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ポルシェ ボクスター S (981型)新車試乗記(第675回)

Porsche Boxster S (Type 981)

(3.4L 水平対向6気筒・7速DCT・774万円)

ついに911を超えたのか?
第3世代に進化した
ミッドシップオープンに試乗!

2012年11月02日

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概要&ラインナップ

抜本的に改良された3代目(981型)

ボクスターは、水平対向6気筒エンジンをミッドシップに搭載するポルシェの2人乗りオープンスポーツ。初代(986型)は1996年に登場し、2004年には2代目(987型)に進化。今年3月にジュネーブモーターショーでデビューした新型は3代目にあたる。コードネームは一足早くデビューした新型911が997型から991型へ番号が若返りしたのと同様に、981型となった。日本では6月1日に受注をスタートし、今夏からデリバリーが始まっている。

新型911と多くのパーツを共有する点は従来通りで、今回も約50%のパーツを共有。内容的には過去16年で初のフルモデルチェンジと言えるほど劇的に進化。スタイリングは一新され、アルミとスチールのハイブリッドとなる軽量ボディを採用。ホイールベースは60mm延長され、トレッドも大幅にワイド化された。

またアイドリングストップ機能を標準装備とするほか、PDK仕様車では巡航時にクラッチを断絶して空走する「コースティング」機能を採用するなど、低燃費技術も積極的に採用している。また、ロック操作も含めてフルオート化された新設計の幌や電動パーキングブレーキも新採用。今のポルシェの、あるいはVWグループの勢いを象徴するモデルチェンジになっている。

ボクスターが584万円、Sが727万円。PDKは47万円高

ラインナップは最高出力265psを発揮する2.7リッター(2706cc)の「ボクスター」、そして315psを発揮する3.4リッター(3436cc)の「ボクスターS」の2本立て。それぞれ6速MTと7速PDKがある(新型911に採用された7速MTは見送られた)。いずれも左右ハンドルがあり、価格は以下の通り。加えてオプションも豊富に用意されている。

■ボクスター   584万円(6速MT)/631万円(7速PDK)
■ボクスター S  727万円(6速MT)/774万円( 7速PDK)

デザイン&パッケージング

デザインはスーパースポーツ風に。ボディはより軽量に


空気抵抗係数はボクスターで0.30、Sで0.31。リアスポイラーは120km/h以上でポップアップする

試乗車の第一印象は「フェラーリみたい」。赤のボディカラーに単純に釣られたせいはあるが、スタイリングがどこかクラシカルだった従来型に対して、最新スーパースポーツ風にエッジと抑揚が効いたものに路線変更。ポルシェで言えばカレラGT風というか、最近で言えば開発中の918スパイダーを思わせるスタイリングになっている。

ボディサイズは全長4375mm×全幅1800mm×全高1280mmで先代と大差ないが、ホイールベースは60mmも伸びて2475mmに。それでいて車重は新開発のスチール・アルミ混成ボディによって、先代より平均して30kgほど軽量化されている。もともと軽さでは定評のあるポルシェだが、今回試乗したボクスターS・7速PDK仕様でも1390kgしかなく、排気量3リッター級のオープンスポーツとしては抜群に軽い。

 

試乗車はオプションのスポーツクロノパッケージやパドルシフトを装着

インテリアは新型911同様、センターコンソールのデザインがパナメーラ風になったほか、各部の質感がぐっと緻密になった。試乗車はオプション満載で、多少その印象は割り引く必要があるが、装備も充実。またパーキングブレーキは電動化され、センターコンソールから消失。操作スイッチはダッシュボードの下部にあり、もはや「操作する必要はない」と言わんばかり。

 

新型は電動パーキングブレーキを採用。そのスイッチはダッシュ足もとに配置

オンボードコンピューターはさらに多機能化された
 

911に無くて、ボクスターにあるのがリアトランク。容量は130リッターで、浅くて広い

トランク容量は先代987と変わらず、フロントは150リッター(底が深い)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
初代ポルシェ ボクスター(986型) 4315 1780 1290 2415 5.4
先代ポルシェ ボクスター(987型) 4340 1800 1290-1295 2415 5.2
新型ポルシェ ボクスター(981型) 4375 1800 1280 2475
新型ポルシェ 911(991型) 4500 1810 1295-1305 2450
 

基本性能&ドライブフィール

軽快なサウンド、鋭いレスポンス、そしてアイドリングストップ


ポルシェのキーは最近こんな感じ。右はボクスター、左が911のキー(ボタンが異なる)

試乗したのはボクスターSの7速PDK仕様(ほぼフルオプションに近い)。標準モデルは従来の2.9リッターから2.7リッターに縮小されたが、直噴を採用して先代比10ps増しの265ps、最大トルクは28.6kgm(先代比1kgmダウン)を発揮。一方、ボクスターSは従来と同じ3.4リッターの直噴だが、パワーは5ps増しの315psにアップ。最大トルクは先代と同じ36.7kgm。

ポルシェのボディを模ったブロックキーをひねると、水平対向エンジンは、軽快なサウンドで目覚める。バオン!と獰猛な音で吠える新型911とは対照的。7速PDKは冷間で少々ギクシャクするが、温まればスムーズで、トルコンATと思って乗ってしまう人もいそう。それでもアクセルを踏み込んだ時の鋭い反応は、DCTならでは。噛み付くようにレスポンスし、一気に加速体制に入る。

そうかと思えば、最初の赤信号あたりで即座にアイドリングストップするのが、最新ドイツ車のしたたかなところ。クルマが止まれば、エンジンも止まる、というくらい、積極的にアイドリングストップする。エンジン始動時のショックも最小限で、一部の日本車よりスムーズかも。新型911の場合、始動時にけっこう派手にエンジンが吠えるが(初期のパナメーラほどではない)、ボクスターは音質自体が軽いので、そんなに意識せずに済む。

6気筒サウンドが空から降り注ぐ


幌は新設計のフルオートで、開閉時間は従来の12秒から9秒に短縮

それから新型ボクスターで嬉しいのが、911同様、完全フルオートになった電動ソフトトップ。今までは手動でロック機構を操作する必要があり、開ける前にはちょっとした心構え?が必要だったが、新型はスイッチを押すだけ。しかも911同様、50km/h以下なら走行中でも操作できる。おまけに作動時間は従来の12秒から、わずか9秒に短縮された。フルオートの幌としては最速レベル。

オープンにしたボクスターは、クローズドとは別物。開放されたキャビンには、フラットシックスの鋭いサウンドが降り注ぎ、まさに鮮烈なオープンドライブが味わえる。フロントウインドウが低いため、秋の夕風が冷たく感じられる瞬間もあるが、それもオープンドライブの醍醐味。風の巻き込み自体は、よく抑えられている。ただ、左右ヘッドレストをつなぐ網タイプのウインドディフレクターは透過率が低く、ルームミラーによる後方視界がほとんど効かない。

軽くワインディングも走ってみたが、こういうところは得意中の得意。3,4リッターと言えば、世間的には大排気量エンジンだが、ボクスターのフラットシックスは回せば回すほど生き生きする。PDKの場合、スポーツクロノパッケージに備わる「スポーツ・プラス」ボタンを押せば、常にパワーバンドを維持するため、腕の技量を問わず、誰もがエンジンの良さを体感できる。0-100km/h加速はボクスター(MT)だと5.8秒だが、ボクスターS(MT)だと5.1秒。しかもPDKのスポーツクロノパッケージ装着車だと4.8秒にまで短縮される。

シャシー性能についても、そこそこのペースで流すだけで俊敏さを体感できるので、フラストレーションが溜まらない。ワインディングでの楽しさに関しては、新型911が相手でも勝てるかも。なお、サスペンション形式は従来と同じ前後ストラットながら、もちろん改良型。

 

試乗車のホイールはオプションの20インチ。全車アルミ製モノブロックキャリパーを標準装備。イエローキャリパーのPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)もオプションで用意される

また、試乗車はオプションの電子制御ダンパー(PASM=ポルシェ アクティブ サスペンション マネージメント)を装備していたせいか、乗り心地も良かった。試乗車はオプションの20インチ(ピレリのP-Zero)を履いていたが、荒れた路面でも跳ねる感じが皆無。60mm延長されたホイールベースや40%向上したというねじり剛性も効いていそう。

高速道路でも不満なし。特にクローズドでの静粛性が高まったのがいい。100km/h巡航時のエンジン回転数は7速トップで約1700回転で、これは新型911のPDK仕様と大差ない。ちなみに最高速(メーカー発表値)は、ボクスターが264km/h(MT)/262km/h(PDK)、ボクスターSが279km/h(MT)/277km/h(PDK)。

また巡航時にアクセルオフすると、クラッチを切り離してエンジンブレーキをカットする「コースティング機能」も作動する。この場合、エンジンは普通にアイドリングしているため燃料噴射は続いているわけだが、燃料噴射をやめてエンブレで車速が落ちるより効率がいい、という考え方のようだ。メーカーによれば、燃費性能は先代比で最大15%向上したとのこと。

 

総合評価

走りは二の次でいいくらい

ここ一年ほど、アウディ TT ロードスターと暮らしてみたが、名古屋のような気候、天候なら相当にオープンカーを楽しめることがわかった。春はもちろん気持ちいい。ただ花粉症が気になるのは残念だが。夏は、これが意外に悪くない。むろん昼間は厳しいが、夕暮れから夜なら、いくら気温が高くてもエアコンよりオープンの方が気分がいい。秋は言うまでもなく素晴らしい。走行中だけでなく、郊外で澄んだ空気の中、屋根を開くと満天の星空が素晴らしいのだ。冬は上着を着てヒーターをしっかり効かせれば、けっこうオープンでも気持ちいい。頬を刺す冷気が刺激的だ。

とまあ、4シーズン楽しめるのも、素早く開閉できるトップがあればこそ。走りながらでも、あるいは信号待ちの間にでも、屋根をすぐに開閉できれば、雨模様だろうと、小雪がちらつこうと、ほんとうに思い立ったらすぐに屋根なしドライブが楽しめる。これは昨今増えてきた電動オープンモデル最大のメリットだろう。クルマというものの大きな進化の一つだと思う。特に今回のボクスターでは、もはや10秒を切る早さゆえ、まさに文句なし。先代のように手動でロックを外すなどという無粋なこともしなくてよくなった。

フロントウインドウは傾斜を強めたが、Aピラーの頂点が、ドライバーのずいぶん前方にあるので、小柄な人がシートを前に出して座っても、頭上の開放感はトップクラス。フロントガラスが頭上を覆うようなオープンモデルは数多いが、ボクスターはオープンを本当に満喫できる。またスタイリングの良さや着座位置を含めた理想的なパッケージングは、ミッドシップレイアウトや収納性に優れたソフトトップゆえでもある。むろん風の巻き込みも少ない。クリアな後方視界を妨げる樹脂製のウインドディフレクターは、アウディ TTのように電動で上下に動くとかの工夫がほしかったところだが、それを除けば、クローズド時の静粛性を含め、オープンカーとしての魅力だけで買ってもいい。走りは二の次でいいくらいだ。

991よりカッコイイのでは

しかし、さすがにSとなると、走りの方もたいそう素晴らしい。ターボ車のようなモリモリとしたトルク感はないが、NAならではのシャープさは圧倒的。楽しさという点では、1996年登場の初代からなんら変わってはいないが、その次元は格段に高まっている。加速からコーナリングまで実に高次元、それでいて快適性も高い。試乗したら「やっぱり買うならSの方かな」と思わずにはいられないはず。正直、装備だけでなくスペック的にも素のボクスターはやや寂しい。価格だけの差をちゃんとつけるのがポルシェ流だ。

価格差といえば、オプションが豊富なのも悩ましいところ。Sでも素の状態ではかなり物足りないはず。あれやこれやと装備すると、あっという間に3桁の万札が飛んでいく。そういう点では多くが標準装備された他社のクルマに比べて、かなり割高な印象は否めない。しかしこのクラスを買える人なら、ついつい乗せられてしまうだろう。そこがポルシェビジネスが成功してきたカギだと思う。オフィシャルサイトのカーコンフィギュレーターでシミュレーションしてみると、価格はすぐに分かるが、初めての人はそのオプション設定の仕組みにちょっと驚いてしまうだろう。

しかしながら、何しろ今度の981型は素晴らしくカッコよくなっているので、そうした仕組みに抗えない。特にサイドの吸気口、そしてこれまでモッコリしていたボディ後半のエンジン部分が薄くスマートになり、更に低く見えるようになったスタイリング。これはもう991型911よりカッコイイのでは、と思う人は少なくないはずだ。またポルシェは本来、550スパイダーを、そしてカレラ GTを作ったように、911のようなRRではなく、ミッドシップこそリアルスポーツカーと考えていたはず。その意味で981は、スタイリングだけでなくスポーツカーとしても最良のポルシェとなり得る。しばらくすればクローズドボディの981型ケイマンが出てくるはずだが、それこそがポルシェの理想とするスポーツカーであるように思える。

エコ部分もちゃんと押さえている

 

ポルシェのもう一つの魅力であるインテリアデザインだが、センターコンソールこそこれまでにないカタチだが、基本はいつものポルシェのそれ。保守的で、奇をてらわないから、乗りなれた人ならすぐに馴染める。このあたり、日本車が見習いたいところでは。デザインに溺れていないのが素晴らしい。試乗車は右ハンドルだったが、ペダルレイアウトを含めて全く問題なし。イグニッションやスイッチ類の位置も自然で、違和感がまったくない。しかしポルシェ乗りは今でも左ハンドルが欲しいようで、量販される輸入車の左ハンドル率はおそらくポルシェがトップクラスだろう。日本で乗るなら、やはり右のほうが乗りやすいと思うのだが。アイドリングストップしたり、コースティングしたり(エンジンがアイドリング回転なのに速度が出ているのはちょっと気味が悪いが)と、今のクルマらしいエコ部分もちゃんと押さえている。

コレは相当欲しいなあと思うのだが、書いてきたように相当割高だなあとも思ってしまう。そこのところが気にならない人なら、もう言うことのないクルマだ。981型の生産はポルシェの本拠地である独ツッフェンハウゼンで始まったが、9月からはVWの独オスナブリュック工場(旧カルマンギア)でも生産が始まり、来年はボクスターの2/3がそこで作られるとのこと。といっても、もはや誰もVWポルシェ(かつてのミッドシップカー914)と呼んだりすることはないのだろうな、などというオチで締めたい。

 


試乗車スペック
ポルシェ ボクスター S (981型)
(3.4L 水平対向6気筒・7速DCT・774万円)

●初年度登録:2012年7月●形式:ABA-981MA123 ●全長4375mm×全幅1800mm×全高1280mm ●ホイールベース:2475mm ●最小回転半径:-m ●車重(車検証記載値):1390kg(620+770) ●乗車定員:2名

●エンジン型式:MA123 ●排気量・エンジン種類:3436cc・水平対向6気筒DOHC・4バルブ・縦置 ●ボア×ストローク:-×-mm ●圧縮比:12.5 ●最高出力:232kW(315ps)/6700rpm ●最大トルク:360Nm (36.7kgm)/4500-5800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/64L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:ミッドシップ・後輪駆動(MR) ●サスペンション形式:前 マクファーソン・ストラット+コイル/後 マクファーソン・ストラット+コイル ●タイヤ:前:235/35ZR20、後:265/35ZR20(Pirelli P-Zero)※オプション ●試乗車価格(概算):-円  ※オプション:- -円 ●ボディカラー:ガーズレッド ●試乗距離:-km ●試乗日:2012年10月 ●車両協力:ポルシェセンター鈴鹿

 
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