーエアバッグや左右独立オートエアコン、8スピーカーのCD/カセットオーディオなど十分な装備。最も高い「Li」では17インチのアルミホイールやDVDナビ、カーテンシールドエアバッグなどが標準装備される。ただしDVDナビはメーカーオプション(国内で架装)にも関わらず、リモコン別体の後付け然としたものになる(後述)。

    欧州には5ドアも

    英国仕様には1.8リッターと2.0リッターのガソリン、そして2.0リッターディーゼルがあり、5MTと4ATが各々に用意される。主力は5MTのディーゼルエンジンだろう。欧州車らしく5ドアモデルも用意される。

    パッケージング&スタイル

    あまりにライバルに似てしまった

    デザインはヴィッツ同様フランス・ニースにあるトヨタのデザインセンター「EDスクエア」(Toyota Europe Design Development)が担当。CD値:0.28(ワゴンは0.29)の張りのあるデザインは欧州調で、確かに存在感はある。しかし現地でのライバル車であるVWパサートやオペル・ベクトラあたりに似てしまったのは否めないところ。ヴィッツが成功したのは、何にも似ていないデザインがあったからこそ。欧州でのトヨタはまだ挑戦者なのだから、もう少し大胆でも良かったのでは、と思う。

    セダンのサイズは全長4630mm×全幅1760mm×全高1480mm、ワゴンは全長4700mm、全高1525mm。欧州の中型セダンとしてごく普通の大きさであり、アコードやアテンザとも大差ない。2700mmのホイールベースから分かるように、シャシーはプレミオ/アリオンやカルディナの発展版だ。とはいえ大幅に補強が入っているほか、チューニングの方向性もかなり違い、性能的には別物と言える。

    非トヨタ的シート

    トヨタらしくそつなく作り込まれたインパネの質感は、イギリス製であることを忘れさせるもの。新しい試みはないが、その分使い勝手に問題はない。メルセデス・ベンツ風の木目調パネルの使い方もうまいと言えばうまい。

    しかし最近のドイツ車もチリ合わせは高水準であり、しかもメルセデス、アウディ、VWなどメーカーごとにしっかりとデザインに統一感がある。ステアリング上のバッジを見なくても、すぐにトヨタ車だと分かる個性が欲しいところだ。

    驚くのはシートクッションの固さだ。VWやオペル、あるいはレカロに負けない固さで、腰を落とした瞬間の柔らかさを重視するトヨタ車のものとは思えない。固いだけでなく、構造にも気合いが入ったもので、コストも掛かっている。「ここまでやらないと欧州で評価を得るのは難しいので」とは開発スタッフの言葉だ。逆に言えば、日本のユーザーのシートに対する要求水準は低いということか。しかし、常用スピードが低く、乗車時間が短く、体格も小柄、体重も軽い日本人に、こうしたシートが一般的かどうかは別の問題かもしれない。モーターデイズ的には、ルノー・ラグナのような「柔らかいのに疲れない」シートを目指して欲しかった。

    ドラポジへのこだわり

    ドライビングポジションも細かく調節できる。背もたれの角度はラチェット式レバー(上下に往復させて動かす)で調節。ただし欧州車に多いダイアル式よりも軽く操作できる。日本車に多いレバーで一発フルリクライニングに慣れた人には、仮眠時など煩わしいと感じるだろう。運転中の角度からフルリクライングまでは、担当者の場合レバーを40回キコキコやる必要があった。

    座面高さもラチェット式レバーで調節。こちらはシート前端を軸に上下するものでやや中途半端。座面全体が垂直に上下するのが本当は理想だ。座面高は基本的に高め。

    一方、ステアリングはチルト(上下)はもちろん、テレスコ(前後)も調節可能。そもそもアベンシスの立体的なシート形状は、中途半端な姿勢を許さない。自然に正しいドラポジを取ることになる。

    セダンはシングル、ワゴンはダブル

    高めの全高のおかげで、後席の広々感はクラスをリードする。足元は広く、クッションも分厚く、屋根を後ろに伸び、居住性に問題はない。

     

    セダンのトランク容量はクラス最大級の520リッターだ。これは確かにでかい。セダンで荷室を広げる場合は、後席の背もたれをパタンと倒すだけのシングルフォールディングで行う。完全に平らにはならない。

    一方、ワゴンの場合は、座面を跳ね上げてから背もたれを倒すダブルフォールディング式。欧州では昔から一般的な方法で、スペース効率に優れるほか、床がフラットに出来て、なおかつ後席クッションの厚みも確保しやすい。しかし最近欧州車にも増えてきたシングルフォールディングに比べると少し面倒で、ヘッドレスを抜く作業も煩わしいところ。

    基本性能&ドライブフィール

    足まわりは完璧に欧州仕様

    試乗車はセダンのトップグレード「Li」の2WDモデル。トヨタ車と思えないガチガチの足まわりは間違いなくドイツ車流だが、街中を走り出して最初に感じたのは、欧州仕立てのビシッとした走り、ではなく「ゴー」というロードノイズだ。静粛性にはかなり配慮したというが、これが最後まで気になった。試乗車に装着されていた17インチのスポーツタイヤ(ダンロップのSPスポーツ 3000)の特性もあるかもしれない。こうしたノイズに対する割り切りも、非トヨタ的と言える。

    街中での乗り心地は、ドイツ車やスポーツ車に慣れた人には抵抗ないものだろう。逆にトヨタ的な滑らかさを少しでも期待すると、間違いなく裏切られる。足の固さは分かりやすく言うと初代日産プリメーラに接した時の、あの驚きに近い。ゴツゴツ感はあるが、フラット感は全速度域で文句ないレベルだと思う。パワステは普通のトヨタ車から乗り換えても違和感ない軽さで、操舵感も悪くない。アクセルペダルはやや重めだ。

    できれば5速が欲しかった

    エンジンは全車2.0リッターのD-4直噴エンジン(155ps、19.6kgm)。変速機はD-4とセットの多いCVTではなく、4速ATだ。エンジンの印象は従来のD-4と大きく変わらず、低回転から高回転まで実直に回り、気を抜いて走る時は過不足なく自然だが、パワー感はなく、ややノイジーなのが残念。またこのクラスの新型車はすでに5ATがスタンダードでもある。せっかちな運転をすると、キックダウン時に回転が跳ね上がる4ATの欠点が目立った。

    シフトレバーを右に倒してマニュアルシフトできるシーケンシャルモードのレスポンスは素早いが、そういった理由もあってあまり回す気にはならない。レッドゾーンは6400回転以上だが、マニュアルモードでは6600回転まで回る。レブに当たっても自動シフトアップしないのはトヨタ車の良い点だ。

    ハイスピードで印象が一変

    欧州で鍛えたというハンドリングは本物だ。街中だとそれほどボディ剛性の高さは感じられないが、速度が上がると印象が一変。ボディが一まわり縮み上がったような感覚と共に、素晴らしく安定したままコーナーを走り抜ける。限界はスポーツカー並みに高く、特にリアの接地感が高い。リアサスはハンドリングに関しては玄人筋からも評価が高いカルディナのトーコントロール付きダブルウイッシュボーンの発展型。カルディナ(FF車)のように振り回せるという意味でのスポーティさはないが、操縦性はシャープでアンダーも軽く、なかなか楽しい。特に不安感のなさとフラット感は特筆ものだ。VSCとTRCは4WDを除き全車標準だが、乾いた路面ではそうとう意図的にハイスピードで無理をしないと介入しない。ロードノイズに目をつむってスポーツタイヤを採用した意図がここで理解できる。購入後の初ドライブでビックリすることを保証しよう。

    高摩擦タイプのパッドを使用したブレーキは、確かに欧州車風。踏み込むに従ってリニアに制動力が立ち上がるもので、絶対性能も頼もしい。300kmほどの試乗で、フロントホイールが欧州車のようにブレーキダストで真っ黒になった。

    感嘆の高速安定性

    高速走行は一番得意な点だろう。100km/h巡航を4速トップの約2450回転で、淡々と走る分には「やっぱり安心感あるなあ」ぐらいで済むが、その安心感がメーターの右端まで続くところがスゴイ。この感覚は国産車ではホンダ・アコードなどでも体験できるが、トヨタのセダン系では他に無いはずだ。運転者の疲労は高速走行だけならセルシオより少ないかもしれない。参考までに英国の2.0リッター・4AT仕様(147psで、エンジン異なる)の最高速はで205km/h。国内仕様はもちろん180km/hオーバーでリミッターが効く。

    高速域ではロードノイズよりエンジン音がやや気になる。例えば100km/hのキックダウン時(もしくはスポーツモード時)の3速使用時の回転数は3500回転。パワーがないのでアクセル全開となり、やはりそれなりに騒がしい。

    なお、欧州仕様とほぼ同じということで、ちょっと期待したクルーズコントロールの設定速度は、残念ながら普通の国内仕様車と同じ120km/h弱までのもの。できればここも欧州仕様として欲しかった。

    ここがイイ

    欧州車要らずのシャシー性能。ということで、たいへん走りが楽しい。エンジンパワーがないのも幸いして?完全にシャシーが勝っており、いかようにも振り回せる。FRでアルッツアが果たす役目を、FFではアベンシスが担えるだろう。なんでもないセダンに見えるが、これは実は「スポーツセダン」だと思う。MTか、5ATでも乗ってみたい。

    加えてトヨタの品質、価格、信頼性。欧州車を買うと、この部分にいまだ不安があるが、トヨタならまず大丈夫でしょう(と思う)。アメリカ製トヨタ車ではかなり難ありの部分が目立ったが、イギリス製トヨタ車はほとんど気になるところはない。

    中でも気に入ったのがドアの閉まり具合。軽く閉まるのだが、フィーリングが抜群。欧州車風のしっかり感がありながら、軽くしまるという、理想的なドアだった。閉まるときの音もいい。

    ここがダメ

    一応、静粛性をうたい、スポーティカーとして打ち出されてはいないのだから、ロードノイズとエンジン音はちょっといただけない。スポーツセダンだとすれば全然悪くないのだが、快適なセダンだと思って買う人も多いわけで、ちょっと気になるところ。ただ資料では、会話明瞭度の向上がうたわれており、もしかすると会話は聞きやすいのかも。音は勇ましいが会話は明瞭、だとすれば、評価は180度異なるが。

    オーディオは好みの問題もあると思うが、アベンシスはいわゆる小ホールで聞いているような「ホームオーディオで聞くといい音」の仕立て。ヌケのいい、ドンシャリのサウンドではないため、いい音かどうか、やや分かりづらい。走っているときより、止まって聞いた方がいい音に感じられた。

    ナビは、G-BOOK対応どころかメニューにはトヨタの過去の情報サービス「MONET」があった。いくら何でも、このナビはないでしょう。地図も一世代前で、データも古く、半年前に開通した道路が載っていない。タッチパネルでもなく、なぜこんなナビが採用されたのか理解に苦しむ。

    総合評価

    見事なくらいに欧州車しており、ある意味トヨタらしさが無い。モーターデイズのスタッフ曰く、「遅れて来たトヨタ製プリメーラ」。デザイン的にも、ベクトラなどにも通じる欧州車フォロワーであり、あまり見るべきところはないように思う。つまり、欧州社会に入れてもらおうと一生懸命、欧州人になろうとしている日本人、といったところか。もともと出来のいい日本人なので、すんなり欧州社会にとけ込んでしまえるところが、うれしくも悲しい。

    帰国子女(特に欧米の)を熱烈歓迎するのが日本社会だが、帰国子女的クルマのアベンシスはなかなか日本社会には受け入れてもらえないかもしれない。帰国子女は何となくカッコいいが、アベンシスは日本人的感性ではいまいちカッコよくないから。バリバリに英語がしゃべれる帰国子女は高性能な人間として重宝がられるが、バリバリに走れるアベンシスの性能は、日本人があまり欲していない高性能かもしれない。

    ただ、欧州車的な走りの世界は完全に達成しているから、純粋に機械として欧州車と比較すれば、十分いいクルマだと思う。アウディ、オペル、VWといった記号性(ブランド)にとらわれず、機械としてクルマを評価できる人には、ぜひおすすめする。

    それにしても、日本的未来志向のセダン&ワゴンであったビスタ/ビスタアルデオがアベンシスの登場によって消えてしまったことは大変残念。売れなかった、という悲しい現実は致し方ないが、トヨタのような懐の深い会社なら、なんとかあの路線を存続・発展できなかっただろうか。アベンシスが欧州で、あるいは日本で売れるより、ビスタ&アルデオが欧州で評価され、ヒットした方が、日本人的には、そしてトヨタ車好き的にはうれしいのだが。

    試乗車スペック
    トヨタ アベンシス セダン Li
    (2.0リッター・4AT・275万円)

    ●形式:UA-AZT250-AEPGH●全長4630mm×全幅1760mm×全高1480mm●ホイールベース:2700mm●車重(車検証記載値):1380kg(F:820+R:560)●エンジン型式:1AZ-FSE●1998cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●155ps(114kW)/6000rpm、19.6kgm (192Nm)/4000rpm●使用燃料:レギュラーガソリン●10・15モード燃費:13.0km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:215/45R17(Dunlop SP Sport 3000)●価格:275万円(試乗車:275万円)

    公式サイト
    http://www.toyota.co.jp/Showroom/All_toyota_lineup/avensis/

     
       
       
       
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