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ポルシェ ボクスター新車試乗記(第376回)

Porsche Boxster

(2.7リッター・5AT・611円)

  

2005年07月23日

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キャラクター&開発コンセプト

96年登場のミッドシップオープンスポーツ

1996年に登場したボクスターは、水平対向6気筒をミッドシップに搭載する2シーターオープンスポーツ。RR(リアエンジン・リア駆動)の911シリーズに対して、エントリーモデル的な立場ではあるが、スポーツカーとしての魅力とポテンシャルに不足はない。

当初は2.5リッター(204ps)で始まったが、2000年には2.7リッター(220ps)となり、同時に3.2リッター(252ps)の「ボクスターS」を投入。 2003年にそれぞれ228psと260psにパワーアップするなど、着実に進化を遂げてきた。

8年振りのモデルチェンジ

今回の2005年型ボクスターは構成部品の80%を変更した新世代モデル。改良点はパーツの多くを共有する911シリーズのモデルチェンジ(996型→997型)に準じたもので、外観と内装のほぼ全パーツ(フェンダー類も微妙に抑揚が付いた)、エンジンのパワーアップ、ボディ剛性アップなど、多岐にわたる。逆に基本設計は従来型を受け継いでおり、その点ではビッグマイナーチェンジと捉えることも出来る。従来型はそのコードネームから986と呼ばれたが、新型ボクスターは987となる。

価格帯&グレード展開

911シリーズの約半分

グレードは2種類で、いずれにも5AT仕様(ポルシェはティプトニックSと呼ぶ)があり、標準モデルのボクスター(5MT/5AT)が569万/611万円、「S」(6MT/5AT)が686万/728万円だ。

これは驚くことに、1046万~1311万円もする997の、ほぼ半値。伝統と栄光を誇る911シリーズのバリューは確かに「プライスレス」だが、多くの人にとってボクスターこそ身近であるのは間違いない。

パッケージング&スタイル

80%におよぶ設計変更

ボディサイズ(カッコ内は従来比)は、全長4330mm(-10)×全幅1800mm(+20)×全高1295mm(+ 5)。ホイールべ-スは従来と変わらず2415mmだ。

要するにフェンダーが左右各1cmずつ張り出したのを除けば、ボディサイズに変化はないわけだが、ならばボディ外板もほぼ同じ・・・・と思ったら大間違いで、前後のフェンダーやバンパーは別物だし、サイドのエアインテークも大型化されている。ボンネット、トランクリッド、灯火類もほとんどが別形状であり、外装はほぼ全て一新されたと考えていいだろう。

前半部分は997と共有

基本的にボディ前半の構造は997と同じで、ボンネットなど共有パーツも多い。しかし、全体のスタイリングは一目でミッドシップと分かるものだ。市販ミッドシップ車に多いV6や直4の横置と違って水平対向6気筒・縦置レイアウトなので、前後重量配分は45:55と自ずと理想的なものとなる。

大幅に質感や使い勝手を向上

一瞬、997と見まごうインテリアだが、ダッシュボード上部はボクスター専用。従来型から引き継いだデザインは3連メーターくらいで、おそらくここは好評だったのだろう。硬派筋からは「オープンカーなんだから、もっとスパルタンで良い」という声もあるが、ポルシェ独特の雰囲気があるのは確かだ。

 

助手席側ダッシュから飛び出てエアコン吹き出し口の前に止まるドリンクホルダーは、911と同様のもの。センターとドアアームレストのフタ付き小物入れ、CDホルダー付きグラブボックスなど、ユーティリティは素晴らしく充実している。

わずか12秒、50km/hまで開閉可能

ボクスターの幌は50km/h以下なら、走行しながらの開閉が可能だ。ロックは手動だが、開閉時間はわずか12秒。カバー付きのタイプとしては最速ではないかと思う(S2000はカバー無しで6秒、Z4もカバー無しだが全自動で約10秒)。初期のボクスターはリアウインドウが塩化ビニール製で耐久性に難があったが、先代の後期モデルから熱線入りのガラス製に変更されている。

荷室容量は合わせて280L

新型ボクスターも現行911に倣ってスペアタイヤを廃止しており(パンク修理材を装備)、おかげでフロントトランク容量は 130Lから150Lに増量している。なお、従来通りラジエイターはフロントオーバーハングの両脇に分割して置かれているが、これも荷室容量を稼ぐためだ。

 

リアのトランクは130Lなので、合わせて荷室容量は合計280Lだ。ミッドシップ車は往々にしてフルフェイス・ヘルメットの置き場所も無くなってしまうが、ボクスターならその点は大丈夫だ。

徹底的なメンテナンスフリー化

荷室からオイルとクーラントの補充が可能だが、エンジンへのアクセス性は良くない。対策として、ポルシェ側は徹底したメインテンスフリーを謳っている。例えば、補器類の駆動は1本のサーペンタインベルト(自動調整機能付き)でまかなうし、(当然ながら)カム駆動はベルトではなくタイミングチェーンを利用する。点火系はプラグ以外はメンテナンス不要で、プラグにしても9万km(従来は8万kmだった)ないし4年毎の交換を指定。オイル交換も3万kmないし2年毎で良い、とのお墨付きだ。日本のようなシビアコンディションでは額面通り受け取れないが、メーカーとしては「ポルシェは手が掛かる」という先入観を払拭したいのだろう。

基本性能&ドライブフィール

やっぱり速くなっている

試乗したのはベーシックモデルの2.7リッターの"Tip"(5AT)仕様。Tipなら左右ハンドルが選べるが、試乗車は左ハンドルだ。その点を除けば国産車からの乗り替えでも、運転に慣れは必要ない。

左手でイグニッションを回せば、ポルシェ以外の何物でもないフラット6のサウンドが響く。回転バランスが良くて振動がないのに、ババババという轟音(と言いたくなる)を立てて回るところが、やはりポルシェだ。

2.7のエンジンは240ps(先代比で+12ps)、27.5kgm(同+1kg-m)にパワーアップ。車重は同じ Tip仕様で1390kg(+20kg)と微増した。デビュー当時は2.5リッター(204ps)で5MTが1250kg、5ATが1300kgとパワーそこそこ、車重もまずまず軽かった。それでも性能は向上していて、パワーウェイトレシオで言えば6kg台から5kg台へと、おおよそ0.5kg/psくらい上昇している。やっぱり速くなっているのだ。

迫力を増したエンジン音

とは言うものの、オートマで乗る限り、その辺の性能向上ははっきり体感できない。明らかに違うのはエンジン音の変化で、従来のボクスターよりずっと凄みを増し、高回転での音量も大きい。この音は幌を閉めても開けても相当なもので、街中では回すのを遠慮してしまうほどだ。このあたりのサウンドチューニングは997でも感じたことで、やはり他のスポーツカー同様、音による雰囲気の演出がなされている。従来モデルより迫力を増したエンジン音は、911風と言ってもいいだろう。

ボディ剛性はまずまず

ボディ剛性が高まっただけにオープンボディのヤワな感じはかなり減ったが、やはりクーペボディには一歩譲るのは仕方ないところ。しかし一般道をTip で流す限りは、気にならないレベルだ。

試乗車は標準装着の17インチタイヤを履いており(従来2.7の標準は16インチ)、乗り心地もレスポンスもけっこうマイルド。実は1インチアップと言っても、新旧ボクスター(2.7リッター)のタイヤ幅と扁平率は前輪で205/55 → 205/55 、後輪で225/50 → 235/50 と全く同じか、ほとんど変わっていない。つまりホイール外径(およびタイヤ外径)が1インチ(25.4mm)大きくなっただけで、タイヤウォールの厚さは標準タイヤでは同じなのだ。ホイールハウスが大きくなってルックスが向上したことは確かだが、これなら確かにオプションの19インチもありかな、と思える。

ミッドシップ+フラット6の走りを満喫

ハンドリングは市販ミッドシップらしい安定志向だ。鼻先が軽くてロールも小さいが、タイヤのグリップレベルが高いので軽量スポーツ的に振り回すのは難しい。なにしろ車重は1390kgと3.0リッター時代のホンダNSX(4AT)並みだ。しかし、飛ばさなくてもミッドシップスポーツらしさは満点で(背中の後ろでフラット6がファーンと唸っている)、さらにペースを上げればFRでもRRでもない、ミッドシップ特有の凝縮感ある走りが味わえる。この感覚はボクスター以外では得がたいものだ。試乗車には無かったが、911から譲り受けたPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)やスポーツクロノパッケージ(ダッシュ上部にストップウォッチが付き、ボタン一つでスロットルやステアリング、PASMの制御ロジックをスポーツモードに変更する)といったオプションを選べば、もっと尖った操縦性を味わえるはず。

2.7のTipでも最高250km/h、0-100km/h:7.1秒

やっぱりポルシェなのだからその名に相応しい速さが欲しいもの。今度の新型ボクスターS(6MT)では3.2リッター(280ps)で1380kgのボディを引っ張り、最高速:268km/h、0-100km/h:5.5秒と、15年前の911(964型)並みの実力を持つ。さらに今年後半に生産が始まるボクスターのクーペ版、ケイマン(Cayman)Sは3.4リッター(295ps)で車重は1340kg、最高速: 275km/h、0-100km/h加速:5.4秒となるらしい。数値的には911とボクスターSの隙間に滑り込む。

さて、今回試乗した2.7のTipも最高速:250km/h、0-100km/h加速:7.1秒の性能を謳う。特に高回転でシャーンと加速するところは迫力十分で、直4やV6では真似できないフィーリングだ。Cd.値が0.29(Sは0.30)に向上したことも最高速に貢献しているだろう。ちなみに、ポルシェお得意の格納式リアスポイラーは911同様、120km/h以上で立ち上がり、80km/h以下で格納される。

ただし当然ながら911のような圧倒的なトルク感はなく、特にDモードで低回転からアクセルを踏み込むような状況では、こちらが期待するほどダッシュしてくれない。964のTip (4AT)やVQ35DEを積む日産フェアレディZ(5AT)あたりと比べても、絶対的な最大トルク値の差は明らかで、このあたりは明確に大排気量スポーツカーとキャラクターが分かれるところだ。また、 250km/hまでカバーするだけに5ATのステップ比が大きいのも気になった。

ここがイイ

スタイル、質感。569万円でフラット6を積むポルシェが買える! お買い得。

たった12秒で、しかも50km/h以下なら走行中でも開閉できるソフトトップ。ほとんどサンルーフ感覚で気軽にオープンエアが味わえる、これがどういうことかと言うと、雨が降りそうな日でも、躊躇なく開けて走れるということだ、すなわち、日本の気候でも使い物になるということである。

メンテナンスフリー化は素晴らしい。昨年、米国でポルシェはコンシューマーへの信頼度調査でレクサスに次いで2位という結果も。一時期ポルシェはトヨタに急接近して生産技術を学んだようだが、その成果がここに表れている。もちろん、トヨタはポルシェからブランドが何たるかを学んでいるようだが。

ここがダメ

2.7のTip仕様は街中で、もう少し軽快感が欲しい。ギアリングが荒くてエンジンの気持ちいいところが味わいにくい。いろいろ事情はあるだろうが、6ATの早期採用を望む。

わざとらしいデチューンで、911との上下関係を強引に保つ、マーケティング至上主義。ここにもトヨタの影響=トヨタヒエラルキーを感じるというのは、うがった見方で、こういうのは昔からポルシェにある流儀ではある。

それ以外は特になし。Sの6MTならオープンスポーツの傑作。素晴らしい。

総合評価

1997年2月に自分が書いた原稿をあらためて読んでみたが、8年前の986ボクスターと今年の987ボクスターとでは、ことベーシックグレードに関して、実は印象に大きな差はない。違っているのは、まずスタイルが微妙にグラマラスになったこと、インテリアが上質になったこと、走りがよりパワフルになったこと、ボディ剛性が上がったこと、エンジンサウンドが室内に良く響くこと、動いていても幌が開閉でき、リアウィンドウがガラスになっていることくらいか。オイル交換時期も3万㎞へ伸びている。そしてもちろんミツワはもう販売していない。新型の価格は消費税込みで569万~728万円(税抜なら542万円~)だから、かなり安くなっている。

その意味では、PASMとスポーツクロノパッケージをオプションで装着したSこそ、8年の進化を示すモデルといってもいい。プリミティブなオープンライトウェイトスポーツとしてのボクスターは8年前にあらかた完成していたわけで、それは987の2.7でも同様に感じられた。しかしハイテク仕様のスポーツクロノパッケージと3.2リッターエンジンでは、さらなる高みへ「連れて行ってくれる」。

実際ボクスターはこの2.7ですら、乗りこなす次元は、例えばマツダのロードスターあたりとはかなり違ったハイレベルにある。それでも少し慣れてくれば、さらなる高みを目指したくなるのが人間というもの。実際、試乗中でも、もうちょっとパワーが欲しくなったのは事実。そのために3.2リッターエンジンがあり、そのハイパワーを安定させるために新たなハイテク技術を注ぎこむ。それはまさに40年に及ぶ911の進化同様。これぞポルシェの伝統といえるだろう。

ボクスターも今後は911のように、形を変えずモデルイヤーごとのマイナーな改良を遂げていくことになるのだろう。そして、走り追求においてはクローズドボディの方が圧倒的に有利という大原則に基づき、ケイマンが投入される。911はクーペにオープンボディを追加したが、ボクスターはオープンにクローズドボディを追加してバリエーションを増やしていくわけだ。実際、ボクスターに乗っていると、オープンでこれだけいいのならクローズドボディならすごいだろうな、と分かりやすい期待を抱かせてくれる。というか、オープンではさすがに進化した性能を受け止めきれなくなってきた、というところが本音だろう。987がボディ剛性をいくら上げても、やはりクローズドボディにはかなわない。

つまり、987の本質はオープン走行を楽しむことにあると言える。走りながらでもサッと屋根を開けて、爽快感を楽しむスポーツカー、それがポルシェの提案するボクスターの本来の姿だろう。となればこの8年の最大の進化は幌が良くなったことだと思う。2重になって耐久性や遮音性が高まり、リアウィンドウもガラスだから、もうハードトップはいらない。ビニールウインドウの986前期型を中古で買うなら、やはりハードトップが欲しくなってしまう。そうするとそれは本来のボクスターではないことになる。本来のボクスター、ボクサー+「ロードスター」の理想型が987といえるだろう。

試乗車スペック
ポルシェ ボクスター
(2.7リッター・5AT・611円)

●形式:GH-98725●全長4330mm×全幅1800mm×全高1295mm●ホイールベース:2415mm●車重(車検証記載値):1390kg (F:630+R:760)●乗車定員:2名 ●エンジン型式:25●2687cc・水平対向6気筒DOHC・4バルブ・縦置●240ps(176kW)/6400rpm、27.5kgm (270Nm)/4700-6000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/64L●10・15モード燃費:8.8km/L●駆動方式:ミッドシップ後輪駆動●前タイヤ:205/55ZR17、後タイヤ:235/50ZR17(MICHELIN Pirot Sport) ●価格:611万円(試乗車 611万円 ※オプション:-)●試乗距離:約100km

公式サイト
http://content4.eu.porsche.com/prod/jpn_boxster/boxster.nsf/jpnjapanese/highlightsintro

 
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