新車試乗記 第398回 トヨタ ベルタ 1.0X Toyota Belta 1.0X

(1.0リッター・CVT・132万3000円)



日時: 2006年01月14日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    トヨタ最小セダン

    2005 年11月28日に発売されたベルタは、2代目ヴィッツがベースのトヨタ最小セダン。旧プラッツの後継車だが、初代ヴィッツにトランクを足しただけのそれとは異なり、ベルタのアウターパネルは全て専用品。実用性よりスタイリング重視となり、車名(イタリア語で「美しい、美しい人」)を一新して登場した。落ち着いた雰囲気の3ボックス車を好む層、特に女性がターゲットとされ、CMキャラクターには鈴木京香が起用されている。

    北米ではヤリスセダン

    国内の販売目標は3000台。生産を行う関東自動車工業・岩手工場の新ラインは年間10万台規模の生産が可能で、メインマーケットは海外となる。従来はセダン版のエコー(旧プラッツの海外名)のみ販売していた北米でも、06年春からはヤリス・リフトバック(ヴィッツ3ドア)と共に、ヤリスセダンとして発売される。

    価格帯&グレード展開

    特にビジネス仕様はない

    1 リッターと1.3リッターのみで、スタンダードな「X」と装備豊富な「G」の2グレード構成。15インチアルミ付きの「X“Sパッケージ”」もある。営業車を想定した簡素な仕様は特にない。価格は132万3000円~175万3500円(4WDを含む)で、販売主力は130万~150万円台だ。

    パッケージング&スタイル

    より低く、ロングホイールベースに

    ボディサイズは全長4300mm×全幅1690mm×全高1460mm。ライバルの日産ティーダ・ラティオ、ホンダ・フィットアリアとほぼ同サイズとなる。全高がヴィッツより60mmも低く、ライバル車と比べても低いなど、スタイリング重視の傾向。この点は、ルックスが良くないと売れない北米事情もあるだろう。

    見た目は確かにプラッツに比べて断然スタイリッシュになった。空力にも有利で、Cd値は0.29とヴィッツ(0.30)より優れる。おかげで後で触れるように室内空間はややタイトになった。

    目に見える部分はベルタ専用

    一見ヴィッツと共通のインテリアだが、低くなったヒップポイントに合わせて、目に見える部分はベルタ専用品。骨格自体は共通で、機能部品の位置関係もほぼ同じ。よってセンターメーターや縦長の空調パネルといった特徴的な部分も、ヴィッツとよく似てしまった。Aピラーがかなり寝ており、慣れるまで少々気になる。

    試乗車はベーシックグレードで、エアコンがマニュアルだったり、タコメーターが無かったりと簡素だが、上級グレードではスマートキーやオートエアコンが付く。小物入れは使いやすく、質感やシートの座り心地はまずまず。ヴィッツに比べてオーソドクスなデザインになっている。

    足元は+90mm、ヘッドルームはややタイト

    ヴィッツより90mm長い2550mmのホイールベースによって、フットルームを確保した後席。センタートンネルも目立たず、床は広々している。ヘッドレストは 2人分で、中央席のシートベルトは2点式。Cピラーや横の窓が絞り込まれており、ヘッドルームにはやや圧迫感がある。チャイルドシート用の固定器具が左右席に備わる。

    トランクスルーは最上級グレードのみ

    このクラスのコンパクトカーはパッケージング重視で、リアサスペンションの性能より荷室スペースを優先している。おかげでベルタも現行カローラより大きい 448リッター(最上級のGグレードは475リッター)の荷室を確保。ただしトランクスルー機能は最上級グレードのみとなる。

    基本性能&ドライブフィール

    1リッターか1.3リッターか

    試乗車のグレードやスペックを確認せず走り出してみたが、低速で走っている限りは、1リッターか1.3リッターかの判別はけっこう難しい。それでもデイズにある初期型1リッターヴィッツの力感と比較して、まあ1リッターかなと判断する。しかし1.3リッターと間違えてもおかしくない。変速機はトルコン付きの CVTで、発進時のクリープやリニアな加速感は純粋なトルコンATのようだ。

    グレードは表題にある通り、パッソ/ブーンやヴィッツと同じ996cc「1KR-FE」(71ps、9.6kg-m)を積む最も安いモデル「1.0X」だったが、しばらく走ってからこのエンジンが3気筒だったのを思い出す。それまで気付かなかったくらい、このエンジンは3気筒特有の振動が少ない。アイドリング中にエンジンルームの覗くと、エンジン自体は驚くほどブルブル震えているが、それをエンジンマウントが見事に吸収している。このマウントについては特に資料に説明はないが、振動低減についてはエンジンを開発したダイハツ側のノウハウがいろいろあるようだ。

    もう少しパワーは欲しいが

    パワー感はおおむね1リッターヴィッツ並みで、急加速を望まなければ不足はない。しかし車重はヴィッツと同等ながらも、パッソに比べると90kg重く、上り坂などでは「もう少しパワーがあれば」と思わないでもない。

    静粛性はまずまず高く、特に低回転を積極的に使うCVTの特性が生きるようなシチュエーション、例えば80km/hくらいの高速巡航は快適と言える。直進安定性やフラット感もロングホイールベースのおかげで優れている。コーナリングも強めのアンダーステアに終始して、まったく安定している。

    ただ、加速を繰り返すような時はややノイジーで、長時間乗っているとエンジンの振動も気になり始める。では1.3リッターの方がいいのか、というとそうとも言い切れない。発表会の時に2車を乗り比べた経験から言うと、1リッターの方が小気味いい加速が味わえた。

    ここがイイ

    まず動力性能には驚かされた。1リッターとは思えない力感は、ベーシックカーとして過不足ない走りを実現している。車重1トンのクルマにしてはしっとりとした走り味だ。乗り心地も柔らかめで、コーナリング中も十分な操縦安定性を確保している。もちろん楽しい走りではないが、けっこうなスピードをキープしながらコーナーをクリアできる。リッターセダンでこの安定感なら、ごく普通のドライバーの走りであれば十分だろう。

    内装の質感もいいが、ベーシックグレードでもラチェット式のシート上下調節がついているのがいい。小柄なドライバーでも着座姿勢が決めやすい。

    また、エクステリアからアンテナが消えている。リアウインドウにガラスアンテナがプリントされているのだ。これまでアンテナはスタイリングをずいぶん阻害してきた。風切り音、洗車の時のじゃまなどいいこと無し。これがなくなったことは大きな進歩だと思う。今後、車外アンテナは消えていく運命だろう。

    ここがダメ

    アイドリング中は、3気筒の振動がかなり伝わってくる。それ以外は静かなだけに、ちょっと気になってしまう。また加速等で回転をあげたとき室内に入ってくる独自のエンジンサウンドも興ざめな音だ。

    シートは上下の調整ができても前後の高さは調整できない。高くしたときにやや前下がりにできると、よりベターなポジションがとれるはずだ。

    軽量なだけに、乗り心地にはセダンらしいどっしり感がほとんどない。またステアリングは良くも悪くも軽い。コンパクトハッチならこうした軽量感がプラスだが、小さいながらセダンゆえ、もう少々重厚感を演出してもらいたいところ。質感も性能も十分だが、デザイン的にも乗り味的にも、何かプラスαが欲しくなる。

    総合評価

    美しさをこのクラスで生み出すことは至難のワザだ。先代のプラッツ、ホンダのフィットアリアなど、どれも苦労のあとが見える。その点、ベルタはよくまとまっている。この原因は高さを抑えたこと、ホイールベースを(ヴィッツより)伸ばしたことだろう。それゆえ、それなりに長く平ぺったくみえる。室内の狭い、かつてのような4ドアハードトップ風にすれば美しい(と日本人が思う)クルマは簡単にできるわけで、ベルタは居住空間とスタイリングにおいてギリギリの妥協点というところだろう。

    室内も当たり前のように上質だ。樹脂類のシボも安っぽさはないし、シルバーの金属調センターコンソールはともすれば安っぽくなるが、ベルタは気にならないレベルだ。シフトレバーもゲート式でちゃちくない。空間も2メートル近いアメリカ人ならともかく、平均的な日本人なら4人が快適なレベル。トランクもやたら広いし、どこか文句を付ける所があるなら指摘して欲しいくらいだ。

    動力性能も1リッターながら力感は十分。高速走行でも編集部の1リッター初代ヴィッツが最高速で 150㎞/h前後なのに対し、150㎞/h巡航が安定してできるほど。昨今、ほとんどのクルマが十分な性能を持ったと思っているが、確かにリッターカーだけはちょっと前までまだ不満があった。それがこのベルタではほぼ解消されている。この動力性能を持ち、10・15モード燃費は22㎞/L。リッターカーにはまだ進化の余地が残っていたのだ。

    これ以上の性能や豪華さを求めるなら、上のクラスに乗ればいい。このクラスとしてはもはや完成型だ。と、価格表を見ると意外に高い。なるほどこの価格ならこの出来でも納得。しかしそうなると、いったい誰が買うのか。全長こそ短いが、幅は5ナンバー枠一杯だし、サイズ的にはカローラでも何ら問題はない。現金で買って乗りつぶすには10万、20万の差は大きいが、5年程度で買い替えるのであれば、もうちょっと上のクラスのクルマに乗っても、売るときにその差はつまるのであまり関係ない。トヨタ最小セダンということに価値を見いだす以外、あまり積極的に選ぶ必要はないのではないか。

    販売目標は3000台。発売早々の05年12月は4887台でランキング10位に食い込んでいるが、同月にヴィッツは7478台が売れているわけで、日本でそう売れるクルマではないとトヨタも踏んでいるようだ。ただし、ベルタは北米など欧州以外の市場に投入される世界戦略車である。いよいよヴィッツが投入されるほどコンパクトカー市場が急激に拡大しつつある北米市場で、ベルタは4500台。セダン好きで小さなセダンが欲しいアメリカ人はコンパクトセダンにも美しさを求める。ベルタはその市場にマッチするクルマといってもいいだろう。日本より海外が主力のクルマなわけだ。

    そう考えるとグリルのデザインも納得できる。確かに美しさを感じなくもないベルタのデザインの中で、唯一違和感を感じるのがV字型シェイプのグリルデザイン。スバルのアイデンティティグリル並のえぐさは、日本人の美的感覚にはそぐわない。「プラウドTフェイス」と呼ばれるこのデザインは、世界戦略セダンの証。間もなく登場するカムリと同じものだ。

    世界のセダンやハッチバックはグリルで主張し始めた。アウディしかり、プジョーしかり。VWですらが最近は「エグイ」グリルになってきた。トヨタも世界戦略車には「プラウドTフェイス」がついていくのだろう。決まった顔のなかったトヨタ車に、いよいよ顔ができてきた。世界戦略車をそのまま日本で売るのは先日のRAV4も同様。特に、セダンやSUVのような国内市場が小さい(ニッチな)タイプのクルマでは。今後は世界仕様のクルマを日本で売ることがますます増えてくるのだろう。

    ただ、日本人の感性はまだそのグリルに違和感を感じるはず。この違和感を「美しい」ベルタにも感じてしまうのだ。日本人に売る美しいセダンならもう少し奥ゆかしいグリルにしてもらいたいと思う。ベルタは美しいセダン、といわれて素直に認められない部分はそこに尽きる。アウディのシングルフレームグリルもだんだん見慣れてきたように、「プラウドTフェイス」も見慣れてくると日本人も皆、いいというようになるのだろうか。いや、もしかすると現在でもこの顔がいいという「グローバルな」日本人の方がもはや多数派なのだろうか。

    試乗車スペック
    トヨタ ベルタ 1.0X
    (1.0リッター・CVT・132万3000円)
    ●形式:DBA-KSP92●全長4300mm×全幅1690mm×全高1460mm●ホイールベース:2550mm●車重(車検証記載値): 1000kg(F:610+R:390)●乗車定員:5名●エンジン型式:1KR●996cc・DOHC・4バルブ・直列3気筒・横置●71ps (52kW)/6000rpm、9.6kg-m (94Nm)/3600rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/42L●10・15モード燃費:22.0km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:165/70R14(BRIDGESTONE B250)●試乗車価格:152万400円(含むオプション:パール塗装 3万1500円、サイド&カーテンエアバッグ 6万3000円、DVDボイスナビ 10万2900円)●試乗距離:140km ●試乗日:2006年1月

    公式サイト http://toyota.jp/belta/index.html

     
       
       
       
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