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スズキ バレーノ新車試乗記(第788回)

Suzuki Baleno

(1.2L+CVT/1.0Lターボ+6AT・141万48000円~)

Bセグなのに3ナンバー!
おまけにACCも標準装備!
インドからの「閃光」に瞠目せよ!

2016年05月20日

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キャラクター&開発コンセプト

インドで生産される上級Bセグコンパクト


スズキ バレーノ(東京モーターショー2015)

スズキの新型車「バレーノ」は、同社のインド子会社であるマルチ・スズキ・インディア社で生産されるBセグメントのコンパクトカー。2015年3月にジュネーブショーでコンセプトカー「iK-2」として登場した後、同年秋に「バレーノ」の名でインドでの生産・販売が始まった。車名はイタリア語で「閃光」の意。

日本では2015年秋の東京モーターショーで参考出品車として発表され、2016年3月9日に発売された。国産メーカーのインド製4輪車が日本で量販されるのは今回が初。日本に続き、すでに欧州でも販売が始まっている。プレスリリースには「デザイン、居住性、走行性能、安全性能など、コンパクトカーに求められる要素を高次元で調和させ」、「スズキが考える理想のコンパクトハッチバックを追求した」と謳う。

新世代Bセグモデルの第一弾

バレーノで初めて採用された新世代プラットフォームは、今後登場してくるBセグメントカーの土台となるもの。また、日本仕様車には1.2L 4気筒・自然吸気エンジン+副変速機付CVT(無段変速機)に加えて、新開発の1.0L 3気筒ターボエンジン+6AT(こちらは5月13日に発売)が搭載されている。

140万~160万円台の価格帯でありながら、ミリ波レーダー方式の衝突被害軽減システム「レーダーブレーキサポートII(RBSII)」やアダプティブクルーズコントロール(ACC)を標準装備するのも画期的な点。

 

なお、開発は日本国内で、走行テストは欧州で行われ、生産はインドのマネサール工場で行われる。また、出荷前の品質チェック(PDI作業)に関しては、輸出を行うムンドラ港と、日本の湖西工場の2回にわけて実施される。品質は日本製と変わらないというのがスズキの主張。インドでは2015年に始まった高級販売チャンネル「NEXA(ネクサ)」で、SX4 Sクロスと共に販売される。

販売目標台数は「年間」6000台。ちなみにイグニスは「月間」で1500台だから、バレーノはその3分の1になる。インド製であること、そしてグローバルカーの基準が、今の日本で、どの程度受け入れられるかを測るモデルになる。

■過去の新車試乗記
スズキ イグニス (2016年4月掲載)
スズキ スイフトスポーツ (2011年12月掲載)

 

価格帯&グレード展開

価格はイグニスとオーバーラップ

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バレーノ XG

インドや欧州には1.3Lディーゼル車もあるが、日本向けは1.2L自然吸気の「XG」と、日本および欧州向け1.0Lターボの「XT」の2モデル。

前述の通り、ミリ波レーダーを使った自動ブレーキおよびACCは全車標準。140万円台で買えるXGの安さが目立つが、XTにはフルオートエアコン、本革巻ステアリング、ディスチャージヘッドランプ、16インチアルミホイール等が標準装備されるなど、内容的にはいずれもお買い得。オーディオは全車ディーラーオプション。

 
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スズキ バレーノ XT

ちなみに、ボディサイズが一回り小さいイグニスは、全車マイルドハイブリッド仕様で、FF車の場合は138万2400円~164万1600円(デュアルカメラブレーキサポート装着車は9万7200円高)だから、価格帯は完全にオーバーラップする。

■バレーノ XG  141万4800円
・1.2L 直4(91ps、118Nm)+CVT
・JC08モード燃費:24.6km/L

■バレーノ XT  161万7840円
・1.0L 直3 ターボ(111ps、160Nm)+6速AT
・JC08モード燃費:20.0km/L

【メーカーオプション】
・セットオプション(XTのみ) 11万0160円
(本革シート、フォグランプ、カラーマルチインフォメーションディスプレイ、ステアリングオーディオスイッチ、助手席シートヒーター、フロントセンターアームレスト、センターコンソールボックス、センターコンソールトレー)

 

パッケージング&スタイル

5ナンバー枠にとらわれず


XTにはLEDポジションランプ付のディスチャージヘッドランプ、16インチアルミが標準(XGは15インチフルホイールキャップ)

デザインテーマは「リキッドフロー」、すなわち流れるようなイメージを曲線や曲面で表現、といったニュアンス。全体にシンプルで大人しく、高級感や押し出しを狙った、いかにもな演出はないが、3ナンバー幅のボディにより、ロー&ワイドなのは確か。独特のフェンダーライン、スイフト似の縦型ヘッドライト、思い切り寝かせたリアウインドウなどにデザイナーの主張が感じられる。

 
 

こちらは1.2LのXG。XTとの識別点は、ヘッドライト(HIDかハロゲンか)、フォグランプの有無、ホイール(16インチアルミか15インチキャップか)など

ボディサイズは従来のスズキ製コンパクトカーになかった独特のもの。全長は4m未満だが、全幅は1745mmの堂々たる3ナンバーサイズ。5ナンバー枠にとらわれないパッケージングが、いかにもグローバルカー。全高は1470mmで、イグニス(1660mm)はもちろん、スイフト(1500mm)より低い。ホイールベースは2520mmとBセグとしては長めだが、最小回転半径はBセグらしく4.9mに収まっている。

 

真正面もしくは真後ろから見ると、いかに全幅がワイドかが分かる

XGとXTではリアコンビランプのインナーレンズやLEDの光り方が異なる
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
スズキ イグニス (2016~) 3700 1660 1595 2435 4.7
スズキ スイフト (2010~) 3850~3890 1695 1500~1535 2430 4.8~5.2
VW ポロ (2009~) 3995 1685 1460~1475 2470 4.9
スズキ バレーノ(2016~) 3995 1745 1470 2520 4.9
スズキ エスクード(2015~) 4175 1775 1610 2500 5.2
VW ゴルフ7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
トヨタ カローラ フィールダー(2015~) 4400~4410 1695 1465~1535 2600 4.9~5.5
 

インテリア&ラゲッジスペース

チルト/テレスコ標準装備


上級グレードには高精細4.2インチカラー液晶ディスプレイを採用

インパネデザインも欧州調というか、グローバルカーっぽいというか。黒基調のダッシュボードはハード樹脂だが、要所にメッキやシルバー加飾を施して、価格以上の質感に努めている。メーターはオーソドクスな2眼タイプで、上級グレードには中央に高精細大型カラードット液晶のマルチインフォメーションディスプレイを配置。2DINワイドスペースはしっかり(ナビの視認性に有利な)センターコンソール最上段に設けられている。

嬉しいのは、ステアリングの調整機構にチルト(調整量40mm)だけでなく、テレスコピック(同36mm)が備わること。シートも欧州車風にホールド性の高いもので、このあたりもまさにグローバルカー。

 

オーディオは全車ディーラーオプション。XTはオートエアコン標準、XGはマニュアルエアコン

シート表皮はファブリックが標準で、XTではセットオプションで本革も選べる
 

BセグでCセグ並みの広さ


後席の広さは実質的にゴルフあたりと大差なし。Bセグでは手狭なファミリーに良さそう

ホイールベースは2520mmあり、その分、スイフト(2430mm)やVWポロ(2470mm)より後席、特にフットルームが広い。おそらく3人掛けを重視したのだろう、シートクッションがやや平板なのが惜しまれるところ。

荷室容量は320L(ラゲッジボード上段時)。ちなみにポロは280L、ゴルフ7は380Lなので、だいたいその中間という感じ。

 

ラゲッジボード上段時。9.5インチのゴルフバッグを横置き可(横幅は最大1390mm)。荷室高は725mm/870mm

フロアボードは折り畳むと仕切りになる。床下にはパンク修理キットと三角表示板
 

基本性能&ドライブフィール

スズキ普通車で久々のターボ

イグニスとアルトワークスの時と同様、今回も浜松のスズキ本社を起点に、1.2L自然吸気・CVTの「XG」と1.0Lターボ・6ATの「XT」、計2台に試乗した。

まずはXG。こちらは気筒ごとに2つのインジェクターを持つ1.2L自然吸気「K12C型」“デュアルジェット”エンジン(91ps、118Nm)と副変速機付CVTを搭載したもの。エンジン本体とCVTは現行ソリオやイグニスと同じだが、小型リチウムイオン電池とモーターを使ったマイルドハイブリッドではない。

それより約20万円高い「XT」は、スズキ普通車ではおそらく2000年頃のワゴンRプラス以来となる、久々のターボ車。1.0L・3気筒直噴ターボ「K10C型」“ブースタージェット”エンジン(111ps、160Nm)とアイシンAW製6ATを搭載したもの。

形式名から言うと、K12C型から1気筒省いたものに見えるが、実際には欧州向けビターラ(エスクード)の1.4L「ブースタージェット」直噴ターボのレスシリンダー版と考えた方がいいようだ。6穴式サイドインジェクショターや低負荷時にウエストゲートバルブを開けてポンピングロスを低減する「ウエストゲートバルブ ノーマルオープン制御」などの技術が盛り込まれている。

なお、1.0Lターボの111ps、160Nmというスペックは、SX4 Sクロスや新型エスクードの1.6L「M16A型」(117ps、151Nm)と同等で、つまりこのK10C型は、従来1.6Lのダウサイジングエンジンにもなり得る。さらにこの3気筒ターボから1気筒省くと664ccの2気筒ターボも出来そうなのだが、さて。

いずれも乗りやすく、パワーも十分

乗ってみると、1.2も1.0ターボも予想以上に乗りやすく、パワーも十分。特に予想外だったのは1.2の方で、例えば同じ1.2Lで、バレーノにないモーターアシストがあるイグニス(車重もバレーノより軽い)よりも、どういうわけか軽快に走る気がした。

1.2LはCVTということもあり、今どきの日本製コンパクトカー風で、ある意味とっつきやすい。一方、力強さでは1.0Lターボの方が上で、特にアクセルを深く踏み込んだ時のトルク感は、期待通り分厚い。ただ、実際の路上ではアクセルをそんなに踏まなくても普通に走ってくれるので、それほどターボパワーを実感する機会は多くない。意外によく走る1.2L自然吸気と、意外にマイルドで滑らかな1.0Lターボが歩み寄って、少なくとも街乗りで言えば「どっちでもいいなぁ」という感じ。

ちなみに、1.0LターボにはアイシンAW製の6速ATが組み合わされる。欧州市場に合わせた選択だが、この6ATも予想外に変速がスムーズで、フリクション感のない優れものだった(この前乗った新型エスクード用とはずいぶん違う印象)。ターボエンジンと6ATのマッチングがいいのかもしれない。

 

Bセグのライバル車にとっては脅威

新世代Bセグ用プラットフォームの売りは、最近のスズキ車らしく、高剛性と軽量化。特に軽量化だ。バレーノの車重も1.2Lで910kg、1.0Lターボで950kgと、どこをどうすればそんなに軽くできるのか不思議なほど軽い。ちなみにサイズ的に近い(厳密に言えばバレーノより小さい)VWポロ(1.2Lターボ)の車重は1130kgもある。その差、なんと200kg。

これだけ軽いと剛性感みたいなものが心配になるが、まったく問題ないし、軽々しさもない。あえて気になった点を言えば、タイヤに起因するものか、ゴロゴロとしたロードノイズが大きめなこと。タイヤは全車ブリヂストンのエコピア EP150だが(XGは15インチ、XTは16インチ)、インド製になる。

 

ACC標準で、高速ロングドライブ派にお勧め


4.2インチカラー液晶ディスプレイを備えたXTのメーター。燃費計のほか、Gメーター(前後左右)や出力・トルク表示(写真)も備える

100km/h巡行時のエンジン回転数は、1.2Lが約1800rpm、1.0Lターボが約2000rpm。100km/hで巡行する限りは1.2Lでも不満はないが、1.0Lターボだと6速トップのまま分厚いトルクで追越加速できるので、明らかに余裕がある。

嬉しいのは、141万4800円で買える1.2Lモデルも含めて全車に、ミリ波レーダーによる自動ブレーキ機能のレーダーブレーキサポートII(RBSII)とACC(アダプティブクルーズコントロール)が標準装備されていること。もちろん日本仕様のACCは約45km/h~約115km/hでしか設定できないが、高速ロングドライブ時のストレス低減には十分に有効である。

 

巨大な「S」マークの裏にはミリ波レーダーを搭載

なお、同じスズキ車でも、イグニスやハスラーなどでは、ステレオカメラで前方を監視するデュアルカメラブレーキサポート(DCBS)が採用されている。DCBSはカメラで画像認識を行うため、先行車発進お知らせ機能や誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能なども備わるが、ACCのような追従機能はない。つまり、高速道路を走る機会が多ければミリ波レーダー方式、主に市街地しか走らないのならDCBSの方がいい、という感じ。

試乗燃費は1.2Lが15.8km/L、1.0Lターボが17.2km/L

今回はそれぞれ約100km程度を試乗。参考ながら試乗燃費(撮影区間を除く)は、1.2Lが15.8km/L、1.0Lターボが17.2km/Lと、JC08モード(それぞれ24.6km/Lと20.0km/L)を逆転する結果になった。

ただし注意点は指定燃料が1.2Lはレギュラーなのに、1.0Lターボはハイオクになること。走り方にもよるが、実質的な燃料「コスト」はそう大差ないのでは。

両車ともにアイドリングストップ機能がないのも、今どきの「国産車」っぽくないところ。燃料タンク容量はいずれも37L。

 

ここがイイ

お買い得。パワートレイン。ミリ波レーダー標準搭載

一見、平凡ながら、見ているうちに悪くないと思えてくるスタイリング。全長はインドの税制の関係で4mを切るが、幅は気にしなくていいので、安定感のあるワイドなフォルムを獲得できた。他のコンパクトカーにはないロー&ワイドなイメージは、一般的に見て「カッコいい」と思える要素を備えている。ヴィッツやデミオと同じ価格帯で、3ナンバーボディが手に入る、それが日本のユーザーに響くかどうかは分からないが、パッと見、200万円前後のクルマに見えるのでは。後席もスイフトなどのBセグ車より明らかに広い。

パワートレインは1.2L自然吸気も1.0Lターボも、どちらもいい。マイルドハイブリッドどころかアイドリングストップも付かない、言ってみれば「非エコ仕様」だが、セッティングが海外基準のせいか、1.0Lターボはもちろん、1.2Lもよく走るし、その割に実用燃費もいい。

この車両価格にして、ミリ波レーダー式の自動ブレーキとクルーズコントロール(ACC)が標準装備されること。購入予算は抑えたいが、ACCは絶対欲しいという長距離ドライバーにとっては有力な選択肢。

それらトータルに考えて、インド製というネガが何も感じられないこと。

ここがダメ

やや大きめのロードノイズ。平板なリアシート。メッキのドアハンドル

本文でも触れたが、ゴロゴロとしたロードノイズは気になる部分。そこも欧州車っぽいと言えばそうだが、エンジン等は静かなので、ちょっと目立ってしまう感じ。タイヤを替えて試してみたいところ。

後席はスペースは十分だし、全高が低いわりに乗降性も悪くないが、シート形状が平板なこと。おそらく、5人フル乗車(後席3人掛け)を想定したものだと思うが、インドでは上級モデルとして販売されるというし、日本でも1.5Lクラスと競合すると思うので、少なくとも日本向けは後席2人掛け重視でも良かったと思う。

内外装デザインは悪くないが、メッキのアウタードアハンドルやリアゲート加飾は、このクルマには似合わないし、普通に同色の方が良かった。上級グレードのメーター内には、カラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイが備わるが、その表示切替はメーターから突き出ている棒を押して操作する古臭いタイプ。これはステアリングスイッチにしないと宝の持ち腐れだろう。

総合評価

今や物質世界で大躍進

古い話で恐縮だが、インドというと、ザ・ビートルズを思い出してしまう。1960年代後半、ヒッピー文化が蔓延する中、ビートルズも精神修行にインドへ旅立った。西洋から見れば、東洋のインドはブッダ生誕の地であり、神秘の国だった。ヨーガによる瞑想で悟りを開くために、髪と髭を伸ばした4人が導師マハリシ・ヨギの元へ向かった。ポールとリンゴは流行りに乗っただけのようだったが、ジョンやジョージはそれにハマった。そしてそれは哲学的でユニークな音楽作りに反映された。

それ以降、日本でも多くの若者がインドを目指して旅立った。実際に友人の中には、ほんの数週間だけの滞在だった人から何年も住んだ人までいるのだが、日本とは異なる悠久の時の流れを体感した彼らは、日本に帰ってからは皆、社会的にちょっと難しい人生となった。いやそういう人だったからこそインドを目指したのかもしれないが。

かつてはそんな神秘の国だったインドも、今や中国に迫る、いや中国以上の可能性を秘めた自動車市場として注目されている。人口は中国より8000万人ほど少ないだけの約13億人。自動車業界の調査会社フォーインによれば、2015年には世界第5位の自動車市場になっており、2025年までには日本やドイツを抜いて世界第3位に浮上することが確実視されるという。その時の生産台数は、現在の400万台が800万台に倍増。インドは今、精神世界ではなく、物質世界の方で大躍進を遂げているのだ。

「欧州車感」がハンパない

スズキはそんなインドの自動車市場で約38%(2015年)という圧倒的な販売シェアを持つ。ジャガーやランドローバーを傘下に持つタタですらが約12%。ホンダやトヨタ、ルノーはそれぞれ5%にも満たない。ヒッピーくずれが精神世界に憧れてインドに渡っていた1980年代はじめ、同年代のスズキ社員は企業戦士としてインドに渡り、日本的努力の結果、今の状況を作り上げた、ということだろう。

そして今回ついにインドで作られたスズキの小型車バレーノが日本で売られることになった。小型車の強化を国内外で進めているスズキの世界戦略車だが、ぱっと見は、さほど目を引くデザインではない。しかし、じっくり見ればよくまとまっており、何より4m未満のボディに3ナンバーのボディ幅が、今までにない存在感を醸し出している。小さなクルマには見えない。

そして、かつてのアメリカ製、タイ製の日本車については品質に課題があると思った我々だが(過去の試乗記をご参照いただきたい)、果たしてインド製の日本車はどうかと試乗してみると…、乗った瞬間から「これは欧州車だな」と思った。品質面は全くと言っていいくらい問題がない。アウタードアハンドルのクロームメッキの質感、クラシックなワイパーブレード形状にはちょっと古臭さを感じたが、それ以外は小型車として気になる部分はなかった。むろん高級感といったものはないが。何より乗った時の印象では、スズキのハンガリー製モデルにも通じる「欧州車感」がハンパなかった。硬めの乗り心地、シャキッとしたハンドリング、リニアな加速感、これらはまるで欧州車のようとしか言いようがない。日本車とは明らかに違う、我々のような欧州車好きにとっては気持ちのいいものゆえ、これはちょっと欲しいかも、というクルマだった。

モード燃費との乖離が少ない

走りがいいクルマは燃費が悪くなりがちだが、今回試乗した限り、燃費は想像に反してよかった。ハイブリッド車ほどいいわけではないが、この走りの良さを思えば満足できるものだ。そして何より、モード燃費との乖離が少ないのも欧州車ぽい。ちょうど今週、スズキでも「国の規定と異なる方法で燃費のもとになるデータを測定していた」ことが発覚したのは残念至極だが、三菱の問題が出た時、他でもあるのではと思っただけに、やはりという気持ちでもある。

クルマの良し悪しはなかなか言葉では説明しにくい。と言って、試乗してもそう簡単に分かるわけでもない。そのためセールスプロモーションでは、一見して比較できるモード燃費のような数値至上主義になってしまいがちだ。実態にそぐわないモード燃費で云々するより、別の部分で競うようにならないと、と昔から書いてきたが、それが奇しくも、ここに至って問題化したように思う。特に日本の社会は数値競争が大好きなので、その弊害もあるようにも思える。

バレーノも今回の問題の対象車種だが、マスメディアには、その対象車種のモード燃費と実燃費がこんなに近いことを、この一連の報道の中でネタにしてもらいたいものだ。「モード燃費競争の弊害と実燃費との開き」といったテーマで。そうして今回の問題が、業界への向かい風でなく、ユーザーが総合的にクルマの良さを判断できるようになるための追い風へと変化することを期待したいのだが。

精神世界が現実世界を動かす

三菱の問題では、ある意味、見事に日産・ルノーが三菱を買収という決着となった。こうなると気になるのはスズキの動向だ。人口13億人の巨大なインド市場で圧倒的に強いスズキが、VWと切れた今後、どこと組むのかは自動車業界で最も注目されるところだが、今回の問題を受けて、もし日産・ルノー・三菱にスズキが加わったりすると、なかなかすごいことになる。ルノーは日産と合わせてもインド市場のシェアは5%いかないが、スズキと組めば市場の半分近くを一気に押さえることになる。また世界市場でもスズキの288万台を加えれば1250万台にもなり、一気に圧倒的な世界一の座に躍り出る。もちろん日本国内でも、スズキの軽自動車を日産や三菱に供給すれば、各社にとってメリットは大きいだろう。インターネットでは今回の件で様々な陰謀論が渦巻いているが、ゴーン氏の頭の中にはそんなシナリオもないわけでもないのでは、などと思ってしまう。

一人の人間の頭の中にあることが、現実の世界を動かしていく。精神世界が現実世界を引っ張るなんてのは、インド哲学の話かと思っていたが、現実世界は案外そんなものなのかもしれない。

 

試乗車スペック
スズキ バレーノ XG
(1.2L直4・CVT・141万4800円~)

●初年度登録:2016年3月
●形式:DBA-WB32S
●全長3995mm×全幅1745mm×全高1470mm
●ホイールベース:2520mm
●最低地上高:120mm
●最小回転半径:4.9m
●車重(車検証記載値):910kg(570+340)
●乗車定員:5名

●エンジン型式:K12C
●排気量:1242cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:73.0×74.2mm
●圧縮比:12.5
●最高出力:67kW(91ps)/6000rpm
●最大トルク:118Nm (12.0kgm)/4400rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●使用燃料:レギュラーガソリン
●燃料タンク容量:37L

●トランスミッション:副変速機付CVT(無段変速機)
●JC08モード燃費:24.6km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):トーションビーム+コイルスプリング
●タイヤ:175/65R15 (Brdigestone Ecopia EP150 ※Made in India)

●試乗車価格(概算):-円
※オプション:、ナビゲーションシステム(販売店オプション) -円

●ボディカラー:プレミアムシルバーメタリック3
●試乗距離:約100km

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試乗車スペック
スズキ バレーノ XT セットオプション装着車
(1.0L直3ターボ・6AT・172万8000円)

●初年度登録:2016年3月
●形式:DBA-WB42S
●全長3995mm×全幅1745mm×全高1470mm
●ホイールベース:2520mm
●最低地上高:120mm
●最小回転半径:4.9m
●車重(車検証記載値):950kg(610+340)
●乗車定員:5名

●エンジン型式:K10C
●排気量:996cc
●エンジン種類:直列3気筒DOHC・4バルブ・直噴ターボ・横置
●ボア×ストローク:73.0×79.4mm
●圧縮比:10.0
●最高出力:82kW(111ps)/5500rpm
●最大トルク:160Nm (16.3kgm)/1500-4000rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●使用燃料:プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:37L

●トランスミッション:6速AT
●JC08モード燃費:20.0km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):トーションビーム+コイルスプリング
●タイヤ:185/55R16 (Bridgestone Ecopia EP150 ※Made in India)

●試乗車価格(概算):-円
※オプション:セットオプション(本革シート表皮、フロントマルチリフレクターハロゲンフォグランプ、マルチインフォメーションディスプレイ、ステアリングオーディオスイッチ、助手席シートヒーター、フロントセンターアームレスト、センターコンソールボックス、リアセンターコンソールトレー) 11万0160円、ナビゲーションシステム(販売店オプション) -円

●ボディカラー:ファイヤーレッド
●試乗距離:約100km

●試乗日:2016年5月
●車両協力:スズキ株式会社

 
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