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新車試乗記 第112回 トヨタ bB Toyota bB

 

日時: 2000年02月25日

 

キャラクター&開発コンセプト

車名からして脱トヨタ。ストリート系の若者にドンピシャ! トヨタ初のワル仕様

新世代コンパクトカーと銘打った世界戦略車、ヴィッツとその派生車種ファンカーゴ、プラッツ、WiLL Viに続く5番目のモデルとなったbBは、ターゲットをトヨタが苦手としてきた20代独身男性に特化させ、これまでのトヨタ車にはない新しいデザインで勝負するミニ・ミニバンだ。

車名、bBの由来は「ブラックボックス」の頭文字。つまり「未知の可能性を秘めた箱」。それをビービーとお気楽によぶのが今までのトヨタと違うところだ。一目で分かる存在感あるトールボックスデザインと若者の様々な使い方をサポートできる広くて快適な室内空間を特徴とする新コンパクトカーである。

開発テーマは次の3つ。
1. 他人とは違う、自分の個性を強く主張できる、存在感あるコンパクトサイズのクルマで、好みに合わせてカスタマイズしやすいクルマにすること。
2. 趣味の遊び道具を積める、広く使いやすい空間を持つクルマとすること。
3. 若者が買うことができる価格に抑えたクルマにすること。

価格帯&グレード展開

価格帯は1.3リッター車が129.8~141.8万円、1.5リッター車が145.8~173.8万円

エンジンは1.3リッターと1.5リッターの2種類で、FFのほか、後者は4WDも選択できる。

グレードはベーシックな「S」とリモコンドアロック、電動格納式ドアミラー、フォグランプを追加した「Z」が基本で、それぞれにアルミホイール、エアロパーツ、プライバシーガラス、本革ステアリングなどをセットで標準装備とした「Xバージョン」を12万円高で用意する。1.3リッターモデルは「S(129.8万円)」と「S Xバーション(141.8万円)」を、1.5リッターモデルは「Z(145.8万円)」と「Z Xバーション(157.8万円)」を、そして4WDモデルは全グレード(FF車の約20万円高)を選択できる。

1.3リッターの「S」と1.5リッター「Z」の価格差は16万円。「S」を購入して浮いた予算でドレスアップを、という手もあるが、排気量と装備の違いからみても、この16万円の価格差なら絶対「Z」が買い。内容を考えると安い印象は確かにある。

メーカーはライバル不在というが、bBが属する1~1.5リッタークラスのハイトワゴン・クラスに目を向ければ、やはり日産・キューブ(114.8~165.6万円)が筆頭となるだろう。イメージ的にはホンダ・S-MX(169.8~199.8万円)、日産・ラシーン(169.7~217.8万円)もライバルとなるのかもしれない。しかしこのあたりと比較してもbBの優位性ばかりが目立つ。

パッケージング&スタイル

ファンカーゴをベースに、若い男性の価値観だけで仕上げた

ヴィッツのホイールベースを130mm伸ばしたファンカーゴをベースとしたbBのボディサイズは全長3825mm×全幅1690mm×全高1640mmと、ファンカーゴよりも+30mmの全幅以外はやや小さくなっている。しかし、実車を目の前にするとそれ以上のサイズ感があることにちょっと驚かされる。

プレスラインや余分な膨らみを排したシンプルな面構成を持ったスクエアなボディは、ホントに四角い箱といったのシンプルなカタチ。この手のクルマはどうしても背がヒョロッと高い感じになりがちだが、bBはワイド感のほうが強調されているのも特徴であり、キューブとは比較にならないくらいにバランスがとれている。GMのアストロ似でもあり、はなからシャコタン風。グリルはビレット風、しかもテールランプは巷で非難されているクリアレンズ。ここまでやれば茶髪、ロン毛のアンちゃんでも、文句ないっしょ。

ナンパムード、ムンムン、下心丸見えのこのデザイン。トヨタ、ここまでやるか! といった感じだ。そういえばこの手のデザインって日産のお家芸じゃなかったっけ。

オキテ破りの先行デビュー。トヨタはドレスアップ市場も食う

bBは20代男性の獲得のためにドレスアップ市場への参入も本気だ。そもそも、bBをシンプルなカタチにしたのは、メーカー自ら「ドレスアップが前提。ユーザーが好きなようにドレスアップして、自己表現のベースにして下さい」と主張するため。デザイン担当者もノリの良さそうな30代若手。しかもその中にはロン毛、ノーネクタイの人もいて、「好き勝手にやらせてもらった」のこと。

そして極め付けは、正式発表を前にドレスアップの祭典「東京オートサロン」で、カスタマイズモデルを先行出展させたことだろう。これはユーザーだけでなく業界関係者も驚いた。盛り上がるアフターパーツマーケットも巻き込む(というか取り込む)、手加減なしのトヨタの展開。もはやアフターパーツメーカーもうかうかしていられない。

ちなみに記者発表会でも詳しい車両紹介はせず、TVCMみたいなビデオが流れただけ。これは確かに型破りだ。

ドドーンと見事な一眼メーターを採用する、断崖絶壁調のインパネ

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室内も外観同様シンプルなもので、大型アームレスト付きのベンチ風シートにコラムシフトを採用する。住宅の梁をイメージした断崖絶壁調のインパネは、曲線を多用したヴィッツ兄弟とは一線を画すもので、なかでも印象的なのが、インパネ上面中央よりやや右寄りにチョコンと配置した圧力ゲージ風の丸型メーター(速度計、回転計、燃料計)、いわゆる一眼センターメーターだ。  また、ナビの配置はお約束の最上部で、助手席側にはペットボトルや携帯電話を置くのに便利な大型ポケットも用意するなど、使い勝手にも優れる。どうせ白色のムートンを被せてしまうのだから関係ない? が、黒基調のため質感も良い。天井に貼られた新しい内装材の肌触りの良さも印象的だった。なお、ステアリングコラム前方にあるトレイは意味不明。後席用ドリンクホルダーがないのが唯一の不満点。

最高のパッケージングは、デザイン重視の産物

ボクシースタイルを活かした居住空間は、長さ1965mm×幅1375mm×高さ1355mmと、すべての数値でファンカーゴを上回る広さを確保する。特に後席の広さは足を余裕で組めるほどで、コンパクトカーの域を超えている。プラッツと違って床下収納という小細工もしていないので、まともに座れるのも評価に値するところ。

ラゲッジの広さも文句なし。後席が6:4分割可倒式となるほか、ヘッドレストを付けたままダブルフォールディングできるので、スノーボード、マウンテンバイクなど楽に収納できる広大な荷室も作れる。

全方向見切りの良さ、横方向の開放感、驚異的な広さの後席と荷室、どれをとてもヴィッツ兄弟No.1。繰り返すが、これが好き勝手にデザインした結果の産物なのだ。これでいいじゃん、である。

基本性能&ドライブフィール

加速性能はファンカーゴと同じだが、重厚感ある乗り心地

搭載するエンジンは2種類。ともにファンカーゴに搭載されているもので、1.5リッター直4エンジンは最高出力110PS/6000rpm、最大トルク14.6kgm/4200rpmを発生(4WDはそれぞれ105PS、14.1kgmとなる)。1.3リッター直4エンジンは1.5リッターをベースにショートストロークにしたもので、88PS/6000rpm、12.5kgm/4400rpmを発生する。

両エンジンに組み合わせられるギアボックスは動力伝達効率を高めたスーパーECTの4速ATだ。また、1.5リッターに設定する4WD車は、通常はFFに近いトルク配分を、滑りやすい路面やコーナリング時には後輪にも最適なトルク配分を行う、フレックスフルタイム4WDシステムを採用する。

足回りも基本的な構造はファンカーゴと同様だが、外観の見栄えを良くするために、1インチサイズアップした185/65R15インチのタイヤを履く。

試乗したのは1.5リッターのFF車。最高出力、最大トルクだけでなく、車両重量もファンカーゴと同じなので、加速性能はほぼ同じと考えていいだろう。たっぷりとしたトルクでどんなシチュエーションにもっていっても不満はない。ただ、ステアリングが若干重めにセッティングしてあり、ワイドなタイヤからくる安定感からか、ガッチリとした剛性の高さはbBのほうがわずかに上回っている感じ。また、排気音にもこだわったというだけあって、力強さも助長しているようだ。少なくともヴィッツやWiLL Viのようなマイルドな感じはしない。別物だ。

ファンカーゴとの差が最も大きいのが乗り心地だ。ファンカーゴはリアからの突き上げが尖っていたが、それを上手く収めており、硬くても嫌味ではない。それでも段差を乗り越えた後の、揺れが一発で収まらないのは治っておらず、よほど整備された平らな道路を走らない限り、終始ユラユラした揺れを伴うことも確か。不快感というほどでもないが、決して快適とは言い難いものだ。しかしこれ、シャコタン風の味ともいえ、個性なのかもしれない。

コーナリングの安定度もステアリングを重めに、そして足回りを固めているために、ミニバンタイプとしてはトップレベルと太鼓判をおせるもの。

静粛性も合格レベル。いや、このクルマを買う層を考えれば物足りないといったほうが適切なのかもしれない。ちなみにメーカー側は「もっと迫力ある排気音が欲しければ、アフターものを買って下さい」のこと。一昔前では考えられなかったコメントである。

高速巡航では120km/hはあたりまえ、ぐんぐんスピードを乗せ150km/hに達しても安定性、直進性は揺るがない。アクセルを踏めばキックダウンしてさらに加速する。ここでもややシャコタン的な上下動があるが、不快なものではなく風切り音も小さくはないが、ひどく気になりもしなかった。このサイズ、このボディでこの巡航性能は高く評価できる。

今回900kmほど試乗したが、実燃費は11km/lとなった。かなりエンジンは回しているし、高速の他、渋滞の市街地も走った結果この燃費なら、悪くないと思う。ただ、ベンチ風のシートはさすがにサポート性も、座り心地もイマイチで、長時間乗りたいタイプではなかった。まあ悪いシートではないので、街乗り優先ならこれで十分。フルフラットになるベンチシートの使用目的(???)が優る。もちろんコラムシフト、足踏みパーキングブレーキだ。

ここがイイ

ボンネットが長くなりがちなのを、見事に抑え、幅も広く見える。デザインはこのサイズで良くもここまでやったものだと感心する。会社の上層部が勝手にやらせてくれたからできたデザインだ。若い人に任せられるトヨタという会社の懐の深さが表れた結果だろう。しかもアフターパーツマーケットまでを視野に入れた新車開発は、おそらくこれが初めてのはず。メーカーは素材としてのクルマを売り、ユーザーが好みで仕上げることができるという幸せな時代がついにやってきた。

ここがダメ

しかし、いいと思えるクルマがこうトヨタばかりから登場することには、一種の危惧を覚えないではない。若者や若い女性にまでトヨタ車が浸透すると、年末にはシェア50%も考えられない話ではない。そして今回のオートサロン出展車が示すように、アフターパーツメーカーですらがどんどんトヨタに取り込まれていっている。「クルマはトヨタ」という時代が目前に迫っているのだ。そしてトヨタがこういう評価できるクルマを作っているうちはいいが、圧倒的シェアのまま、かつてのようにつまらないクルマばかりを作り始めたら…。杞憂で終わることを祈るばかりだ。

総合評価

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若者向けのクルマ、で片づけられないものをこのクルマは持っている。スペースユーティリティ、走り、燃費など、小型車としてはある種、理想のクルマではないか。乗っていてあるクルマを思い出した。それは昭和40年代にあった名車ホンダステップバン。あのクルマは軽だったが、その理想的パッケージングが後に高く評価されたクルマだ。bBはよく見ればそっくり。4枚ドアもシートアレンジも、センターメーターも、テーブルみたいに使えるダッシュボードも(駐車時にここに小さなパソコンを置くと大変使いやすかった)。当時ステップバンが欲しかった青年(今はオジサン)ならこのクルマにピンとくるはず。若者のためのクルマではあるが、そうした需要が一巡したら、渋めのオジサン仕様も出して欲しいところだ。いや、買って自分で作ればいいか。

 

公式サイトhttp://toyota.jp/

 
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