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スバル BRZ S新車試乗記(第664回)

Subaru BRZ S

(2.0リッター水平対向4気筒・6MT・FR・279万3000円)

B(ボクサー)+R(リア駆動)!
それを走らせ、操る歓びを
6MTで味わい尽くす!

2012年07月06日

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キャラクター&開発コンセプト

トヨタとスバルが共同開発したFRスポーツ


スバル BRZ (名古屋モーターショー 2011)

スバルのBRZは、トヨタの86と共に、トヨタと富士重工業(以下スバル)が共同開発した小型FRスポーツモデル。企画とデザインは主にトヨタが、開発と生産は主にスバルが担当している。

共同プロジェクトが正式発表されたのは2008年4月のこと。2009年の東京モーターショーではコンセプトカー「トヨタ FT-86」が発表され、2011年には「スバル BRZ コンセプト STI」が登場。そして2011年末の東京モーターショーで双方の量産型が発表された。BRZの場合は翌年2012年2月3日に正式発表され、3月28日に発売されている。

水平対向4気筒+「D-4S」を搭載


トヨタ 86 (東京モーターショー 2011)

86/BRZは、新開発の2リッター水平対向4気筒・自然吸気エンジン「FA20型」(最高出力200ps、最大トルク20.9kgm)をフロント・ミッドシップに搭載。燃料噴射システムにはポート噴射に加えて、直噴(シリンダー内直接噴射)を併用するトヨタの「D-4S」を採用している。車名「BRZ」の由来は、「BOXER」のB、「Rear Wheel Drive」のR、「究極」を意味するZとのこと。

月販目標は450台。すでに納車は9ヶ月待ち


今年から「スーパーGT」に参戦している「BRZ GT300」
(名古屋モーターショー 2011)

86とBRZの生産は共に富士重工業の群馬製作所・本工場(群馬県太田市)。国内の月間販売目標は86が1000台、BRZが450台(発売初年)だが、受注はこれを大幅に上回っており、86の場合は6月下旬の時点で約6ヶ月待ち、BRZの場合は約9ヶ月待ち。

■外部リンク
・富士重工業>ニュースリリース>新型車「SUBARU BRZ」を発表(2012年2月3日)

価格帯&グレード展開

86と微妙に仕様設定が異なる。205万8000円からスタート


BRZのボディカラーは全7色で、写真はBRZ専用色のWRブルーマイカ。これが初期受注で全体の3分の1を占める
(photo:富士重工業)

グレード体系は86の4グレードに対して、BRZはカスタマイズを前提としたベースグレード「RA」、中間グレードの「R」、上級グレードの「S」の3グレード。一見、86での最上級グレード「GT リミテッド」を省いたようなグレード設定だが、実際にはGT リミテッドに相当する装備(レザー/アルカンタラ内装やリアスポイラー、フルフロアアンダーカバーなど)がオプションで用意されているので、実質的に大きな差はない。

ただ、各グレードの仕様設定は微妙に異なり、例えばベースグレード同士ではバンパーが86では無塗装で、BRZではボディ同色。中間グレード同士では86にデジタル速度計がなく、BRZにはある、といった具合。

BRZの場合、初期受注では最上級のSが最も多かった様子(78.4%)。また6MTの比率は3分の2(66.3%)とのこと。


■RA        205万8000円(6MT)
 ※カスタマイズ用ベース車。エアコンレス(オプション装着可)、16インチスチールホイール
■R         247万8000円(6MT)/254万6250円(6AT)
 ※マニュアルエアコン、16インチアルミホイールを標準装備
■S         279万3000円(6MT)
/287万1000円(6AT) ※今回の試乗車

 ※ディスチャージヘッドランプ、トルセンLSD、17インチアルミ、本革巻ステアリング等を標準装備

■外部リンク
・富士重工業>ニュースリリース>BRZの受注状況について(2012年3月28日)

パッケージング&スタイル

86との違いはバンパー、ヘッドライト、バッジなど


試乗車はボディカラーが黒(クリスタルブラック・シリカ)。サイドデカールは非売品

ボディサイズは86と共通で、全長4240mm×全幅1775mm×全高1300mm(全高はアンテナベースを含む数値で、実際のルーフ高は1285mm)。86とデザイン面で違うのは、ヘッドライト、フロントバンパー、前後のバッジ、フロントフェンダーのエアアウトレットくらい。違いはフロント部分に集中していて、大雑把に言えば86がエアロ形状を強調した「攻め」のデザイン、BRZは奇をてらわないシンプル路線といったところか。

 

リアからだとバッジを見ない限り、86とは区別しにくい

特にヘッドライトアッセンブリーは別物で、LEDポジションランプは86が一個一個バルブが点で光るタイプで(LEDは上位グレードのみ)、BRZは光ファイバータイプ(全車LED付)。またウインカーは86がバンパー配置で、BRZはヘッドライト内蔵。さらにプロジェクター式のヘッドライトも、86が上位グレードのみHIDで、下位グレードはハロゲンなのに対し、BRZは全車HIDになる。BRZの方がちょっと豪華で、ウインカー位置に関してもBRZの方がカスタムする上では都合が良いという話がある。

 

またフェンダーアウトレットは、86には車名と水平対向エンジンをイメージしたバッジが付くが、BRZはアストンマーチン風?のシンプルなものになる。両方ともスリットがダミーなのは残念なところ。

インテリア&ラゲッジスペース

広々している分、タイト感は薄め


上級グレード「S」にはインパネやルーバーにシルバー加飾が施される

インテリアも基本的には86と同じで、詳しくは 先回の86試乗記を参照。ただし今回試乗したのは6MT仕様ということもあり、細々したところで印象が異なる。

まず運転席での乗車感は、6MTだとポジションに対して、よりシビアになりがちだが、86/BRZはステアリングのチルト/テレスコやシートリフターを標準装備するのでアジャストしやすい。シートスライドやリクライナーのノッチがもう少し細かければ、とは思ったが、ほとんどの人が適切なポジションを取れるはず。

足もとは非トランスアクスルのFRスポーツとしては異例に広く、室内幅も助手席ドアが遠く感じられるほど広い。これは長所でもあるが、一方でスポーツカーらしいタイト感は良くも悪くも薄め。「クルマを着る」ような感じはない。

 

リバースはリングを引いて左奥。ハンドブレーキは抜群に引きやすく、ジムカーナに最適

ステアリングは真円の365mm径。センターの「六連星」が誇らしい
 

「身長170cmが着座可能」な後席。短時間試したスタッフ(身長172センチ)によると「意外に快適でOK」とのこと

オプションのレザー・アルカンターラパッケージ装着車。BRZのシートは全て黒基調で、86のように黒/赤のコンビはない
 

タイヤを4本積めるのが86/BRZの売り。床面はほぼ水平になる

スペアタイヤはなく、床下にはパンク修理キットと小物入れがある
 

基本性能&ドライブフィール

6ATとはまるで別モノ?


新開発の自然吸気「FA20型」エンジン。インテーク部分に「SUBARU BOXER」「TOYOTA D-4S」と刻まれる

試乗したのは最上級グレード「S」の6MT(279万3000円)。すでに86に試乗しているので、操作で戸惑う部分はないが、今どきのMT車らしくクラッチを踏み込みながら、左手で始動ボタンを押すのが新鮮かつ少々やりにくい。キュンキュンキュンと長めのクランキングの後に始まる「ザザザザ」という例のボクサーサウンドは、お世辞にもスポーツカーっぽくないが、「スバル車だなぁ」とやっぱり今回も(86と同じで)思ってしまう。

拍子抜けするほど軽いクラッチペダルをリリースしながら発進。低速トルクはどちらかというと弱々しいが、いったん動き出せばフラットなトルクで、軽々と速度を乗せてゆく。あれっと思ったのは、6AT車と違って2速、3000回転からでも十分に力強いこと。6ATとギアリングが違うのは86試乗記でも書いた通りだが(6ATは全体にハイギアードで、6MTはクロース気味)、とにかく6ATのかったるさが6MTにはない。まるで別のクルマみたいに感じられる。

エンジン音の聞こえ方が違う?

もう一つ、意外に違うと思ったのはエンジン音で、なぜか6MTでは6ATほど高回転域での突き抜け感が「演出」されていない感じ。例の吸気音を増幅させてキャビンに伝える「サウンド・クリエイター」は86/BRZに全車装備だが、6MTでは割と「素の音」という印象。ATの方はブリッパー付でかなりスポーティな変速制御を行うが、加えてエンジンの制御マップも「ドラマチック」重視では?と思ってしまった。一種の錯覚かもしれないけれど。

パワー感は十分。ギアリングも文句なし

もちろんステップ比の小さい6速マニュアルを駆使し、リズミカルに加速してゆくのは最高に気持ちいい。スペック的には最高出力が200ps/7000rpm、最大トルクが6400-6600回転とかなりの高回転型だが、6MTであれば4000回転、5000回転、そして6000回転からでも気持ちよく、力強く加速してくれる。2速でレッドゾーン(7400回転)手前まで回せば、ちょうど100km/h。そこから3速へのつながりもいい。

当然ながらターボエンジンのような怒涛の速さはないが、200psは伊達じゃない。パワーウエイトレシオは6.15kg/ps(1230kg/200ps)。パワー感で近いものを一つ挙げるなら、やはり86の時にも書いたようにRX-8だろうか。

 

BRZのメーターは全車デジタル速度計付き。レブインジケーターも装備するが、高回転域に設定すると、ピーという警告音がエンジン音にかき消されて聞こえないのが玉に瑕

ちょっと残念なのは、操作系のフィーリングが妙に軽々しいこと。電動ステアリング自体はズシッと重めだが、逆にクラッチペダルは軽く、ミートする時の感覚も頼りない。またアイシンAI製の6速ミッション(輸出向けIS用の改良型)も操作感に手応えがなく、剛性感も今ひとつ。ゴリゴリに重いのは困るが、こんなに軽い必要はないのでは。またアクセルペダルも、ブレーキペダルより少し奥にあるせいか、ヒール&トゥの際に空振りしそうになる。シートを前に出せば、そうでもないが(ひょっとしてそれが正しいポジションかも)、もうちょっと手前でもいい気がする。

後輪で路面を「蹴り続ける」感覚


開発コンセプトは「Pure Handling Delight」。売りは水平対向エンジンによる「超低重心パッケージング」になる
(photo:富士重工業)

ハンドリングは基本的には6ATと同じで、まずVSCオンではタイヤ自体のグリップ力が低いこともあって、あっけなくVSCが介入してくる。これはこれで安全・安心だが、まるで「門限6時」という感じで、ちょっと自由がない。

多少なりとも86/BRZらしい走りを味わう場合は、「スポーツVSC」を選択すべき。というか、これがデフォルトでも良いと思うくらい。これなら安心してアクセルを積極的に踏めるし、スライドもある程度まで許してくれる。具体的にはステアリングの舵角がちょうどゼロになるくらいまでリアを流して、その後にギュギュギュとスライドを止めてくれる感じ。

 

17インチ仕様のタイヤは86と(そしてプリウスと)同じミシュランのプライマシーHP

さらにVSCオフボタン(通常は雪道などの低ミュー路で使う)を3秒以上長押しすると、50km/h以上でもVSCが復帰しないVSC完全オフになる。取扱説明書には「停止中に操作」とあるが、今回試してみたら走行中の操作でも完全オフになった。

この状態ではABSと電子制御LSD機能が残ったまま、TRCとVSCが完全オフになる。こうなると後はドライバーの技量次第で、クルマの動き方さえ飲み込めば、持てるパワーを全て引き出し、後輪でアスファルトを「蹴り続ける」感覚が味わえる。当然ながら昔のFR車よりはるかに限界制能は高く、むしろVSCオフの方がマージンを保とうとする心理が働くので安全かも。

 

6AT同様、この6MTでもコーナーへの侵入ではアンダーステアが強く、逆にパワーオンでは当然ながら6ATよりずっと大胆に振り回せる。こうなると俄然面白く、一気にクルマが自分にフィットする感覚が高まる。この感覚をそんなにスピードを出さなくても味わえるのが86/BRZのいいところ。ただこれは標準のエコタイヤ(ミシュラン プライマシーHP)がグリップしないせいも大きいが。

ただ、こんな風に少し頑張って走ると、ワインディングレベルでもブレーキは制動力や耐フェード性という点で少し物足りなくなってくる。そのあたりに手を入れてゆくのも、86/BRZの面白さか。

高速道路ではつい高回転まで回したくなる

100km/h巡航時のエンジン回転数は6ATだと約1900rpmで、今回の6MTでは約2500回転(いずれもメーター読み)。6MTは少々低めだが、エンジン音がうるさいということはなく、静粛性は十分。GTスポーツとしてロングドライブも快適にこなせる。

一方、エンジンを7000回転オーバーまで回して、フラットフォー独特のくぐもった絶叫にひたるのも刺激的で楽しい。そんなことばかりしていると、燃費はどんどん悪くなってしまうが、逆に言えばそこまでやっても8km/L前後くらいは維持する。

試乗燃費は8.7~12.4km/L、JC08モードは「S(6MT)」で12.4km/L

今回はトータルで約270kmを試乗。参考までに試乗燃費は、一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が8.7km/L(86の6AT試乗時は9.5km/L)。空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)は12.4km/L(同じく12.6~13.0km/L)だった。

6MTの方が試乗燃費が悪くなってしまったのは、ついついエンジンを回してしまったせいと、大人しく走るだけで燃費が良くなる6ATに対して、6MTはドライバーがマメにシフト操作しなくてはいけないから。6MTでは燃費向上のためシフトアップを促す矢印がメーターに出るが、その通りに運転しようとすると、なにしろ6速もあるので、街中では左手と左足がかなり忙しくなる。

ちなみに試乗した「S」(6MT)のJC08モード燃費は、奇しくもエコラン試乗燃費と同じ12.4km/L。まあ、よほど雑に走らない限り、一般道で10~11km/Lくらいは楽に出るのでは。

ここがイイ

6MTでより深く味わえる、FRらしい走り

6ATも手軽にスポーツカー「っぽい」世界を味わうなら悪くないが、やはり6MTの走りは「なるほど、こういうクルマを作りたかったのか」と納得できる、全てがバランスした、まさにスポーツカーの世界。特にスポーツVSC、もしくは(公道では積極的に勧めないが)VSCオフでのFRらしい走りは、理屈抜きに楽しいものだと思う。

エンジンの爽快な吹け上がり。後で触れるように6MT車のサウンドは今ひとつだが、エンジンの吹け上がり方、レスポンスの良さ、またコーナリング中のコントロール性などは、文句なしだと思う。また、いい音かどうかはともかく、フラットフォーのエンジン音が「生」で聞こえる点も個性的。

今後の発展性。WRX STIのように、スバルというか、その子会社であるSTIがこのBRZを素材にマニアックなモデルを作るのは間違いない。高性能スポーツカーとして考えると、現状では何かと不足感のあるBRZがどう料理されるのか、過給器を装着してモンスターBRZが登場してくるのか、などなど楽しみは尽きない。

ここがダメ

常用回転域でのエンジン音、操作系のタッチ

6MTで少し意外だったのは、6ATよりもつまらなく思えたエンジン音。基本的に同じエンジンで、同じサウンドクリエイターも付いているのに、かなり音が違って聞こえた。また6ATほどではないが、常用回転域でアクセルを踏み込んだ時の一瞬一瞬のパンチも少し物足りないところ。これはエンジンの扱いやすさを優先したものかもしれないが、やはりポルシェのフラットシックスように「噛み付くような」レスポンスが欲しい、などとも思ってしまう。

軽すぎるクラッチペダル、軽すぎるシフトフィーリングなど、MTならではの操作系にカチッとした剛性感や適度な重みがないこと。多くの人に気楽に乗って欲しいという意図は分かるが、もう少しスポーツカーらしい手応えが欲しい。

試乗車ではダッシュボードパネルがシルバーだったが、安っぽいばかりで何のメリットも感じなかった。もともとインパネのデザインは今一つと思っているが、それがかえって目立ってしまった印象。ごく普通の黒で十分。

総合評価

MTは自分の気持ちとクルマが寄り添う

まったくなんという事だろう、MTとATでここまで印象が違うなんて。先回乗ったATの86では、「不足感」が大きかったのだが、今回乗ったMTのBRZでは過不足感なし。ちょうどいい感じの「楽しい」クルマに思えた。86とBRZにほとんど違いはないというのが公式見解のようなので、同じクルマとして話を進めていくが、実際のところMTは素直に楽しいクルマだった。

このエンジンは絶対的な低回転トルクがあるわけではないから、エンジンを回していないと面白くない。というか、低回転では走ってる気にもなれないから、いつでもどこでも高回転側を維持することになる。そこがまずATと違うところ。メーカーの姿勢としてはAT車の場合、燃費を気にして作らざるを得ないから回転はどうしても下げる方向に制御する。普段トルクフルなAT車に乗りなれている身としては、低回転域でトルク感のないATの走りは、どうにもかったるかった。そこで「もっともっと」とアクセルを踏み、その結果、どうにも心が軋むことになる。その点、MTは「燃費など関係なし、スポーツカーなんだから」ということ。自分の意志で高回転を維持するわけだから、かえって心は平穏。自分の気持ちとクルマが寄り添う感じになる。そこがいい。

ドライバーのウデ次第のスポーツカー

同じことはワインディングを走った時にも言えて、MTの場合は自分の運転能力に合った動きをしてくれるから、クルマに対して「もっともっと」と要求する気にはならない。ドライバーが自力で持てる性能を引き出せばいいだけ。うまい人はそれなりに走れるし「下手くそ」でもVSCが助けてくれるから安心して走れる。昔、スープラを試乗中にスピンして冷や汗をかいたことがあったが、さすがに昨今のクルマではそういうことはない。ただしVSCを切ってしまうと今度は自分のウデ次第という領域に入っていく。ウデに自信のない人はスポーツVSCの範囲で楽しむことだろう。

いずれにしても、86/BRZのMTは、実に楽しく安全に遊べる。ここらあたりは昨今のクルマの良いところ。昔から言っているが、そうした場合にはアンダーパワーの方がエンジンを思い切り回せる分、楽しい。なるほどターボ無しなのはこのためか、と理解できる次第だ。つまりはドライバーのウデ次第のスポーツカー。一般的なドライバーがクルマの挙動というものを味わってみたい、クルマを振り回してみたいなどと思った時は、これくらいがちょうどいいし、ウデが上達したら、それに伴ってチューンしていけばいいわけで、その余地も十分とられている。

だが、もともとウデに覚えのある人には面白くないかもしれない。しかしそれは価格からしても仕方がないところだろう。まあ不足を感じる人は、お金をかけてチューンすればいいし、さもなければもっと高性能なスポーツカーに乗ればいいだけの話だ。より本格的なスポーツカーは日本車以外にいくらでもあるのだから(もちろん価格も跳ね上がるが)。それらは確かにすごく「いいクルマ」、誰もが認める高性能なクルマだろう。ただしそこまでしなくても、このクルマなら楽しめるということが重要。そうやって楽しむ人こそが絶対的に「多くの人」であり、そこをうまく救いあげれば量産車としてビジネスにもなろうというものだ。

「走る場所」なしで、スポーツカーの復権は難しい

ただ、そんな多く人にとっては、一体どこでこのクルマを走らせればいいのか、という悩みは深い。BRZのように絶対的に速くないクルマですら、それに見合った場所はそうはない。関東圏の人には箱根というかなり特殊な場所があり、芦ノ湖スカイラインや箱根ターンパイクあたりというのが一般的なところだろうか。またトヨタは峠セレクションなんてのもやっているが、そんな場所を走る場合でもスポーツ走行は残念ながら安全運転とは言いがたい。

スポーツカーの復権をいうのであれば、まずは走れる場所を何とかしないと、とメーカーやインポーターには強く言いたい。トヨタには地元三河に皆が走れるサーキットを作って欲しいと昔よく書いたが、今もその気持ちに変わりはない。しかし三河の山中も昨今は自然保護の観点から難しいようで、トヨタは自前のテストコースですら、いまだ作れていないのが現状だ。走るクルマと走れる道をセットで用意しないとスポーツカーの復権は難しい。特にこういう「誰もがそれなりにスポーツ走行が楽しめるクルマを作った」のだからこそ、もっと対策を考えないと。ハードウエアは素晴らしいが、ソフトウエアがダメというのが、日本の工業製品が衰退しつつある理由の一つではないか。スポーツカーの復権を言うのであれば、まずはソフトの部分である「走る場所」をセットで考えるべきだろう。

 

クルマで遊ぶという点では、ハードのクルマは極論、なんでも構わないとすら思う。英国のテレビ番組「トップギア」でどれだけぶつけても気にならない普通のFFポンコツセダンを使って競うレース(コースの半分がダートで、残りが舗装路)を放映していたが、ハードはただのポンコツセダンでも、ソフトである走る環境さえあれば、それなりにスポーツとして楽しめることをその映像は証明していた。86/BRZは素晴らしいスポーツカーだが、そいつで楽しめるソフトを用意しないと、自動車文化云々とはいえないのではないか。しかしそのためのハードルは、クルマを作ることよりさらに高そうなのが辛い。

 


試乗車スペック
スバル BRZ S
(2.0リッター水平対向4気筒・6MT・FR・279万3000円)

●初年度登録:2012年3月●形式:DBA-ZC6
●全長4240mm×全幅1775mm×全高1300mm ※全高はアンテナベースを含む数値。ルーフ高は1285mm
●ホイールベース:2570mm ●最小回転半径:5.4m
●車重(車検証記載値):1230kg(690+540) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:FA20
●排気量・エンジン種類:1998cc・水平対向4気筒DOHC・4バルブ・直噴+ポート噴射・縦置
●ボア×ストローク:86.0×86.0mm ●圧縮比:12.5
●最高出力:147kW(200ps)/7000rpm
●最大トルク:205Nm (20.9kgm)/6400~6600rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L
●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:12.4km/L

●駆動方式:後輪駆動(FR)
●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 ダブルウイッシュボーン+コイル
●タイヤ:215/45R17(Michelin Primacy HP)
●試乗車価格(概算):-円  ※オプション:-円
●ボディカラー:クリスタル・ブラック・シリカ
●試乗距離:約270km ●試乗日:2012年7月
●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

 
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名古屋スバル自動車

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