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トヨタ C-HR新車試乗記(第806回)

Toyota C-HR

(1.2Lターボ:251万6400円~、1.8Lハイブリッド:264万6000円~)

こだわったのは「デザインと走り」。
カッコいいのは分かった。
「我が意の走り」はどうだった?

2017年02月14日

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キャラクター&開発コンセプト

TNGAシャシー第2弾の新型コンパクトSUV

トヨタ C-HRの画像

2016年3月のジュネーブショーで市販モデルを発表、12月14日に国内で発売された「C-HR」は、トヨタにとって久々の新型コンパクトSUV。出遅れていたジャンルでまき直しを図る、ブランニューの新型車だ。

現行の4代目プリウスと同じ新世代プラットフォーム、TNGA(ティーエヌジーエー=トヨタ ニュー グローバル アーキテクチャー)がベースの第2弾モデルであり、アンダーボディの一部を変更して着座位置やアイポイントを120mmアップし、クロスオーバーSUVらしいスタイリングを実現している。

「走り」と「デザイン」を徹底追及

トヨタ C-HRのアイディアスケッチ、初期モデル、市販車
左からアイディアスケッチ、初期モデル、市販車

コンパクトSUV購入時にユーザーが求めるのは「デザインと走り」という市場調査にもとづき、走りについては欧州各国の道、特に独ニュルブルクリンクのオールドコースや、その近くのカントリーロード「L74」を徹底的に走り込んで、レスポンス、リニアリティ、コンシステンシー(車速、横G、路面状況などに影響されない一貫した応答性)を追求したという。開発コンセプトは「我が意の走り」。

デザインについては、初期のアイディアスケッチそのままで市販することにこだわった。ダイアモンドをモチーフにしたシャープな造形、同クラスSUVで最も大径のタイヤ、同クラスSUVで最も角度を寝かせたというリアウインドウで、クーペのようなスタイルとしている。

プロジェクトネームがそのまま車名に

トヨタ C-HRの小西良樹チーフエンジニアと古場(こば)博之主査
C-HRの開発を担当した小西良樹チーフエンジニア(左)と古場(こば)博之主査

開発スタッフによれば、車名C-HRはもともと開発時のプロジェクトネームであり、Compact High Rider もしくはCross Hatch Run-aboutが由来だという。プロジェクトネームが車名になるのはトヨタでは異例とのこと。「他社のモデル名(ホンダ HR-VやCR-Vだろう)と似ていると社内でも指摘されたが、「(こうした経緯があるので)それは覚悟の上」(古場主査)で採用したという。

月販目標6000台。海外向けはトルコ生産

販売チャンネルはトヨタ全店(トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店)。月販目標は6000台。受注台数は発売時点で約2万9000台、発売の一ヶ月後には約4万8000台(ハイブリッドが約3万7000台、ターボ車が約1万1000台)に達したという。

生産は国内およびオーストラリア向けが、トヨタ自動車東日本の岩手工場。欧州など海外市場向けはトルコ工場が担う。将来的には100ヵ国以上で販売する予定だ。

ライバル車はホンダ ヴェゼル(ガソリン車とハイブリッド車がある)、マツダ CX-3(1.5Lディーゼルのみ)など。

 

■外部リンク
トヨタ>新型車C-HRを発売(2016年12月14日)
トヨタ>C-HR 受注状況について(2017年1月19日)

■過去の参考記事
ニュース>トヨタ、新型コンパクトSUV「C-HR」を発売(2016年12月14日掲載)

 

価格帯&グレード展開

1.8Lハイブリッドと1.2Lターボ

トヨタ C-HR  S(ハイブリッド)の画像
C-HR S(ハイブリッド)

日本仕様は1.8LハイブリッドのFF車(システム出力122ps)と1.2L直噴ターボ・CVTの4WD車(116ps、185Nm)の2モデル・4グレード展開。価格はハイブリッド車(2WD)が264万6000円~、1.2Lターボ車(4WD)が251万6400円~。

【1.8L 直4(2ZR-FXE)・ハイブリッド・電気式CVT・FF】
JC08モード燃費:30.2km/L
・S  264万6000円
・G  290万5200円 ※試乗車

 
トヨタ C-HR STの画像
C-HR S-T (1.2Lターボ)

【1.2L 直4ターボ(8NR-FTS)・CVT・4WD】
JC08モード燃費:15.4km/L
・S-T  251万6400円
・G-T  277万5600円

海外にはターボのFF車や6MTも

トヨタ C-HR ハイブリッドのパワートレイン画像
C-HRのハイブリッドパワートレイン

1.8Lハイブリッドはプリウスと同じものだが、C-HRにはプリウスにある電気式4WD「E-Four」はなく、FFのみ。開発スタッフによれば、C-HRはプリウスより車重があるため、より強力な後輪駆動用モーターが必要であり、プリウスのE-Fourをそのまま搭載する予定はないという。

 
トヨタ C-HR 1.2ターボ・4WDのパワートレイン画像
C-HRの1.2Lターボ・4WDのパワートレイン

1.2Lターボエンジンは、オーリス120Tとほぼ同じもの。欧州仕様にはFFや6MTもあるが、日本向けはCVT(無段変速機)とダイナミックトルクコントロール4WD(電子制御多板クラッチ式4WD)の組み合わせになる。欧州のメディアで高く評価されているのはFFの6MTだそうで、日本にもぜひ導入したいとのこと。なお、オーリス120Tはハイオク仕様だが、C-HRではレギュラー仕様に変更されている。

ミリ波レーダーと単眼カメラを備えるTSSP(トヨタ セーフティ センスP)は全車標準。また、プリウスでは採用が見送られた電動パーキングブレーキも採用されている。

 

パッケージング&スタイル

造形テーマは「セクシーダイヤモンド」

トヨタ C-HR 前7:3の画像

C-HRにとって最大の売りが外観デザインだ。気合いの入り方は、新車発表会の席で別刷りの「デザイン資料」が配られたことからもうかがえる。「デザイナーの想いをそのままの形で実現する」(資料)を合言葉に、スピード感のある形状、ダイヤモンド型の造形を目指したとのこと。ターゲットはあくまでも「大人」、デザインテーマは「セクシーダイヤモンド」だ。

 
トヨタ C-HR、後ろ7:3の画像

その想いは、生産技術部門に最初は「無理っ」と言われたシャープなプレスライン、全高に対するタイヤ外径の比が同クラスSUVで一番大きいという17インチもしくは18インチの大径タイヤ(690mm/1550mm=44.5%)、同クラスSUVで最も角度を寝かせたリアウインドウといった造形に表れている。

ショート&ワイド、そして少し背が高い

トヨタ C-HR、真横の画像

ボディサイズは全長4360mm×全幅1795mm×全高1550mm(ハイブリッドFF)/1565mm(ターボ4WD)。ヴェゼルやCX-3と大差はないが、全幅が1.8mに迫るところに、思い切りが感じられる。

現行プリウスと比較すると、全長が180mm短く、全幅が35mmワイド、全高が80mm高い。つまりショート&ワイド、そしてちょっと背が高い。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
トヨタ アクア X-URBAN (2014~) 4030 1695 1490 2550 5.4
日産 ジューク (2010~) 4135 1765 1565 2530 5.3
VW ゴルフ7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
マツダ CX-3(2015~) 4275 1765 1550 2570 5.3
ホンダ ヴェゼル (2013~) 4295 1770 1605 2610 5.3
トヨタ C-HR (2016~) 4360 1795 1550~1565 2640 5.2
アウディ Q3 (2012~) 4385~4400 1830 1575~1615 2605 5.7
メルセデス・ベンツ GLA(2014~) 4430~4455 1805 1495~1505 2700 5.7
4代目トヨタ プリウス (2015~) 4540 1760 1470~1475 2700 5.1~5.4
 

インテリア&ラゲッジスペース

ドライバー中心のデザイン、高い質感

トヨタ C-HR、インパネの画像

内装も、デザイン、質感、素材、カラーにこだわったもの。ドライバーを中心にデザインされたダッシュボード、メタル調のシフトレバー、ダッシュボードやドアトリムのソフトな表皮など、随所にチャレンジが見られる。そこかしこに配された菱形の「ダイヤモンドモチーフ」もセンスがいい。

 
トヨタ C-HR、フロントシートの画像

フロア自体は現行プリウスと共通だが、シートの下などに部材を追加することで、視点の高いSUV的な空間を実現している。フロアから前席ヒップポイントまでの高さはプリウスより55mm高く、アイポイントは105mm(4WDは120mm)高い。

 
トヨタ C-HR、シフトノブの画像
トヨタ C-HR(ハイブリッド)、メーターの画像
 

閉塞感はあるが、4人乗りとしてはOK

トヨタ C-HR、リアシートの画像

後席はいちおう3人掛けだが、プリウスよりホイールベースが100mm短く、しかも上屋を絞り込んだスタイリングゆえ、横方向が狭く、実質的には2人掛けだ。また、後席ドアハンドルの握りにくさは慣れ次第として、ドアの開口角度も小さい。

 
トヨタ C-HR、ドアハンドルの画像

それでも、シートの座り心地はいいし、後席の足元は意外に広い。サイドウインドウが小さいため閉塞感はあるが、4人乗りクーペと思えば十分に快適だ。

荷室の使い勝手はクラス相応

トヨタ C-HR、トランクの画像

荷室容量(後席使用時)は318Lと、このクラスのSUVとしては順当なもの。後席の背もたれを倒せばフラットなフロアが広がるあたりはSUVらしく気が利いているし、大人でも寝られる奥行きがある。ただし天地は700mm弱しかないの、自転車は横に寝かせて積むことになる。

 
トヨタ C-HR、荷室の画像

床下にはパンク修理キットや収納スペースがある。オプションでスペアタイヤ(1万0800円)も選択できる。

 
トヨタ C-HR、荷室床下の画像
 

基本性能&ドライブフィール

スポーティさは、さほどでも

トヨタ C-HR、エンジンの画像

新車発表時に1.8Lハイブリッド車と1.2Lターボ車の両方にチョイ乗りしたが、今回試乗したのはハイブリッド車の上級グレード「G」(290万5200円)。オプション込みで約344万円という仕様。

その第一印象は「視界のいいプリウス」。パワートレインは、駆動用電池がニッケル水素になること以外、現行プリウスとほぼ同じで(プリウスの一部グレードはリチウムイオン電池)、システム出力の122psもまったく同じ。出足は電気モーターのおかげもあって力強い。

車重はプリウスより50kgほど増えているので、それをカバーするために最終減速比はプリウスの2.834から3.218にローギアード化されている。おかげでパワー感は、少なくとも街中では現行プリウスと大差ないという印象だ。

 
トヨタ C-HR、試乗中の画像

ただしアクセルを踏み込むとエンジンはすぐに掛かり、あとはCVT的にエンジン音をブォーンという響かせながら加速するという、いつものトヨタ製ハイブリッド車になる。この印象はパワーモードを選んでも根本的には変わらない。カッコがいい上に、トヨタが走りの良さをアピールしているため、少々肩すかしを喰らった気分にはなる。

参考までに、現行トヨタ車のパワーウエイトレシオ(PWR)を並べてみると以下のようになる。PWRは車重を最高出力で割った数値(ハイブリッド車はシステム出力を使用)。数字で見る限り、少なくともアクアより遅くても不思議ではないのが分かる。

■ヴィッツ (1.0L)  14.1kg/ps
■C-HR (1.2Lターボ・4WD)  12.7kg/ps
■C-HR (1.8Lハイブリッド)  11.8kg/ps
■プリウス (1.8Lハイブリッド)  11.3kg/ps
■オーリス120T (1.2Lターボ・FF)  11.2kg/ps
■ヴィッツ ハイブリッド (1.5Lハイブリッド)  11.1kg/ps
■アクア (1.5Lハイブリッド)  10.8kg/ps
■ヴィッツ (1.3Lガソリン)  10.2kg/ps
■ヴィッツ RS (1.5Lガソリン)  9.5kg/ps

街中ではめっぽう乗りやすいが

トヨタ C-HR、真横の画像

乗りやすさという点では、トヨタ車の中でもかなり上の方だろう。見晴らしは悪くないし、車両感覚はつかみやすく、最小回転半径は5.4mとまずまず小さい。この乗りやすさこそ、誰もが体感できる「我が意の走り」かも、などと思う。

乗り心地もいい。さすが現行プリウスと同じTNGA、そしてダブルウィッシュボーンのリアサス。路面の荒れたところでもゴトゴトいわないし、ロードノイズも気にならない。「快適コンパクトSUV」、そんな言葉が浮かんでくる。

一方、クルマ好きからすると電動パワステのスローな反応や、まったりした身のこなしが、いかにも従来のトヨタ車と変わらなく感じられ、ちょっと拍子抜けしてしまう。トヨタ車なんだからトヨタ車っぽいのは当たり前だが、欧州車レベルに仕上げたというハンドリングを街中で実感するのは、このハイブリッドでは正直言って難しいと思う。

 
トヨタ C-HR、18インチタイヤ&ホイールの画像

それでもワインディングを走れば、隠れたポテンシャルが見えてくる。SACHS製ダンパー、大径スタビライザー、ウレタンアッパーサポート(リア)、ボールブッシュ(リア)などのC-HR専用パーツが奢られた足回りは、路面を終始捉えて安心感があり、ステアリングを鋭く切り込めば、おっ、なるほどと思えるソリッドな身のこなしも見せてくれる。

とはいえ、動力性能も含めて何かにつけて反応はプリウスより穏やかなので、ムチ打って走らせても際立って楽しいわけではない。ターボのマニュアル車だったりしたら、また違うと思うが。

レーダークルーズで高速巡行

トヨタ C-HR、メーターの画像

100km/h巡行は静かで快適。全車標準の全車速追従型レーダークルーズコントロール(115km/hまで設定可能)に任せて走れば、特に不満はないし、燃費もいい。

細かいことを言えば、レーンディパーチャーアラート(LDA)のステアリング制御が、車線逸脱しかけないと作動しないタイプで、出来れば車線中央をキープするようにアシストしてくれるタイプが良かった。新型インプレッサのEyeSight(ver.3)にはすでに採用されている。

それ以上に高速道路で気になったのは、思ったように加速してくれないこと。原因は前述のように車重だと思うが、ひょっとして意図的なセッティングでは?とさえ思えた。

試乗燃費は16.6~26.9km/L、JC08モードは30.2km/L(ハイブリッド)

トヨタ C-HR、給油中の画像

今回はトータルで約270kmを試乗。試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を走った区間(約80km)が16.6km/L。高速道路を80~100km/hで走った区間(アップダウンありの約90km)が20.0km/L。一般道を大人しく走った区間(約30km)が26.9km/Lだった。高速道路より、渋滞する一般道の方が燃費がいいのはプリウスと同じだ。

JC08モード燃費は、ハイブリッドが30.2km/L、1.2Lターボ・4WD車がその約半分の15.4km/L。実燃費はその3分の2程度としても、ハイブリッドの燃料費が1.2Lターボの半分程度に収まるのは変わらないだろう。指定燃料はいずれもレギュラー。

燃料タンク容量はハイブリッドが43L、ターボ車が50L。現実的な航続距離はハイブリッドなら800km以上(満タン時には航続可能距離820kmと表示された)、ターボ車は500kmといったところか。

ここがイイ

運転しやすい。静かで快適。TSSPの標準装備。燃費(ハイブリッド)。立体駐車場OKの全高

トヨタ C-HR、試乗中の画像

何となく前方視界に違和感のある現行プリウスと違い、C-HRは車両感覚をつかみやすく、一回り小さなクルマに乗っている感がある。全長もプリウスよりコンパクト。後席は実質2人掛けだが、スタイリッシュな都市型ランナバウトとして考えれば実用性は十分では。

TSSP(レーダークルーズコントロール、オートマチックハイビーム、レーンディパーチャーアラート等を含む)など、充実した先進安全装備。上級グレードにはブラインドスポットモニターも付くし、リアクロストラフィックアラート(RCTA)もオプションで追加できる。今、300万円前後の新車に付いていてほしい安全装備が、とりあえず一通り揃っている。

ハイブリッド車なら燃費もいい。どんな走り方でも17km/Lくらい、普通に走れば20~22km/Lくらい、エコ運転すればもっといい燃費で走る。今回は270kmほど試乗したが、ガソリン代は2100円で済んでしまった。経費削減したい方にとって、トヨタのハイブリッド車は相変わらず強い味方だ。

全高はハイブリッドだと1550mmで、一般的なタワーパーキングに入るのはアーバンSUVとしては嬉しいポイント。全高がこれだけ低いSUVは、他にCX-3やGLAなど少ないから、このクルマが似合う「都会」で生活する人には重要な選択肢になるだろう。

ここがダメ

物足りない動力性能。ドライブモード切り替えのしにくさなど

トヨタ C-HR、試乗中の画像

少なくとも街乗りレベルだと、走りはかなり穏やかで、これまでのトヨタ車(特にプリウス)と乗り味に大差がない。本文にあるように、ワインディング等を走ればポテンシャルを体感できるが、街中でゆっくり走ってもスポーティさや楽しさを体感できれば良かった。

法定速度100km/hの日本では不要かもしれないが、高速域での中間加速が効かないこと。歴代プリウスと比べても“遅い”と感じてしまった。カタログ上の最高出力はハイブリッド車が122ps(システム出力)、ターボ車が116psだが、高速域での走りを求めるなら1.2Lターボ車かもしれない(ターボ車は高速道路では乗れてないので推測だが)。

 
トヨタ C-HR、メーターディスプレイの画像

最近のトヨタ車で多いケースだが、ドライブモード(ノーマル、パワー、エコ)の切り替えが面倒なこと。ステアリングスイッチで設定画面を呼び出した後、好みのモードを選んでから決定ボタンを押さねばならないため、ブラインド操作出来ないし、走行中にやろうとすると注意散漫になる。なお、ノーマルモードとエコドライブモード選択時にパワースイッチをOFFにした場合は、そのモードが維持されるため、ほとんどの人はノーマルモードかエコモードのまま乗ることになるだろう(パワーモード選択時にOFFにした場合はノーマルモードにリセットされる)。

総合評価

カッコいいものは売れる

トヨタ C-HR、試乗中の画像

人は見た目が全てという新書本がヒットしたのは10年前のこと。これ、全てとは言わないが、8割方そうではないかと思ったりする。人間、人となりは、確実に見た目に現れる。見た目が素晴らしい人が素晴らしい人という意味ではなく、人の内面というものはやはり外見に現れてしまうということだ。デブは経営者失格、という米国流のお話もまあ、分からなくもない。実際、専門的な分野を除き、見た目はしょぼくれているのに、中身はすごいという人には会ったことがない。そう言い切ると反論はあるだろうが、やはり見た目はその人となりをかなり表すものだと思う。

消費者向けプロダクトとなると、それはもっと明確だ。多くの商品はまず見た目の良さを目指して開発される。見た目が悪いものは売れない。スマホを例にあげると、その性能だけでなく、見た目がいいことで、iPhoneは価格が高くてもよく売れた。もちろん、見た目が良くても性能がダメなら売れないわけだが、昨今のアンドロイドなど、性能はどれも相当高くなってしまい、もはや大差ないところまで来ている。その意味ではスマホも今後は、よりデザインが重視されるだろう。

 
トヨタ C-HRの画像

しかしクルマは、見た目がすべて、とはなかなか言えない商品だ。見た目がカッコよくても、走らないクルマは評価が低かったものだ。しかしトヨタの最近の調査では、国内におけるコンパクトSUVの購入重視点第1位は「スタイル・外観」で39%、第2位は「燃費」で14%、第3位が「駆動方式」で8%。見た目が全てとまでは言えないものの、かなり大きいわけだ。

モーターデイズでも新型車に試乗して散々ああだこうだと言っているが、今やどんなクルマに乗っても、実は走りでは大きな不満は出ない。C-HRについても、本文では走りに関して突っ込んで書いてみたが、それはマニアックなクルマ好きの視点。調査のように一般の人にとっては、今や走りの優先度は低く、カッコいいクルマが欲しいだけなのだ。そして、カッコよければひとつやふたつ気に入らないところがあろうとも、あばたもえくぼとなる。とにかくカッコいいクルマなら売れる。単純、明快な結論だ。

 
トヨタ C-HR、リアコンビネーションランプの画像

C-HRは本当にカッコいい。元のデザインを描いたのはトヨタの北米デザイン拠点キャルティのようだ。これまでもキャルティのオッと思わせるデザインスケッチから生まれたクルマは数々あったが、たいていは開発の途中で手が加えられ、もともとのカッコよさが削がれてしまっていた。しかし今回はそういうことがなく、デザインスケッチほぼそのままで商品化されている。同様にデザインスケッチのまま市販車になった例としては、キャルティデザインではないが、現行シエンタがある。シエンタも最初のデザインがほぼ生きた造形だ。初見はぎょっとしたが、実際に売れている。

C-HRは実用性よりカッコ優先という大英断のようにも思えるが、実は前述したように、これもマーケティングの賜物だろう。荷室をちまちま広げてカッコよさを削ぐくらいなら、多少狭くてもリアウインドウを寝かせて、カッコ優先にした方が売れる。そんなマーケティングがトヨタの主流になりつつあるようだ。「最近のトヨタ車はカッコいいよな」と言われる時代がまもなく来るだろう。

このカッコよさを実現するためには、技術的なブレイクスルーもたくさんあったようだ。TNGAは各所がコンパクトになるので、デザインの自由度が上がるそうだし、このシャープな造形を実現するプレス技術もレクサスを上回る基準だという。日本車の場合、ホイールハウスとのクリアランスがないと、スノーチェーンを装着できないということでカッコ悪くなったものだが、今回はそのあたりも考慮されているようで、ちゃんとチェーンがオプションで用意されている。つまりカッコいいものは売れるという分かりやすいマーケティングで開発部門と生産部門の意識が統一されたことにより、このプロダクトは世に出た。

カッコよくなれば日本車はもっと売れる

トヨタ C-HRの画像

マーケティング的には、カッコの次は走りではなく、燃費だ(少なくとも日本では)。そこは毎度おなじみのハイブリッドでちゃんと押さえてある。しかしその結果、カッコいいスタイルから受ける印象と、燃費重視のパワートレインから受ける印象とのバランスがイマイチになってしまったように思う。それでもシャシーはいいので、走りたい人はガソリンターボの方をどうぞ、ということだろう。この1.2Lターボエンジンは我々もオーリス 120Tで高く評価している。ゆえに欧州向けの1.2Lターボと6MT、そして車重の軽いFFとの組み合わせこそが、このクルマ本来の姿のように思う。そんな6MT仕様が日本にも導入されたら、トヨタゆえそれなりの台数が売れると思うので、ぜひ検討願いたい。社長決断でできてしまいそうにも思えるがw

調査で分かるように、昨今は走りなどどうでもいい。実際、走行モード切り替えスイッチの使いにくさは、そこを見据えたものではないかとさえ思う。おそらく多くの人はほとんど走行モードなど切り替えないだろう。それで、そう不満もなく乗ってしまうはず。高速道路など、この頃は流れる速度が確実に落ちてきているし、今後、自動運転の世界にでもなれば、制限速度を超えるようなこともなくなるはず。現在の大型トラック同様、速度リミッターが付くようになるだろう。自由に、速く、安全に走れることこそ、自動車業界が、いや人類が目指してきたものではなかったと思うのだが、どうも最近はそうではない方向に向かっているように思えてしまうのが残念だ。

 
トヨタ C-HR、試乗中の画像

試乗したC-HRは、カッコよくて、燃費がよくて、日本では過不足なく走る。そして欧州その他の国向けには6速MT車もあって、カッコよくて、よく走るクルマになっているのだろう。世界もカッコよさは求めている。レクサスではなく、トヨタブランドのクルマが、世界に通じるカッコよさを持つようになってきたことは、大いに歓迎したい。そして日本車全体がもっとカッコよくなれば、日本車はもっと売れるだろう。日本人に通じるこのクルマのカッコよさが、世界ではどう評価されるか、注視していきたい。

 

試乗車スペック
トヨタ C-HR(ハイブリッド) G
(1.8L直4ハイブリッド・FF・290万5200円)

●初年度登録:2016年12月
●形式:DAA-ZYX10(-AHXEB)
●全長4360mm×全幅1795mm×全高1550mm
●ホイールベース:2640mm
●最低地上高:140mm
●最小回転半径:5.2m
●車重(車検証記載値):1440kg(870+570)
●乗車定員:5名

●エンジン形式:2ZR-FXE
●排気量:1797cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・ガソリン・横置
●ボア×ストローク:80.5×88.3mm
●圧縮比:13.0
●最高出力:72kW(98ps)/5200rpm
●最大トルク:142Nm (14.5kgm)/3600rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:レギュラーガソリン
●燃料タンク容量:43L

●モーター形式:1NM
●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター)
●定格電圧:-V
●最高出力:53kW(72ps)/-rpm
●最大トルク:163Nm(16.6kgm)/-rpm

●バッテリー:ニッケル水素電池
●トランスミッション:電気式無段変速機

●システム最高出力:90kW(122ps)
●JC08モード燃費:30.2km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):ダブルウィッシュボーン+コイルスプリング
●タイヤ:225/50R18(MIchelin Primacy 3)

●試乗車価格(概算):344万1960円
※オプション合計(概算) 53万6760円
※オプション内訳:アクセサリーコンセント(AC100V・1500W/コンセント1/非常時給電システム付) 4万3200円、ヘッドライト Bi-Beam LEDヘッドランプ+LEDクリアランスランプ+LEDシーケンシャルターンランプ+LEDデイライト 15万1200円、リヤクロストラフィックアラート(RCTA)&バックカメラ 3万7800円、寒冷地仕様 2万8080円
※販売店オプション:フロアマット 3万1320円、T-Connectナビ DCMパッケージ(7インチ) 20万3040円、ETC2.0ユニット 3万2400円、iPod対応USB/HDMI入力端子 9720円

●ボディカラー:メタルストリームメタリック
●試乗距離:約270km

●試乗日:2017年2月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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