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新車試乗記 第177回 トヨタ ブレビス Toyota Brevis

 

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日時: 2001年06月23日

 
 

キャラクター&開発コンセプト

小さなセルシオ、お客さんはジーンズの似合う社長サン

ブレビスは、アクティブなライフスタイルを志向する40代の人々に向け、従来の「伝統」「重厚」「威厳」で表される高級車とは異なる、知的でお洒落なイメージの新しいプレミアムセダンだ。「アクティブ・エレガンス」を開発テーマに、現行アリスト以降の新世代FRプラットフォームをベースに直列6気筒エンジンを搭載。はやいハナシ、“小さな高級車”ことプログレの少しだけ若向けバージョンだ。

話題はペダル前後調節を可能とした世界初の「パーソナルドライビングポジション」。アクセルとブレーキのペダルが前後に電動で動き、メモリー統合できるというものだ。2.5リッターと3.0リッターの2種のエンジン、ナビ協調シフト5速ATなど、プログレの基本メカニズムを流用しながらもスポーティーテイストと一歩先ゆくハイテクを装備することで、プログレとの差別化を図っている。ターゲットはプログレの購入層より若く、ジーンズの似合う社長サンなど30~40歳代。ベンツCクラスやBMW3シリーズといったプレミアムセダンの市場に参入し、蹴散らそうというものだ。

価格帯&グレード展開

ブレビスはトヨタの販売政策から生まれたクルマか?

販売チャンネルはプログレがマークⅡと同じトヨペット店に対して、ブレビスはセルシオ、クラウンを扱うトヨタ店。年配層の支持が厚いクラウンとの差別化を図るため、ブレビスにスポーティーなスタイルや走りを与えた理由がここにある。位置づけは“クラウンより下”ではなく、プログレ同様トヨタのヒエラルキーから外れた位置にある高級車。具体的には日本におけるメルセデスベンツCクラス、BMW3シリーズといったプレミアムセダン同等というポジションだ。

ウォールナットパッケージは用意されないが、装備はプログレよりも充実

グレードはいたってシンプル。2.5リッター車が「Ai250」、その4WD仕様が「Ai250 Four」。3.0リッター車が「Ai300」の全3タイプ。価格はそれぞれ337.0万円、367.0万円、377.0万円。装備はプログレよりも充実しており、まずプログレでオプションになっているDVDナビ、MDプレーヤー、ディスチャージヘッドライトが、ブレビスでは全車に標準化されている。またブレビスオリジナルの「パーソナルドライビングポジション」は「Ai300」に標準、「Ai250」に本革シートとセットでオプション(34.2万円)。車載用としては世界で初めて採用したdts(デジタル・シアター・サラウンド)は、DVDの5.1チャンネル立体音響を実現したもので、「Ai300」に標準、その他にオプション(30万円前後)で用意される。逆にブレビスがオプションで、プログレが標準装備となるのはフォグランプぐらい。

このように装備の充実化によって、価格がプログレよりも高めになったわけだが、それでも2.5リッター車で17万円高。3.0リッター車で7万円高なのは、絶対にお買い得。ライバルのベンツCクラスやBMW3シリーズと比較すると当然ながら100万円以上も安い。

パッケージング&スタイル

プログレをベースにセルシオを作った? スポーティーでエレガントなデザイン

ボディサイズは全長4550mm×全幅1720mm×全高1460mm。プログレより全長で+40mm、全幅で+20mm、全高で+25mm。ホイールベースは同じ2780mmのまま。わずかな拡大にも関わらず、スタイルはずっと伸びやかになり、表現は明らかに豊かになっている。Aピラー、Cピラーを大きく傾斜させ、フェンダーに張りを与えたのが、決め手となったのだろう。フロントまわり、リアまわりはミニ・セルシオとも言える造形だ。

一方でカローラ系を連想させるのが、ライオンマークを起点にフード中央を隆起させるデザイン手法。フロントドアはそのまんまプログレと共通。で、Bピラーのカーボン調パネルは、ベンツの上級グレードに用いられる手法だ。悪く言えば寄せ集めなのだが、全体のまとまりはかなりいい。メッキの多用で少々ケバケバしいところもあるが、少なからず5ナンバーサイズに執着しすぎたプログレよりは、万人ウケするスタイルだ。

SFチック! 英国主義にかたよりがちなこれまでの高級車とは完全に一線を画す演出

室内寸法は長さ1990mm×幅1455mm×高さ1180mm。プログレと比較してそれぞれ、+40mm、-10mm、+15mm。頭上空間は広くなった反面、Aピラー、Cピラーが強く傾斜した分、実際に受ける感覚はトントンといったところ。基本的にはプログレ同様「クラウン並の広さ」を実現したと思っていいだろう。FRであることを考えれば十分広いし、セダンとしてならまったく不満ない広さだ。一方、トランクの容量はオーバーハングの延長により18リッターアップの440リッターを確保。リアアームレスト部のトランクスルーも嬉しいアイテムだ。

質感はプログレのようにウオールナットの本木目パネルこそ使ってないものの、素材や細部のこだわりは、マークⅡより明らかに上だ。センタークラスターの本アルミ材や、淡いベージュの1枚革巻きステアリング(試乗車)などが、そのこだわりを象徴している。なかでもクリスタル調のグリーン照明は、セダンオーナー層の若返りを使命としたプレビスならではの個性的演出。メーター、デジタル時計、DVDナビに用いられており、SFチックで怪しげなムードを醸し出す。ナイトクルージングが楽しくなりそうな演出だ。ただ、プログレの流用らしきラメ入り(のような)シート地だけは、ちょっとセンスがない。先進的なインパネとはミスマッチだ。オプションの本革のほうが相性はいい。

自由なドライビングポジションを可能とした世界初の「パーソナルドライビングポジション」

電動チルト&テレスコピックステアリングやパワーシート、さらにそれらを統合して最適なドラポジをメモリーする機能は、高級車として当たり前のアイテム。しかし、いくらシートやステアリングが自由自在に動いても結局、支点になるのはペダル。小柄な人は悲しくもオバチャンポジションを強いられた。これではいくら社長サンと呼ばれていても、貫禄は形無し。

そこでプレビスはペダルの70mm前後調整を実現。これならどんな体型でも最適な姿勢がとれるだけでなく、視認性や操作性など一番いいとされる位置にセッティングできる。車外からの見た目も格好良くなるだろうし、長距離移動による疲労も軽減される。恐らく今後ブレビス以上の車格を持つトヨタ車にも採用されていくはず。ジーンズの丈を思いっきり切っている社長サン垂涎のアイテムと言っていいだろう。加えてセダンとしては初めて音声案内のバックガイドモニターが装備されたこともポイントだ。これなら縦列駐車もスムーズ一発で決まる(慣れれば)。後方視界の点で、やや不利なハイデッキはいデッキデザインだけに、これも重宝がられるアイテムとなるはず。リバースにするとメーター内の液晶インジケーターがアンバー色になるのも親切だ。

基本性能&ドライブフィール

基本はプログレだが、足回りを中心にスポーティチューン

パワートレーンはブレビスと共通で、エンジンは2.5リットル(最高出力200馬力/最大トルク25.5kgm)と3リットル(220馬力/30.0kgm)の直列6気筒。どちらも直噴「D-4」だ。ギアボックスは5速AT(4WDは4速AT)で、オプションでナビからの地図情報を先読みしてシフトを制御する「NAVI・AI-SHIFT」が用意される。これはすでにマークⅡで先行された最新のITS装備のひとつで、カーブの曲率やドライバーの減速・加速意思、車両からの勾配情報を自動的に察知し、3速から5速の間で自動的制御するものだ。

10・15モード燃費の数値もプレビスと同じだ。2.5リッターが11.6km/l、3.0リッターが11.4km/lとなっている。3リッターの方が車重が30kg重くて、パワーも20馬力上なのに0.2km/lの悪化に止めたのは、恐らく最終減速比が高くなっているから。ちなみにベンツCクラス、BMW3シリーズといった欧州車ライバルと比較すると1.0km/以上も優秀。それだけD-4直噴方式が燃費に貢献しているわけだ。

足回りも当然プログレと共通で4輪ダブルウイッシュボーン。ただし、トレッドはボディの拡大分だけ15mm広くなっている。同時にタイヤサイズのサイズアップも図られ、プログレの195/65R15サイズに対してブレビスは205/55R16となるなど、よりスポーティーな性格が与えられている。またEBD、ABS、ブレーキアシストに加えてトヨタ自慢のVSCも標準装備だ。

ややスポーティー感も出て、走りに関しては不満ゼロ

試乗したのは3リッターエンジン搭載車の「Ai300」。トヨタの高級車と名乗るだけあって、走り出してみると相変わらずスムーズで静かなことに感心させられる。気になるような雑音という類の音は聞こえない。むろん無音ではないが走行中のエンジン音、さらに風切り音などのバランスがとれているので気にならない。とにかく非常に快適なのは確かだ。

発進加速も低速から3リッター直6のトルク感が味わえる、高級車としてふさわしいもの。その余裕たっぷりの加速感は、同じエンジンを積むクラウンより車重が80kgも軽い、と言えばある程度想像はできるだろう。スポーツカーのような飛び抜けた力強さこそないものの、4000回転当たりからはクォーンという緻密な快音が聞こえてきて、短い直線で遅いクルマを瞬時に追い抜くようなときに頼もしい加速力は味わえる。トルクの立ち上がり方が全域リニアで、アクセルをいきなり強く踏む際に起こる直噴の悪癖(リーン状態からリッチ状態に切り替わるときのギクシャク感)も皆無だ。

基本的なメカニズムはプログレからの流用だけに、絶対的な速さはプログレと同じと考えていい。しかし、全体の味付けは若干異なるようだ。まず、ステアリングフィールが快適性を重視したプログレに対して、若干手応えが増している。プログレでも十分手応えがあっただけに、ブレビスのパワステは人によって重いと感じかもしれない。しかしその分、自分で操っているという実感は高まり、ハンドルを切ったときのスッキリとした感じは、特にターゲットとされる30~40歳代を中心に好まれそうだ。ただ、依然としてステアリングに伝わってくる情報量が少ない。ワインディングをハイペースで抜けようとすると、インフォメーションが不足気味だ。このあたりが欧州車との決定的な違いで、やっぱりトヨタ車だと思わせる部分といえる。

それでもコーナリング性能は十分ハイレベルであることは確か。実際、プログレと同時に乗り較べたわけじゃないので、ハッキリとは言えないが、タイヤのインチアップ化、ワイドトレッド化によって向上しているはず。スポーツカーのようなビシッとした乗り味でないにしろ、ロールは抑えられており、ステアリングを右左にすばやく切っても、挙動にブヨブヨしたところがない。それでいて段差によるゴツゴツ感はなく、乗り心地が全く犠牲にされていないのは評価すべきところ。単に静かで快適ではない新たな価値観を追求するという姿勢は伺える。VSCの制御はさらに進み、絶対的な安全も確保されている。

高速での快適性は折り紙付き。FRであることは一切意識する必要がない。このようにサーキットでも走らない限り、走りに関しては大きな不満のつけようがない。

ここがイイ

事故の時には根本から脱落する機構を生かしたまま、リンクでもって前後移動式にしたという可動ペダルは、絶賛!もの。先日のソアラで指摘したとおりで、小柄な人にとっては世界が変わる大進化だ。ハイブリッド車並の革新技術といってもいい。どうして誰もやらなかったのか、開発者は皆大柄なのか? クルマに乗って30年近い筆者にとっても、運転席での視界が一転したことはハイブリッド車以上の大ショックといえる。前方の空間が大きく広がった感じがし、頭上の広々感もまったく違うのだから。これこそすべてのクルマに標準装備すべきアイテムだ。特に早くオープンモデルに採用されることを望まずにはいられない。

ここがダメ

ところが、ステアリングの移動量がやや少ないため、ポジションが今ひとつきまらなかったのは残念。ペダルをいっぱい手前に出した場合(一番後ろにポジションをきめたとき)、ステアリングももう少し手前に出て欲しい。あまり後退させすぎるとインパネのスイッチ類に手が届かないと言う配慮かもしれないが・・・・

総合評価

スカイラインまでがV6になった現在、直6の高級車という部分では、40代に訴求しやすく売りやすいのは確か。40代以上には昔からある直6への思い入れが深い人が多いからだ。日産はリバイバルプランの厳しい予算では今さら新しいV6など作れないということで、V6に特化してしまいそうだが、余力のあるトヨタは今後もしばらくは直6を生きながらえさせるだろう。旧態依然とした直6を燃費や環境面で改善するには、新型V6を作るよりお金がかかるし、次世代小型FRプラットフォームはV6ベースになるかもしれないが、プログレのプラットフォームまでは直6が乗る。そしてそれはマーケティング的には正しいのだ。その意味でブレビスはスカイライン党をも取り込むかもしれない。

プログレはもう少し年輩向きとされていたが、実際にはその斬新さからプレビスより若向け(というより個性派向け)といえそう。その意味でメッキグリルのハデさからして分かりやすい高級感のあるブレビスは、小金を持ったFR好きオヤジを中心に広くうけるだろう。実際、ブレビスと比較すると、Cクラスを日本で買う意味は「ブランド」だけといってもいい。ベンツに乗っていると言いたい人はCでもいいが、カーナビの良さ一つをとっても、ハードウェア的にも価格的にもブレビスの方がオススメできる。しかしブレビスにはブランド力がない。アメリカでトヨタがレクサスに次ぐブランドを打ち出すと言う情報があるが、ホントに新ブランドが必要なのは日本だと思う。直6FR好きオヤジの多くはトヨタと言うだけで拒否する人が少なくないからだ。

ブレビスもトヨタ嫌いを取り込む戦略車種の一つだと思うし、きっとそれは成功するだろう。ただその結果、右も左もトヨタブランドになる未来はちょっと辛い。キャデラック、ポンティアックといったGMのようなブランド展開がトヨタにできればおもしろいのだが。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
 
 
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