キャラクター&開発コンセプト
去る11月3日に幕を閉じた東京モーターショーで初披露されたバサラは、プレサージュの兄弟車。すなわちオデッセイ、シャリオグランディスなどの強豪が揃うステーションワゴン型の3ナンバーミニバンだ。
車種リストラが迫られている日産がこの時期になぜいまさら追加車種を、という感がないわけでもないが、好調のプレサージュを取り扱っていないレッドステージ(サティオ・サニー店、プリンス店)への配慮と思えば、それも納得できるところ。
「バサラ」。この名前は日本語の「婆娑羅」からとったもので、「ダイアモンド」という意味があるそうな。そのダイナミックで輝くような存在感を表現したのが新型車バサラというわけだ。開発テーマは英語の「ダンディミニバン」=「洒落たミニバン」である。なんだか説明がゴチャゴチャしてしまったが、結局は「プレサージュのやや上級仕様」といってもいいだろう。走りを主張する上級ミニバンとして登場したプレサージュに、セド/グロからの乗り換えにも対応できる高級感をより演出した上級ミニバンだ。
乗員人数は2-2-3の7人乗りを基本に、2列目が3人となる8人乗り仕様が選べるというのが最大のアピールポイント(もちろんプレサージュにも8人乗り仕様はある)。フロアは完全フラットだ。
エンジンは車格に似合ったリッターV6を筆頭に、販売の中心となる2.4l直4。そして直噴ディーゼルターボの2.5l直4。計3本立てで、ギアボックスは全車コラム式4ATだ。
価格帯&グレード展開
価格は全グレード、プレサージュの2万円高で231~315.8万円。競合車に比べやや割高か
3つのエンジン全てに「X」と「V」グレードが用意される。「X」は「V」に対して、オートライト、スーパーサウンドシステム+6スピーカー、ファインビジョンメーターなどが追加される他、内装地も変更される。その価格差30万円だから、「X」グレードの買い得感は小さい。なお、3リッターモデルは2.4リッターモデルの40万円高。2.5リッターディーゼルは2.4リッターモデルの15万円高だ。4WDは2.4リッターモデルと2.5リッターディーゼルモデルに用意される。
ライバルはシャリオグランディス(212.5~345.8万円)、オデッセイ(199.5~294.5万円)、MPV(206~258.9万円)。バサラは装備が充実しているだけに、価格はちょっと高め。
パッケージング&スタイル
日本語名、縦グリルが自慢。プレサージュの皮を代えただけの上級ミニバン
ベースとなったのはプレサージュ。フロントフェンダーから先の部分が代えられている。ちなみにプレサージュのベースとなったのはルネッサだ。バサラのボディサイズは全長4795mm×全幅1770mm×全高1720mmで、フロント、リアの大型バンパーの採用によりプレサージュより全長は20mm長くなっている。ホイールベースは当然ながらプレサージュ、ルネッサと同じ2800mmだ。
外観デザインでポイントとなるのは、縦基調の大型グリルだ。クロームメッキ処理により存在感を強調している。ちなみにエアロ仕様の「AXIS(アクシス)」ではこの自慢の縦型グリルは、横基調のビレットグリルに変更される……。
テールランプもフロントグリル同様に縦基調に仕上げられている。フロント/リアドアパネルとリアフェンダーパネルはプレサージュと共用となるものの、全体的にはオーソドックスなスクエアなデザインで、プレサージュとは見た目の印象が大きく異なる。ちょっと丸くなった感じだ。サイドシルプロテクターが標準装備されているので、腰高感も払拭されている。しかし、新鮮さはなく、むしろプレサージュよりも古く見える。妙にクネクネとデザインされる傾向が強い現在、この中途半端な懐古的デザインを嫌味がなくて支持する人もいるとおもうが、日産が主張するほど高級感や個性は感じられない。
多彩なシートアレンジから対座モードは消滅。フロアの高さが居住性を犠牲にしている。
インテリアも基本的にプレサージュと同じだ。ただ、グレー基調の内装色は専用品でスポーティーな上質感を与えている。また、シートデザインも専用でXグレードのシートはシート両脇に合成革が採用される。
シート配置は2-2-3の7人乗りで、オプションで2列目がベンチタイプの3人掛けとなる8人仕様が用意される。実はこの8人乗りというのが最大のウリで、このタイプのミニバンでは3列目は後輪ハウスの出っ張り上、2人乗りというのが一般的だった。バサラ(つまりプレサージュ)は高いフロアを採用しているために、後輪ハウスの出っ張りがなくなり、3人乗りを実現しているのである。実際、大人3人が乗るには窮屈でも、法的には問題ないというのは、1BOXミニバンからの乗り換え層に対して大きなセールスポイントなるはずだ。
プレサージュでクラス初となったフロントシート回転対座モードは姿を消している。それでも2/3列目シートのシートアレンジの多彩さはプレサージュを受け継いでいる。が、それが裏目となって開放的な雰囲気を損なっているのもまた確か。プレサージュでも指摘されているフロアの高さで乗降性が悪く、後席用にはステップがつくものの、中途半端。また、室内も上下方向の圧迫感があることは否めない。2/3列目シートの着座ポイントが床に対して不足しているために、膝あたりが落ち着かないのというのも大いに不満。ボディが大きいので、それなりの広さは確保しているものの、あまり効率的なパッケージングではないようだ。
基本性能&ドライブフィール
ニーズに応じた3種類のエンジン
エンジンラインナップもプレサージュと同じ。上級ミニバンというキャラクターに最も相応しい3リッターV6エンジンは最高出力220PS/6400rpm、最大トルク28.5Kgm/4400rpmで、LEV対応となる。プレサージュでは全体の7割を占め主力となる2.4リッター直4は、最高出力150PS/5600rpm、最大トルク22.0Kgm/4400rpm。
ディーゼルは定評のある直噴2.5リッター直4ディーゼルターボ「NEO Di」だ。最高出力150PS/4000rpm、最大トルク28.5Kgm/1800rpmを発生し、エンジン性能曲線を見る限りは、非常に扱いやすそうな、理想的な特性を得ている。
足回りはセフィーロ(もちろんプレサージュ)と同じ形式で、前がマクファーソンストラット。リアはリーフスプリング式のマルチリンクビームを採用。4WDのリアは独立懸架のマルチリンクとなる。タイヤは最もスポーティーなもので215/60R16(プレサージュは215/65R15)という、ミニバンとしては立派なものが奢られる。
2.4リッターでもパワー的には問題なし
試乗したのは2.4リッター直4ガソリン車。2.4リッターといえばシャリオグランディスが対抗馬となるが、残念ながらバサラのエンジンスペックは最高出力で15馬力、最大トルクで1.5Kgmともにグランディスに劣っている。その発生回転もバサラは高回転よりになっており、車重も100kgほど重い。ここまで差があれば、2車の走りの勝負はいうまでもないだろう。それでも、比較しない限りはバサラでもさほど非力さを覚えることなく走らせることができる。アクセルの反応はよく、径が小さく、グリップ部分が太いステアリングはスポーティーな気分にさせてくれる。ステアリングの追従性は乗用セダンとまではいかないもののミニバンの中ではいい方で、太いタイヤの踏ん張りがいいので、ロールを気にすることなく、コーナーを軽快に抜けられる。
しかし車格を考えれば、若干ざわつく4気筒のエンジンフィールは高級ミニバンの領域には至っていないのも確か。やはり3lV6(40万円高)こそが、このクルマには相応しいだろう。
剛性の高さが感じられる反面、突き上げの当たりが硬いのが気になった。リアサスのおさまりが良くないようで、特に後席の乗員はそれがはっきり伝わってくるだけに、快適な乗り心地とは言い難い。もう少し乗り込めば、多少マイルドになるかもしれないが(借用した試乗車の走行距離100kmと、バリバリ新車状態だった)。高速では硬めの足が功を奏して、ビシッとした直進性があり、スポーティーともいえる走り心地となる。エンジンは4気筒らしい鼓動感があり、2リッタークラスのスポーティカーのような元気の良さをみせるため、ついついアクセルを開けがちになる。100km/h以上のからの加速もそれなりにしていくし、150km/hあたりの巡航はエンジンが良く回っている実感があって心地よかった。このクルマ、高速巡航はオススメです。
ここがイイ
過不足のない、無難な上級ミニバン。良く走り、使い勝手も悪くないし、ルックスにはそれなりの個性もある。8人乗り仕様が用意されているので、セレナやラルゴに乗っていた人も、乗り換え時に悩まなくてすむ。そして乗り換えた後は、8人乗りなのに何て乗用車的で快適なんだ、と感動するはず。そうした人が日本中に何万人もいるので、このクルマは存在の意義がある。
ここがダメ
競合車が多い中、8人乗りということ以外、あまり強力なウリがないこと。ベースは2年前のクルマだから、仕方ないところだが。価格的にもV6を選ぶと魅力に欠ける。
革風のビニール素材も革でないことが見破れてしまう。ジャガーあたりはその辺が上手くて、なかなか見破れないのだが。結局「ウチにもオデッセイ対抗車が欲しい」という営業サイドのために作られた、と思えてしまうものツライ。
総合評価
高級セダンからの乗り換えでも不満のない高級感の演出、1BOXミニバンからの乗り換えでも不満のない8人乗り仕様の設定。この狙いは確かに評価できる。ミニバンユーザーは乗用車ユーザーほどエンスーがいないはずなので、これでも十分満足してくれるだろう。しかし、高級感のアピールは完全にハズしているような感じがしてならない。プレサージュをチョコチョコとイジッて、フィニッシュは派手なグリル、ハイ、高級ミニバンの一丁上がりというのは…あまりにも安易では。本来なら、次期オデッセイに対抗しなければならないのに。これが日産リバイバルプランの第1弾とは思いたくない。むしろ、バサラは旧体制日産の最期の一台なのかもしれない。
公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/