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メルセデス・ベンツ B180 ブルーエフィシェンシー新車試乗記(第665回)

Mercedes-Benz B180 BlueEFFICIENCY

(1.6リッター直4・直噴ターボ・7速DCT・299万円)

シャシーもパワートレインも一新。
先進装備も満載した新型Bクラスは
次世代乗用車の理想だった!

2012年07月21日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

プラットフォームやパワートレインを刷新


新型メルセデス・ベンツ Bクラス(2代目)
(東京モーターショー 2011)

初代「Bクラス」(W245型)は2005年に登場(日本発売は2006年1月)。Aクラス譲りのサンドイッチコンセプトなる二重フロアを特徴とし、そのAクラスと共にメルセデス・ベンツのエントリーモデルとして間口を広げる役割を果たしてきた。

そんなBクラスがAクラスより一足早く、6年ぶりにフルモデルチェンジ。2代目になる新型Bクラス(W246型)は2011年9月のフランクフルトショーでデビュー、日本では2012年4月25日に発売された。

 

新型Bクラスは先代と同じモノスペース風の、プレスリリースの言葉を借りれば「ダイナミックなスタイリングに広い室内空間と優れた実用性を両立した多目的コンパクトカー」で、プラットフォームやパワートレインを一新した意欲作。初代および2代目Aクラス、そして初代Bクラスの特徴でもあった二重フロアは廃止され、次期Aクラスと共有する新開発のFFプラットフォームを採用。これにより乗車姿勢は従来の足を前方に伸ばすスタイルから、普通に足を下に降ろすものに変わり、全高も先代より65mm低くなった。

1.6直噴ターボ。7速DCT、アイドリングストップ機能、衝突警告システム「CPA」を標準化


新開発の1.6リッター直噴ターボと「7G-DCT」

日本仕様は新開発の1.6リッター直噴ターボで、流行りのダウンサイジングに対応。合わせて変速機も新開発の「7G-DCT」こと湿式クラッチ式の7速DCT(デュアルクラッチトランスミッションを採用する。同時に「ECOスタートストップ機能」ことアイドリングストップ機能も採用し、エコカー減税(重量税、取得税、各75%減税)やグリーン税制優遇制度(翌年度自動車税50%減税)、そしてエコカー補助金の対象車とされている。

 

メルセデス・ベンツ コンセプト Aクラス。量産型は6月に欧州で発表済みで、今秋から発売される予定
(東京モーターショー 2011)

安全装備については、コンパクトクラスで世界初をうたうレーダー型衝突警告システム「CPA」を全車に標準装備。さらにミリ波レーダーを使った全車速対応型のクルーズコントロール「ディストロニックプラス」をオプション設定するなど、先進安全装備も積極的に採用している。

■過去のモーターデイズ新車試乗記
・メルセデス・ベンツ B170 (2006年5月更新)
・メルセデス・ベンツ A170 (2005年3月更新)
・メルセデス・ベンツ バネオ 1.9 アンビエンテ (2004年5月更新)
・メルセデス・ベンツ Aクラス (1998年10月更新)

価格帯&グレード展開

299万円と348万円の2グレード。ディストロニック・プラスは15万円高 


ボディカラーは受注生産色を含めて全9色。写真はジュピターレッド(ソリッド)

日本仕様は「B180」と言いながら、全車1.6リッターの直4ターボ。変速機は7速DCTで、右ハンドルのみ。

ラインナップは標準グレードのB180 ブルーエフィシェンシー (299万円 ※今回の試乗車)と上級グレードのB 180 ブルーエフィシェンシー スポーツ (348万円)の2種類。後者にはレザー/ファブリックのコンビシート、本革スポーツステアリングホイール、バイキセノンヘッドライト&LEDドライビングライト、17インチホイール&タイヤ、ステアリング操舵角に応じてステアリングギア比を可変する「ダイレクトステアリング」などが標準装備になる。

全車標準になる装備は、レーダー型衝突警告システム「CPA」、ロングドライブ時の注意力低下を警告する「アテンションアシスト」、タブレット型PCのような7インチ液晶モニターとリアビューカメラ、オーディオや車両設定などの操作インターフェイス「COMANDシステム」など。ただしHDDナビは15万円程度のオプションになる。

主なオプションは以下の通り。

■COMAND システムナビゲーションETC パック(15万2250円 ※販売店装着アクセサリー):HDDナビ(80GB)+地上デジタルTVチューナー+ETC
■バリューパッケージ(25万円 ※対象:標準グレード):バイキセノンヘッドライト&LEDドライビングライト、革巻ステアリング、パークトロニック(前後)などのセット
■セーフティパッケージ(15万円 ※対象:全車):レーダーセンサーと自動ブレーキ制御によって全車速で追従走行を行う「ディストロニック・プラス」と衝突を予知して事前に電動シートベルトの巻き上げなどを行う「PRE-SAFE(プレセーフ)」のセット
■エクスクルーシブパッケージ(32万円/28万円 ※対象:全車):本革・電動シートやウォールナットウッドパネル等のセット
■ナイトパッケージ(15万円 ※対象:上級グレード):18インチアルミホイールや専用内外装パーツのセット

パッケージング&スタイル

外見は先代似ながら、中身は別物

一見、先代Bクラスのビッグマイナーチェンジ版?とも勘違いしそうなほど、2代目Bクラスのスタイリングはキープコンセプト。特に独特の顔つき、サイドウインドウのグラフィックス、ズングリとしたセミトール型のスタイルは先代にそっくり。識別点はLEDを多用したライト類(上級グレードの場合)、「く」の字に折れ曲がった個性的なキャラクターラインといったあたり。

 

ボディサイドのキャラクターラインが個性的な新型Bクラス

ボディサイズ(先代比)は、全長4365mm(+90)×全幅1785mm(+5)×全高1540mm(-65)、ホイールベース2700mm(-80)と新旧で大きく違う。特にホイールベースは全長が伸びたのに対して、一気に短くなった。これはサンドイッチコンセプトによる二重フロアといった特殊な設計を止めて、一般的なFFシャシーを採用したからで、メカニズム面での独創性は薄れた形になった。とはいえ、次期型で「ゴルフ対抗車」に生まれ変わるAクラスとは異なり、新型Bクラスの方はファミリー向けMPVという立ち位置を変えてはいない。

 

Cd値(空気抵抗係数)は先代の0.30から大幅に改善され、クラス最高レベルの0.26

日本市場にとってのグッドニュースは、全高が65mm低くなり、タワーパーキングに収まる高さになったこと。ただしこれは日本仕様に20mmローダウンするスポーツサスペンションが標準装備されたからで、最低地上高は市販車では極めて低い105mmしかない。

インテリア&ラゲッジスペース

タブレット型PC風のモニターやSLS風の吹き出し口が目を引く


試乗車の化粧パネルは「マトリックスブラック」なるカーボンパネル風。上級グレードやオプションでウッドパネル(黒系のブラックアッシュウッドや茶系のウォールナットウッド)も選べる

従来のAクラスやBクラスを知っている場合、新型で最も「変わった」と思えるのが乗車姿勢。先代はドアを開けると、SUVや大型ミニバンのような高い位置に床があり(サイドシルよりずっと高い)、座るとスポーツカーのように足を前に投げす運転姿勢になった。これに対して新型のフロアは普通に低く、着座姿勢も足を自然に下に降ろす、ごく一般的なものになった。

立体的なダッシュボードの形状も目を引くところ。スリーポインテッド、ならぬ「フォー」ポインテッドスターが印象的な丸型のエアコン吹き出し口は、SLS AMGの流れをくむもの。パーツの質感も高く、VWアウディが多少なりとも危機感を持ちそうな仕上げになっている。

上級車譲りの「ダイレクトセレクト」を採用


Cクラスを飛び越えて採用された「ダイレクトセレクト」

電子制御式シフトセレクター「ダイレクトセレクト」はすでにSクラスやEクラスで採用されているもの。モデルチェンジ時期の関係もあって、Cクラスを飛び越えて採用されたものだが、ついにこのクラスまで来たか、という感じ。

先端のボタンを押せばP(パーキング)、下げればD(ドライブ)、上げればR(リバース)と操作は簡単だが、こと日本市場の場合は、日本車のウインカーレバーと位置が同じなので、輸入車に乗り慣れていないと間違えやすい。とはいえ、完全な電子制御式なので、走行中に誤まった操作をしても、特に問題はなく、慣れてしまえばボタンひとつでパーキングに入るし、エンジンを切れば自動的にニュートラルに入るし、そしてドアを開ければパーキングに入る、といったメリットがある。もちろんパーキングブレーキも電動式。

7インチTFT液晶モニター&COMANDシステムは全車標準


7インチワイドディスプレイとリアビューカメラは全車標準だが、HDDナビや地デジはオプション

インテリアで一番目立っているのは、タブレット型PCのようなデザインの7インチTFT液晶モニター。サイズはiPadとスマートフォンの中間くらいで、いかにもタッチ操作できそうだが、実際にはセンターコンソールの「COMAND」コントローラーでしか操作できない。

操作性に関しては、メニューを切り替える時の反応が良くないことがあり、現状では多少の慣れが必要。ただしタッチパネル式のメーカー純正ナビと違って、走行中でも目的地設定といった込み入った操作が可能な点がこうした遠隔操作タイプのいいところ。

 

エアバッグは運転席ニーを含めて計7個を標準装備。ユーロNCAPは最高評価の5つ星を獲得

COMANDコントローラーも全車標準。オーディオや車両設定などをブラインド操作できる
 

後席にはセットオプションで、前後スライド機能(最大140mm)、リクライニング機能、折畳式テーブル、収納式カップホルダー付アームレストが備わる

ベースグレードは手動ファブリックシート。ダイアル式のリクライナーなど調整は全て手動だが、ポジション自由度は高い
 

先代は座面を引き起こしてから畳むダブルフォールディングだったが、新型は背もたれを倒すだけのシングルフォールディングになった

座面にあるヒモを引っ張り、後席を倒した状態。起こす時はドイツ車らしくけっこう重い
 

荷室容量は486~1545リッター。写真は床を上段にセットし、フラットにした状態

ランフラットタイヤが標準で、スペアタイヤやパンク修理キットはない。折畳式の「カゴ」はセットオプションに含まれる
 

セットオプションで床の高さを2段階で調整できる機能が備わる
 

基本性能&ドライブフィール

自然な乗車姿勢、自然な加速感、良好な小回り


新開発の1.6直噴ターボはオールアルミ製で、重量は137kgと軽量。第3世代の新開発ピエゾインジェクターとスプレーガイド式燃焼システム(最大圧力200bar)を採用し、1回の吸気行程で最大5回の燃料噴射を行う

試乗したのは標準グレードの「B180 ブルーエフィシェンシー」(299万円)に、セーフティパッケージ等のオプションを装着したもの。さっそく運転席に乗り込むと、Bクラスなのに足を下に降ろして座れることに「やっぱりこっちの方が自然だなぁ」と素直に思えてしまう。あと、前席の電動シートベルトテンショナーがいったんググっと強く巻き上げを行うのが面白い。

コラムから突き出た「ダイレクトセレクト」を、国産車で言えば、ウインカーを出すように軽く押し下げてD(ドライブ)を選択。アクセルを踏み込むと電動パーキングブレーキが自動的に外れて、そろりと走り出す。ちなみにリバース時でも自動的に電動パーキングブレーキが解除されるのは、他メーカーにも真似て欲しいところ。

メルセデス・ベンツが独自で開発したという7速DCTは、VWが小排気量車に使う乾式クラッチ式ではなく、湿式クラッチ式。電子制御クラッチで生み出す擬似クリープの立ち上がりは早く、ブレーキリリース後の「間(ま)」がないのが好印象。出足はトルコンATだと勘違いしそうなくらいスムーズ。走りだしてもDCTっぽさは控えめで、マニュアルシフトで変速動作をチェックしないと、DCTだと確信できない。

 

アクセルを踏み込んだ時の反応もメルセデス・ベンツらしく、のんびり穏やか。実際、パワーも控えめで、最高出力122ps、最大トルク200Nm(20.4kgm)という数値は、現行ゴルフの中間グレード「TSI コンフォートライン」の1.4リッター直噴ターボとまったく同じ。一方、車重はゴルフ(TSI コンフォートライン)が1290kgで、B180は1450kg、試乗車はオプション込みで1480kgもあり、その差は160~190kgもある。パワーウエイトレシオはTSI コンフォートラインの10.6kg/psに対して、B180は11.9~12.1kg/ps。もちろんトルクは十分にあるので、力不足を感じることはないが、加速時にエンジン回転を引っ張り気味になる傾向はある。

鷹揚な乗り心地は「確かにメルセデス」

先代より65mm低くなったとはいえ、全高は1540mmと高めなので(VWゴルフより60mmほど高い)、アイポイントも少し高め。全幅が1785mmあるので、特にコンパクトという感じはしないが、最小回転半径は5.2メートルと小さいので、ライバルのゴルフ(5.0メートル)や身内のCクラス(5.1メートル)と比べても、それほど取り回しは悪くない。

走行中に印象深いのが、まるで先代Bクラスを再現したかのような、独特の重厚感。先代の乗り心地も良かったが(Aクラスよりも明らかに上質だった)、新型にもあのフェルトで包んだ分厚い鉄骨みたいなガッシリ感が受け継がれているし、同時に20mmのローダウンサスペンションのせいか、全体に硬めではあるものの、当たりの柔らかさはあって、メルセデスだなあと思わせる。同じFFハッチバックながら、軽快でカチッとした感覚のゴルフとは全然違う世界。まあ本来、ゴルフと比べるべきは次期Aクラスだが、とにかく乗り心地やサスペンションが動く感覚は、一般的なFF車では味わえないもの。

当然サスペンションも先代とは全く異なり、特にリアサスは従来の、アーチ状のアクスルハウジングを備えた独特のスフェリカル・パラボリック・スプリング・アクスルから、マルチリンクもしくは4リンクと呼ばれるタイプ(3本のコントロールアーム+1本のトレーリングアーム)に変更。さらに走行状況(実際にはストロークか)に応じてダンパーのオイル流量を変え、減衰力を機械的に変更する「セレクティブダンピングシステム」も採用されている。

ちなみに新型Bクラスには「MOExtended」(Mercedes Original Extended)と呼ばれるランフラットタイヤが標準。その名称から考えると、メルセデス・ベンツ専用仕様のようなので、タイヤ自体のキャラクターも新型Bクラスに合わせたものか。

 

新型Bクラスのタイヤはすべてランフラット。タイヤの前に備わるスパッツは凹凸のある「のこぎり」型で、整流効果が高いらしい。段差でやや接地しやすい

そして乗り心地も独特なら、ハンドリングも独特。基本的には徹底したアンダーステアだが、電動アシストのステアリングを切っていくとちゃんと曲がるところが、プアなエコタイヤを履いたクルマと違うところ。ゴルフがステアリングを切り込むとスッと曲がるのに対して、Bクラスは反応は鈍いけどグングン曲がってくれる。さらに大きく切り込むと、ちゃんとリアがステアして帳尻を合わせてくれる。ひょっとして、これがコーナリング時にブレーキ制御で車両姿勢を修正するという「トルクベクトリングブレーキ」の効果か。

いずれにしてもコントロール性の高さや穏やかな動きは、まさにメルセデスっぽい。アンダーパワーなところを含めれば、5年くらい前に乗ったC200 コンプレッサーを思い出した。

ちなみに100km/h巡航時のエンジン回転数は、7速トップで約1800回転。ロードノイズ、風切り音などは静かで、乗り心地もすでに触れたように良好。ゆっくり走る限り、Sクラスの代わりに乗ってもそう不満はないかも。ただ加速時にはエンジン回転が上がりがちで、非力感が目立つようになる。

衝突警告システム「CPA」と「ディストロニック・プラス」


高速道路のような場所で、交通の流れに突発的な変化がなければ、渋滞時も含めてほとんどアクセルおよびブレーキ操作なしでの走行が可能

コンパクトクラスで世界初というレーダー型衝突警告システム「CPA(コリジョン・プリベンション・アシスト)」(全車標準)は、障害物や前走車と車間距離が近すぎる場合はまず警告灯が点灯し、さらに2.6秒以内に衝突する危険性がある場合は、警告灯と警告音でドライバーに注意を喚起する、というもの。また、警告後にドライバーのブレーキ操作では間に合わないとコンピューターが判断した場合は、通常より早くブレーキアシストが作動し、制動力を補うという。

間違えやすいのは、CPAはボルボの「シティセーフティ」やスバルの「アイサイト」と異なり、クルマが自らの判断で自動ブレーキを踏むわけではなく、また低速での追突・衝突に特化したものでもないこと。あくまでもドライバーの注意を喚起する「警告システム」であり、ある程度の高い速度域での(深刻な)衝突事故を防ぐことを目的としている。実際のところ、街中で警告音のお世話になることはなかったが、ワインディングではコーナーの手前で何度か灯と音で警告された。ただし静止した障害物に対しては70km/h以下でしか反応しないせいか、煩わしいと思うほど警告されることはない。

 


CPAおよびディストロニック・プラス用のレーダーはノーズエンブレム内に搭載される

CPAよりもメリットを感じやすいのが、メーカーオプション(15万円)で装着されていた「ディストロニック・プラス」。ミリ波レーダーを使った全車速対応型のクルーズコントロールで、いったんセットすれば、前の車両が停止すると自車も自動ブレーキで停車し(この時にはアイドリングストップもする!)、前車が発進した時にはドライバーがアクセルをチョンと踏んで「きっかけ」を与えるだけで、エンジン再始動を行ない、再び追従走行を再開する。機能的にはスバルのアイサイトなどと並んで、この手のシステムでは最も進んだものだと思う。

なお、設定速度の上限が100km/h+アルファに留まる日本車と異なり、Bクラスでは200km/hまで設定可能。おかでクルーズコントロールの設定操作さえ厭わなければ、特に高速道路ではほとんど自動運転に近いものが体験できる。もちろん現状はあくまでも運転を「支援する」システムだが。

なお、新型Bクラスには、メルセデスの上級モデルでおなじみの「アテンションアシスト」も全車標準。これはドライバーの運転特性(ステアリング操作のフラつきなど)を解析して、長時間走行時のドライバーの疲労や眠気を検知して注意を促すもの。

アイドリングストップ機能はよく出来ているが

アイドリングストップ機能「ECOスタートストップ」は全車標準。条件さえ揃えば、エアコンオンでも、ヘッドライトオンでも、信号で止まれば必ず止まるというほどバンバン止まるし、再始動も素早くスムーズ。スターターノイズも気にならないし、始動時のショックもほとんどない。マツダのi-stopと互角と言ってもいいくらいで、輸入車ではトップクラスだと思う。

という具合に絶賛して終わりたいところだが、試乗中に大いに気になったのが、どういうわけか、このアイドリングストップ機能がまったく作動しないことがあること。エンジンを始動してしばらくすると、液晶メーター内に「ECO」と表示され、それからアイドリングストップが働くようになるのだが、時としてこの「ECO」表示が出ず、そうなると当然ながらエンジンがさっぱり止まらない。いったんこうなると、エアコンを止めても、ヘッドライトを消しても、飛ばしても、ゆっくり走っても、一向にアイドリングストップしてくれなくなる。最初は充電状態が影響しているかと思ったが、運転状況から考えて、それは考えにくく、原因は不明。

試乗燃費は9.4~12.3km/L、JC08モードは16.0km/L

今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費は、一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が9.4km/L。空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km×2回)は12.0km/L、12.3km/Lだった。なお、JC08モード燃費は16.0km/L(全車)。また10・15モード燃費は16.4km/Lで、先代B180(1.7リッターNA・CVT)の13.8km/Lより約19%向上している。

 

ここがイイ

普通になったパッケージング。メルセデスらしい鷹揚な乗り味。各種ユーティリティ

従来のサンドイッチコンセプトという独創的なアイディアには敬意を表しつつも、やっぱりパッケージングが普通になったことは素直に喜べる部分。乗車姿勢が普通になったし、乗り降りも楽になった。全高が低くなった分、室内高は実質的にあまり変わっていないようだが、それでも感覚的には広くなったように思える。内装の質感も上がった。

いかにもメルセデス・ベンツらしい鷹揚な乗り心地。後席の乗り心地も先代に比べて良くなった。アクセルに対する反応やハンドリングも、いい意味でメルセデス・ベンツ的に鈍く、上級モデルに近いものが感じられるはず。

 

後席の背もたれがシングルフォールディングとされたことも、サンドイッチコンセプトからの脱却によるものだろう。床面にはわずかに傾斜が残るが、簡単さには代えがたい。また後席が前後に140mmスライドし、さらに背もたれを垂直まで立てて、荷室の奥行きを簡単に広げられるのもいい。

もちろん後席用のシートバックテーブルもあるにこしたことはない。ただこれらは後席アームレストなどセットしたコンフォートパッケージ(20万円のオプション)を注文する必要があるが。

ここがダメ

最低地上高の低さ。もう少し伸びて欲しい実用燃費

全高をタワーパーキング対応とするため、日本仕様には20mmローダウンサスが採用されているが、これによって、最低地上高が105mmとなり、空力用のスパッツを擦りやすいだけでなく、場合によっては「腹打ち」の可能性がある点も日常的にはマイナスだろう。

車重は先代に比べて100kg近く重く、もう少し軽くしたかったところでは。加速は率直に言って緩慢だし、実用燃費も直噴ターボ、7速DCT、アイドリングストップ機能という燃費の「三種の神器」を持ったモデルとしては、もう少し伸びて欲しかったところ。その意味では、もう少しパワフルなパワートレインが最適かも。

あと、エンジンが止まって欲しい時に、あるいは止まっても良さそうな時に止まってくれない?アイドリングストップ機能には困った、というか、モヤモヤ感が残った。試乗車固有の、というか試乗時の状況固有のものだとは思うが。

総合評価

モノスペース乗用車の良さと難しさ

初代Bクラスが発売された当時は、「次世代乗用車」として高く評価したもの。実際、トヨタ・ナディアなど日本車が早々と撤退してしまったモノスペース型の乗用車という分野だったが、メルセデスなら成功するかもしれないと思ったものだ。実際、日本でもそこそこは売れたようだが、大成功とまではいかなかった。このようにスペース効率を追求した結果、今ひとつカッコよくなくなったこのジャンルのクルマは、日本では今や絶滅状態だ。むろん軽自動車や「ミニバン」というスペースマキシマムな選択肢があったことが最大の原因だが。

新しいBクラスも、その意味で独自のサイズ感を持っている。類するクルマ(かつてのゴルフプラスあたりか)は他にはなさそうで、日常的に乗りやすいサイズながら室内が広い、理想的なクルマだろう。ただ新型もスタイリングは素直にいいとは言いづらい。サイドの跳ね上がったキャラクターラインも最近のメルセデスらしい過剰さを感じてしまう。ワイド過ぎない全幅は文句ないところだが、ローダウンサスとなったゆえの、段差での腹打ちを気にしなければならないのは残念だ。モノスペース乗用車と旧来の日本式タワーパーキングはなじまなかったわけで、そのあたりもこの手のクルマが日本では難しい要因の一つだろう。

総じてイメージ通りで、先代よりお勧め

初代Bクラスは街中でも品のいい奥さん風の人がよく自分で運転しているのを見かける。ありがちな国産ハッチバックは嫌、というブランド志向の強い奥様方が自分の足として使っているようだ。「セダンではない、価格も安めのベンツ」。その意味では新しいBクラスも同様のユーザーに受け入れられ、結構売れることが予想される。先代では後席の乗り心地が硬くてちょっと辛かったが、今回は文句が出ないだろうし、些細なネガは、グリルに大きく輝くスリーポインテッドスターが、全てうっちゃってくれるはず。また室内の広さや使い勝手の良さから考えると、都会に住む一家にとってはファミリーカーとしても重宝されるのは間違いない。乗り心地も後席に限らず、全体にメルセデスらしい良さ(柔らかさ)になったし、室内の上質感も高まっているから、先代よりお勧めできる。

走りに関しては特に感嘆すべき点はないが、こういうアンダーパワー感でゆったり走るのがベンツという意味では、総じてイメージ通りで悪くない。このクルマでコーナーを攻める人はいないだろうし。ちょっと乗っただけでは特にいいとも思わないタイプのクルマだが、10年とか長く乗って振り返ると、いいクルマだったなと思える、そんなタイプであり、そしてメルセデスはいいクルマだったなと記憶に残ることになるのだろう。またメルセデスの場合、10年10万km乗っても、さほど古びた感じにならないから、長く乗れる分、経済的とも言える。

ドライブセレクトやコマンドシステムは理にかなっている

というわけで、文句なしではあるが、絶対的な魅力があるというわけでもなく、燃費もそこそこ。特筆するとすれば、このクラスでは画期的な先進装備の数々ということになる。国産の同クラスでは価格面でなかなか装着が難しい装備が色々とついているのだ。

まずキーこそコラムに刺して回すタイプだが(ただしメルセデスが長く使っているブロック型で、金属キーではない)、シフトは電子制御式の「ダイレクトセレクト」で、このクラスに装備されたのはやはり画期的だろう。昔からAT車のフロアシフトなど無用の長物と言ってきたが、やっとこのクラスでも過去の遺物が葬り去られたのは喜ばしい限り。ステアリングから手を離さず手元でシフト出来るというのは理にかなっていると思う。

これはメルセデスのコラム右側に伝統的にレバーがなかったからできたことだと思うが、そのシフトセレクターが日本車(国内向け)におけるウインカーレバーと同じ位置に来たことは、こと日本ではちょっと問題かもしれない。これは慣れてもらうしかないのだが、慣れればブラインド操作でギアが変えられるのは素晴らしいことだと分かってもらえると思う。

同様にナビやオーディオ等を遠隔操作するコマンドシステムも、慣れは必要とするものの理にかなっている。タッチパネル方式は運転中に操作すると確実に意識と視線がそちらへ行くことになるので、よろしくない。欲を言えば、止まって操作するときだけタッチパネルで操作できるようになってもらいたいところではあるが、やはり走行中はコマンドシステムやiDrive、MMIといったリモコン式がもっとも使いやすいと思う。もはや音声認識などではスマホ系に太刀打ち出来ない今、スマホのようなナビでありながら、リモコン操作もできるというふうに進化していってもらいたい。

先進装備こそプレミアムをうたう輸入車の強み

またBクラスのディストロニック・プラスは、ほぼ自動運転に近い。高速道路に限らず、市街地でもトロトロと先行車についていくような場合、発進から停止(アイドリングストップ)まで、もうほとんど自動で行われる。特に発進時にアクセルを軽く踏むと、エンジンがかかって走りだすところも自動運転っぽい。さらに、コンパクトクラスで世界初というレーダー型衝突警告システム「CPA」が全車標準なのもいいし、乗った時にシートベルトをいったん締めあげる機能も、運転姿勢や安全運転を意識させるには効果的だ。このクラスでもこうした先進的な安全装備をつけられるのが、プレミアムをうたう輸入車の強みだろう。

 

しばらく前の週刊アスキーで、歌田明弘という人がgoogleの無人走行車の話を書いていたが、ネット社会ネタでは切れ味鋭い歌田氏も、クルマはあまり乗ったことがないようで、すでにBクラスのような市販車が自動運転に近い機能を備えることはあまりご存じなかったようだ。このあたりにも日本人のクルマに対する認識の現状が垣間見られる。Bクラスは奥様やファミリーが購入するのだろうけれど、同時に先進装備満載の「次世代乗用車」だ。しかし、そういったことがほとんど知られないまま時が過ぎていくのは残念。これだけの先端装備をもっと多くの人に知らしめると、例えばIT業界の人など、これまでとは別のユーザー層ができていくと思うのだが。

 


試乗車スペック
メルセデス・ベンツ B180 ブルーエフィシェンシー
(1.6リッター直4・直噴ターボ・7速DCT・299万円)

●初年度登録:2012年3月●形式:DBA-246242 ●全長4365mm×全幅1785mm×全高1540mm ●ホイールベース:2700mm ●最小回転半径:5.2m ●車重(車検証記載値):1480kg(910+570) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:270 ●排気量・エンジン種類:1595cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:83.0×73.7mm ●圧縮比:10.3 ●最高出力:90kW(122ps)/5000rpm ●最大トルク:200Nm (20.4kgm)/1250~4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L ●10・15モード燃費:16.4km/L ●JC08モード燃費:16.0km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 マルチリンク+コイル ●タイヤ:205/55R16(Good Year EfficientGrip MOExtended RunOnFlat) ●試乗車価格(概算):358万2150円  ※オプション:セーフティパッケージ 15万円、バリューパッケージ 25万円、COMANDシステム ナビゲーションETCパック 15万2250円、フロアマット プレミアム 3万9900円 ●ボディカラー:ジュピターレッド(ソリッド) ●試乗距離:約200km ●試乗日:2012年7月 ●車両協力:メルセデス・ベンツ 名古屋南・名古屋北

 
 
 
 
 

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