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新車試乗記 第316回 メルセデス・ベンツ ビアノ 3.2 トレンド Mercedes Benz Viano 3.2 Trend

(3.2リッターV6・5AT・493.5万円)


日時: 2004年05月08日

 

キャラクター&開発コンセプト

国内市場でも成功したVクラス

90年代に高級車メーカーからフルラインメーカーへ脱皮を目指したメルセデス・ベンツは、商用バン「ヴィトー(Vito)」をベース車としながら、同社初のミニバン「Vクラス」を投入、日本でも98年に発売した。四角いボディと同社初のFF(前輪駆動)の採用で室内スペースを稼ぎ、両側スライドドアも備えたVクラスは、輸入車が苦手な国内ミニバン市場で珍しく成功作となった。メルセデス・ベンツにして390万円(98年発売時、V230)の低価格、マッ四角で迫力のあったデザインが支持された理由だろう。

バンからミニバンへ

2003年10月22日に日本で発売されたビアノは、そのVクラスの後継。3列シートは同じだが、定員は6人(2-2-2)から7人(2-2-3)に増えた。商用車ベースだったことから「ベンツ品質」に少々疑問があった先代の短所を改めるため、シャシーをFFからFRに一新。海外には引き続き、商用バージョンもあるが、日本向けとしては今回、ミニバンらしい性能と品質を強く意識して開発したようだ。生産は先代Vクラスと同じ、スペインのビトリア工場で行われる。

価格帯&グレード展開

ブランド力と内容からすれば割安?

グレードは3種類。標準車「3.2トレンド」(493万5000円)、革シート、アルミホイール、リアエアサス装備の「3.2アンビエンテ」(567万円)、その荷室拡大版「3.2アンビエンテ・ロング」(588万円)。いずれも、純正DVDナビを標準装備。上級車はセルフレベリング機構付きの電子制御エアサスを装備する。

先代V230発売時の409.5万円(消費税抜きで390万円)という衝撃プライスからすると、それなりのお値段だが、V6エンジンの先代V280は546万円(同520万円)もしたので、内容からすれば割安と言える。トヨタ・アルファードや日産エルグランドもフルオプションだと500万円ぐらい行くので、ちょっと悩む人はいるだろう。

パッケージング&スタイル

国産ミニバンより幅だけ大きい

サイズは全長4755mm×全幅1910mm×全高1900mm。先代より85mm長く、20mmワイドになったが、大差はない。アルファードやエルグランドより100mm幅広で、確かに裏道は避けて通りたいサイズだが、最小回転半径は5.4メートルと小さい。アルファードやエルグランドは5.6メートル以上ある。ホイールべースはそれらより250~300mmも長い3200mmだから、大したものだ。アンビエンテの「ロング」はホイールベース延長版ではなく、後輪より後ろ(リアオーバーハング)が245mm伸びるだけ。十分な荷室スペースが欲しい人、もしくはオートバイなどの長モノを運びたい人に最適。

最近のメルセデスらしく、デザインは角を落としたスタイリッシュ路線。箱っぽく見えないように、窓の形とキャラクターラインでウエッジシェイプに見せる。中性的で優しいデザインはファミリーミニバンとしては良いが、先代にあった独特の押し出し、シンプルさ(ゲレンデバーゲンに通じる無骨さ)を失ったのを残念に思う人は多いだろう。

ナビ標準装備は嬉しいが

上級グレードには本革シートとウッド調パネルが付くが、試乗したトレンドは布シートとアルミ調パネルで、ビアノ本来の?機能的なムード。500万円という高価さにふさわしいかどうかはさておき、質感はそれなりに高い。スイッチの配置、シフトレバーの位置、しっかりしたドリンクホルダーなど、使い勝手は悪くない。

全車DVDナビが標準装備なのはいいが、モニターの位置がかなり低いのは視認性の点で厳しい。これはセダン譲りか。ただし、欧州車によくあるように、ナビに連動してスピードメーター内に進行方向が矢印で出る。

シフトレバーを左右に振ってマニュアルシフトする「ティップシフト」を装備。他メーカーにあまり採用例がないが使いやすい。パーキングブレーキはメルセデス流に、足踏みの手戻し式だ。

「おもてなし」より「安全」

頑丈そうな7つのシートすべてに、ルノーのようなそら豆型ヘッドレストが付く。想定体重/体格はそうとう重量級/大柄のはずで、平均的日本人だとありがたみは少ないかもしれないが、座り心地は悪くない。FRになってドライブシャフトが床下を通るが、床はほぼフラットで低い。先代からスライドドアは両側にあったが、電動やオートクロージャーは付かない。

シートベルトをビルトインしたヘビーデューティなセカンド/サードシート。立派なアームレストが付くが、そのせいで2列目と3列目のウォークスルーが出来ない点も先代から引き継いでしまった。アームレストを取り外せるようにするか、オプションという手もあったと思うが。

先代の2人掛けから3人掛けになったサードシートは、背もたれが3分割で、座面は2:1分割という変則。ちゃんと3人座らせるという意図は素晴らしいが、一人もしくは2人だと窓際に追いやられる感じ。かといって大人3人には横幅に余裕がない。「おもてなし」より「安全」重視といった印象。

クォーターウインドウは、昔のハッチバック車のように隙間を電動で開けて換気できる。運転席からも操作可能。カバーをめくって中のユニットを見たら「DENSO」製だった。

脱着可能なシート

サードシートは前後にスライドし、一番後ろで430リッター(ロングなら730リッター)の荷室容量がある。さらに広げたい時は、サードシートを前方にタンブル。ダンパー付きなので操作は軽いが、シート自体はかなり重く、手をはさまないように注意が必要。力のない女性はつらいかも。

国産車にない魅力として、サードシートもセカンドシートも取り外しが出来る。すべて外した時の最大容量は4500リッター。アウトドアスポーツのベース基地にうってつけだが、これだけシートが重いと脱着はかなり骨が折れる。ちなみに、アルファードやエルグランドは左右に跳ね上げるタイプ、まもなく発売のホンダ・エリシオンは座面跳ね上げ&前後スライド。米国にはサードシートに加えてセカンドシートまで床下に納めるミニバン(ダッジの新型キャラバンなど)が現れた。どちらがいいかは人それぞれだが、日本で一般受けするのはやはり非脱着式だろう。

基本性能&ドライブフィール

メルセデス製V6を搭載

FFの先代VクラスではVW製の狭角V6エンジンと4ATを積んだが、FRのビアノはEクラスなどと同じ3.2リッターV6(218ps、31.1kgm)と5ATを採用。車重は2090kgと軽くないが、少なくとも空荷ならけっこう活発に走る。シュンシュンと回転を引っ張る設定の5ATも、パワー不足を感じさせない要素の一つ。気になるのは走行音が大きい点。エンジン音というより、ロードノイズなど雑多な音で全体に騒がしい。

固めの乗り心地

固めの足まわりで、操縦性は安定している。クルマの前後がシーソーのように上下する動き(ピッチング)も小さく、目線の割にロールも気にならない。法定速度での安定感、フラット感は欧州車ならでは。欧州仕様の最高速度(発表値)は191km/h。

ただし、空荷の状態で急ブレーキをかけると、リアタイヤの接地性はギリギリという感じ。フル乗車時(車検証の車両総重量は2475kg)の操縦安定性を確保するためには仕方ないところか。一方、乗り心地はかなり固め。ここが良くも悪くもソフトでゆったりした動きの国産ミニバンと大きく異なる点だ。

ここがイイ

インテリアは日本のミニバンに存在しない、商用車と見まがうほどの合理性というか、シンプルさ。車幅が日本車よりずいぶん広く、内張りも薄いため、室内幅がやたら広いのは素晴らしい。低くフラットな床、ガランとした広さは、これぞミニバン。そこに取り外し可能な、座り心地が良くてベルトを内蔵した安全性の高いシートを据え付ける手法はミニバン本来の姿と言え、グッと来る。いくら重くても取り外しのできるシートは今や貴重。エアコンの風も各席に届くようになった。

幅の広さを感じさせない取り回しの良さがまたいい。全長はさほどでもないから想像はできたが、実際乗ってみるとほとんどデカさを感じない。足回りは依然固めだが、Vクラスと較べればさすがに乗用車っぽくなっているので、先代からの代替えの人には喜ばれるだろう。

ここがダメ

ベンツのミニバンとなると結構走りに期待しがちだが、特に記すべきものはない。すべて水準程度。それより音のうるささが気になる。そんな走りが象徴するように、ビアノもやはりどことなく商用車っぽさが漂う。

3列目シートもベンチだけでなくキャプテンタイプを用意してもらいたかった。またビアノという名前が、日本的にはあまりピンとこない。Vクラスはそれなりに知名度もあったし、そのままの方がいい。C、E、S、M、Vとベンツはこの展開が「らしい」と思うのだ。例えばSクラスに名前が付いたら、何か変、と感じるはず。

総合評価

Eクラスと同じV6を積んで、しかもミニバンでこの価格はかなり割安感がある。ベンツオーナーから見ればそうだろう。しかし、この価格なら豪華至れり尽くせり、痒いところに手が届きまくる日本の高級ミニバンが買えるわけで、その意味では逆に割高感も出てくる。日本的豪華さより欧州的シンプルさが好きな人には悪い選択ではないが、日本国内で家族や大事な人を乗せるシーンでは、電動でスライドドアが開きDVDを見ることができる日本の高級ミニバンに軍配が上がるだろう。

走りの面では、日本のミニバンと較べて確かにしっかり感が高いが、ゆったり走る、高速を法定速度プラスアルファ程度で巡航するというミニバンらしい使い方だと、そのメリットはあまり生きてこない。しかし、イスを外して荷室をアレンジしたり、キャンパー的な使い方をしたりするときには、絶対にビアノがいい。道具としてのミニバンならビアノの方だ。

つまり質実剛健なのが国産車で、豪華な高級車がベンツ、という図式は、ことミニバンでは逆転する。とはいえ、ちょっと商用車っぽいが見栄の張れるベンツ、という図式は生きているわけで、ユーザーは自分の価値観、ライフスタイルをはっきりさせて、どっちをとるか選択することが求められる。特に、このクルマ一台をファミリーカーにするつもりなら、よく検討すべき。逆にベンツのセダンを持っているなら、迷うことなくビアノでいい。ファミリーカーにするにしても、旧Vクラスほどイメージとの落差はないから、その点では安心して買うことができるようになった。

試乗車スペック
メルセデス・ベンツ ビアノ 3.2トレンド

●形式:GH-639811C●全長4755mm×全幅1910mm×全高1900mm●ホイールベース:3200mm●車重(車検証記載値):2090kg(F:1120+R:970)●エンジン型式:112●3199cc・V型6気筒3バルブ・SOHC・縦置●218ps(160kW)/5600rpm●31.1kgm(305Nm)/2800-4750rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/75L●10・15モード燃費:7.8km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:225/60R16(MICHELIN Agiris 51)●乗車定員:7名●価格:493万5000円(試乗車:493万5000円 ※オプション:ー)●試乗距離:約100km

公式サイトhttp://www.mercedes-benz.co.jp/

 
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