新車試乗記 第210回 トヨタ マークII ブリット Toyota Mark II Blit

 

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日時: 2002年03月02日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    マークIIのワゴンは再びFRと直6に

    おなじみマークII のワゴンモデルとなるのが「マークII ブリット」だ。マークII のワゴンは従来からラインナップされていたが、先代はマークII クオリスという名が与えられていた。このモデル、ネーミングこそマークII と付くものの、実は北米市場を狙ったカムリ・グラシアの兄弟車。つまり駆動方式はFFが基本で、FRをベースとするマークII セダンとは何の関係もないクルマだったわけだ。しかし今度のブリットはマークII の基本コンポーネンツをしっかりと踏襲。晴れてマークII 直系のワゴンとなった。ホイールベースはセダンと同一。搭載されるエンジンも、クオリス時代のV6からマークII らしい直6に戻されている。もちろん駆動方式はFRが基本だ(4WDもあり)。

    目指したものは「走りの楽しさはもとより、長距離をいつまでも走り続けたくなるような高級ツーリングワゴン」。マークII が持つ上質感と「FRの走り」の魅力を踏襲しながらも、セダンとは大きく異なるデザインが与えられているのがブリット最大の見所だ。エンジンは2.0リッターが1つ、2.5リッターが3つの計4種類。ミッションは全車ATで、直噴2.5リッターのみが5速となり、他は4速となる。駆動方式はFRのほか、一部グレードに4WDを用意。乗車定員は5名だ。

    価格帯&グレード展開

    ライバルはステージア。アッパーミディアムクラスのワゴン対決だ

    基本グレードは3タイプ。価格が安い順に「2.0iR(248万円)」「2.5iR-S(288万円)」「2.5iR-V(339万円)」となり、前2つは27万~30万円高で4WDも併設される。また「2.0iR」「2.5iR-S」には装備を簡略した「Jエディション」が用意される。これを選択するとホイールがアルミからスチールカバーになり、セルフレベリングサスペンション、バックドアイージークロージャー、プライバシーガラス、ディスチャージヘッドライト、運転席フットレスト&アルミペダルなどが省かれ、価格はベースよりも20万円安。装備内容から考えれば「Jエディション」を選ぶのは賢明ではない。「iR」の方が間違いなくオススメだ。

    ライバルは先頃フルモデルチェンジした日産ステージアだろう。価格の点では2.5リッターの同装備内容で、なんと19万円もブリットが高い。最近はライバル車よりも割安感をアピールするクルマが多かったことを思うと、今回は珍しいケース(これってデフレ対策?)。価格で不利と思われるブリットではあるが、228万円からの2リッター車の設定は、価格志向のユーザーをも引き付ける大きなポイントとなるだろう。

    パッケージング&スタイル

    若さと個性を打ち出したエクステリアデザインだが…

    ボディサイズは全長4775mm×全幅1760mm×全高1470mm。セダンより全長が40mm長く、全高が10mm高くなっている。先代のクオリスと比べると15mm短く、25mm細身で、ホイールベースは逆に110mm長い2780mm(マークII セダンと同じ)となり、ルーフレールを除いた実質的な全高も拡大。優等生的なパッケージングによって、居住性の向上が図られているのがブリットの特徴だ。

    デザインに関しては、先代のクオリスがFFカムリをベースに可能な限りFRのマークセダンと同じスタイルに仕立てていたのにたいして、今回はそのアプローチとは逆。FRのマークII をベースとしつつも、可能な限り別物のデザインにしようとしている。例えばヘッドライト。独立4灯ヘッドライトはランクルシグナスやアリストにも見られるデザインワークだが、ブリットはよりシャープで大胆。マークII セダンのような万人受け路線ではなく、好き嫌いが分かるアクの強いものだ。ユーザー層がセダンより多少若く、保守的ではないことを考慮したのだろう。

    しかしながら、全体を通して眺めるとどこかチグハグしている感は否めない。アグレッシブとでも言えば響きはいいが、売り物となっているCピラー周辺のデザインは、他の部分に上手く溶け込んでいるとは思えない。売れて当然のマークII 、もし販売台数でステージアに負けるようであれば、これはもうデザインの選択ミスというしかないだろう。トヨタはそれを承知済みなのか、月の販売目標がステージアの2500台に対して、ブリットは2000台と控え目。ちなみに外板でセダンとの共通の部品は、フロントスクリーンのガラス、フロントドア、リアドア(下側のパネル)のみとなる。

    上質で使いやすいインテリアはセダン譲り。荷室の箱も便利

    インパネはセダンと共通。よりスポーティな雰囲気を演出するために、照明類にはヴェロッサと同じレッドが用いられ、メーターパネルの文字はブルーに点灯する。また装飾パネルの助手席側には「BRIT」ネームを入れたのも独自の演出だ。内装色は精悍、スポーティなブラックがメイン。ヴィトンのエピ風の表面処理を施した本革シートもブラック内装のみの設定だ。ボディカラーによってはグレー系も用意されるが、セダンにあるアイボリー系の設定はない。

    居住性はセダンと基本的に同じと思っていいが、ルーフがそのまま後端まで伸びる分、後席の居住性は高くなっている。それでもライバルのステージアと比べてしまうと、後席の足元スペースが若干狭いという感じ。これはホイールベースの差によるもの。ブリットはステージアより70mmも短いのだ。なにより納得できないのは、後席のヘッドレスト。固定式で2人分しかない。法規的な問題はないとしても、このクラスならしっかりと付けて欲しいもの。スバル・レガシィだってしっかり3人分付いている。ただしシートベルトは背もたれ格納式の3点式。ちょっとちぐはぐでは。

    ラゲッジの使い勝手は、トヨタらしく非常に気配りが感じられる。ラゲッジの奥(キャビン側)にはマークII セダン同様、ユーティリティボックスが備わり、折り畳み式に進化している。使い勝手は向上しており、幅800mm、高さ300mmと容量もタップリ。転がりやすいもの、よく使うものの整理には便利だし、キャビン側から手が届くというのも嬉しい。もちろん定番装備のアンダーボックスも備わっており、その容量は51リッターと広い。バックドアを閉めるときは電気式オープナーが備わっているから、軽い力でOK。ラゲッジ自体の絶対的なスペースではライバルに大きく負けているものの(特にフロア高が高いのは大きなマイナス要素)、「あまり大きな荷物は載せないから」という人もいるわけだし、これはこれでアリだと思う。

    従来の巻取り式式のトノカバーに代わるハード製のトノボードにも注目したい。これはラゲッジ前半部を覆うボード(板)で、トノカバーと違って走行中にバタつく心配がない。さらにボード内には巻取り式のカバーも内蔵されているため、ラゲッジ全体を覆うことも可能だ。また、このボードは前後に270mmスライドするから、荷物を積み降ろす際に“一時的”に軽いものを載せることができるから有り難い。が、もし載せたモノが硬く、そのまま走ると、急ブレーキなどで後席乗員に飛んでくる危険性がある。これはマズイ。どうしていつになってもパーティションネットを標準装備しないのだろう。

    基本性能&ドライブフィール

    セダンと同じラインナップのエンジンと新設の車高調ショック

    エンジンは従来の2.2リッター直4と、2.5リッター・3.0リッターのV6という3タイプ構成から大きく変わり、マークII セダンと同じ4タイプで、全て直6となる。最高峰に位置するのは2.5リッターターボの「1JZ-GTE」は280馬力/38.5kgmを発生。主力のエンジンとなる直噴の2.5リッター「1JZ-FSE」は、200馬力/26.0kgm。4WD専用となる通常燃焼の2.5リッター「1JZ-GE」は196馬力/26.0kgm。2リッター用にはFR、4WDともに「1G-FE」が搭載され160馬力/20.4kgmを発生する。

    ミッションは直噴の2.5リッターのみ5速ATで、その他は4速ATとなる。セダンとは違いMTの設定はない。なお、5速AT車にオプションのナビをチョイスすると自動的に「NAVI・AI-SHIFT」が付いてくる。ナビの地図データをもとに、コーナーや勾配などに応じてシフトアップ・ダウン制御(5~3速の間)を行う賢い機能だ。

    前後ダブルウィッシュボーンのサスは基本的にセダンと同じ。ワゴンならではのワザとしては、セルフレベリングショックアブソーバーの採用が挙げられる。荷物がたくさん積めるのはワゴンならではのメリットだが、重い荷物が影響してリアが沈んでしまう。これでは走行安定性が損なわれるうえ、カッコよくもない。

    そこで車高調整機能を持つアブソーバーが荷物や乗員人数の増加による車高低下を改善してくれるわけだ。沈んだ直後は作動しないが、ちょっと走ればポンプ作用によって適切な高さまで持ち上がる。こうした機構はクオリスが4WD・Gのみの採用だったのに対して、ブリットはJエディションを除く全車に採用している。最小回転半径は5.3m。2780mmというロングホイールベースながら、カローラクラスの小回り性を実現しているのもいい。

    試乗車はターボラグの少ない、リニアでパワフルなiR-V

    先代クオリスの低回転から力強いV6ならではのフィーリングはそれはそれで魅力だったが、いい音を響かせながら走るというスポーティーな雰囲気では、やはり完全な回転バランスが得られる直6のブリットの方に軍杯が上がる。しかも試乗したのは280馬力のハイパフォーマンスモデル「iR-V」だから、ターボ特有のトルク特性にも圧倒させられる。過給レスポンスは抜群。アクセルを踏み始めた直後から急激にトルクを増大させ、その猛烈な加速力は、同エンジンを積むセダンから90kg増の車重を全く感じさせないものだ。セダンゆずりの静粛性の高さも魅力だ。

    乗り味は基本的には固めだが、スッキリとしていて好印象。パワステも不自然に重くない。タイヤのグリップに余裕を持って走る限り、リア側の重いワゴンにありがちな操舵に対するボディ回転の遅れが感じられない。スポーティをウリにするだけあって、狙ったラインをきっちりトレースすることが可能だ。ただし、そうはいってもセダンの90kg増し。その重量増はほとんどがリアに宛がわれているわけで、きついコーナーを本気で攻めれば、それなりにリア回りの重量増が響いてくる。

    足回りがガチガチのスタビリティ重視ではないために、アウト側へ一気に荷重をかければ大きくテールアウト。それを未然に防ぐために、トヨタお得意の横滑り防止システム「VSC」が6万円高(「iR-S」は8万円高)が威力を発揮する。少しタイヤが滑ると利く、という味付けなので走りの楽しさを邪魔するようなことはない。セダンの「iR-V」に匹敵するコーナリング性能は望めないだろうが、スポーツ性はクオリスよりも格段に進化していることは間違いない。

    高速での巡航では、100km/hは全く退屈そのもの。道路事情と法律が許せば、軽い緊張を伴って快適にクルージングできるのは160km/hあたりだろう。120km/h以上が制限速度になると言われる第2東名はいつできるのだろうか。

    ここがイイ

    ライバルであるステージアと比べると、ステージアがドッカンターボで荒々しいのに対し、ブリッドはまるでNAのようなリニアな加速だ。280馬力が荒々しくなく出るから、どの速度域でも、思うがままのパワー感が得られる。たっぷり200km以上の距離を試乗したが、街中では快適なシティカー、高速では快適なクルージングカー、ワインディングでは快適で「安全」なファンカーとして、シーンを選ばず四六時中楽しめる。もちろん、高い質感の内装、前後の高さ調節可能なシート、タッチパネル式の見やすく使いやすいDVDナビなど、装備面でも文句なし。

    ここがダメ

    なので、困るのはそのスタイルだ。好みが分かれるとは思うが、美しいとか、カッコイイとか言う人は少ないのではないか。フロントフェイスはセダンのままの方が上質感があると思うし、何よりCピラーに存在感を持たせるというデザインは、ワゴンとしてはちょっと掟破りでしょう。斜め後方からの写真を撮って、マジックペンでCピラーとメッキモールをブラックアウトしてみると、これがなかなかカッコよくなるのだ。セダンにない個性を際だたせたい気持ちが暴走してしまったように思う。

    総合評価

    ハードウェアが行き着いた感のある現在のクルマを売るためには、やはりカタチが勝負だろう。ライバルのステージアも台数的には苦戦しているようだが、不況やステーションワゴン市場の縮小だけの問題ではなく、カタチが今ひとつ人々にうけないからだと思われる。デザインとしては素晴らしいのだがウーパールーパー(知ってます?)的フェイスに代表されるスタイルの斬新さは、ステージアを売るのがかなり難しい商品にしてしまっているように思える。

    反面、発表以来もう4年にもなるレガシィがまだ売れているのは、その保守的なデザインが大きいだろう。ステーションワゴンはセダンよりさらにプレステージ性が求められる商品ゆえ、コンサバであることが絶対条件だと思うのだが、いかがだろう。

    ブリットはその意味で、ちょっと勘違いしてしまったような気がする。ステーションワゴン→少数のマニアックな市場→より個性的なスタイル、というマーケティングだと思うが、この市場はトヨタが自ら言うとおり、新しい商品を投入することで拡張する市場なのだから、ステーションワゴン→いいものがあれば買いたい人がいる市場→よりリッチでプレミアム感が高い保守的なスタイル、と発想すればよかったと思う。

    もともとステーションワゴンはフルサイズセダンのワゴンバージョン(セダン以上のプレミアム感)だったわけで、例えばもしセルシオワゴンが出れば、セダンを凌ぐ売れ行きすら示すはずだ。クラウンワゴンがあるトヨタヒエラルキーの中でマークII ワゴンのスタンスはなかなか厳しいが、方向としては、高級保守的ワゴン(もちろん走りや装備は保守的ではない方がいいが)が正解なのでは。試乗している間は自車が見えないわけで、なんていいクルマだろうと、またまた欲しくなってしまったが、駐車して外から眺めると、その気持ちが萎えてしまったのは確か。ステーションワゴンとしてのハード面では、完璧ともいえる仕上がりだけに実に惜しい。

     

    公式サイトhttp://toyota.jp

     
       
       
       
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