新車試乗記 第401回 トヨタ bB 1.5Z Q バージョン Toyota bB 1.5Z "Q Version"

(1.5リッター・4AT・170万1000円)


日時: 2006年02月04日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    「クルマ型Music Player」

    初代bBは2000年2月にデビュー。当初は若者をターゲットにしたクルマだったが、実際にはシンプルなデザインや使い勝手の良さで年齢層を選ばない人気車に。北米では2003年からサイオンxBとしてヒットするというオマケまで付いた。

    その勢いに乗るかのように、およそ6年ぶりの2005年12月26日にフルモデルチェンジした2代目bBは、さらに大胆なコンセプトで開発された。開発テーマは「クルマ型Music Player」。「音楽を楽しむための室内空間を第一に追求した」と市販車ではっきり謳った例はこれまでになかったはず。キーワードは「音・光・まったり」だ。

    先代はヴィッツベースだったが、新型はパッソ/ブーンベース。よって開発にはダイハツがかなり絡んでおり、生産も同社で行われる。販売目標は月間5000台で、とりあえず投入は国内のみ。北米では現行xBが継続販売され、次期xBが出るとすれば専用開発となりそうだ。

    価格帯&グレード展開

    看板モデルは170万1000円

    1.3 と1.5リッターがあり、価格は134万4000円~184万8000円(4WD含む)。看板モデルは、専用開発のオーディオやイルミネーション標準装備のトップグレード「Z "Qバージョン"」(170万1000円)。オーディオにこだわるクルマゆえ、他のグレードは全てヘッドユニットレスとなる。

    パッケージング&スタイル

    「箱」からホットロッド風に

    試乗したQバージョンのボディサイズは全長3800(その他は3785)mm×全幅1690mm×全高1635mm。シャシーはパッソだが、ホイールベースは100mm伸ばされて2540mm(先代比+40mm)。ど派手なボディ塗色はテーマカラーでもあるイエローグリーンマイカメタリック。

    「妖(あや)しさ」「いかつさ」を表現したというエクステリアは、初代bBで徹底していた水平基調をほとんど止めて、前から後ろにニ次曲線的に上がるラインを強調。フロントはボンネット/フェンダー高が上がって、その分フロントウインドウの天地が狭まり、結果として日本では馴染みのないホットロッド風になった。その点ではクライスラーのPTクルーザーに近い。

    ボディパネルは初代のまっ平らから、凹状に抑揚したものへと変化。特にリアは三次曲面とプレスラインが交錯する複雑なものになった。比べてみると、初代の面影はルーフラインやヘッドライト周辺にしか残っていない。

    9スピーカーと明滅するイルミネーション

    昼間見ると割とフツーなインパネ。ダクトスピーカー風のダッシュボードやスピーカーに見立てた空調吹き出し口がユニークだ。センターコンソール下に、i-Podなど携帯オーディオ機器の入力端子を備える。

    Q バージョンは、高音を受け持つツイーターをフロントピラーに2個、インパネに2個、フロントドアスピーカーを2個、サブウーハーをフロントセンターコンソールに1個、ダクトスピーカーをリアCピラーに2個と、合計9スピーカーを標準装備。夜になるとブルーのイルミネーションが明滅する妖しい空間に変身。 5つのスピーカーリング部のLEDが音圧や周波数に反応してブルーに明滅。ドリンクホルダーなど6ヵ所も光る。

    基本的には停止時に楽しむもので、シフトレバーをPから動かすと減光し、インパネ部のスピーカーは消灯する。それでも夜間の走行中は光が気になるが、もちろんすべて消灯することも可能だ。晴れた日の昼間はほとんど分からない。

    「まったり」するまでが大変

    もう一つの特徴である「まったり」モードは、シート座面を80mmスライドダウンさせた状態のこと。ところがこの操作が難しい。まず、シートを最後端まで確実に下げる(これをまず忘れてしまう)。そして膝下の操作レバーを、その横のロックを解除しながら操作して体重を掛ける‥‥と、シートが下がるはずなのだが、これがなかなかうまくいかない。「まったり」するのも、これではたいへんだ。

    で、実際に「まったり」してみると、今度は車高が低くて誰かに上から覗き込まれそうなのが気になった。そもそも最近の物騒な世相では、まったりする場所も考えもの。また、寝転がったままアームレスト部のコントローラーでボリュームやソース・曲の選択、イルミネーションの調整は出来るのはいいが、イコライジングなどの音場調整が出来ないのはぜったい不便。それこそ音楽を聴く場所で調整したいところ。

    ルームライトはピンスポだけ

    座面が高く、フットルームも十分な後席。ただ、こちらには明滅する照明もなく、何となく前席との「温度差」を感じてしまう。前にカップル、後ろに一人というシチュエーションは避けたい。また、ルームライトが運転席/助手席上の可動式ピンスポットしかないのは困った。しかもこれが暗い。さらに、オプションにすらルームライトが無いのはなぜ?

    ダクトスピーカーがCピラーについた荷室スペース。後席シートバックの固定金具は、パッソと同じだ。ここに積みたいのは、やはり巨大なスピーカーボックスとアンプだろう。

    基本性能&ドライブフィール

    小気味いい走り

    試乗車は「音・光」を全て備える看板グレードのQバージョン。1.5リッターエンジンはトヨタ車でおなじみの「1NZ-FE」ではなく、小型SUVのビーゴ /ラッシュも使う(あちらは縦置きだが)ダイハツ製「3SZ-VE」(109ps、14.4kg-m)。VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)付きのチェーンドライブ、超ロングストロークの新開発ユニットだ。

    このエンジンがなかなかいい。車重は1070kgとまずまず軽く、4人乗車で走り回っても力不足はまったく感じなかった。特に街乗りでは、小気味いい、という言葉がぴったりくる。このクラスでは今や少数派のトルコン4ATなのも一因かもしれない。

    街乗りでは十分、限界域はそれなり

    サスペンションはトヨタ車にしては固めで、最初はゴツゴツ感じたが、しばらくすると慣れてしまった。上級グレードのタイヤは185/55R15で、ローダウン風のキビキビ感が演出されている。トヨタの開発者自身、走りを売りにしたクルマじゃないと言っているが、街の中を走り回る限りは、なかなかいい。

    一方、いつものワインディングで限界を試すような走りをすると、ややナーバスな動きが出た。路面が荒れた場所では進路が少しチョロチョロするし、激しいコーナリングやブレーキングではオプションのVSC&TRCが割と早めに介入してくる。新型ヴィッツベースだったらこうした挙動は出なかったのでは、と想像するが、それも「ミュージックプレーヤー」には性能的にもコスト的にも過剰という判断か。

    100km/h 巡航時のエンジン回転数は2500回転あたり(針がどこを指しているか今ひとつ分かりにくいが)。リミッターに届くほど速度は伸びないが、静粛性はよく保たれている。今回は100kmほどの高速走行と何度もエンジン始動・ストップを繰り返す街乗りと撮影で合計約280kmを走行。満タン法による燃費はこうした条件で8.2km/Lだった。

    ここがイイ

    先代同様、街乗り最高。サイズ・広さ・ユーティリティ・動力性能など最も使いやすいタウンカーの座は先代から変わらず。ニュースリリースでは発売1ヶ月の初期受注が目標5000台に対し1万 2500台で、特記事項として「若年層のみならず、幅広い年齢層から好評を得ている」とある。これを見る限りでは、先代同様のタウンカーとしての評価は今のところ高いようだ。

    となると好き嫌いは別として、よくぞここまでやったというデザインは誉められるべき。ホットロッドあるいはチョップトップというイメージで、いわゆるアメリカンに見えるのだが、サイオンの次期xBもこのイメージで行くのだろうか。

    チューンナップならぬ、グレードアップしたくなる、そこそこのオーディオ性能。これでいいという人には文句なし。こだわるならベーシックなZグレードを買ってお好きにどうぞという割り切りが見えるグレード構成もいい。好みに仕立てられるという点は先代同様の良さだ。

    ここがダメ

    ホイールハウスの隙間が広い。このためインチアップしても貧相。ツライチにもしづらい。2㎝のローダウンサスが用意されているが、いかんともしがたいところ。またこの手の話をすると「チェーンのクリアランスが」という意見が出るが、これだけのデザインにしたのなら、ここは何とかしないと。

    まったりシートはやはり電動でないと。全車装着ゆえコストが上がり、価格に跳ね返るのを避けたのはわかるが、オーナーはともかく、そうじゃない人はまず自分で操作できないだろう。ドライバーが操作してあげる方がコミュニケーションが深まるというメリットはあるかもしれないが。また、ハイトアジャスターがトレードオフされたので、小柄なドライバーだともう少しシート高を上げたくても対応できない。

    イルミネーションの効果を出すためか、まともなルームランプがないこと。確かに「クラブ」に明るい照明は興ざめだが‥‥。スポットも電球で興ざめ。照度の問題があるらしいが、今時はやはりLEDじゃないと。

    最上級グレードでもエンジンがボタンスタートじゃないこと。新しいトヨタ車では、左手でボタンを探すのが常識かと思っていたが‥‥。カードキー仕様でも右手でイグニッション部分のノブを回さなければいけない。

    ソリッドオーディオ用のジャックは何とかならなかっただろうか。あるにはあるが、本当にあるだけ。i-Podなどが当たり前になってきた昨今、きちんと置けて、簡単につなげる方法は考慮すべき。ワイアレスでやるなど手はあるはず。また、このコンセプトなら窓用カーテン、外部監視カメラ、そしてゴミ箱も欲しくなる。

    右コーナーでミラーがけっこう視界のじゃま。デザイン上でちょうどそんな位置に来てしまったのだろう。

    総合評価

    クルマとして本来の機能じゃない部分、つまり「停まっている時」をはじめてウリにした歴史的クルマだ。自動車100年の歴史で画期的なことだと思う。街乗りやちょっとした遠出(通常、クルマはそれが大半の利用方法だが)といった走りには、もちろん最近のクルマは何ら不満などない。正直なところ、今や比較するのも無駄な気さえする。bBはベースがヴィッツからパッソに代わったが、そのトヨタ最小のパッソですら、もはや十分なクルマなので、bBは最初から走る止まるといった旧来のクルマの価値観を捨てて作られたといってもいかもしれない。

    そこで「音・光・まったり」を商品力としたわけで、このコンセプトは若者には十分届いているようだ。物心ついたときからAT・フル装の豪華車で育ってきた若者にとって、クルマは快適で速いのが当たり前。マニアックなクルマ好き以外には、どのクルマも同じような商品にしか見えない。そこで走りより停まっている時の利用法、変なカタチといったbBの商品力が魅力的に見えるのは理解できるところ。いよいよクルマは家電化してきたように思える。ポストモダンというか、ポストカーの時代に入った感がある。

    9年前にホンダS-MXという、ステップワゴンのショートホイールベース車が出たが、これなどベンチシートのコンセプトはほぼ同じで、ローダウン仕様もあるなど、サイズが大きい(全長150㎜、全幅5㎜、全高115㎜程度しか差はないが)以外は、かなりbBに近いクルマだった。宣伝コピーは「恋愛仕様」とストレート。見かけがミニバン風で大きく見えたことやあまりに露骨な「恋愛仕様」として打ち出されたため、今ひとつ人気が出なかったが、先代bBはこのクルマをかなり研究したと思われる。

    2代目bBはコンセプトからしてまさにS-MX。違っているのはbBの走りには不満が無いことで、この10年で走りがいかによくなったか、それによって走りというものが評価の対象ではなくなりつつあることがよくわかる。あとはサイズがたいして変わらないのにコンパクトを打ち出していること、そしてスタイリングの奇抜さ(S-MXは一見してショートなステップワゴンに過ぎなかった)で人目を引くことなど、今の時代にうまくあったコンセプトがS-MXとの大きな違いか。

    というご託を並べてみたが、現実的にはバッテリーが心配だ。オーディオのついたQバージョンには寒冷地仕様のバッテリーが載っているが、あまり調子に乗っているとバッテリーを上がらせてしまう可能性は高い。それを防ぐため、あるいはエアコンやヒーターを効くせるためにはアイドリングをするしかないわけで、時代に逆行しているようにも思われる。試乗時の燃費が意外に悪かったのはアイドリング時間が長かったことと無関係ではないだろう。

    6年前に、停まっているミニバンの室内をITオフィスとして使うというモバイルステップワゴンというクルマを提案して、なんとか発売までこぎ着けたデイズとしては、とうとう時代が追いついてきたという感が強い。その観点からbBを見ると、サブバッテリーやFFヒーター(エンジン停止時にも使えるヒーター)を搭載していないことは、すごく不足を感じるところだ。エンジンを停止していても使えるエアコンだって欲しい。

    つまりクルマは今後、機能が商品力になるだろう。bBはロック系の音を聴くにはいいオーディオを積んでいる。その意味では「リスニングルーム」と言うより「走るラジカセ」だ。だったらエンジン停止で空調ができるリスニングルーム搭載をウリにするクルマが出てきてもいいだろう。つまりクルマはもう完成してしまった商品ではない。こういう方向へならまだまだ進化させることができるわけだ。

    試乗車スペック
    トヨタ bB 1.5Z ゛Q バージョン"
    (1.5リッター・4AT・170万1000円)

    ●形式:DBA-QNC21●全長3800mm×全幅1690mm×全高1635mm●ホイールベース:2540mm●車重(車検証記載値): 1070kg(F:670+R:400)●乗車定員:5名●エンジン型式:3SZ-VE●1495cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置 ●109ps(80kW)/6000rpm、14.4kg-m (141Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/40L●10・15モード燃費:16.0km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)● タイヤ:185/55R15(YOKOHAMA ADVAN A-043)●試乗車価格:203万4900円(含むオプション:VSC&TRC 6万3000円、HDDナビ 27万900円)●試乗距離:280km ●試乗日:2006年1月

    公式サイト http://toyota.jp/bb/

     
       
       
       
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