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シトロエン C5 ツアラー セダクション新車試乗記(第633回)

Citroen C5 Tourer Seduction

(1.6L ターボ・6速AT・419万円)

1.6ターボにダウンサイジング!
ちょっぴりお買い得になった
国内唯一のハイドロ車は、
最高の高速「ツアラー」だった!

2011年05月27日

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キャラクター&開発コンセプト

今や国内ではシトロエンの最上級モデル


今回試乗したのは「ツアラー」のエントリーグレード「セダクション」

シトロエンの中型セダン/ステーションワゴンである「C5」は、2001年に日本でデビュー。2008年10月には現行の2代目に進化している。インポーターのPCJ(プジョー・シトロエン・ジャポン)によると、フランス本国では同クラスセダンの5台に1台がC5で、直近の販売シェアは約12%。日本での販売台数は2008年(10~12月)が170台、2009年が403台、2010年が368台だ。なお、2008年には日本カー・オブ・ザ・イヤーの「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。

2010年一杯でC6の販売が終了した日本では、今やこのC5がシトロエンのフラッグシップ。同時にシトロエン独自の油圧・ガス併用サスペンション「ハイドラクティブ III プラス」を採用する唯一のモデルともなっている。

マイナーチェンジで1.6ターボ・6ATに一本化

そんな2代目C5が1年前の2010年5月に続いて、今年の2011年2月にもマイナーチェンジした。外観こそ大きく変わっていないが、先のマイナーチェンジでは従来の2リッター直4(4AT)を廃止し、代わりに1.6リッター直4ターボと改良型6ATの新グレード「セダクション」を新設定。さらに今年のマイナーチェンジでは上級グレード「エクスクルーシブ」の3リッターV6(6AT)も廃止し、エンジンを1.6ターボに一本化している。

 

2011年2月のマイチェンで採用されたLEDポジションランプ

このエンジンはPSA(プジョー・シトロエン・グループ)とBMWの共同開発で、すでにプジョー、シトロエン、MINIの各モデルでおなじみのもの。ただしC5のような大型車への搭載は新しく、いわゆる典型的なダウンサイジング(燃費向上のための小排気量化)となっている。全車共通の10・15モード燃費は、従来の3リッターV6モデル(7.7km/L)を約32%上回る10.2km/Lだ。

なお、2011年2月のマイナーチェンジでは、LEDのポジションライトを新設するなど、若干のフェイスリフトも実施。装備の見直しと共に、価格も標準グレードで25万円、上級グレードで10万円引き下げている。

※過去の参考記事
■プジョー RCZ (2010年10月更新)
■プジョー 3008 グリフ (2010年10月更新)
■シトロエン C5 3.0 エクスクルーシブ (2008年11月更新)
■シトロエン C5 2.0 (2001年9月更新)

※外部リンク
■シトロエン・ジャポン公式サイト>プレスリリース>「C5」をマイナーチェンジ(2011年2月24日)
■シトロエン・ジャポン公式サイト>プレスリリース>C5、新エンジンと第2世代トランスミッションを搭載(2010年5月27日)

価格帯&グレード展開

セダンは399万円~、ツアラーは419万円~


こちらは4ドアセダン
(プジョー・シトロエン・ジャポン)

ボディタイプは4ドアセダンとツアラー(ステーションワゴン)の2種類で、それぞれにエントリーグレードの「セダクション」と上級グレードの「エクスクルーシブ」を設定。ちなみにセダクションとは「誘惑、魅力的なもの」という意味。

新価格はセダンの場合、ファブリックシートの「セダクション」が399万円、電動レザーシート(シートヒーター付)の上級グレード「エクスクルーシブ」がそれより50万円高い449万円。一方のツアラーは、パノラミックガラスサンルーフ等を標準装備しながら、セダンより20万円高いだけの419万円と469万円。

 

ツアラーの電動テールゲートは「エクスクルーシブ」のみ

【4ドアセダン】
■C5 セダクション     399万円
■C5 エクスクルーシブ   449万円

【ステーションワゴン】
■C5 ツアラー セダクション   419万円  ※今回の試乗車

■C5 ツアラー エクスクルーシブ 469万円

パッケージング&スタイル

LEDのポジションランプが付いた


ボディカラーは全7色で、写真は新色の「グリハリアー」。いわゆるガンメタ

2011年2月のマイナーチェンジで、「デザイン性を強調したフロントフェイスに一新」(プレスリリース)したと訴えるC5だが、実際にはLEDのポジションランプが付いたり、リアコンビランプのカラーリングが赤から「赤&クリア」になったりした程度。おそらくこのデザインは好評だったのだろう、マイチェンしても外観はほぼ手つかずだ。

 

シトロエンではフランス流に自社のステーションワゴンを「ブレーク」と呼んできたが、この2代目C5からは「ツアラー」と称する。それと関係するのかどうか、シトロエンの歴代ブレークで定番だったガラスハッチ機能は、このツアラーには採用されていない。

 

ホイールベースはセダンと同じ2815mm。ツアラーの方がリアオーバーハングが少し長い

ボディサイズ(セダン/ツアラー)はデビュー時と変わらず、全長4795/4845mm×全幅1860mm×全高1470/1490mm。ツアラーの方がセダンより少し長いが、その差はわずか5センチ。全高が少し高いのもルーフレールのせいだ。

インテリア&ラゲッジスペース

センターフィックスステアリングがポイント


ダッシュボード一体型のHDDナビが標準装備されている現行C5

インテリアもほとんど変更なし。例の「センターフィックス ステアリング」が相変わらずシトロエンっぽいが、それを除けば奇抜さは控えめ。ただし電動パーキングブレーキを2008年の時点で採用するなど(なぜかフランス車は全体的に採用が早かった)、やるべきことはやっている。

相変わらず前席にドリンクホルダーはない・・・・・・と思いきや、センターアームレストの小物入れの底に、折り畳み式(1個分)が申し訳程度に付いていた。

 

ステアリングを回しても、センターパッドはこの通り動かない

パイオニア製のHDDナビ(地デジ付)とオーディオ(ラジオ+CDプレーヤー+USBスロット)はかなり前から標準装備になっていたようだが(デビュー当初はオプション)、基本的には市販品をフィッティングキットで取り付けたような感じ。例えばオーディオこそステアリングのスイッチでコントロールできるが、地デジTVの音量は本体のスイッチを押さなくてはいけない、とか。ただ、モニターはきれいに埋め込まれているし、後付けする面倒もないので、これはこれでいいかも。

「セダクション」には新デザインのファブリックシート


「セダクション」のシート。リフターは付いているが、座面の角度は変えられない

エントリーグレードの「セダクション」には、2011年モデルから新デザインのファブリックシートが採用されている(従来はハーフレザーだった)。クッションの分厚い、いかにもフランス車らしいシートだが、同時にサイドサポートは高めで、形状はかなりスポーティ。腿を膝裏までしっかりホールドする一方、お尻がやや落ち込むタイプで、座面の角度を調整できないのが難点かも。上級グレードの「エクスクルーシブ」なら、バックレスト上部の角度も調整できる電動レザーシートになる。

大型セダンに見劣りしない後席


たっぷりした座面サイズに注目。後席の方がシトロエンらしい

戦前のトラクシオン・アヴァン以来、FFとロングホイールベースがトレードマークのシトロエン。C5のホイールベースも2815mmと長めで、後席は一般的なラージクラスセダン並みに広い。ちなみにC6のホイールベースは2900mm、往年の名車シトロエンDSに至っては3125mmもあった。センタートンネルの出っ張りが小さく、足もとがフラットなところも、FF化の早かったシトロエンでは昔からだ。

 

ツアラーはパノラミックガラスルーフを標準装備。電動シェード付

見た目通り、座り心地もいい。フロントシートと同じように、太ももを膝裏までしっかり保持するタイプで、体全体をシートにあずけるような形で座ることになる。

ツアラーの荷室容量は505~1490リッター


出っ張りの少ない荷室。もちろん大人が足を伸ばして寝ることも出来る

トランク容量は4ドアセダンが467リッターで、ツアラーは505リッター。リアシートを水平に折り畳めるのは、セダンもツアラーも同じ。座面を跳ね上げてから、背もたれを倒す方式(いわゆるダブルフォールディング)だが、ヘッドレストを外す必要はなく、力も要らないので操作は簡単。

 

真ん中が「ラゲッジルーム ハイトコントロールスイッチ」。エンジン停止時でも操作可能

ツアラーの場合、最大容量は1490リッター。さすがにクラス屈指の容量を誇るVWのパサート ヴァリアント(旧型および最近出た新型も1731リッター)には負けるが、とりあえず十分だろう。

 

また、ツアラーには荷室のスイッチでリアの車高を変えられる「ラゲッジルーム ハイトコントロールスイッチ」が先代から継承されている。重い荷物を積みやすくするための機能だが、プシュ~という音を立てながら生き物のように「足」を伸び縮みさせる様子はシトロエンならでは。荷室高をプラスマイナス6cmの計12cmの範囲で調整できる。

 

充電式のフラッシュライト

床下にはフランス車らしくフルサイズのスペアタイヤを搭載。荷室の右にはDC12V電源、左にはプジョーの3008にもあった充電式の懐中電灯が付いている。

 

外すとこんな感じ。元に戻すとスイッチが押されて自動的に消灯する

基本性能&ドライブフィール

2.0と3.0の中間くらい? とりあえず過不足ないパワー

今回試乗したのはツアラーの「セダクション」。エンジンは今やC5で唯一の選択肢である1.6リッター直4・直噴ターボ(156ps、24.5kgm)で、変速機は改良型のアイシンAW製6AT(TF-70SC型)。「第2世代」となるこの中容量FF用トルコン6ATは、フリクションを減らしたり、2速から6速までのロックアップ領域を拡げたりして、スムーズな変速や静粛性を実現したというもの。6ATを含めたパワートレインは、プジョーの現行308、3008、RCZあたりと同世代で、シトロエンでは初搭載になる。

 

おなじみPSA・BMW開発の1.6直噴ターボだが、これは156psバージョン。C5の場合、エンジンベイの左右奧に「スフィア」が見える

このエンジン、以前の2リッター直4(143ps、20.8kgm)よりトルクフルだが、3リッターV6(215ps、30.5kgm)よりは非力と、要するにその両者の中間くらいの性能だが、これが意外によく走る。6ATの変速レスポンスは言うほど速くないが、街乗りでの非力感はなく、排気量がたった1.6リッターとは思えないほど。ターボラグもほとんどなく、ブローオフバルブの音も聞こえないため、2.4リッターくらいのNAみたいに感じられる。

車重はセダンでもツアラーでも、以前の2リッター直4より20kg重いだけで、V6より110kgも軽い。と言っても、車重はセダンで1620kg、ツアラーだと1680kgもあるのだが。まあ、とりあえず過不足ないパワーだと思う。

「ハイドロ」の真価は高速道路で

 

昔は緑色に塗られていた「スフィア」だが、C5のものはグレー

シトロエンと言えば「ハイドロ」。なのだが、少なくとも現行C5で街乗りする場合、その効果を体感するのは難しい。しかし高速道路に入れば、徹底的に水平な姿勢を保ち、滑るように突き進みながらも、高速コーナーを平然と曲がって行く「不思議感」が味わえる。

エアサスペンション付の高級セダンでも、似たような感覚は味わえるが、シトロエンの場合はそれを独自の油圧サスペンション「ハイドラクティブ III プラス」で行うのがユニークなところ。この現代版「ハイドロ」は電子制御を介在させるが、原理は昔と変わらない。すなわち、専用オイルと窒素ガスを封入したスフィアと呼ばれる鉄球を各輪に配置し、それを油圧的に連結して、機械的に車体姿勢や車高の制御、減衰、衝撃吸収を行なう。基本はあくまで力学的なもので、「あっちが縮めば、こっちが伸びる」みたいなパッシブなものだ。とはいえ、理解するのはなかなか難しいが。

 

リアを最も下げた状態。地面が傾いていても、水平を保とうとするのは昔通り

この「ハイドラクティブ III プラス」には、よりハードな設定となる「スポーツモード」スイッチもあり、ワインディングや高速走行時などでフワつく動きを、劇的ではないが、心もち抑えることができる。また低速ではこれまで通り、段差を乗り越える時などに車高を上げることも可能だ。

パワーはないが、高速巡航は得意

100km/h巡航時の回転数は約2200回転で、これは最大トルク発生域である1400-3500回転のど真ん中。余裕たっぷりのシャシーに全てを任せて、淡々と巡航し続けるのが大得意だ。

また静粛性も高く、速度を上げてもぜんぜんうるさくない。ただ、おかげでスピード感はかなり希薄で、知らず知らずのうちにスピードが出てしまう。

 

真ん中がサスペンション用の車高調整および「スポーツモード」スイッチ

一方、高速域になると、パワーウエイトレシオで約10~11kg/psという数字から想像できるように、瞬発力は鈍ってくる。特に登り坂で追い抜く時は、ハイパワー車のようにズバッ、ではなく、ジワジワという感じ。しかしエンジンパワーではなく、シャシー性能で長距離を結果的に速く走る、というのは、DSから続くシトロエンの伝統だ。

そもそも、このC5、決して遅いクルマではない。セダン・1.6ターボ(6AT)の最高速は、メーカー発表値で210km/h。ツアラーは車重が重いので(特に日本仕様)、おそらくその10km/hダウンくらいだろうか。

試乗燃費は9.1km/L。高速巡航では14~15km/L台

今回はトータルで350kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路をまじえた区間(約90km)が9.1km/L。さらに高速道路をハイペースで走った区間(約100km)が14.4km/L、同じく高速道路を一般的なペースで走った区間(約30km)が15.8km/Lだった。印象としては、一般道での燃費はそこそこ、逆に高速巡航では直噴ターボと6ATのロックアップ効果でどんどん伸びる、という感じだった。

10・15モード燃費は10.2km/L(セダンとツアラー共通)。旧2リッター直4のモード燃費は未発表だが、3リッターV6は7.7km/Lだったので、それよりは約3割アップということになる。

指定燃料はもちろんプレミアムで、タンク容量は3リッターV6車と同じ72リッターと巨大だから、高速道路での航続距離は、かなり伸びそうだ。

ここがイイ

高速燃費、快適性、新価格など

流行りのダウンサイジングとなった1.6ターボエンジン、そして改良型6ATで、動力性能をキープしつつ、燃費が良くなったところ。特に高速走行時の燃費は下手なコンパクトカーよりいいし、乗り心地や静粛性は高級車並みで抜群。追い越し時の加速こそ物足りないが、このご時世、これで十分だろう。

独自の油圧サスペンションを備えつつ、セダンで399万円、ツアラーで419万円となった価格。前期型2.0よりパワーアップして、ミッションも6速になって、ナビも付いて、お値段変わらず。また特にツアラーは広い荷室とパノラミックガラスサンルーフ付で、セダンのたった20万円高。お買い得だと思う。

2年半前の「ここがダメ」では、インパネと一体型のカーナビがないこと、そして純正オプションが後付け風で、高価なことを挙げているが、その点はいちおう改良されている。また当時は「オプションのUSBコネクタが3万1500円もする」とも書いているが、それも今や1DINのフェイス部分にUSB入力があるので、いちおう解決済み。

ここがダメ

「セダクション」の運転席シート、質感など

セダンで400万円を切った「セダクション」だが、腿から膝裏まで高めにサポートする運転席シートは好みが分かれそう。ひょっとすると、衝突時に体が前にずれるのを防ぐためかもしれないが、座面を低めにセットするなど、少し工夫が必要だった。

2年前に乗った3.0 エクスクルーシブの内装は豪華に見えたが、今回乗った「セダクション」の高級感は今ひとつかなと思えた。特に樹脂類の質感。また、個体の問題か、ほんの少しアイドリング時に振動があった。

高速巡航性能が素晴らしいゆえ、ミリ波レーダー付のクルーズコントロールは欲しいところ。普通のクルーズコントロールは標準装備だが、言うまでもなく渋滞が多い日本の高速道路では使い物にならない。輸入車ということで、国産車みたいに100km/h+αの設定しかできない、なんてこともないし。

総合評価

クルマとしての不満はない

まずC5の、ステーションワゴンボディの美しさを誉めよう。今、50代以上のクルマ好きは昔から、欧州車ではセダンよりワゴンのほうがカッコイイと聞いて育ってきた。そのせいか個人的には今でも、実際の実用性云々ではなく、セダンよりワゴンのほうが美しく、スタイリッシュで、ステイタス感も高く思え、買うならセダンではなくステーションワゴンに限ると思っている。ミニバン全盛となった日本では、今やワゴンなど壊滅的な状況だが、本場の欧州車にはセダンベースのワゴンがしっかり残されている。とくにこのC5ブレーク、もといC5ツアラーの美しさ、カッコ良さときたら、申し訳ないがC5セダンの比ではない、と個人的には思う。

前期型にあった不満点も一つずつ潰されている。燃費は良くなったし、前期型2.0より走りもいい。一応ではあるがナビも標準装備になったし(どうにも使いにくかったが)、これまた一応ではあるがカップホルダーもひとつ付いた(500ccペットボトルを入れるとアームレストが閉まらなくなるのはご愛嬌)。シート形状に慣れさえすれば、もはやクルマとしての不満はないと言えるレベルだ。

ハイドロの存在意義

ただ、2年半前に試乗したV6セダンは走行距離1000kmほどの個体で、すでにシトロエンらしい乗り味があったが、今回の1.6ターボではそれをあまり感じなかった。それより現代のクルマらしく、シャープに走り、以前のV6よりいくぶん締まった足回りに思えた。おそらく今回の1.6ターボは前軸荷重が90kgも軽かったせいだと思うが(後軸はツアラーゆえ逆にセダンのV6より40kg重かった)、割と普通のクルマに思えてしまったのだ。もちろん、さらに5000kmも走れば、いつものパターンで激変するのかもしれないが。

むろんドイツ車から乗り換えた場合には、こういう設定のほうが違和感がないし、高速巡航ともなればハイドロらしいゆったり感が楽しめる。ただ、その昔、絶賛されたハイドロの良さというのは、中速域でもゆったりした感覚があり、またコーナリング時でも水平な姿勢を保ちながら路面をナメるような接地感があったこと。それはシャキッと速く走るという現在主流の走りとは、相容れないものかもしれない。

ハイドロが生まれた1950年代から60年代は、未舗装路も多く、凸凹の道をいかにユッタリと快適に走れるかがクルマの価値の一つだった。同じ時代のスバル360だって、とにかく足は柔らかだったものだ。シトロエンの場合、舗装路が増えても乗り味は引き継がれ、「あまり走らないけど乗り心地は夢心地」というのが1980年代くらいまでのハイドロ系シトロエンだった。しかし今や世の中は、きれいな舗装路ばかり。ボディ剛性は飛躍的に高まり、車重も増えて、走行性能も上がった。コイルサス+20インチの超扁平タイヤですらが快適な乗り心地を提供できる時代には、シャキッと走るのが重要というわけだ。

 

2011年4月の上海モーターショーで発表された「DS5」。今年中に欧州で市販予定で、ディーゼルハイブリッドもある模様。車名はC5ベース風だが、サスペンションはコイルスプリングになる
(シトロエン・プジョー・ジャポン)

そんな時代にあって、ハイドロはすでに役割を終えつつあるのかもしれない。信頼性は高まっているが、それでも複雑なシステムはやはり故障のリスクをはらんでいるし、製造コストもかかるだろう。なによりクルマの乗り心地など良くて当たり前だとして、第一義の価値としない人が圧倒的に多い昨今、ハイドロの良さを謳ったとしても販売には結びつきにくい。C5の日本版カタログを見ても、サスペンションに関してはほんの150字ほど書かれているだけ。システム説明どころか、アキュムレータ(蓄圧器)のアの字もない。

また乗ってみると、現行C5はそのサイズのデカさがやはり気になる。先代C5あるいはその前のエグザンティアあたりが日本でも扱いやすいサイズだ。もう少し小さめのハイドロ車が欲しいと思うのは、前期型を試乗した時と変わらないのだが、新型C4やDS5でもハイドロは望み薄のようだ。いや前述のように登場から50年を経て、もはやハイドロは存在意義のないシステムになってきているのかもしれない。軽量化を命題とする小型車に載せるなど、とんでもないことなのだろう。

クルマとしての洗練さを増したC5だが、今回試乗した1.6ターボの場合、ハイドロ車としては、いささか物足りないと思えた。しかしその分、「普通に個性的な」欧州ワゴンを求めている人にはおすすめできる。この美しいスタイリングを愛でているだけで、400万円を払う価値はある。タワーパーキングだってギリギリ収まるし、V6並に走って、燃費はいいのだから、明らかな進化だ。日本車でもプリウスαというステーションワゴンタイプ(7人乗りもある)のハイブリッド車が登場し、上級仕様は300万円ほどだ。しかし申し訳ないがクルマ好きとしてはスタイリング的に勝負にならないと思う。納車一年待ちという話もあるが、その納車を待っているより、今、目の前にあるカッコイイ輸入車の方がいい。それが日本の経済を回す上でも健全ではないだろうか。

もう少し売れてもいい

最後にインポーターからの広報資料をまとめておきたい。シトロエンは昨年(2010年)、日本で2402台を売って前年比71.6%と躍進した。この数字は1997年に記録した2535台以来の高水準で、C3とDS3の投入が大きい。

その内、C5は冒頭でも触れたように368台で、前年(2009年)は403台だ。ちなみに先代C5は発売2年目の2002年に553台も売れている。またC5の前身であるエグザンティア(主力の価格帯は300万円前後)は、1994年:1646台、95年:1933台、96年:1930台、97年:1298台と驚くほどの台数が出ている。さらに遡って1991年には、あのXMですらが581台も売れているのだ。そして前年の1990年には当時320万円ほどのBXが3649台! このころはバブルで、西武自動車はもちろん、マツダ系ディーラーが国産車並に売りまくったという事情があったにしろ、これらの数字を見るとC5はもう少し売れてもいいのでは、と思う。マニアには物足りないかもしれない今回の試乗車だが、逆にいえばそこそこの台数が売れそうな一般性を秘めている。みなさん、ぜひお求めください。

試乗車スペック
シトロエン C5 ツアラー セダクション
(1.6L ターボ・6速AT・419万円)

●初年度登録:2011年4月●形式:ABA-X75F02
●全長4845mm×全幅1860mm×全高1490mm
●ホイールベース:2815mm ●最小回転半径:6.1m
●車重(車検証記載値):1680kg(1030+650) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:5F02
●排気量・エンジン種類:1598cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置
●ボア×ストローク:77.0×85.8mm ●圧縮比:-
●最高出力:156ps(115kW)/6000rpm
●最大トルク:24.5kgm (240Nm)/1400-3500rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/71L
●10・15モード燃費:10.2km/L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン/後 マルチリンク+油圧・ガス(ハイドラクティブIIIプラス)
●タイヤ:225/55R17 (Michelin Primacy HP)
●試乗車価格:419万円 ※装着オプション:なし
●ボディカラー:グリ ハリアー メタリック ●試乗距離:350km ●試乗日:2011年5月
●車両協力:シトロエン名古屋中央(株式会社 渡辺自動車)

 
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シトロエン名古屋中央

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