キャラクター&開発コンセプト
ハイテク装備が売りの10代目
2006年10月10日に発売された10代目カローラのセダンとワゴン。セダンは新しく「カローラ・アクシオ」、ワゴンは従来通り「カローラ・フィールダー」を名乗る。いずれも内外装デザインを変更したほか、従来の4速ATに代えてCVT(無段変速機)を全オートマチック車に採用。また、コンパクトクラスに縁遠かった先端装備も積極的に採り入れた。アクシオに全車標準とされたバックモニターや、一部グレードのレーダークルーズ・コントロール&プリクラッシュ・セーフティ・システムがその象徴的な例だ。
基本は変わらず
一方で、プラットフォームは先代を踏襲。5ナンバー幅のボディサイズもほぼ同じだ。このあたりはカローラ・ランクス/アレックスの実質的な後継車である欧州戦略車「オーリス」が、ワイドトレッドの新世代プラットフォームに乗り換えたのと対照的なところだ。
車名「アクシオ(Axio)」は、ギリシア語で「価値のあるもの、品質」を意味する“Axia゛が由来。トヨタは否定するが、国内ではコロナやマークⅡのように、やがてカローラという名前もフェードアウトしていくのではないか。販売目標はアクシオとフィールダー、いずれも月間6000台で計1万2000台。年間なら14万4000台で、昨年(2005年)のデータで行けば、ランクスやスパシオの手助け無しでも販売トップの座を守ることが可能だ。ちなみにセダンは法人需要がかなりの台数を支えているはずだ。
価格帯&グレード展開
1.5と1.8で、140万7000円~233万1000円
エンジンは1.5リッターと1.8リッターの2種類。オートマチックは全車CVTで、1.5のみ5MTが選べる。アクシオの価格は140万7000円~233万1000円で、売れ筋は150万~160万円台の1.5リッター車だろう。1.3リッター車はベルタの登場で廃止となった。
今回の試乗車は、最も高価な「ラグゼール“αエディション”」(233万1000円)。レーダークルーズ等を標準装備したこれこそ、10代目カローラの特徴をよく表したモデルではある。
パッケージング&スタイル
パッケージングは先代を踏襲
ボディサイズ(先代の最終モデル比)は全長4410mm(同)×全幅1695mm(同)×全高1460mm(-10)。ホイールベースも同一の2600mmで、基本骨格そのものを踏襲したことが分かる。5ナンバー枠を守ったパッケージングはすでに「ニューセンチュリーバリュー」の先代が完成形だった、ということか。後で触れる走行性能についても同様で、国内の交通環境ならこのシャシーで十分、という思いが見える。
デザインはオーソドクスに回帰
先代は革新的パッケージングに似合う、丸々と膨らんだ革新的デザインが与えられたが、新型はそのパッケージングを受け継ぎつつ、アウターパネルのエッジや凹面を強調して、セダンらしいオーソドクスな路線に回帰した。ゼロクラウンやレクサスのモチーフを所々入れて今風に見せるところなど、なかなか巧みだ。
アクシオ全車にバックモニターを装備
インテリアの質感は先代より明らかに向上し、今や木目調パネルも違和感なく見える。機能面では全車ステアリングのテレスコピック(伸縮調整)が可能になったほか、廉価グレード「X」以外の全てにスマートエントリー&スタートボタンが付いた。さらに画期的なのが、アクシオ全車に5.8インチのバックモニターが備わったこと。試乗車が備えていたHDDナビ(24万4650円)用の6.5型ワイドディスプレイより一回り小さいものだが、モニターとしての機能は十分。運転に自信のない女性なら、これだけで心が動きそうだ。
さらに1.8リッター車には、プリウス等でおなじみの縦列駐車や車庫入れ時のステアリング操作を自動で行なう「インテリジェント・パーキング・アシスト」を標準装備する。自動運転への第一歩とは言えるが、使いこなすとなると現状では多少の学習と慣れが必要だ。
最上級モデルにはレーダークルーズ&プリクラッシュも
試乗車のラグゼール“αエディション”はレーダークルーズコントロールとプリクラッシュ・セーフティシステムを標準装備。フロントのバッジ裏にあるのが、この2つに必要なミリ波レーダーだ。いずれも機能的にはゼロクラウンやレクサス車に近いもので、レーダークルーズは約40~115km/hで作動し、減速が必要な時はブレーキ制御も行なう。ただし低速追従機能は付かない。
無理なく3人座れる後席
注目すべき点は足元。センタートンネルは小型化され、フロアがほぼフラットになったことでレッグスペースにゆとりが出た。リア中央席のシートベルトは相変わらず2点式だが、ヘッドレストは3つになって、大人がちゃんと5人乗れることをアピールする。
トランクスルーも可
トランク容量はボディサイズからすれば大き目の459L。後席背もたれを倒してトランクスルーも可能だが、アクシオのものはフィールダーが採用した世界初のワンタッチ・ダブルフォールディングではなく、背もたれをパタンと倒すだけのシングルフォールディングだ。操作も仕組みもシンプルで、これはこれでいい。
基本性能&ドライブフィール
燃費重視のパワートレイン
試乗したのは1.8リッターのラグゼール。吸排気のバルブタイミングをコントロールする「Dual VVT-i」付き新開発1.8リッター「2ZR-FE」エンジン(136ps、17.9kg-m)を搭載する。エンジンを掛けてすぐ気付いたのは、先代1.8リッターに比べてアイドリング振動が断然小さくなったことだ。
アクセルを踏み込むと、CVT車らしくエンジン音を高めて加速。パワーは期待ほどではないが、アクセルを緩めて巡航に入ると低い回転を維持してユルユルと静かに走ってくれる。先代ラグゼールより車重が60kgほど増したにも関わらず、10・15モード燃費は逆に16.0km/Lから17.2km/Lへ伸びたのは、CVTで低回転の維持が可能になったのと、新型エンジンのここ一発の燃焼効率のおかげか。メーター内には「ECO」ランプも付いたほか、ラグゼールには平均燃費が分かるマルチインフォメーションディスプレイも備わっている。ただ、150㎞ほど走った試乗では、エンジンを回しすぎた?ためか、満タン法で8.1㎞/Lにとどまった。
シャシー性能に劇的変化なし
一方、シャシー性能は予想通りと言うか、予想以上にと言うか、劇的に変わった感じがない。タイヤは15インチにサイズアップされ、直接比べれば進化は明らかなのだろうが、乗り味自体は「先代のカローラ」そのもの。ワインディングで気持ちいいほど安定したアンダーステアを保ち、VSCの本格的な介入(警告音が鳴る)を誘っても不安がないバランスの良さも、まさに先代カローラで味わえたものだ(モーターデイズ試乗記カローラ・ラグゼール(2002年12月)を参照のこと)。逆に言えば、クルマ好きに好まれる欧州車や欧州戦略用トヨタ車(ヴィッツやアベンシス)のような、法定速度を越えた領域でのバチッとした安定感、骨太感はない。乗り心地も割に固めで、快適志向の人にはものたりないかも。
ここがイイ
走り、曲がり、止まるクルマ、という意味では、およそ不満がない。乗ったのが最上級グレードだったこともあって、もうこれ以上のクルマは要らないとさえ言いたくなる、まとまりの良さがある。それは2000年デビューの先代から変わっておらず、つまり「ニューセンチュリーバリュー」のカローラを選んだ人は10年以上、幸せなカーライフをおくることができるわけだ。いわゆるクルマ好きやクルマにステイタスを求めるような人は除いての話だが。
ついに全車標準となった「バックモニター」。デイズにあるポルシェ911にも社外品のバックモニターを後付けしたくらいで、こうした「クルマの眼」は多くあるに越したことはない。そして何よりプリクラッシュ・セーフティーシステム+レーダークルーズコントロール、インテリジェント・パーキングアシストといった先端装備が、ついにカローラクラスまで降りてきたこと。標準化はまだ先だろうが、いずれすべてのクルマで装着可能になるだろう。特にプリクラッシュ・セーフティシステムは「ぶつからないクルマ」になるためにも、早期の全車標準化が望まれる。
高速道路では素晴らしい力感で加速し、法定速度の遙か上で快走できる。100㎞/h巡航時のエンジン回転数が1800回転くらいまで落ちるのはさすがCVT。高速燃費はかなり稼げそうだ。アイドリング振動もなく、騒音レベルも確実に下がっている。
ここがダメ
7速マニュアルモード付きCVTと1.8リッター「2ZR-FE」エンジンの組み合わせは、今後トヨタの黄金律となるはずだが、若干低速トルクに欠け、アクセルを踏んですぐの力感がない。2000回転あたりでグンと力が出るのだが、トルコンATのように下から滑らかに力が出て欲しいものだ。また、急な上り坂で発進しようとブレーキから足を離すと、クリープが弱いため後ずさりすることがある。こうした日常で大切な発進や低速での使い勝手をもう一度見直して欲しい。
試乗車のグレード(ラグゼール“αエディション”)にはVSCが標準であり、この「高性能車」が破綻しそうなときに良く助けてくれたが、他のグレードにはオプション設定すらない。先代は1.8リッターモデルなら9万円のオプションで選べたのだが。また、サイドエアバッグも試乗車のグレード以外は6万3000円のオプションだ。こうしたベーシックな安全装備をカローラクラスに標準化したのなら拍手喝采だった。
チルトとテレスコは標準装備で、シートの上下調節はラチェット式で可能だが、座面の前後それぞれに高さ調整機能はない。つまりポジションの自由度が少ない。爬虫類の革のような風合いのファブリックシート生地も初めてのもので、質感は上がっているものの、いわゆる高級感では今ひとつに感じた。
地デジナビの鮮明な画面を見てしまった今、カローラの地上波テレビの写りの悪さは気になってしまう(2007年に販売店装着オプションで地デジ対応チューナーを発売予定)。また、ディスプレイ位置は先代より明らかに下がっており(エアコン吹き出し口がナビの上にある)、その意味では先代の方が未来的で、新型の方は保守的だ。またくどいようだが、こうした大衆車にはゴミ箱や傘立てがあってもいい。走りがここまで良くなると、実は一番喜ばれるのが、逆にそんな他愛もないことなのではないかと思えてくる。
CVTによって低負荷時の静粛性が向上した結果、逆に加速時のエンジン音やCVTノイズが若干気になるようになってしまった。ヒューンというCVTノイズはプリウスのようで、かえって未来的にも思える!?のだが。
総合評価
サイズが小型車枠に収まる日本専用車として、先代を踏襲したビッグマイナーチェンジモデルだ。先代でもクルマとしては十分なので、1.8ではエンジンとミッションを新世代物へ刷新し(1.5もCVTに)、バックモニターなどのITS装備を付加価値として用意した、というところだろう。しかし大衆車クラスにも、いよいよITS装備が降りてきたという点では、記憶に残るモデルだ。始動もコラム左側のプッシュボタンになり、個人で買われるだろう「G」グレード以上は、インテリジェントキー仕様が標準になった。オプションで腕時計型のキーも用意されている。こうしたハイテクがカローラで味わえる時代なのだ。
しかし実際のところ、これらの装備は使いこなされはしないだろう。特にターゲット層となる熟年世代にとって、こうしたハイテクを使いこなすのは至難の業だ。キーがないのは心理的に違和感がある。リアビューカメラは体が硬くなって振り向くのが辛い熟年には喜ばれるだろうが、バックの時にカメラに注目しすぎてフロント側面をぶつけそう。インテリジェントパーキングアシストも馴れるまで相当練習が必要だ。長年運転してきた人ほど、こうした新しい装置を使おうとはしないだろう。「意識せずに使える」というところまで、装置が熟成されておらず、まるでいろいろ機能がついていても使いこなせない家電みたいだ。
レーダークルーズコントロールも「いきなり使え」と言われたところで、まず操作できないはず。ディーラーの販売員が一度しっかり高速教習でもしないかぎり、難しいだろう。現実にはその販売員も使ったことがなかったりするのだから困ったものだ。大衆車がITS化していくことは素晴らしいが、もっと簡単に使えるようにしないと普及は難しい。パソコンやネットを使えないデジタルデバイドならぬ、カーデバイドの問題提起にカローラがなるとは皮肉だが、下手をするとこれら様々なハイテクも使われないまま、消えてゆきかねない。カローラに搭載されたことは喜ばしいが「こんなものはあっても意味がない」という評判になっては逆効果だ。
それよりバックカメラとモニターが標準化されたのだから、フロントブラインドコーナーカメラやサイドビューカメラも標準化すべきだ。これらこそ簡単に使えて喜ばれる装備なのに、現実にはオプション設定すらない。またETCも標準ではないが、オプションで1万円程度なら、もう標準化していいのではないか。熟年でも携帯電話くらいは持っているから、カーナビと連動するハンズフリー機能も簡単にできるといいが、これもまだ難しいまま。こうしたごくシンプルなITS系装備こそ、先に標準化してドライバーを馴れさせていくことが重要ではないかと思う。
矢沢永吉のCMでおなじみのトヨタオリジナル携帯電話「TiMO」が出たが、ブルートゥースのセッティングが簡単で、ハンズフリー初期登録がガイダンスに沿ってできる、緊急通報サービス「ヘルプネット」に繋げられる、アームレスト固定が可能な充電器があるなど、トヨタ車ユーザー大喜び仕様なのだが、携帯電話キャリアはトヨタ系のauのみ。例えばカローラを買ってナビをつけた人には、この携帯が無料でついてくるとか(ナンバーポータビリティも始まったことだし)の大胆な仕掛けが必要だ。そこまでやらないと大衆車でのITSはなかなか進まない。
先代の試乗記で次期カローラは「ニューセンチュリーバリュー」ではなく、「ニューセンチュリーヴィークル」であることを期待したい、と書いたが、確かに新型が21世紀のハイテクカーを目指したことは高く評価したいし、21世紀のITS大衆車への扉を開いたことも間違いない。レクサスと違って誰も注目しないカローラが、レーダークルーズコントロールで前のクルマに追従して走っているなんて、これはすごいことだ。この場合、レーダークルーズコントロール中のクルマは、周囲からそれが分かるように何か表示が出ると一層ありがたいし、さらに設定速度も分かればなおいい。なぜなら、それを見つけた他のレーダークルーズコントロール対応車がさらにそのクルマについていき、またその次のクルマが……とつながっていけば、高速道路に自動運転レーンが形成されると思うからだ。カローラにはすでにそういう能力があるというのがすごいが、一方でその能力がない道路インフラとドライバーがいて、結局使えない装置となってしまうのがもどかしい。「ニューセンチュリーヴィークル」への過渡期にある今、カローラのような熟年カー(失礼)こそ、ドライバーの視点に立った楽で安全なクルマという方向のITSカーを目指して欲しかったのだ。今回はシャシーを先代と共用しただけに、まったく新しい次期モデルの出現は意外に早いかもしれない。さらなる「ニューセンチュリーヴィークル」の登場に期待したい。
試乗車スペック
トヨタ カローラ アクシオ ラグゼール “αエディション”
(1.8L・CVT・233万1000円)
●形式:DBA-ZRE142-AEXGK(L)●全長4410mm×全幅1695mm×全高1460mm●ホイールベース:2600mm●車重(車検証記載値):1190kg(F:750+R:440)●乗車定員:5名●エンジン型式:2ZR-FE●1797cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置●136ps(100kW)/6000rpm、17.9kg-m (175Nm)/4400rpm●カム駆動:チェーン●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/50L●10・15モード燃費:17.2 km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:195/65R15(DUNLOP SP31)●試乗車価格:263万8650円(含むオプション:アルミホイール 6万3000円、HDDナビゲーションシステム [ CD/MD、AM/FM、TV、サウンドライブラリー、6スピーカー、6.5型ワイドディスプレイ、Bluetooth対応ハンズフリー機能、G-BOOK アルファ対応、TVアンテナ] 24万4650円) ●試乗距離:約150km●試乗日:2006年10月
公式サイト
http://toyota.jp/corollaaxio/index.html
