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新車試乗記 第291回 トヨタ アベンシス セダン Li Toyota Avensis Sedan Li

(2.0リッター・4AT・275万円)

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日時: 2003年11月01日

 

キャラクター&開発コンセプト

欧州でシェア急上昇

国内シェア約40%(約220万台 ※トヨタグループ全体)と圧倒的に強いトヨタ。北米でも約10%(約200万台)と絶好調。一方、欧州では最近まで2~3%に留まっていたが、欧州戦略車ヤリス(ヴィッツ)の登場あたりから様子が変わってきた。2002年投入の新型カローラとF1効果?もあって、欧州シェアは2002年に4.4%(77万6000台)まで上昇。今年上半期は4.6%まで伸ばした。目標の「2005年までにシェア5%と80万台」を前倒しで達成する勢いが今のトヨタにはある。

トヨタ初の欧州からの輸入車

中型セダン/ワゴンのアベンシスは、欧州戦略車の第3弾。97年発売の初代アベンシスは累計59万台の主力モデルだったが、基本的にはコロナ/カルディナの欧州版で、現地での評価は高くなかったようだ。そこで2代目は100%欧州基準で開発。ミドルクラス市場で、VW、プジョー、欧州フォードなどに真っ向勝負を挑む。

英国のトヨタ工場で生産される新型アベンシスは、現地では2003年3月に発売。約半年で7万台を販売したという。日本に輸入・発売されたのは10月6日。日本導入の理由は、欧州車志向のユーザーを振り向かせるためという。「今までトヨタ車に目を向けなかったお客さまに乗っていただきたい」(岩月副社長)。ライバルとしてVWのパサート、プジョー406(あるいは次期407)の名が出るなど、国内で5%ほどの輸入車マーケットが狙いとされる。広告コピーは「TOYOTA FROM EUROPE」。TVコマーシャルも欧州と共通だ。トヨタ製輸入車はアメリカ製は前例はがいくつかあるが、欧州からは初となる。

ビスタ/ビスタアルデオの後継

開発テーマは「欧州車を超えるトヨタの欧州車」。欧州トヨタ(レクサスではなく)のフラッグシップとして専用開発したという。特徴は欧州風スタイルとパッケージング、欧州仕様そのままの高速性能、EuroNCAP(外部機関による欧州の衝突安全テスト)で5つ星の安全性、そしてイギリス製ではあるがトヨタならでは高い信頼性だ。アベンシス(AVENSIS)はフランス語の「AVANCER(前に進む)」からの造語という。

生産は英国のTMUK(Toyota Motor Manufacturing (UK)Ltd.)。使用部品の80%以上は欧州調達だが、エンジンと変速機は日本から輸出し、また戻ってくる「逆輸入」となる。英国仕様と異なるのはウインカー位置、4WDの設定、エンジン環境性能など。

販売目標は2000台/月で、販売はトヨタビスタ店が行う。実質的にビスタ/ビスタアルデオの後継車となる。

価格帯&グレード展開

4グレードで220~290万円

セダンとワゴンのグレード体系は同じ。セダンは豪華仕様「Li」(275万円)、外観がわずかにスポーティな「Li “スポーツパッケージ”」(262万円)、標準車「Xi」(220万円)、そして「Xi」の4WD(233万円)。

ワゴンはセダンのプラス10~17万円。「Li」(290万円)、「Li “スポーツパッケージ”」(272万円)、「Xi」(237万円)、「Xi」の4WD(250万円)となる。

最も安い「Xi」はアルミホイールやHIDヘッドランプこそ付かないが、ニーエアバッグや左右独立オートエアコン、8スピーカーのCD/カセットオーディオなど十分な装備。最も高い「Li」では17インチのアルミホイールやDVDナビ、カーテンシールドエアバッグなどが標準装備される。ただしDVDナビはメーカーオプション(国内で架装)でも、リモコン別体の後付け然としたものだ(後述)。

欧州には5ドアも

英国仕様には1.8リッターと2.0リッターのガソリン、そして2.0リッターディーゼルがあり、5MTと4ATが各々に用意される。主力は5MTのディーゼルエンジンだろう。また、欧州車らしく5ドアモデルも用意される。

パッケージング&スタイル

あまりにライバルに似てしまった

デザインはヴィッツ同様フランス・ニースにあるトヨタのデザインセンター「EDスクエア」(Toyota Europe Design Development)が担当。CD値:0.28(ワゴンは0.29)の張りのあるデザインは欧州調で存在感はある。しかし、VWパサートやオペル・ベクトラに似てしまったのは否めないところだ。ヴィッツが成功したのは、何にも似ていないデザインがあったからこそ。欧州でのトヨタはまだ挑戦者なのだから、もう少し大胆でも良かったのではと思う。

セダンのサイズは全長4630mm×全幅1760mm×全高1480mm、ワゴンは全長4700mm、全高1525mm。欧州の中型セダンとしてごく普通の大きさであり、アコードやアテンザとも大差ない。2700mmのホイールベースから分かるように、シャシーはプレミオ/アリオンやカルディナの発展型。大幅に補強が入ったほかチューニングの方向性も違い、性能面では別物となる。

非トヨタ的シート

トヨタらしくそつなく作り込まれたインパネは、イギリス製であることを忘れさせる。新しい試みがない分、使い勝手に問題はない。メルセデス・ベンツ風の木目調パネルの使い方もうまく、質感は高い。しかし、最近のドイツ車もチリ合わせは高水準。しかもメルセデス、アウディ、VWなどメーカーごとにしっかりとデザインに統一感がある。ステアリング上のバッジを見なくても、すぐにトヨタ車だと分かる個性が欲しい。

驚くのはシートの固さ。VWやオペル、あるいはレカロに負けない固さで、トヨタ車のものとは思えない。固いだけでなく、構造にも気合いが入ったものらしい。コストが掛かっているということだ。「ここまでやらないと欧州で評価を得るのは難しい」と開発スタッフ。逆に言えば、日本のユーザーのシートに対する要求水準は低いということか。しかし、常用スピードが低く、乗車時間が短く、体格も小柄、体重も軽い日本人に、こうしたシートが一般的かどうかは別の問題だろう。個人的には、ルノー・ラグナのような「柔らかいのに疲れない」シートを目指して欲しかった。

ドラポジへのこだわり

ドライビングポジションも細かく調節できる。背もたれの角度はラチェット式レバー(上下に往復させて動かす)で調節。ただし、欧州車に多いダイアル式より軽く操作できる。日本車に多い一発でフルリクライニング可能な方法に慣れた人には、仮眠時など煩わしいと感じるかも。運転中の角度からフルリクライングまでは、担当者の場合レバーを40回キコキコやる必要があった。

座面高さもラチェット式レバーで調節。こちらはシート前端を軸に上下するものでやや中途半端。座面全体が垂直に上下するのが本当は理想だ。座面高は基本的に高め。

一方、ステアリングはチルト(上下)はもちろん、テレスコ(前後)も調節可能。そもそもアベンシスの立体的なシート形状は、中途半端な姿勢を許さない。自然に正しいドラポジを取ることになる。

ダブルかシングルか

高めの全高のおかげで、後席の広々感はクラスをリードする。足元は広く、クッションも分厚く、屋根を後ろに伸び、居住性に問題はない。セダンのトランク容量は500リッターの大台を越えるクラス最大級の520リッター。

ワゴンの場合、荷室を広げる時はダブルフォールディング(座面を跳ね上げてから背もたれを倒す)で後席を畳む。欧州では昔から一般的な方法で、スペース効率に優れるほか、床がフラットに出来て、なおかつ後席クッションの厚みも確保しやすい。が、最近増えてきた、背もたれをパタンと倒すだけのタイプに比べると少し面倒だ。ヘッドレスを抜く作業も煩わしい。

基本性能&ドライブフィール

足まわりは完璧に欧州仕様

試乗車はセダンのトップグレード「Li」の2WDモデル。トヨタ車と思えないガチガチの足まわりは間違いなくドイツ車流。ただ、街中を走り出して最初に気付いたのは、欧州仕立てのビシッとした走り、ではなくロードノイズ(タイヤから入った振動がボディを伝わって室内に侵入して騒音になったもの)。静粛性にはかなり配慮したというが、最後まで気になった。試乗車に装着の17インチスポーツタイヤの特性もあるかもしれない。こうした割り切りも非トヨタ的だ。

街中での乗り心地は、ドイツ車やスポーツ車に慣れた人には抵抗ないものだろう。逆に、トヨタ的な滑らかさを少しでも期待すると裏切られる。足の固さは分かりやすく言うと初代日産プリメーラに接した時の、あの驚きに近い。ゴツゴツ感はあるが、フラット感は全速度域で申し分ない。パワステは普通のトヨタ車から乗り換えても違和感ない軽さで、フィールも悪くない。アクセルペダルはやや重めだ。

できれば5速が欲しかった

エンジンは全車2.0リッターのD-4直噴エンジン(155ps、19.6kgm)。変速機はD-4とセットの多いCVTではなく4速AT。印象は従来のD-4と大きく変わらず、低回転から高回転まで実直に回り、気を抜いて走る時は過不足なく自然だ。しかし、パワー感はなく、ややノイジーなのが残念。また、このクラスの新型車はすでに5ATがスタンダード。せっかちな運転をすると、キックダウン時に回転が跳ね上がる4ATの欠点が目立った。

シフトレバーを右に倒してマニュアルシフトできるシーケンシャルモードのレスポンスは速いが、そういった理由があってあまり回す気にはならない。レッドゾーンは6400回転以上だが、マニュアルモードでは6600回転まで回る。自動シフトアップしないのはトヨタ車の良い点だ。

ハイスピードで印象が一変

欧州で鍛えたというハンドリングは本物。街中だとそれほど剛性が高い感じはしないが、速度が上がると印象が一変。ボディが一まわり縮み上がったような一体感で、素晴らしく安定したままコーナーを走り抜ける。限界はスポーツカー並みに高く、特にリアの接地感が高い。リアサスはカルディナのトーコントロール付きのダブルウイッシュボーンの発展型。カルディナ(FF車)のような振り回せるという意味でのスポーティさはないが、ハンドリングはたいへんシャープでアンダーも軽く、なかなか楽しい。特に、不安感のなさとフラット感は特筆もの。ロードノイズに目をつむってスポーツタイヤを採用した意図が理解できる。

VSCとTRCは4WDを除き全車標準だが、乾いた路面ではそうとうハイスピードで意図的に無理をしないと介入しない。販売店での試乗では試せないレベルだが、購入後の初ドライブでビックリすることを保証しよう。

高摩擦タイプのパッドを使用したブレーキは、確かに欧州車風。踏み込むに従ってリニアに制動力が立ち上がるもので、絶対性能も頼もしい。300kmほどの試乗で、フロントホイールが欧州車のようにブレーキダストで真っ黒になった。

感嘆の高速安定性

高速走行は一番得意な点だろう。100km/h巡航を4速トップの約2450回転で淡々と行う分には「やっぱり安心感あるなあ」ぐらいで済むが、その安心感がメーターの右端まで続くところがスゴイ。この感覚は国産車ではホンダ・アコードなどでも体験できるが、トヨタのセダン系では他に無いはずだ。運転者の疲労は高速走行だけならセルシオより少ないかもしれない。参考までに英国の2.0リッター・4AT仕様(147psで、エンジン異なる)の最高速はで205km/h。国内仕様はもちろん180km/hオーバーでリミッターが効く。

高速域ではロードノイズよりエンジン音がやや気になる。例えば、100km/hのキックダウン時(もしくはスポーツモード時)の3速使用時の回転数は3500回転。パワーがないのでアクセル全開となり、やはりそれなりに騒がしい。

欧州仕様とほぼ同じということで、ちょっと期待したクルーズコントロールの設定速度は、残念ながら普通の国内仕様車と同じ120km/h弱までのもの。できればここも欧州仕様として欲しかった。

ここがイイ

欧州車要らずのシャシー性能。ということで、大変走りが楽しい。エンジンパワーがないのも幸いして?完全にシャシーが勝っており、いかようにも振り回せる。FRでアルッツアが果たす役目を、FFではアベンシスが担えるだろう。なんでもないセダンに見えるが、これは実は「スポーツセダン」だと思う。MTか、5ATでも乗ってみたい。

加えて、トヨタの品質、価格、信頼性。欧州車を買うと、この部分がいまだ不安を残してるが、トヨタならまず大丈夫でしょう(と思う)。アメリカ製トヨタ車はかなり難ありの部分が目立ったが、イギリス製トヨタ車はほとんど気になるところはない。

気に入ったのはドアの閉まり具合。軽く閉まるのだが、フィーリングが抜群。欧州車風のしっかり感がありながら、軽くしまるという、理想的なドアだった。閉まるときの音もいい。

ここがダメ

一応、静粛性をうたい、スポーティカーとして打ち出されてはいないのだから、ロードノイズとエンジン音はちょっといただけない。スポーツセダンだとすれば全然悪くないのだが、一応、快適なセダンだと思って買う人が多いわけで、ちょっと気になる。ただ資料では、会話明瞭度の向上がうたわれており、もしかすると会話は聞きやすいのかも。音は勇ましいが会話は明瞭だとすると、評価は180度異なるが。

オーディオは好みの問題もあると思うが、アベンシスはいわゆる小ホールで聞いているような「ホームオーディオで聞くといい音」の仕立て。ヌケのいい、ドンシャリのサウンドではないため、いい音かどうか、やや分かりづらい。走っているときより、止まって聞いた方がいい音に感じられた。

ナビは、G-BOOK対応どころかメニューにはトヨタの過去の情報サービス「MONET」があった。いくら何でも、このナビはないでしょう。地図も一世代前で、データも古く、半年前に開通した道路が載っていない。タッチパネルでもなく、なぜこんなナビが採用されたのか理解に苦しむ。

総合評価

見事なくらいに欧州車しており、ある意味トヨタらしさが無い。モーターデイズのスタッフ曰く、遅れて来たトヨタ製プリメーラ。デザイン的にも、ベクトラなどにも通じる欧州車フォロワーであり、あまり見るべきところはないように思う。つまり、欧州社会に入れてもらおうと一生懸命、欧州人になろうとしている日本人、といったところか。もともと出来のいい日本人なので、すんなり欧州社会にとけ込んでしまえるところが、うれしくも悲しい。

帰国子女(特に欧米の)を熱烈歓迎するのが日本社会だが、帰国子女的クルマのアベンシスはなかなか日本社会には受け入れてもらえないかもしれない。帰国子女は何となくカッコいいが、アベンシスは日本人的感性ではいまいちカッコよくないから。バリバリに英語がしゃべれる帰国子女は高性能な人間として重宝がられるが、バリバリに走れるアベンシスの性能は、日本人があまり欲していない高性能かも知れない。

ただ、欧州車的な走りの世界は完全に達成しているから、純粋に機械として欧州車と比較すれば、十分いいクルマだと思う。アウディ、オペル、VWといった記号性(ブランド)にとらわれず、機械としてクルマを評価できる人には、ぜひおすすめする。

それにしても、日本的未来志向のセダン&ワゴンであったビスタ/ビスタアルデオがアベンシスの登場によって消えてしまったことは大変残念。売れなかった、という悲しい現実は致し方ないが、トヨタのような懐の深い会社なら、なんとかあの路線を存続・発展できなかっただろうか。アベンシスが欧州で、あるいは日本で売れるより、ビスタ&アルデオが欧州で評価され、ヒットした方が、日本人的には、そしてトヨタ車好き的にはうれしいのだが。

試乗車スペック
トヨタ アベンシス セダン Li
(2.0リッター・4AT・275万円)

●形式:UA-AZT250-AEPGH●全長4630mm×全幅1760mm×全高1480mm●ホイールベース:2700mm●車重(車検証記載値):1380kg(F:820+R:560)●エンジン型式:1AZ-FSE●1998cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●155ps(114kW)/6000rpm、19.6kgm (192Nm)/4000rpm●使用燃料:レギュラーガソリン●10・15モード燃費:13.0km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:215/45R17(Dunlop SP Sport 3000)●価格:275万円(試乗車:275万円)

公式サイト
http://www.toyota.co.jp/Showroom/All_toyota_lineup/avensis/

 
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