Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > BMW X3 2.5i

BMW X3 2.5i新車試乗記(第326回)

BMW X3 2.5i

(2.5リッター・5AT・513万円)

2004年07月17日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

SUVの3シリーズ

北米に続いて日本でも高級SUV市場が急成長中。昨年あたり続々と日本に上陸したポルシェのカイエン、ボルボXC90、VWトゥアレグといったSUVの販売は、メーカー自身が驚くほどの好調振り。これらの火付け役の一つがBMWのX5で、その5シリーズ譲りのハンドリングや快適性は今でもこのクラスのベンチマークだ。

5シリーズと3シリーズがあるように、X5に対してX3が生まれるのは自然な流れ。2003年のフランクフルトショーに登場したX3は、コンパクトなボディに伝統の直列6気筒エンジンを搭載。「クラス初のプレミアムSAV(BMWは自社のSUVをSAV=スポーツ・アクティビティ・ビークルと呼ぶ)」として、欧州と北米では2004年初めから、日本では同年7月3日に発売された。

生産はオーストリア

BMWは「クラス初の」高級SUVと呼ぶが、少なくとも北米では明らかにレクサスRX(トヨタ・ハリアー)とぶつかる。日本では価格発表から3週間で300台以上の受注があるなど、滑り出しは順調だ。北米で生産するX5に対して、X3は生産キャパシティの問題から軍用車両やメルセデスのゲレンデバーゲンなど4WD車の生産に手慣れたオーストリアのマグナ・シュタイヤー社に生産が委託される。

価格帯&グレード展開

513万円と573万円

日本仕様は2グレード。「3.0i」(573万円)と「2.5i」(513万円)で、いずれも4WDの5速AT仕様。エンジンは従来からおなじみのダブルVANOS付き直列6気筒だ。X5 3.0i(645万7500円)と70万円ほどしか差がない。

BMW新車はオプション設定の自由度が高く、X3も「スポーツ・パッケージ(26万2500円)や「ナビゲーション・パッケージ」(2.5i:33万6000円、3.0i:31万5000円)、電動サンルーフ(18万9000円)など、豊富なオプションを用意する。

パッケージング&スタイル

X5より少しだけ小さい

サイズは全長4565mm×全幅1855mm×全高1675mm。X5より100mm短く、65mm低いが、幅は-15mm、ホイールベースも-25mmとほとんど変わらない。ロングノーズで、キャビンが後ろ寄りに見えるのが、X5との大きな違い。1シリーズ似のヘッドライトや下縁がはね上がったリアクォーターウインドウでデザイン的に冒険し、単なるミニX5に見えないように工夫している。

凝ったシート、凝りすぎ?のナビ

Z4と共通のモチーフを使うインテリア。センターコンソールやドアハンドルには本物のアルミを貼る。オプションのナビの操作方法は独特で、オーディオのスイッチを兼用した簡易型iDriveとでも言うべきか。機能を選んでリターン(決定)する方法は、コンピューター的でロジカルだが、直感的に操作できずかなりの慣れ(あるいは学習)を要する。

シートポジションの調整は全て手動(電動はオプション)だが、調整は自由自在。座面の長さも3段階で伸縮する。背もたれがドイツ車に多いダイアル式ではなく、レバーで倒せるのが便利。ランバーサポート調整はオプション。固めの座面が好きな人には、満点に近いシートだろう。

後席アメニティは今ひとつ

大柄な人でも十分な広さの後席。頭まわりや足元は、セダンの5シリーズより余裕があるかも。欠点は座面が低く、小柄な人だと視界が効かないこと。クッションも平板で体が落ち着かない。中央席はセンタートンネルで足の置き場がなく、事実上座れない。アームレストにドリンクホルダーは付くが、X5と違って空調吹き出し口はない。

容量十分、使い勝手もいい荷室

スクエアな荷室は広く(480リッター)、使いやすい。北米を意識する以上、もちろん後席はシングルフォールディング。操作時にシートベルトも絡まず、背もたれを倒すだけと簡単だ。ただし床はフラットにならない。レンジローバー風の上下分割式だったX5と違い、X3は普通のハッチゲートを採用。開閉時の張り出しが少なく、こちらの方が使いやすい。

基本性能&ドライブフィール

いつも通りのシルキーシックス

試乗車は2.5リッター直6(192ps、25.0kgm)を積む2.5i。車重1760kgとX5(3.0i)より300kg以上軽いので、驚くほど速くはないが、パワーの不足感もない。ストレートシックスらしい澄んだ唸りと共に、レッドゾーンの6500回転までシューンと滑らかに回りきる。静かではないが、これくらいエンジン音が聞こえた方がBMWらしい。BMWだからマニュアルモードは相変わらずレバーを押してダウン、引いてアップ。この時に自動シフトアップするのはともかく、アクセルを踏み込めばキックダウンしてくれるのは便利だ。

最小回転半径は5.85メートルと平均的。見切りも悪くないから、困ることはほとんどない。パワステはもう少し軽い方が取っつきやすいが、すぐに慣れるレベルだ。

電子制御4WD「xDrive」でシャシーが速い。

山道では、オプションのスポーツサスペンションと18インチのサマータイヤが威力を発揮する。駆動方式は途中からX5も採用した電子制御式多板クラッチによるフルタイム4WD「xDrive(エックス・ドライブ)」。ヨーレート(クルマが向きを変えようとする速さ)やステアリング切れ角、タイヤの空転を検知するセンサーと連動して、前後トルク配分を無段階に変更。通常走行時はおよそ40:60だが、そこからオーバーステア制御はもちろん、アンダーステアを感知するとトルク配分を0:100までリア寄りにしてニュートラルステアを目指すという、ハイテク4WDだ。

実際に乗ってみると、4WDらしさはほとんどなく、後輪駆動車のような感じ。レガシィあたりだと路面を前輪が掻くのがはっきり分かるが、X3にはそうした感じがほとんどない。ハンドリングはかなりシャープで、カイエンに優るとも劣らないペースでコーナーを「駆けぬける」。エンジンよりシャシーが速いクルマだ。重心が高いだけにESC(横滑り防止装置。BMWはDSCと呼ぶ)の介入は積極的かつ強力だから、そうとうな無茶をしない限り、挙動を乱す余地はない。

ハンドリングがいいのは、基本がしっかりしてるからだろう。前後重量配分は車検証記載の軸重で52:48と、BMWの掟通り50:50に近い。さらに、前輪ドライブシャフトをオイルパンに貫通させてエンジン位置を低くするなど低重心化も徹底する。何よりも、SUVとしては車重が軽めなのがいい。

シルキーシックスを使い切る

100km/h巡航は5速トップで2200回転ほど。特に静かではないが、突出したノイズがないのでうるさくはない。追い抜き加速は物足りないが、シルキーシックスを高回転まで使い切って走るのは気持ちいい。最高速はこの2.5iでも207km/h(欧州仕様のメーカー発表値)ほど出るらしい。

ただし、スポーツサス仕様の乗り心地は固く、高速道路で速度を上げても上下動が収まらない。前席ではあまり気にならないが、後席の乗員は辛いだろう。家族を乗せる機会が多い人は避けた方が良い。

車載のドライブコンピューターによる燃費は、何度リセットしても街乗りで6.0km/Lあたりに落ち着いた。高速道路を法定速度で巡航すれば10km/L以上は間違いないが、エンジンとシャシーが良いのでつい飛ばしたくなるクルマではある。

ここがイイ

気持ちのいいストレートシックスサウンドに乗ってワインディングをとばすと、SUVとは思えないほど軽快かつ安定感に満ち、しかも楽しい走りが満喫できる。ボディサイズは他のSUVと較べてさほど小さくないが、運転席まわりのタイトさがより小型のクルマに乗っているという感覚にしてくれるのだ。もちろん大型SUVと較べて軽量であることは重要なポイントで、ライトウェイトスポーツな感覚が確かにある(実際には1.8トンあり、かなり重いのだが)。貴重な直6エンジンを含め、BMWのアイデンティティを活かした、うまい演出で作られたクルマ、ということになるだろう。

ここがダメ

そうした気持ちよい走りは試乗車がスポーツサスをつけていたということが大きい。このため走りは素晴らしいのだが、乗り心地は終始ヒョコヒョコしており、高級SUVというよりスポーツカーライクなもの。街乗り中心のオシャレカーとして乗りたいなら、スポーツサスはやめた方がいいだろう。同時にBMWヒエラルキーの中で、ボトムと位置づけられているだけに、樹脂バンパーや内装の質感は価格に見合っているとはいいがたい。特に黒バンパーの使い方は、アウディのオールロードクワトロやボルボXC70のような精悍さの演出にまでは至っておらず、ただ廉価なだけに見えてしまう。内装もザラリとしたトカゲ革のような黒い樹脂はそう悪くないが、魚のウロコのような模様がついたアルミパネルのセンスは理解しづらい。

総合評価

オンロードでの素晴らしい走り、高速巡航の快適さ、速度可変のHDC(ヒル・ディセント・コントロール)を装備したオフロード性能の高さ(オフロードは試乗していないがオンロードで試したHDCはなかなか良好)など、基本性能が素晴らしい。どこでもハイポテンシャルで走れて、少し小型で取り回しが良く、背が高すぎないから乗り込むのも楽。小柄な人でも持てあますことがないSUVという点で、商品性が高い。

また、Mクラスのみ、トゥアレグのみという他メーカーに先駆け、自社内でSUVをクラス別に作り分けしつつあるBMWのビジネス的先見性は、さすが独立メーカーという感じだ。それゆえ高級感や質感にやや低さが感じられることは甘んじて享受すべき。ボトムクラスのX3に完璧を求めることはまちがいだと思う。そういう人はXドライブが装備されたマイチェン後のX5を買えばいいのだから。

10ウン年前の日本では、右を向いても左を向いてもクロカン四駆ばかり、と嘆いたものだが、北米市場が現在そうなっている模様。クルマが本来持っているステイタス感という要素を、セダンやスポーツカーよりSUVの方が(一見大きいだけに)分かりやすく示すことができる。その点は昔の日本のブームと同じだ。アイポイントが高いというSUVの特徴も、他人を見下ろせるだけにステイタス感に直結しやすい。

つまりBMWの3シリーズに乗っていても今やあまりステイタス面での満足は得られないが、X3ならそれが満たされる、というあたりが、ハードウェアとしてのX3の評価を超えた大きな価値といってもいいだろう。巨大で重い多くのSUVは対環境という点で褒められたものではないわけで、走りや機能よりそんな理由で好調な販売が続くはずのX3は、X5やX7(いずれ出てくるかも)よりはライトな分だけ良しとすべきだろう。

日本の四駆ブームの時には4WDレンジへ一度もギアを入れたことのない四駆がいっぱいいたものだが、今のSUVはこのXドライブを搭載するX3のように、走りにおいてけしてムダな装備を載せているわけではない。とはいえ、X3も大半がオフロードを走ることなく一生を終えるはず。その点でSUVはスポーツカーよりさらに使わない性能が多い機械であり、なんだかもったいないなぁと思えてしまう。使わないことが余裕であり、リッチさの象徴であり、それこそがセダンを超えたステイタスなのだ、と言われれば、確かにその通りなのだが。

試乗車スペック
BMW X3 2.5i
(2.5リッター・5AT・513万円)

●形式:GH-PA25●全長4565mm×全幅1855mm×全高1675mm●ホイールベース:2795mm●車重(車検証記載値):1760kg(F:910+R:850)●乗車定員:5名●エンジン型式:25 6S●2494cc・DOHC・4バルブ直列6気筒・縦置●192ps(141kW)/6000rpm、25.0kgm (245Nm)/3500rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/67L●10・15モード燃費:7.9km/L●駆動方式:電子制御4WD●タイヤ:235/50R18(DUNLOP SP SPORT 01)●価格:513万円(試乗車:580万2000円 ※オプション:ナビゲーション・パッケージ 33万6000円、スポーツ・パッケージ 26万2500円、メタリックペイント 7万3500円)●試乗距離:約250km ●車両協力:Nagoya-Minami BMW

公式サイトhttp://www.bmw.co.jp/newX3/

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
 

BMW 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧