キャラクター&開発コンセプト
トヨタのレガシィ対抗ワゴン、内外装をリフレッシュ
トヨタの中堅どころを担うミディアムワゴン、現行カルディナが登場したのは'97年8月。コロナ・プレミオをベースにヨーロピアンテイストの若々しいスポーティー感を強調しているのが特徴で、このクラスの王者レガシィの対抗馬として260馬力モデルも設定する。
2000年1月7日に発表された、初めてとなるマイナーチェンジの内容は、内外装のリファインと装備の充実がメイン。スポーティーなGT系と標準のG/E系のキャラクター分けの明確化を狙っている。なお、どちらのタイプも動力系の変更はない。
ボディは基本的には5ナンバーサイズとなるが、ワイドフェンダーを装着するGT-Tのみ3ナンバーサイズとなる。搭載されるエンジンは1.8l、2.0l、2.0lターボ、2.2lディーゼルの4タイプで、駆動方式はFFと4WD。乗車定員は5名だ。
価格帯&グレード展開
低価格グレードを新設定。価格帯は171.8~287.2万円
カルディナの基本グレードは廉価仕様の「E」、標準仕様の「G」、スポーティー仕様の「GT」、そのターボ版「GT-T」の4タイプ。今回、マイナーチェンジではこれらラインナップの整理も実施。
まず、ホットグレードである260馬力ターボの「GT-T」に価格を抑えた「Sバージョン」を投入。VSC/TRC/オーディオなどを省略したことにより、GT-Tよりも15.4万円安い271.8万円の価格を実現した。宿敵レガシィのGT-VDC(279.8万円)より安く出すのが狙いだろう。
また、NAの「GT」にはFF車を新設定し、価格は4WDよりも22万円安い245.2万円。なお、グラスサンルーフをウリとする「エアリアル」はラインナップから消滅した。モッコリとしたあのデザインではウケなかったのもいたしかたないところ。
パッケージング&スタイル
フロントマスクは精悍になった? 全体的なお子様ぽさは変わっていない
外観はマイナーチェンジらしく、従来イメージを崩さない細かなデザイン変更がメイン。フロントバンパー、フロントグリル、テールランプといった外装パーツの変更だ。さらにGT系はヘッドライトをディスチャージ化、テールランプをクリア化。GT系の専用装備となるエアロパーツも大型化され、スポーティー感の強調を図っている。しかし従来のお子チャマルックの勢いが増してしまったようで、どうにも子供っぽい感じは否めない。大人っぽく凄みを増すのがエステートのドレスアップの方向だと思うが、なぜか間違ってしまったようだ。若者、それも20代前半くらいの若年層しか似合わない感じ。大人っぽいレガシィのGT系とは対照的だ。
一方、拡販タイプとなるG/E系は、今度はGT系とは対照的に大人の上質感をアピールする。ヘッドライプはこれまでの丸型から角型に変更され、グリルはメッキが施された横2本のリブを配す。廉価版であるEのサイドモールが、Gと同様のボディ同色となったことも嬉しいところ。「おとなしい大人」はこちらをどうぞ、というわけだ。とはいえ大人向けの260馬力も欲しい、と思うのだが。
グレード感の高い内装は、ちょっぴりセンスアップ
内装も外観と同じくGT系とG/E系のキャラクターの差別化を図っている。GT系にはヤングユーザーを意識したチタン調パネルや”シルエットメーター”と呼ばれる白く発光するメーターを採用。シート地もこれまでの模様入りから黒一色の無地に変更されており、チタン調パネルの輝きが映える。すなわちこちらもやや子供っぽい。
G/E系は木目パネルの使用範囲が広がり、メーターは鮮やかな青色に発光するタイプを採用。シート地はグレーとなり、シックなムードを醸し出す。
装備では、FM多重放送や燃費などを表示できるマルチインフォメーションディスプレイ、AC100V電源の標準装備、オプションのナビがDVDに進化した。Eにもキーレスエントリーが標準化され、相変わらずトヨタらしい充実が目に付く内装だ。ストラットタワーバーの機能も果たすトノカバー一体型のパフォーマンスロッドはもちろんあるが、リアバンパー内にもパフォーマンスロッドを新設し、従来車のボディ剛性が低いという声に応えている。
ラゲッジには変更ないが、一応、おさらいしておこう。まず、後席は6:4分割可倒式を採用しており、座面を起こし背もたれを前に倒すとフラットになる仕組み。フロアには荷物固定用のフックと、その下にはサブトランクを備える。荷室容量は、ま、こんなものでしょ、といった感じ。ボディの大きさを考えれば納得できるレベルだ。
基本性能&ドライブフィール
5つのエンジン、2つのミッション、3つの駆動方式
搭載されるエンジンは直列4気筒とする1.8lリーンバーン(115馬力/15.8kgm)、2.0l(140馬力/19.0kgm)、2.0lツインカム(190馬力/21.0kgm)、2.0lターボ(260馬力/33.0kgm)、2.2lディーゼル(94馬力/21.0kgm)の5タイプ。ギアボックスは全車4速ATとした他、一部グレードに5速MTも用意する。なお、GT-Tの4速ATにはステアリング上のスイッチでシフトチェンジができるスポーツステアマチックを採用する。足回りを含めた動力系に変更はない。
イメージリーダーGT-Tは260馬力+4WD、さらにステアマチックの完全武装
今回試乗したのはGT-TグレードのAT車。搭載される2.0lターボ(3S-GTE)は、ラリーベース車として開発された旧セリカのGT-FOURモデルにも搭載されていたもの。つまりラリーエンジンをワゴンボディに押し込んだ快速ワゴンってわけだ。
4WDシステムも他グレードが日常型のVフレックスフルタイムを採用しているのに対し、GT-Tは260馬力という大パワーを余すことなく路面に伝えることができる本格派のフルタイム4WDを採用。さらにMT車にはリアにトルセンLSDを、AT車は各輪の駆動力を最適化するTRC、横滑り防止機構VSC、ブレーキアシストが奢られる。見た目の子供っぽさからは想像も付かないハイテク装備が凝縮されている。
それだけに実用域からトルクに溢れた加速は力強いもの。どんな速度域からも意図する以上の加速をみせる。260馬力というスペックは280馬力のレガシィより落ちると思われがちだが、ATモデルに限っていえばレガシィも260馬力でパワーは同じ。さらにステアリングのボタン式マニュアルモードAT、ステアマチックを搭載(レガシィもGT-B E-tuneで追従)。そのステマチックはレッドゾーンぎりぎりまでシフトアップせず(1速は完全固定! )、かなり使えるタイプ。低サウンドのエンジン音といい、重めのパワステいい、若々しい外観そのままの勢い重視の演出が図られている。高速のコーナーでも安定性は高く、ちょっとでも挙動を崩そうものなら、たちまちVSCが効きまくる。つまり素人であろうと、速くかつ安心して走らせることができる。ただ、カルディナに限らず、ステアマチックの表ボタンがシフトダウン、裏ボタンがシフトアップ、というトヨタ独自の構造は直感的に使うとついダウンとアップを間違えてしまう。
快速ワゴンなのに、乗り心地が犠牲にされていない
乗り心地は、高性能モデルらしさを感じさせない極めて快適なもの。スポーツモデルにありがちな荒々しさは一切なく、刺激的な加速とのギャップを感じてしまう。長距離でもこれならまったく苦になることはないだろう。動力系に手が加えられなかったのもうなづける。
反面、どこか走りの質感が足りないのが気になるところ。低速ではがっしりとした重みのあるステアリングも、速度が上がるにつれて、ついさっきまで手応え合ったパワステが次第に軽くなり、高速巡航でのレーンチェンジでは危ないとまではいかないものの、軽すぎて違和感を覚えてしまう。せっかくの4WDならではの重厚な味わいがあまりないのだ。このあたりは明らかにレガシィに劣る点。とはいえ、常識的な速度域では重厚感さえ感じる出来であることは確かで、日常の使用では不満はないはずだ。
ここがイイ
トヨタらしい、完成度の高いクルマに仕上がっている。パワーに負けていない足回り、パワーを制御できるVSCやTRCなどの電気デバイス、ボタンが押しやすくなったステアシフトマチック、相変わらず出来のいいシート、見やすいインダッシュカーナビ、100Vソケットの標準装備など、速くて実用的なヤング(死語)向けスポーティワゴンとしてバランスよく仕上がっている。みごとな80点カー。しかも値引きバリバリ。こりゃ売れるわけだ。
ここがダメ
誰でもが安全にカッ飛べるGT-Tだが、物理的な限界を超えれば死に至ることもあるわけで、運転の未熟な若い子が乗るクルマではない。しかしどう見ても若い子が買うクルマという仕上がりで、そのあたりに「何だかな」を感じてしまう。しかも、安全性を確保するVSCのおかげで乗っててそう楽しいわけでもない。「レガシィ独走は面白くないなあ」とトヨタがレガシィいじめで投入してるクルマという感じが否めないのだ。
総合評価
このカテゴリーではレガシィが圧倒的な強さをみせているのは周知の通り。本来、カルディナは実用ワゴンという位置づけだったたのに、それが今では260馬力モデルがイメージリーダー。価格的な対抗図をまとめると
カルディナGT-T 5F 276.2万円 × レガシィGT-B Eチューン 5F 289.8万円
※レガシィの280馬力よりパワーは落ちるが安い。VSCもついている。
カルディナGT-T 4AT 287.2万円 × レガシィGT-B Eチューン 4AT 300.8万円
※ともにマニュアルATだがカルディナの安さが光る。VSCもついている。
カルディナGT-T Sバージョン 4AT 271.8万円 × レガシィGT-VDC 4AT 279.8万円
※VSC(スバルはVDC)はついてないが安さならカルディナの勝ち
となる。2000年4月の車種別販売台数ランキングでは16位にレガシィ(3,103台)、そしてすぐ下の17位にカルディナ(2,576台)が入りデッドヒートを繰り広げているのだ。
ステーションワゴンには、もはや「かつての夢」はない。それでもレガシィはまだブランド力を保っており、それがカルディナとの数字の差に表れているように思う。レガシィの名前の重みに比較して、カルディナの名はその名の通り? 軽い。乗った感じも同様で、レガシィの熟成感にはどうしてもカルディナは勝てていない。こうなったらレガシィを追いかけるのはもうこの1代でやめて、次のカルディナにはステーションワゴンの新しい地平を切り開いて欲しい。天下のトヨタならできるでしょう(でもそれってもしかしてアルデオ?)。
公式サイトhttp://toyota.jp/