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新車試乗記 第431回 トヨタ アベンシス セダン Qi Toyota Avensis Sedan Qi

(2.4L・5AT・331万8000円)


日時: 2006年09月16日

 
 

キャラクター&開発コンセプト

4年目を迎えた「トヨタ from ヨーロッパ」

2003年10月の日本デビューから約3年経ち、2006年7月31日にマイナーチェンジ版が発売されたアベンシス。欧州市場をターゲットに英国のTMUK(Toyota Motor Manufacturing (UK) Ltd.)で生産する点は従来と変わらない。

マイナーチェンジの内容は、外装では小物パーツの変更、内装はデザインの小変更など。昨年(2005年)9月に元々の2リッターに加えて2.4リッター+ 5ATモデルがすでに加えられており、今回は機関面に変更はない。導入当初の目標台数は月2000台だったが、今回から月1000台に下方修正されている。

参考:トヨタ自動車公式サイト>プレスリリース
トヨタ、新型車「アベンシス」を発売(2003/10/6)
TOYOTA、アベンシスを一部改良(2005/9/29)
TOYOTA、アベンシスをマイナーチェンジ(2006/7/31)

価格帯&グレード展開

セダンとワゴンで233万1000円から

セダンとワゴンの2モデル体制で、それぞれ2リッター(4AT)と2.4リッター(5AT)を用意。2リッターはセダンが233万1000円~、ワゴンが249万9000円~。この2リッターのみ4WD(18万9000円高)の設定がある。

2.4リッターはセダンが274万500円~、ワゴンが290万8500円~。今回試乗したのはDVDナビやレザーシートを標準装備したセダンの上級グレード「Qi」(331万8000円)だ。

パッケージング&スタイル

グリルやライト類を変更

ボディサイズは全長4645×全幅1760×全高1480mm。バンパー形状が新しくなったことで全長が若干(15mm)伸びた。ニースの「EDスクエア」(Toyota Europe Design Development)がデザインしたエクステリアの印象は、マイナーチェンジ後も大きく変わらない。自慢はCD値(空気抵抗係数)の低さで、セダンでは0.28とトップレベルだ。

今回からフロントグリルやライト類がデザイン変更されたほか、ドアミラーにウインカーが追加された。ボディカラーは従来のイメージカラーだったライトオリーブが落ちて、新しくスーパーホワイトとマルーンマイカを追加。試乗車のボディカラーは後者で、海老茶と呼びたくなる渋い色だ。

室内は小変更。ナビもあまり進化せず

改良前とほぼ同じインテリアだが、木目調パネルが微妙に明るい色になったほか、試乗車ではトヨタ車おなじみのベージュ色(グレージュ)で、あか抜けた印象になった。特にこのQiグレードはレザー内装で、ちょっとした高級セダンの雰囲気もある。質感はとても高く、その点でおおらかなカムリより日本人には馴染みやすいはずだ。

マイナーチェンジで加わったオートライトや、燃費等が分かるマルチ・インフォメーション・ディスプレイは、誰にとっても便利な装備。ナビは従来同様DVD方式で、タッチパネルどころか、G-BOOKも利用できない。変わったのは操作スイッチがシフトレバー後方に新設されたことくらいだ。以前は後付けナビみたいな取り外し式リモコンだったので、いちおう進歩はしている。

ステアリングはチルト/テレスコが可能で、さらに上級グレードの運転席シートは電動できめ細かく調節できる。このシート、見た目の質感はトヨタ車っぽいが、機能の点ではなかなかの優れものだ。

欧州流のリアシート

後席ではクラウンともカムリとも違う、欧州流のパッケージングがはっきり体感できる。室内長は特に長くないが、天井が高く、座面も高く、椅子のように正しい姿勢で座れる。足先から頭まわりまでスペースに不満はない。最上級グレードには計7つのエアバッグが備わり、Euro NCAPでも最高評価の5つ星と万全だ。

リアのサンシェイドは手動。センターアームレストにドリンクホルダーが備わるが、500mlのペットボトルや缶のような細めのものがギリギリで、それ以上太いと入らない。こんなところも欧州流だ。

容量はVWと互角だが

トランクルームの容量は520Lで、数値的にはVWジェッタ(527L)とほぼ互角。しかし、トランクリッドのアームが空間を大きく浸食するところは非ヨーロッパ的だ。また、後席の背もたれを6:4で倒してトランクスルーにする時も、アベンシス(セダン)はシングルフォールディングなので床(背もたれの裏部分)が平らにならない。このあたりにもトヨタらしい割り切りが感じられる。

基本性能&ドライブフィール

同じ「D-4」でも2.4は静かで速い

試乗車は最上級グレードの「Qi」(FF)。2.4の直噴「D-4」(163ps、23.5kg-m)は、2.0リッターのD-4と比べると、400ccの差とは思えないほどトルキーで軽快だ。さらに5ATの1速と2速が思い切ったローギアードで、かつステップ比が小さいから、気持ちいいくらいダッシュが決まる。100km/hまでの加速なら、3リッターの6気筒に匹敵するかもしれない。バランサーシャフトのおかげか回しても静かだし、4000回転以上のサウンドは「快音」と言いたくなる。初期型の2.0リッターはノイジーなエンジンとギア比の離れた4ATが大いに足を引っ張ったが、少なくともこの2.4では弱点がすっかり解消されている。

取り回しは実質5ナンバーセダン並みで大きさを感じさせないが、パワステはいかにも欧州車らしく重め。国内向けトヨタ車では、あり得ない重さだ。フォルクスワーゲンで言えば現行ジェッタより重いかもというくらいだが、もちろん女性でもすぐに慣れるレベルではある。

ロードノイズはかなり静かに

3年前に初期モデルに乗った時はロードノイズの大きさにびっくりしたものだが、今回はあまりの静かさに、というか少なくとも初期モデルとの落差に驚いた。 215/45R17のタイヤは、ブリヂストンのTURANZAに変更されているが、銘柄だけでこれほど変わるとは思えず、ボディ側の対策もかなりあるはず。ただ、絶対的に静かなクルマでは決してなく、特にトランクルームからのゴーーという音は後席だとけっこう気になる。乗り心地は当然いつものトヨタ調ではなく、多少ゴツゴツ感のあるものだが、不快ではない。

日独の折衷案

ハンドリングは初期型の2.0よりマイルドだが、ペースを上げても顔色変えずスムーズにコーナーを縫ってゆくところは、今どきのトヨタ車とドイツ車の折衷案という感じ。ボディの剛性感は高く、舗装の荒れたところへも突き上げを恐れず突入できる。ドイツ車のようなダイレクト感こそないが、日本の道路環境と法定速度ではアベンシスの方が安楽かもしれない。まあ、しかし微妙な差だ。

燃費は150kmほど街乗りを中心に試乗して、車載燃費計の表示は最終的に7km/L台前半だった。そこそこ渋滞する街乗りで、遠慮なくアクセルを踏み込むと8km/Lを割るのは必至。10・15モード燃費も10.6km/Lに過ぎない(2.0リッターは13.0km/L)。

ここがイイ

VWジェッタに張る性能で、ジェッタより癖がないのはトヨタ流か。なぜか以前に乗った2リッター車よりスポーティーさや面白さには欠けるのだが、さすがにワインディングでもかなりのハイペースで行ける。打てば響くエンジン、6AT要らずの5ATの出来の良さは2.4リッター車のメリット。買うならこっちだろう。

日本車全体で言えば1、2を争う欧州車テイスト(英国車なんだから当たり前だが)。そこが多くの人に受け入れられないがゆえ、トヨタ車にして希少性があるのがいい。かつてのヴェロッサのようなあざとさがなく、本当の欧州車として自信を持って乗れる。いわゆるトヨタ車のヒエラルキーから外れているのもいいところだ。

ここがダメ

2.4だと値段もVW並み。これで二の足を踏む人は多いはず。デザインも地味なので「いばり」がまったく効かないのもちょっと寂しい。

2ボタンのリモコンキー。慣れないとロックかアンロックか手探りで操作ができない。そもそもこの価格帯のトヨタ車ならインテリジェントキーが欲しい。

2.4リッターだとハイオク指定になること。これこそ「欧州車」の証とも言えるが。

地図などは新しくなっていたものの、依然として古くさい純正ナビ。タッチパネルではないのが、ついつい何度も画面をタッチしてしまった。G-BOOKなどの通信サービスにも対応していない。オプションでの選択肢もなく、不満なら市販ナビをつけるしかないが、特殊なクルマだけに苦労しそう。上級グレードでは標準装備なのもちょっと困ったところ。

総合評価

今回の2.4は、以前乗った2.0を遙かにしのぐよいクルマだった。ハードウェアとしてはモーターデイズでも高く評価するクルマだ。それはさておきトヨタのwebサイトを見ると、アベンシスはチョイ悪オヤジ狙いらしい。でも洒落た外人の案内する各地のオシャレなスポット、というwebサイトの作りは何となくこそばゆく、しっくりこない。販売店で話を聞くと、アベンシスはクレスタやチェイサーの代替え客が「他にセダンがないので検討するが、高いので悩んでしまう」というクルマのようだ。そう、アベンシスは若者にターゲットを絞った「ネッツ店」唯一のセダンで、そういえばグリルのエンブレムもトヨタではなくいつの間にかネッツになっている。

ネッツ店の前身はオート店やビスタ店だから、顧客でまだクレスタ/チェイサーに乗っている人は多く、そういう人は「豪華な内装」「快適な乗り心地」「ゆったり座れるシート」に今も惹かれ続けている。ある意味、その対極に位置するのがアベンシスゆえ、なかなか購入にまで至らないという現実があるようだ。その中で実際に買うのは50歳前後の紳士風が多いという。今さら輸入車に踏み切れないものの、ちょっとクルマにはうるさいお父さんというところか。

クレスタなどマークII三兄弟を代表とするハイソカーブームは20年ほど前だから、当時の若者もそろそろRVからセダンに戻りたいと思い始める40歳すぎだ。ハイソカーにあこがれた当時の若者が長じてエンスーになっていることは少ないと思うし、実際にハイソカーを新車で買っていた世代だと、もう老年にさしかかっている。そういう人の多くは最近のトヨタ車ではなく「豪華な内装」「快適な乗り心地」「ゆったり座れるシート」(「和風のケバい内装」「柔らかな足」「体をホールドせずふんぞり返れるシート」か?)のクルマがほしいと願っているのかもしれない。こうした需要は実は今、相当に大きいのではないか。

セダンが売れないというのは、こういった需要に応えていないことも原因のように思える。RVはニーズに対応した商品が次々に投入されて需要を喚起してきたが、クラウンまでもが欧州車ライクになった日本のセダンは、現実のニーズから離れていってしまったようにも思える。

欧州でアベンシスが売れているのは、トヨタ車的ではない欧州人の琴線に触れるクルマ作りをしたからだろう。05年にトヨタの欧州シェアは5.2%にまで達しており「2005年までにシェア5%」という目標は軽々と前倒ししてしまっている(もちろん日本の40%以上、北米の15%弱というシェアには遠く及ばない)が、その立役者の1台がアベンシスだ。トヨタの品質と欧州車の平均点的ともいえる作りと味付けは、欧州ではかなりのアピール力があるだろう。ジェッタあたりと比べると強い個性がないだけに、それがかえって多くの欧州人に好まれたのだと思う。

それをそのまま日本に入れたら、足も、カーナビも、日本市場にマッチしないのは当然。最近の欧州車ライクなトヨタ車に慣れている人でも、この本格的な欧州車風味は結構きびしい。月1000台ですらが、なかなか難しい数字だ(販売店の相当な努力がいるだろう)。欧州車が好きなモーターデイズとしてはかなりいいクルマに思えるのだが、普通の人には喜ばれにくいクルマだと思う。

トヨタ程の会社ならアベンシスの対極に位置する「日本のセダン」を、一台でいいからラインナップに加えるというのはどうだろう。和風豪華のクルマ。チョイ悪オヤジはなく、日本人の平均的オジさんの琴線に触れるクルマだ。絶対ヒットすると思う。それはスバルが2つの走りの性格を持ったレガシィを出したように、スイッチ一つで同じクルマが日本風や欧州風に切り替えられるものかもしれない(内装の雰囲気はスイッチでは無理だから、メーカーオプションで選べるようにすればいい)。今はまだ時期尚早だと思うが、RV人気がいよいよ落ち込んできたら、そんなセダンが出てくるような気がする。

試乗車スペック
トヨタ アベンシス セダン Qi
(2.4L・5AT・331万8000円)

●形式:CBA-AZT251-AEAQH●全長4645mm×全幅1760mm×全高1480mm●ホイールベース:2700mm●車重(車検証記載値):1400kg(F:840+R:560)●乗車定員:5名●エンジン型式:2AZ-FSE●2362cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置 ●163ps(120kW)/5800rpm、23.5kg-m (230Nm)/3800rpm●カム駆動:チェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60L●10・15モード燃費:10.6km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:215/45R17(BRIDGESTONE TURANZA ER30)●試乗車価格:333万1860円(含むオプション:ETCユニット 1万3860円 )●試乗距離:約160km●試乗日:2006年9月

公式サイト(セダン) http://toyota.jp/avensissedan/
公式サイト(ワゴン) http://toyota.jp/avensiswagon/

 
 
 
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