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シトロエン C6 エクスクルーシブ新車試乗記(第445回)

Citroen C6 Exclusive

(3.0リッターV6・6AT・682万円)

好奇の目を逃れるように、
地の果てまで走りたくなる。
そんなハイドロ・シトロエンが
ついに日本へやってきた!

2006年12月22日

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キャラクター&開発コンセプト

シトロエン久々の高級大型セダン

本国から約1年遅れの2006年10月25日、シトロエンC6がついに日本で正式に発表された。同ブランドにとってはDS(1955〜75年)、CX(1974〜89年)、XM(1989~2000年)に続く、久々の大型高級セダンだ。極めて個性的なスタイリング、広々とした室内、伝統の油圧サスペンションによる独特の走行性能、快適性など、その全身全霊が特徴と言える。シトロエンに欠かせない強烈な個性を携えて現れたC6に関係者やファンの期待は大きく、日本では差し当たって年間500台を販売目標とする。

写真は発表後に全国主要都市で行なわれた特別展示会の一つ、ヒルトン名古屋での様子。

価格帯&グレード展開

3リッターV6+6ATで、682万円

本国にはPSAとフォード共同開発の2.7リッターV6ディーゼルターボ「2.7 V6 HDi」(208ps)+6ATもあるが、日本へ導入されたのは3リッターV6ガソリン(215ps)+6ATのみ。全て右ハンドルで、レザー内装、パイオニア製HDDナビを標準装備し、車両価格は682万円となる。

オプションの「ラウンジ・パッケージ」(28万円)は、電動スライドリアシートやサンルーフを備えたショーファー・ドリブン仕様。13万円でサンルーフ単体の注文も可能だ。ボディカラーは7色。そのうち5色はベージュレザーと、残りの2色が黒レザーとセットになる。今回試乗したC6は、グリ・ファルミネーター (ガンメタリック ) とベージュの組み合わせだ。

パッケージング&スタイル

CXに近いスタイルとサイズ

ロングノーズ、ショートデッキ、そしてビッグキャビンという3つの要素から成るスタイリング。基本シャシーはC5と同じ「プラットフォーム3」だが、ボディサイズは全長4910mm×全幅1860mm×全高1465mm、ホイールベースは2900mmと、かなりの胴長。シトロエンの歴代ビッグサルーンと比較すると、スタイリングだけでなくサイズでも、1970年代から80年代に君臨したCXのロングホイールベース版に近いことが分かる。

  全長 全幅 全高 ホイールベース
C6(2005年~) 4910mm 1860mm 1465mm 2900mm
C5 後期型(2004年~) 4740mm 1780mm 1480mm 2750mm
XM(1989年~) 4708mm 1794mm 1390mm 2850mm
CX(1976年~ LWB) 4915mm 1750mm前後 1375mm 3095mm
CX(1974年~) 4650mm前後 1750mm前後 1360mm 2850mm
DS(1955年~) 4800mm 1790mm 1470mm 3125mm

ピラード・ハードトップの4ドアセダン

オーソドクスな3ボックスセダンを基準とすると、その外観デザインはかなりヘン。まるでクジラか、巨大なアリクイのようだ。大きなクォーターウインドウを備えたCピラーが最後端まで伸びるので、まるでファストバッククーペのようにも見えるが、構造的には独立したトランクを持ったノッチバックセダンとなる。

リアウインドウは凹型で、曲率の深い複雑な三次曲面になっている。この意図についてメーカーはトランクの開口部が広がったというほか、「より良好な後方視界を提供」と説明するが、やはり一番のメリットはデザイン的な面白さだろう。樹脂を中間層にラミネートした二重ガラスのサイドウインドウはサッシュレスで、今や懐かしくも新しい「ピラード・ハードトップ」だ。密着性を高めるためドアガラスはドアの開閉に伴って、数十mm自動昇降する。

写真はノーマルの車高だが、C5と同じように時速40km以下では1段階、 10km以下では2段階までスイッチで車高を上げることが可能。停車時には逆に1段階低く出来るほか、110km/h以上では自動的に12mm低くなる。

ルーミーこの上ない

FFなので室内スペースを確保するにあたっては、かなり有利だ。さらにウエストラインが低く、サイドウインドウが大きいので、ルーミーこの上ない。大ぶりなシートの座面はドア一杯まで広がっているが、これは電動シートの調整スイッチをメルセデス・ベンツのようにドア上部に配置して出来たことだ。

シトロエン初となるヘッドアップディスプレイは、本国ではナビ情報も表示するが、日本仕様は車速とシフトポジションなどを映し出す。標準装備のパイオニア製HDDナビは、別体のリモコンで操作。後付けのように見えるが、フランス本国でライン装着されているようだ。内蔵式のドリンクホルダー(回転しながら、ゆっくり展開する)や、電動パーキングブレーキは、シトロエンらしからぬ?気の利き方。ドア内張りにある半円の収納スペースは開ける時は上から蓋を押し下げ、閉める時はスプリングとダンパーの力で上昇する。何となくデザインがジャポニズムを感じさせて面白い。

リムジンとしても使えます

ホイールベースが2900mmもあるだけに、抜群に広い後席。FR車ならホイールベースが3100mm前後のショーファードリブンモデルに相当する広さだ。センタートンネルの出っ張りが小さいのは、1934年に登場した「トラクシオンアヴァン」(その名もすばり「前輪駆動」)以来続く、シトロエンの良き伝統だ。

リアドアとその開口部が真四角なので、乗降性も抜群。これはつまり、後輪がほとんど室内に入り込んでいない、ということでもある。一方、こんな立派な後席にドリンクホルダーが無いのはフランス車ゆえ想定内とも言えるが、さすがに理解しかねる。このインテリアに見合った後付けドリンクホルダーを見つけるのは、そうとう難しそうだ。

トランクスルーも可能な独立した荷室

「セダン」と称しても5ドアだったりするシトロエン。しかしC6は独立したトランクを備える正真正銘のセダンだ。このクラスではトランクスルーを設けないことも多いが、C6(ラウンジパッケージ仕様を除く)はしっかり60:40で後席背もたれが倒せる。開口部の広さと、ヒンジやトランクリッドダンパーの奇天烈な位置に注目。

基本性能&ドライブフィール

軽いパワステ、高い静粛性

威風堂々、奇々怪々なルックスのC6だが、運転操作自体に特別な儀式はない。電動パーキングブレーキは今風だが、エンジン始動は普通にキーを回すタイプ。かつてのハイドロシトロエンのように、エンジンを掛けると車高がムクムクと上がるわけでもなく、ごく普通の感覚で走り出せる。最初に驚くのは、フィアット系の電動パワステにある「CITY」モードに匹敵するほど軽いパワーステアリング、そして高い静粛性だ。エンジン自体が静かというより、遮音が徹底しているという感じだ。樹脂の多層膜を挟み込んだラミネーテッド・サイドウィンドウやアクティブ・エンジンマウント、油圧ダンパー付リアクロスメンバー、負荷によって排気効率を変えるアクティブ・サイレンサーなど、徹底したノイズ対策が効を奏しているようだ。

加速はそこそこだが、不満はない

3リッターV6(215ps、30.5kg-m)はC5より+5psと+0.5kg-m 多いが、車重はそのC5(1560kg)より290kgも重い1850kg。パワーウエイトレシオは8.6kg/psとまずまずだが、「ここ一発のダッシュ」を期待すると、じれったい思いを味わう。

ただし不足を感じるのはその点だけで、静かでスムーズな走りはクルマのイメージに見合ったもの。もともと大きなボディを小さなエンジンで走らせるのがシトロエンの昔からの流儀。高回転まで回すと、フォーンという快音が耳に届くのも悪くない。このPSAのV6、パワーと効率は平凡だが、気持ちよさ自体はなかなかどうして、最新の国産V6よりいい感じだ。スロットルペダルもまるでよく出来たスポーツカーのように軽く、ストロークがあってコントロールしやすい。

低速でもコツコツ来ない

「ハイドラクティブIIIプラス」、またの名を「新ハイドロニューマティック・アクティブサスペンション」は期待に違わず、ひたすらフラットな姿勢を維持しようとする。低速でコツコツと不整を拾うハイドロの弱点が目立たないのは、万人受けするはずだ。スイッチで「スポーツ」を選ぶと、多少足が引き締まるが、根本的な性格は変わらない。通常はノーマルの方が快適だし、ハイドロっぽくて面白い。

どちらかと言うと前が重いクルマだが、予想通りブレーキング時のノーズダイブはごく小さい。一方、鋭く旋回させると、フロントが時に煽られるように感じられるのも独特だ。軽いが正確なステアリングをゆったり切り、スピードを殺さないように出来る限りスムーズに走らせる、というのがC6の、というかビッグシトロエンの乗り方だ。

空気の下を滑りぬける

当然ながら高速「巡航」は得意中の得意。静粛性とフラットライド、独特のスムーズさも手伝って、ガソリンが尽きるまでずっと走り続けたいと思うほどだ。100km/h巡航は6速トップで2000回転ほど。特にハイギアードではないが、エンジン音も排気音も聞こえず、しかしロードノイズはけっこう大きい。これは装着されていた245/45R18のミシュラン(パイロットプライマシー)の性格に依るのかもしれない。風切り音は、それがこの世に存在するということを忘れるほど、聞こえないと言っていい。

高速コーナーでの圧倒的スタビリティも健在だ。下手なスポーツカー(あるいは下手が乗ったスポーツカー)ならアウトから一気にブチ抜ける、と確信できる。高速安定性を確保すべく、約65km/hでリアのトランクリッドに仰角が付き、スポイラーに変身。約110km/h以上では、車高が自動的に12mmダウンし、さらに約125km/hで、先ほどのウイングが滑り台ほどの角度までもう一段ポップアップし、リアの揚力を抑制する。メーカー発表の最高速は230km/h。空気の壁を切り裂く、というよりは、スルッとその下を滑りぬけてゆくような感覚。この疾走感は他のクルマでは決して味わえない。

ここがイイ

期待通り!? の変なカタチ。路上に置いたとき、C6が放つ存在感は強烈だ。C5では違和感があったフロントグリルの造形も、C6では最初からデザインされただけにほとんど違和感はない。ただ、好みとしてはC5のレポートで書いたとおり、ダブルシェブロンだけをメッキにして欲しかった。全体は変なのだが、ちゃんとやんごとなき雰囲気もあり、大統領が乗ってもおかしくない「格」も備わっているのが素晴らしい。

高い静粛性と抜群の乗り心地、抜群の高速安定性、および高速コーナリング性能は絶賛してもいい。高速走行ではどこまで速度を上げてもまったく緊張感を感じさせない。その昔、DSやCXが積んでいた4気筒OHVに通じる、ちょっとローテク感のある非力なV6もキャラクターに合っている。非力と言っても決して遅くはないから、意識的にがんばる必要はない。抵抗感なくスーーとスピードが伸びてゆく感覚が素晴らしいのだ。

いかにも後付のナビだが(音声はナビから出て、オーディオとはつながっていないようだ)、パイオニア製であり、機能的にはまったく不満がない。C5では考えられていなかったナビだが、C6ではちゃんと考えてあるのがうれしい。

ここがダメ

スイッチ類の操作は複雑。カタログにあるように「特に意識することなくあらゆる機能を容易に操作できる」と言いたいのだが、そうは問屋が卸さない。CDスロットの下にずらりと並ぶスイッチ、あるいはステアリング上のスイッチは、かなり慣れないと思うように使いこなせない。操作を表示する小さい方のディスプレイも英語なので、どうにもわかりづらいのだ。それもシトロエンらしさ、と言えなくもないのだが。

固いシート。シートの出来自体は素晴らしく、これがドイツ車や国産車だったら最高と絶賛するところだが、ことDS、CXの系譜にあるシトロエンの最高級セダンともなると、もう少し優しい座り心地を期待してしまう。シートヒーターのスイッチはシート右隅にあり、これも見つけにくい。また内装の汚れが目立つベージュのシートを諦めると、無味乾燥な黒しか選択できないのはつまらない。茶系などのファブリック仕様を求める声は意外と多いのではないだろうか。

左フロントの見切りがよくない。ポールか、トヨタ車のようなノーズカメラを付けたくなる。サイドミラーは防眩なのか、夜になると暗すぎてかなり見にくい。またC4のような「透けるメーター」とか「固定式ステアリングセンターパッド」とかいった、キャッチーなデザインがインテリアにないのも少し淋しい。

約700万円のクルマとしては、あまりにふがいないオーディオ。オーディオマニアにしてみれば、腕のふるい甲斐があるというものだが。静かなクルマなので、うまくすると理想的な移動リスニングルームになりそうだ。

総合評価

ハイドロ。このドロ沼にはまった人は一生出られない。高性能なエアサスがある昨今、いくら進化したとはいえ基本は50年前のまま(とあえて言おう)ハイドロが、一般に賞賛されることはないだろう。しかし、一度味わってしまうともう抜け出せないのがこのハイドロの世界。ハイドラクティヴIIIプラスとなってもその味に変わりはない。低速域ではゴトゴト、中速域以上でヌメーッと路面を舐める走りは、世界で唯一ハイドロシトロエンのもの。C6には何を思ったかスポーツモードがあるが、正直、まったく不必要だ。ロールしないまま路面に張り付いて曲がっていく独自のコーナリングは、そんなギミックの必要性を感じさせない。とにかくこの乗り味がハイドロシトロエンのすべて。ここが気に入るかどうかが、このクルマの評価を分ける。モーターデイズとしてはもちろん「気に入った」。

シトロエンのもう一つのドロ沼はシートだ。大柄な、ふんわりとした体を包み込むシート。さすが椅子文化の国のクルマ、と昔は賞賛されたものだが、C6はこれがよくない。試乗車のシートは固めで、クルマから下りたくない、という気分にはさせてくれなかった。スポーツモードのハイドロやシフトプログラムがあることに合わせたのだろうか。きちんと座ることを強いる、ドイツ車的なシートだ。ドライバーが触れるのはステアリングとペダルとシート。一番面積が広いのはシートであり、かつてのシトロエンはこのシートが絶妙だった。C6の場合は革シートゆえ、そうなのかもしれないので、ファブリックのシート仕様をぜひ導入してもらいたい。ここは「残念」。

C6にはデジタルメーターしかない。最近の潮流はアナログメーターなのだが、それにあえて逆らっているのが素晴らしい。速度が数字で表され、エンジン回転は斜め右に駆け上がっていくバー。そんな今さらなことを最高級車でやるあたりは、やはり偏屈なシトロエンならでは。思い起こせばCXも当初はボビンが回転して速度がわかるという疑似デジタルだった。その後、トラブルが多くて普通のアナログメーターに戻ったのだが、30数年の時を経てリベンジする根性は見上げたもの。独自であろうとするこの姿勢は「支持せずにいられない」。

というわけで、一長一短あるC6だが、全体としては紛れもないシトロエンで、誰がどう見ても「グローバリズムに背を向けた」マイナーなクルマだ。フランス人の独立独歩ぶりを象徴するモデルで、それゆえ日本でも、待ってました、という人が若干名いるはず。同じグループのプジョーがドイツ車寄りのクルマ作りとなり、シトロエンは昔からのフランス車、ルノーはその中間といったところ。そして中でもフランス車色の最も色濃いのがC6だ。そのC6はかつてのCXがモチーフになっているのは誰も否定しないだろう。先週のパジェロでも書いたとおり、過去のモデルをイメージして作るという手法は、C6にも生かされている。ビートル、ミニ、911、そしてC6。これらすべてのクルマのベースは個性的な名車であり、それをリメイクした新型車が出ているが、C6もその流れの中でとらえられる。フランス語でC6はセ・シス、CXはセ・イクスだが、英語でC6(シーシックス)とCX(シーエックス)は一音しか違わない。これは絶対にねらって実行されたことだと思うのだ。

試乗車スペック
シトロエン C6 エクスクルーシブ
(3.0リッターV6・6AT・682万円)

●形式:ABA-X6XFV ●全長4910mm×全幅1860mm×全高1465mm●ホイールベース:2900mm●車重(車検証記載値):1850kg( F:1150+R:700 )●乗車定員:5 名●エンジン型式:XFV●2946cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・横置●215ps(155 kW)/6000rpm、30.5 kg-m ( 290 Nm)/3750rpm ●カム駆動:タイミングベルト ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/72L ●10・15モード燃費:- km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:245/45R18( Michelin Pilot Primacy )●試乗車価格:682万円( 含むオプション:なし ) ●試乗距離:約300km ●試乗日:2006年12月 ●車両協力:渡辺自動車 シトロエン名古屋中央

公式サイト http://www.citroen.co.jp/products/c6/index.html

 
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