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マツダスピード アクセラ新車試乗記(第430回)

Mazdaspeed Axela

(2.3Lターボ・6MT・241万円)


2006年09月09日

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キャラクター&開発コンセプト

世界最速のFF車

「マツダスピード・アクセラ」は、2006年6月にあったアクセラのマイナーチェンジに併せて登場した高性能モデル。先にマツダスピード・アテンザで採用した 2.3リッター4気筒・直噴ターボ(アクセラ用は-8psの264ps)と6速マニュアルを搭載するが、駆動方式はアテンザの4WDに対して前輪駆動となる。

目指したのはゴルフGTI(200ps)やアルファ147GTA(250ps)をも上回る“世界最速のFF車”。海外での車名はアクセラの海外名「マツダ3」に準じて、「マツダ3 MPS」(欧州)もしくは「マツダスピード3」(北米)となる予定だ。

アクセラは2003年10月に4ドアセダンと5ドアで登場した同社の主力モデルで、かつてのファミリアに相当するクルマ。シャシーはフォード・フォーカス、ボルボS40/V50と共有する。マイナーチェンジを機に、アクセラ全体の国内向け目標はデビュー当初より500台少ない2000台とされた。マツダスピード・アクセラはそのうちの1割(200台)を見込んでいる。

価格帯&グレード展開

6MTのみで241万円

6MT・ 5ドアのみで価格は241万円。試乗車のように、オプションのディスチャージド・ヘッドランプ(ロービームのみ、6万3000円)、カードキー「アドバンスト・キーレス・エントリー」(3万1500円)、Boseサウンドシステム(9万4500円)を足しても259万9000円だ。

パッケージング&スタイル

ボンネットや前後フェンダーは別物

普通のアクセラとの違いは、18インチタイヤ、前後バンパー、リアスポイラーくらいと思いきや、ボンネットはグリルから取り込んだ走行風をエンジン真上の大型インタークーラーに導入するため膨らみ、前後フェンダーもプレスラインが微妙に張り出している。

ほどほどの差別化

冷静に見れば、元のアクセラが抑揚のあるスタイルなので特別感は少なめ。「羊の皮をかぶった狼」風とも言えるが、アクセラ全体のイメージリーダーとしては差別化もほどほどがいいのかもしれない。試乗車のボディカラーはテーマカラーの「トゥルーレッド」。あとは濃/淡グレー、ブルーグレーという地味目の3色になる。

赤いステッチとセミバケットシート

赤いステッチの効いたセミバケットシートはホールド性はもちろん、座り心地、調節幅、乗り降りのしやすさを確保したもの。専用設計だけにペダルやシフトレバーの操作もしやすい。

 

同じく赤い糸で縫われたステアリング(チルト/テレスコ付き)、シフトレバー、アルミペダルのタッチも良好。メーターは200km/hスケールの専用品だ。オーディオ操作は多少慣れが必要だが、インターフェイスに不満はない。インテリアの質感はマイナーチェンジによってシリーズ全体で上がったようだ。

中央席に3点式ベルト

後席も赤ステッチだが、もちろんシート形状はアクセラで共通。広さはさすが現代の、つまり豪華になったCセグメントカーらしく必要十分。バケットシート付のクルマにありがちな閉塞感もないし、横の窓も全開する。グローバルに売るモデルなので、中央席にも3点式シートベルトがちゃんと付く。

クラス最大級の荷室容量

米国市場も視野に入れたモデルらしく、後席の折畳みはシングルフォールディング。ホイールベースが長いので、前席の位置にあまり影響されずそのままパタンと前に倒せる。荷室容量はゴルフより大きめで、クラス最大級と言っていいだろう。

基本性能&ドライブフィール

パワーウエイトレシオ:5.3kg/ps!

マツダスピード・アクセラの肝である2.3リッター直噴“DISI(ディジー)”ターボは、アテンザ(272ps、38.7kgm)より8psデチューンされて、264psと38.7kgmを発揮。一方、車重は4WDのアテンザ(1560kg)より170kgも軽い1390kgだから、言うまでもなくアクセラの方がだんぜん速い。それにしても前輪駆動で264psと38.7kgmは凄い数値で、パワーウエイトレシオ順に代表的なライバル車(FFハッチバック車)を並べたのが以下の表だが、アクセラのスペックがいかに飛び抜けたものかが分かる。

  エンジン 車重 最高
出力
最大
トルク
馬力あたり
荷重
マツダスピード
アクセラ
2.3L
ターボ
1390kg 264ps 38.7kgm 5.3kg/ps
アルファ
147 GTA 
3.2L・V6 1390kg 250ps 30.6kgm 5.6kg/ps
ルノー
メガーヌRS 
2.0L
ターボ
1380kg 224ps 30.6kgm 6.2kg/ps
VW
ゴルフ GTI
2.0L
ターボ
1440kg 200ps 28.6kgm 7.2kg/ps

掛け値なしに胸のすく加速

イグニッションをひねると野太いエンジン音が響き始めるが、それはいかにもターボカー然としたラフな音ではなく、早朝のエンジン始動にも近所に気を使わないで済むレベル。クラッチは最近のクルマとしては重めで、ボトムエンドトルクもかなり細いので、クラッチ操作が巧くないとストールさせそう。もちろん、ちゃんとやればアイドリングのままスタートできる。

9.5と圧縮比の高い直噴ターボゆえ、低速からしっかりレスポンスしてくれるのが好印象だが、思わず頬が緩むのはターボの過給が始まってから。最大トルクの38.7kgmは早くも3000回転で発生するが、ターボ特有の二次曲線的な加速は 4000回転あたりから上。ここから掛け値なしに胸のすく加速が味わえる。6000回転前後で回転が伸び鈍るためすぐにシフトアップすると、再び絶妙なクロスレシオのおかげで胸のすく加速が始まる。そんな具合に1速でバン、2速でバン、3速でバン、状況が許せば4速でも、同じような加速Gが続き、これで楽しくないわけがない。しかも昔のいわゆるドッカンターボ車と違ってレスポンスがリニアゆえ、軽く流しても楽しい。ここが一番いいところだ。

十分なトラクション、巧妙なDSC

ハイパワーFF車で気になるのがトルクステアだが、少なくとも街中ではほとんど出ない。多少のホイールスピンは許しても、トルク感応型LSDがグイグイと両輪から路面へパワーを与え続け、クルマを確実に前進させる感じだ。濡れた路面での挙動は確認できなかったが、少なくとも乾いた路面ならDSC(スロットルとブレーキを統合制御)の介入が巧妙で、ほとんど気にならなかった。

一方、いつものワインディングロードでは、舗装の荒れたコーナーから脱出する際に、少しでもヨーが残っていると豪快なトルクステアに見舞われた。それはヒヤッとするような唐突なものではなく、トラクションの効いた安心感のあるもの。LSDの効き方もサーキットのラップタイムを優先したようなピーキーなものとは違い、マイルドで神経を使わない。マツダスピード・アクセラ専用に補強が入ったボディの剛性感もまずまずで、足回りはしなやかに動き、限界は極めて高い。

この性能にして乗り心地もいい

エンジンパワーと同じくらい、印象的なのが乗り心地だ。215/45R18タイヤの薄さを忘れるほど、当たりは柔らかく、少しスピードが乗ればピッチングもほとんど皆無。同じポテンザRE050Aでロードノイズがもっとうるさいクルマは珍しくないが、その点でもマツダスピード・アクセラは優秀だ。 100km/hは6速トップで約2300回転に過ぎず、5速でも十分静かで、リラックスして走れる。

海外仕様は最高速250km/hを謳うが、この動力性能なら確かにそれくらいは出せそうだ。もちろん日本仕様はそれ以前にリミッターが作動する。今回は撮影を含めて約200kmを試乗。ハイオクガソリンを35リッター消費して、あくまで参考値だが燃費は約6km/L だった。大人しく走ればもっといいはず。

ここがイイ

乗って楽しい。その一点がまさに明確であること。そして1馬力あたり約9100円に過ぎない、圧倒的なバリュー。しかし、決して安物ではない。ゴルフGTIはもちろん、アルファ147GTAに堂々張れる。制御の巧みなDSCもいい。このハイパワーが許されたのもDSCがあってのことだと思う。

ルックスがいい。ボンネット上にこれ見よがしなインタークーラー用のエアベントがないし、エアロパーツやリアウィングも控えめ。それでいて見事に「シャコタン」なホイールハウスの空きで、18インチホイールとのバランスが絶妙。これ以上いじらなくてもカッコいい。大人が乗ってもカッコいいルックスだと思う。

ここがダメ

シフトの剛性感がもう少しあったら。特に1、2速ではややグニャリとしたシフトフィールが残念。Boseのサウンドシステムがオプションで搭載されるのは、ポルシェ同様。ただ、独自のボーズの音は好みが分かれるだろう。

ノーマルのアクセラにはマイナーチェンジでいよいよ5速ATが搭載されるようになった(ステアリングシフト付)。マツダスピードにもこのAT仕様があれば、もう100台、月販が上乗せできるのではないか。現状では「発進でストールさせたら、自分が未熟と思うべし」という厳しいクルマだが、今やその厳しさについて行けないクルマ好きは多い。おそらく全国に月100人のレベルではないように思う。

総合評価

まずは2006年09月08日付でマツダが出したコメントを引用したい。
「マツダアクセラ(海外名:Mazda3)の国内累計生産台数が、2006年8月末時点で100万台を超えた。2003年6月末の防府第1工場での生産開始以来、3年2ヵ月での達成となり、マツダ車として過去最短記録を更新した。2004年度に欧州カ-・オブ・ザ・イヤ-第2位(日本車中第1位)やカナダ・カ-・オブ・ザ・イヤ-に選出され、これまで全世界で67もの賞を獲得。こうした各国市場での好評を背景に現在も好調な販売を維持している。アクセラの国内生産台数は、年間364,668台(2005年)に達し、車名別の国内生産台数ではトップレベルを誇る。今後もグロ-バルコンパクトカ-としてブランド力を高めていくとともに、マツダの基幹車種としての役割を強めていく。」

ということで海外では絶好調。そしてマツダスピ-ド・アクセラは、

「発売開始から8月末日までの約3ヵ月間ですでに838台の受注。国内の販売目標台数である200台/月を上回っており、好調な滑り出しとなっている。」

と好調を誇示する。とはいえ月200台はマツダにとって今年の乗用車販売・月平均台数である約2万台の1%にすぎない。モーターデイズとしてはこういうマイナー(ながら、クルマ好きには嬉しい)車種を国内販売するマツダの姿勢に敬意を表したい。こんな楽しいクルマを安く買うことが可能な日本は幸せだ(このクルマを存分に走らせることのできる道路などのインフラが整っていない、という点では不幸だが)。

マツダの国内販売は今年上半期、前年比では10%近いダウン。これに対して輸出や海外生産は 25%ほどアップしている。マツダの出す車種が、いかに日本より「海外でウケがいい」のかを如実に示す数字だ。マツダスピード・アクセラも儲けを考えたら日本向けには売る必要もないクルマだろう。海外向けのクルマがあるからその一部を日本でも売るというスタンスで、もはやいわゆる輸入車と同じ性格のクルマと言える。日本で作られ、日本で売られているが、それは海外で売るクルマのおこぼれ、であるわけだ。こうなるとつまり問題はマツダではなく、そんな日本市場である。

スポーツカーが絶滅の危機に瀕している中、マツダスピード・アクセラは久々に登場した生粋のスポーツカーといってもいい。もちろんコンパクト・ハッチバックゆえの実用性を併せ持つのだが、これはあくまでおまけ。世界トップクラスの、いやクラス的には世界トップの「日本が誇るスポーツカー」だと思う。それが250万円以下で買えるのだが、月200台程度しか売れないのは残念至極。乗っているときの楽しさは、1000万円を超えるポルシェ911にも等しいと断言してしまおう(もちろん味わいは違うのだが)。そしてそんなポルシェ911は、正確に数字が発表されていないが、月100台以上売れている。

といって、お金のないクルマ好きに、250万円以下とはいえ新車は厳しい。そしてクルマに興味を持たない最近の若者に、このクルマの価値はわからない。そんな現状から導き出された数字が月200台。この台数では、もちろん広報にお金はかけられないから、ますます知る人ぞ知るクルマになるという悪循環だ。

こうなると欧州車信仰の強い日本のクルマ好きには、健全なナショナリズムを持ってもらいたいもの。もはやこのクルマのような一部マツダ車は、欧州車の上を行くと言っていいのだから。バイ(buy)・アメリカン、ならぬバイ・ジャパニーズ運動を推奨したいくらいだ。一方で、マツダというブランドは今後さらに欧州車指向を強めていくべきだろう。そしてそれを日本市場にも「強要」していく方が売れる。マツダスピ-ド・アクセラも、車名は海外向けのMazda3 MPSか、Mazdaspeed3のどっちかでいった方がいい。そのあたりにマツダがもう一皮むける鍵があるような気がする。

試乗車スペック
マツダスピード アクセラ
(2.3Lターボ・6MT・241万円)

●形式:DBA-BK3P●全長4435mm×全幅1765mm×全高1465mm●ホイールベース:2640mm●車重(車検証記載値):1390kg (F:900+490)●乗車定員:5名●エンジン型式:L3-VDT●2260cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置●264ps(194kW) /5500rpm、38.7kgm (380Nm)/3000rpm●カム駆動:チェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L●10・15モード燃費:11.2km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:215/45R18(BRIDGESTONE POTENZA RE050A)●試乗車価格:259万9000円(含むオプション:ディスチャージドヘッドランプ+撥水ガラス&ミラー 6万3000円、Boseサウンドシステム 9万4500円、アドバンストキーレスエントリー 3万1500円)●試乗距離:約200km●試乗日:2006年8月 ●車両協力:東海マツダ販売株式会社

公式サイト http://www.axela.mazda.co.jp/mazdaspeed/

 
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