Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > ポルシェ ボクスター (7速PDK)

ポルシェ ボクスター (7速PDK)新車試乗記(第554回)

Porsche Boxster (7-PDK)

(2.9L・水平対向6気筒・7速PDK・655万円)

改良型フラットシックスに
7速PDKを組み合わせた!
夢のオープンスポーツ、
ここにあり!

2009年04月17日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

新世代エンジンと7速PDKを採用

ボクスターは1996年に初代(986型)がデビュー。2005年に第2世代(987型)となり、クーペ版のケイマンも登場しているが、そのボクスター/ケイマンシリーズのマイナーチェンジモデル(987後期型)が2008年11月に発表され、日本では12月に受注が開始された。改良内容は主にパワートレイン(エンジンと変速機)の変更とフェイスリフトだ。

エンジンに関しては全車、新世代ユニットに換装し、ベーシックグレードのボクスター/ケイマンは排気量を従来の2.7リッターから2.9リッターにアップ(ボクスターは245ps→255ps、ケイマンは245ps→265psに向上)、高性能版のボクスターS/ケイマンSは3.4リッターのまま直噴化を行っている(ボクスターSは295ps→310ps、ケイマンSは295ps→320ps)。これら数値の通り、ケイマンシリーズには今回からボクスターシリーズより10ps高い数値が与えられている。

変速機に関しては911シリーズにならって7速DCT、ポルシェ流に言うところの7速PDK(ポルシェ ドッペルクップルング)を全車に設定し、加速性能や燃費を大幅に向上。細かいところでは、従来5MTだったエントリーグレードのボクスターとケイマンを6MTに格上げしている。

■参考(過去のポルシェ ボクスター/ケイマン試乗記)
・ポルシェ ケイマン S (5AT) (2006年5月)
・ポルシェ ボクスター (5AT) (2005年7月)

価格帯&グレード展開

7速PDKは47万円高

ラインナップは以下の通り。トルコン5AT「ティプトロニックS」は廃止され、2ペダル車はすべて7速PDKとなった。6MTに対して7速PDKは47万円高となる。

■ボクスター (6MT)   608万円
ボクスター (7-PDK)   655万円  ★今週の試乗車
■ボクスターS (6MT)   752万円
■ボクスターS (7-PDK)   799万円

■ケイマン   (6MT)    661万円
■ケイマン   (7-PDK)   708万円
■ケイマンS  (6MT)   830万円
■ケイマンS  (7-PDK)   877万円

パッケージング&スタイル

前後バンパーやライト類を刷新


試乗車は「S」ではない普通のボクスターだが、18インチホイールやサイドステッカーなどオプションを多数装着

ボディサイズは従来型とほぼ同じ全長4340mm×全幅1800mm×全高1290mmで、ボディパネルもほぼ同じだが、大胆に変わったのが前後のバンパー形状だ。ヘッドライトも新デザインとなり、エアインテーク部のフォグとポジションランプはLED化。リアコンビランプもLED内蔵の新デザインに変更されている。マフラー形状は従来通りボクスターが1本出し、ボクスターSが2本出しだが、こちらもバンパー形状に合わせてやはり新デザインだ。

 

インテリア&ラゲッジスペース

内装の変更点はPDK用の操作系やセンターコンソールのデザイン


後期型の内装はPDKに対応したステアリングとシフトレバーまわりが特徴。なお試乗車は内装にも「スポーツクロノパッケージ」などのオプションを多数装着している

インテリアはセンターコンソールが新デザインとなったほか、ステアリングの変速スイッチとシフトレバーが911シリーズと同じPDK用に変更されている。ステアリングスイッチは左右スポークの裏側を引くとダウン、表側を押すとアップで、例えばアルファのセレスピードみたいに右側を引いてアップしようとすると逆にダウンするので注意が必要だ。

電動ソフトトップについては、頭上にあるロックレバーの操作は手動だが、それを除けば開閉時間はわずか12秒、50km/h以下なら走行中でも開閉可能だ。ここは従来のままとなっている。

荷室容量は合わせて280リッター

荷室まわりも従来通りで、容量はフロントが150リッター、リアが130リッターの合計280リッターとなっている。スペアタイヤはなく、パンク修理キットを搭載する。

基本性能&ドライブフィール

ボクスターらしい軽快感、ポルシェらしい鋭さ

試乗車はメタリックグリーンのボディに、18インチホイールなどのオプションを多数装着した地味派手な仕様だが、基本的にはエントリーグレードとなる「ボクスター」の7速PDK仕様。ベース価格はPDK込みで655万円だ。

新型2.9リッター水平対向6気筒エンジン(255ps、29.6kgm)は普通のポート噴射だが、基本的には上級エンジンと同じ新設計だ。なので新型3.4リッター直噴エンジンの非直噴・ボアダウン版(ストローク値は3.4リッターと同じ)という風に捉えてもよさそうだ。

エンジンサウンドは相変わらず刺激的だ。オープン時とクローズド時で音の聞こえ方は違うが、いずれにしても「これぞスポーツカーだ」というサウンドが堪能できる。911シリーズに比べて走りは明らかに軽快だが、2.9リッターという排気量のおかげで、911のような噛みつくようなレスポンスや路面をガッと蹴ってダッシュする感覚も、以前の2.7リッターより味わえるようになってきた。もちろんこれはPDKのおかげでもある。

なお従来並みに抑えられた1400kgという車重は、相変わらずこのクラスの量産スポーツカーとしては抜群に軽い。排気量約3リッターの6気筒エンジン(軽量設計とはいえそれなりに重い)、スチール製モノコックのミッドシップレイアウト(構造上どうしても重くなる)、そしてオープンボディ(強度確保のためやっぱり重くなる)という3重苦を思うと、それは驚異的と言ってもいいと思う。

7速PDKの印象は911シリーズと同じ

話題のPDKに関しては、以前の997後期型と同じでとにかく完成度が高く、むしろあまりにスムーズ過ぎて印象に残らないほど。ぼぉーと乗っているとティプトロニックのようにも思えてしまう。坂道発進が普通に出来るほどクリープもちゃんとあり、ある意味VWアウディのDCTより違和感はないが、それでいてマニュアルモードでは電光石火の変速を見せつけてくれる。7速PDKとレスポンスの鋭いポルシェのフラットシックスは、まさに理想の組み合わせだ。

同時に911シリーズ同様、やはりステアリングスイッチの操作には慣れが必要で、特にシフトレバーをマニュアルモードにセットした時は、自動シフトアップしないので要注意(もちろんリミッターが働くのでオーバーレブはあり得ないが)。ステアリングスイッチの操作による暫定マニュアルモードならレブリミット寸前で自動シフトアップが働くので、ドライバーはその状態でシフトダウンに専念して走るのが一番簡単だ。

【スポーツクロノパッケージ装着車】 ローンチ・コントロールが付いた

ダッシュボード上面にあるストップウォッチは、オプションの「スポーツクロノパッケージ・プラス」(19万4000円)の証。これにより新型ボクスター/ケイマンシリーズのPDKには「ローンチ・アシスタント」機能、いわゆるローンチ・コントロールが備わり、0-100km/k加速はどのモデルでも0.2秒短縮される。今回試乗した素のボクスターでは5.6秒だ(6MTより0.3秒速い)。

ローンチ・アシスタントの使い方は、まずセンターコンソールの「スポーツプラス」ボタンを押した後、ブレーキを踏んだままアクセルを全開。通常ならスロットル制御で上まで回らないエンジン回転が、そうすることでピークパワー発生域で維持される。あとはブレーキを離すだけで、絶妙にリアタイヤを滑らせる最高のロケットスタートが誰でも可能になる。

もともと6MTより0-100km/h加速で0.1秒速いというPDKだが、このローンチ・アシスタントを使えばさらに0.2秒も速くなる。ちなみに2008年モデルの2.7リッター・ティプトロニックS(5AT)は、0-100km/h加速が7.0秒だったから、同じボクスターの2ペダル車で1.4秒も速くなったわけだ。0-400メートル加速なら、少なくとも2秒は速いと思われる。なお最高速は同じく2008年の2.7・5AT仕様(251km/h)より10km/h増しの261km/hだ。

ここがイイ

もちろんPDKの採用。そしてよく出来たソフトトップ、スタイリング

911もそうだが、旧弊化していた5ATが3段飛ばしくらいの勢いで最新の7速PDKになったこと。ステップ比が大きかった5ATとは大違いで、変速の素早さ、自然さ、滑らかさ、変速ショックのなさなど、911同様に素晴らしい。これに軽快なボクスターの身のこなしが相まって、楽しさ、燃費、完成度が赤丸急上昇という感じとなっている。ポルシェである以上、これからもどんどん改良されてゆき、性能も上がってゆくはずだが、現シャシーとしてはある意味究極のところまで来てしまったのではないか、と思わされる。

過去の試乗記で指摘してきたとおりの、現行ボクスターゆえのいいところ。それはすなわちたった12秒で、しかも50km/h以下なら走行中でも開閉できるソフトトップであり、それを閉じたときのハードトップ並みの遮音性、そしてメカのメンテナンスフリー化、986より圧倒的に良くなった987のスタイリングといったあたり。

ここがダメ

安いけど高い。独特のシフトスイッチ、標準サスの乗り心地

安めの価格(それでも旧5AT車よりは40万ほど高くなっているが)に飛びついても、オプションを選んでいるとだんだんと萎える。とにかくポルシェはオプションを付けたくなる仕掛けが多すぎで、しかも付けるとどんどん高くなる。エントリーモデルであるボクスターでもそうなると新車はけして安くはなく、庶民にとっては依然、高嶺の花だ。絶対的には911よりはるかに安いのだが。

911の最新試乗でも書いたが、ステアリングにあるシフトスイッチは、PDKになってから確実に操作できる反面、親指一つで操作できたティプトロニックSのシーソー式ステアリングスイッチのような直感的な操作はしづらいと、やはり今回も感じてしまった。

電子制御ダンパーのPASM付き(オプション)はかなり乗り心地が良くなったようだが、少なくとも試乗車の標準サスペンション(タイヤはオプションの18インチだったが)はかなりハードで、舗装の荒れたところではそうとう揺すられること。不快とまではいかないが、街乗りが多いクルマゆえPASMが標準(でこの価格)なら言うことはないのだが。

総合評価

古びない価値

ポルシェの歴史で、ミッドシップ市販車と言えば914。今年2009年の4月に誕生40周年を迎えた。914でもフォルクスワーゲンの4気筒が載るノーマルの914ではなく、ポルシェファンにはやはり6気筒の914/6だろう。生産台数は4気筒エンジンの914が11万5631台だったのに対して3338台と希少で(数字はポルシェAG発表)、実際に乗った人も少ないはず。我々も残念ながら914にしか乗ったことがない。

しかしこのボクスターがある今は、手軽に水平対向6気筒エンジンを積んだミッドシップポルシェが楽しめる。実際、デビュー以来13年にもなるボクスターは、914よりさらにメジャーで、現在では中古車なら100万円台で手に入れることも可能。しかも基本的なカタチにはデビュー以来大きな変化はないから、かつての914のようにプアマンズポルシェなどとも呼ばれない。いつになっても古びない価値がキープされているのだ。

半期ごとの新型投入

そんなミッドシップポルシェ車(ボクスターとケイマン)はしかし、ポルシェ直近の業績にはけして良い影響を与えていない。2008/09事業年度の上半期(2008年8月1日から2009年1月31日の間)、ポルシェの売上高は30億4000万ユーロで12.8%減。絶好調だったポルシェにもいよいよ不況の影が差してきたわけだが、ポルシェ ジャパンのプレスリリースによると、販売台数は26.7%も減ったにもかかわらず、売り上げ減はその半分程度で済んだという。これは安いミッドシップモデルが売れず、高い911やカイエンが好調だったからだ。911の直噴化・PDK化が先行し、半期遅れてミッドシップポルシェ車のそれが販売されたのがその理由だろう。そこで2008/09事業年度下半期は、今回の試乗車などPDKミッドシップ車で盛り返そうという次第。もちろん次には4ドアクーペのパナメーラが控えているわけで、半期ごとの新型投入というわけだ。

このようにある意味わかりやすい事業展開をしているポルシェだが、その利益の源泉はやはりモデルサイクルの長さといえそうだ。ボクスターなど基本となる初代986型はなんと13年も前のモデルだ。そのビッグマイナーチェンジともいえる987型も登場以来、早4年。日本車なら基本骨格までとうに全面変更するサイクルで、マイチェンを繰り返しているだけ。これはどう考えてもメーカーとしては「おいしい」はず。911も水冷化してからは同様で、毎年のように改良されているとはいえ、日本車のようなスクラップ&ビルトを行わないだけに開発コストは相当に少なくて済みそうだ。意地の悪い言い方をすれば、そうしたクルマをポルシェというブランドで包んでかなりの高額で売っているのだから、ついにフォルクスワーゲンをも傘下に納めることができたのだろう。

911の半値だが、「楽しさ」は911以上

今回、ボクスターが先回の試乗記(987型がデビューした2005年)の時点から大きく変わったことは、そのクローズドモデルともいえるケイマンが存在していることだ。これによってボクスター自身は、走りの呪縛から解き放たれたと思う。例えば試乗車にはPDKもローンチコントロールも搭載されていたわけだが、このクルマで走りを突き詰めたいと思う人はいないのではないか。それこそ986の時代からボクスターは「ほどほどに」楽しいオープンカーだったが、今回はさらにその性格を強めたと言える。むろん、ほどほどというのは他のポルシェ車に比べてという意味で、クルマとしては他より圧倒的に刺激的な類なのだが。特に新型は若干高められたパワーと7速PDKのマッチングが心地よく、向上したパワーも余力でこそあれ過剰ではない。手の内で転がしている運転感覚は、ウデがそうたいしたことないドライバーにも無理なく味わえるだろう。

簡単に屋根を開けてオープン走行を楽しめ、簡単に屋根を閉じてクローズド車並の快適な高速巡航を楽しめ、PDKのおかげで燃費も良くなった。4年前の試乗では多少不足感のあったトルクも、今回はまるで気にならなかった。ケイマンがあるおかげで、ボクスターは本来の「ほどほどに楽しいオープンカー」というスタンスに立ち返れたのではないか。911の半値という値付けだが、楽しさが911の半分かというと、一般道で走る分にはたぶん変わらない。いや、イージーにオープン走行が楽しめる分、楽しさではボクスターの方が逆転している。過去ボクスターに乗るたび、「とてもいいんだけどやっぱり911が欲しいな」と思ったりしたものだが、今回は911よりボクスターが欲しいと心底思った。日常を楽しくするポルシェとしては、911以上のものがある。そしていつになっても古びない価値も備わっている。PDKになったボクスターは、商売上手なポルシェの術中にはまってもいいか、と思えたクルマだった。


試乗車スペック
ポルシェ ボクスター(7速PDK)
(2.9L・水平対向6気筒・7速PDK・655万円)

●初年度登録:2009年3月●形式:ABA-987MA120 ●全長4340mm×全幅1800mm×全高1290mm ●ホイールベース:2415mm ●最小回転半径:5.2m ●車重(車検証記載値):1400kg( 640+760 )●乗車定員:2名 ●エンジン型式:MA120 ● 2892cc・水平対向6気筒・DOHC・4バルブ・縦置 ●ボア×ストローク:89.0×77.5mm ●圧縮比:11.5 ● 255ps(188kW)/ 6400rpm、29.6kgm (290Nm)/ 4400-6000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/64L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:-km/L ●駆動方式:ミッドシップ後輪駆動(MR) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/ 後 マクファーソンストラット ●タイヤ:前 235/40ZR18 /後 265/40ZR18 ( Michelin Pilot Sport )●試乗車価格:762万6000円 ※モーターデイズ概算( 含むオプション:メタリック塗装 16万円、18インチホイール 19万1000円、カラークレスト ホイールセンターキャップ 3万円、バイキセノンヘッドライト 27万6000円、モデル名サイドデカール 8万9000円、ウィンドディフレクター 5万8000円、スポーツクロノパッケージ 19万4000円、クルーズコントロール 7万8000円など )●試乗距離:150km ●試乗日:2009年4月 ●車両協力:ポルシェ センター名古屋

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧