新車試乗記 第239回 トヨタ カルディナ 2.0 ZT 2WD Toyota Caldina 2.0 ZT 2WD

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日時: 2002年10月12日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    走りをコンセプトとした「ザ・ツーリングマシン」

    カルディナは'92年にデビューした中型ステーションワゴンだ。基本的にコロナをベースにしたもので、初代は商用モデルもラインナップ。'97年に2代目となり打倒レガシィを強く意識、今回のモデルは3代目となる。

    2002年9月13日に発売された新型のコンセプトは「ザ・ツーリングマシン」。内外装に思い切りよく斬新なデザインを採用。高剛性ボディや新開発の足回りなどで高い走行安定性やハンドリングを追求した「新世紀のスポーツスペシャリティワゴン」(トヨタ)という。

    懐かしの「GT-FOUR」復活!

    今回の目玉は、WRC参戦時代のセリカを思い出さずにはいられない「GT-FOUR」の名を持つモデル。セリカGT-FOUR('99年生産中止)や先代カルディナのGT-Tとほぼ同じ2.0リッターターボ「3S-GTE」(260ps、33kgm)を搭載するが、注目すべきはシャーシ。車両をドイツのニュルブルクリンク・サーキット(1周20.832km)に持ち込み、徹底的に走りこんでダイナミックな性能を磨き上げた。4WDによる全天候型の走行性能は路面状況が激しく変化するニュルで威力を発揮したという。トヨタ自ら名指しするライバルはもちろんスバル・レガシィ GT-Bだ。

    販売目標は4千台/月。国内ステーションワゴン市場が1万台前後で推移する中、その4割は取りたいということだ。モデル末期に入りつつあるレガシィが今年に入っても月平均4,000~5,000台販売(B4含む)するのに対して、先代カルディナは1,000台前後と大きく水をあけられている。トヨタとしてはここで一気に差を詰めたい。マツダのアテンザ・スポーツワゴンや11月発売のホンダ・アコードワゴンもあり、楽観はできないだろう。

    価格帯&グレード展開

    4グレード展開、全車4速ATとなる

    グレードは大きく分けてX(172.8万円)、Z(179.8~208万円)、ZT(212~232万円)、GT-FOUR(254~291万円)の4種類。

    XとZ(2WD)には1.8リッター(1ZZ-FE)、Z(4WD)とZTには2.0リッター(1AZ-FSE)、GT-FOURには2.0リッターターボ(3S-GTE)を搭載。全車4速ATとなり、GT-FOURにもマニュアルは用意されない。マニュアル無しで走りを強調した点は注目されるところ。

    Xはマニュアルエアコンの廉価版。Zはオートエアコンで一通りオプション選択可能なグレード。ZTは17インチアルミやHIDヘッドランプ、スポーツシートが付く“GT-FOUR ルック”(今回の試乗車)。全車、基本的にオーディオレスとなるのに注意。

    看板モデルはGT-FOUR

    GT-FOURはさらに3グレードに分かれる。中でも“Nエディション”(291万円)はレガシィツーリングワゴンのGT-B EチューンII(4AT、300.8万円)に真っ向から対抗するグレード。フロントに倒立ダンパー、そして世界初のコイルばね付きストラットタワーバー(ただ固めるだけでなくしなやかさを生むタワーバー)や、各種ブレース、クロスメンバーをあちこちに追加してサスペンション支持剛性を高めたシャーシ、さらにレカロシートに新工法の専用タイヤ(YOKOHAMA ADVAN A-046T)などを採用して徹底的に走りを追求した硬派モデルだ。“N”はもちろんニュルブルクリンクの意。

    パッケージング&スタイル

    保守(レガシィ)に対して革新で挑む

    「砲弾型」スタイルは見ての通りたいへんアグレッシブ。フロントは見慣れた感じだが、ボンネットからフロントガラスまで真っ直ぐ上がりAピラー(一番前の窓枠)頂点から長いルーフに沿ってリアに落ちて行くラインは斬新。リア・デザインもインパクトがある。すごく意欲的なデザインでもはやワゴンとは言えない。このあたりの「冒険」をしてしまえるのがトヨタの底力だ。

    ただし、このクルマの名が「カルディナ」という、普通のワゴンというイメージが強い車名なのはやや興ざめ。保守的デザインのレガシィに革新で対抗しようという意図は分かるし、トラディショナルなワゴンらしさは失われているわけで、名前でも革新を果たしてもよかったのでは。

    実を捨ててカッコを取った

    ワゴンらしくないということはパッケージングを見ても明らか。全長4,510×全幅1,740×全高1,445mmは、先代に比べて65mmも短く、今どき50mmも低くした。要するに、室内や荷室空間の広さを重視していない。スタイリング優先なのは明らかだ。ただ居住性を稼ぐため(というかベースがアリオン/プレミオのため)ホイールベースは一気に120mmも伸びて2,700mmもあり、これが外観に「胴長感」を与えている。

    全高を下げたのは後席の折り畳み方法にも影響を与えた。オーパなどで採用するワンアクションではなく、ダブルファンクション。ルーフが低いのでシート高が上げられず、座面下にリンク類が入れられなかったためだ。

    前席はスポーティなデザインが目を引く。アルミ調ブルーのV型センターコンソールや質感の異なる樹脂で2段構成にしたダッシュ、9,000回転まで目盛られた回転計(もちろんそこまでは回らない)の付くインパネなど、外装に負けないくらい冒険している。

    レカロ要らず?のスポーツシート

    ZTとGT-FOUR(“Nエディション”を除く)に装備されるスポーツシートはサポートもしっかりしていて、なかなかいい。“Nエディション”のレカロとじっくり比べてみたが、シート生地が似ていて最初は同じシートかと思ってしまったほど。座面のシッカリ感に最も差を感じたが、かなりレカロを研究し尽くした感じがする。レカロ装着の場合は座面の上下調節が出来ない他、後席の圧迫感が少々高まるのが玉にキズ。

    基本性能&ドライブフィール

    ZTの動力性能はやや外観負け?

    試乗車は中間グレードの「2.0 ZT」。2.0リッター直噴ガソリンエンジンを積むモデルだ。駆動方式は前輪駆動。17インチタイヤのせいもあり、ボンネット上のエアスクープの有無を除けば、一見GT-FOURかと思うほど迫力がある。

    使いやすいジグザグゲートのシフトノブをDに入れてスタート。152PS/6,000rpm、20.4kgm/4,000rpmを発揮するお馴染み「D-4」エンジンは1,340kgの試乗車をそつなく加速させる。

    しかし正直言って加速感はこの迫力ある外観を見た後では物足りなさを感じる。レスポンスは良いし6,500rpmのレッドまでスムーズに回るが、トルク感や高回転の気持ちよさはないのだ。もうすこし演出が欲しいが、これ以上の走りを望むならGT-FOURを、ということだろう。D4らしくエンジン試乗中にインパネの「ECO」ランプが頻繁に点灯するのが印象的だった。

    乗り心地、静粛性ともに平均的

    乗り心地はまあまあ。硬めのスポーツシートのせいもあって、トヨタの普通のセダンに比べれば気持ちソリッドといえる(アリオン/プレミオとの乗り心地における最大の違いはシートかもしれない)。100km/h巡航は約2,400rpmと低め。この回転域ならエンジン音はまったく気にならず快適だ。しかし回すと音はそれなりに高まる。

    高速での安定感はさすがに最新トヨタ車らしく「抜群」といっていい。スピードメーターを振り切るまで、何ら緊張感なく加速していく。そのまま巡航すら可能だ。たださすがに騒がしくなるところが、いわゆる高級車とは異なる部分。ただしワゴンボディゆえの騒音に対する不満は、もはやこのクルマには存在しない。

    ハンドリングは外観に負けてなかった!

    エンジンは今ひとつスポーティじゃないZTだが、ワインディングの走りはハイレベル。基本的に足回りはソフトで、突き上げもほぼ完全に遮断するタイプ。しかし、にもかかわらずとにかくアンダーがほとんどでず、コーナリングスピードは(日産の新型Zもかくやと言うくらい?)速い。旋回中はリアが絶妙にツーーと流れて、切り足す必要ほとんどなし。ZTに標準の215/45R17(POTENZA RE040)タイヤはカッコではなく、完全に履きこなしている感じがした。富士スピードウェイで行われた発表会で開発の人間が「シャシーの基本的な部分はニュル仕込みのGT-FOURでも、NAのモデルでもまったく変わらない」と言っていたのをふと思い出した。

    がっしりしたボディと程々のパワーのエンジンゆえ、ZTでは明らかにシャシーが勝っている。トヨタが言う「走りの気持ちよさを味わうクルマ」がZTではなくGT-FOURであることは明らかだが、ZTのポテンシャルは一般公道向きだ。そこそこエンジンがブン回せる分、気持ちいい走りが味わえたことは確かだ。

    ここがイイ

    ワゴンのスタイルをした新しいスポーツカーと言うコンセプト。コンベンショナルなワゴンに対して、「もはやそれは新しくないでしょ」と言い放ったことは、冒険の許される(販売力もある)トヨタゆえにできることだろう。レガシィに対抗するアコードやアテンザのまっとうさに比べれば、カルディナのカッコ良さ、潔さが光る。実際、荷物を載せるならミニバンにかなうわけもなく、ワゴンは「セダンとは違う」という一点のみに存在意義があり、わずかな荷室の大きさなどを競うのはむなしいことだ。とはいえ、セダンではあまりに保守的。そこそこ荷物も載り、スポーツカー並みの走りをする新しい乗り物というカルディナの姿は、孤高の存在としてライバルを大きく引き離す。

    走りではジグザグゲートのシフトレバーがいい。4速だが、Dから3へは右に、3から2へは下に、2から1へは左に持っていって下にというトヨタのパターンは、ワインディングで3と2を切り替えるのが容易でミスもない。4(D)へも入れやすく、これならトヨタの裏表ボタンシフトより使いやすく、楽しくマニュアル操作ができる。別にGT-FOURにも乗ったが、スポーツシーケンシャルシフトマチックのプラスマイナス動作はゲート式よりスポーティではあるものの、4速なら大差ないように感じられた。

    ここがダメ

    走りの気持ちよさをコンセプトにするのであれば、ZTでももう少しわくわくする感覚を演出して欲しかった。十分速いのだがこれは楽しいとは言い難い。 インパネは斬新なデザインだが、ボタン類まで赤の照明が少しうるさい。デザインは意欲的だが、その結果がターゲットとは離れ、やや子供っぽい雰囲気となっているのは残念。

    総合評価

    ニュルのオーソリティであるトヨタのマスタードライバー成瀬弘氏は、「Nエディションは30年ほど前にニュルに持ち込んだトヨタのレーシングマシンより安定した挙動でいいタイム(8分46秒)を出すクルマに仕上がった」という。カルディナはワゴンの形をしているが、それはあくまで販売上の戦略であり(何せセダンやクーペでスポーツモデルを出しても売れないことは明白だから)、カルディナの実体はスポーツカーであるというのがトヨタの本音だ。しかもマニュアルでなくATで、FRでなくEBD付ABSやVSCを備えたビスカスLSD+トルセンLSDまで装備した4WD。「昔は誰もが乗れないクルマを乗りこなすのがスポーツカーの乗り方だったが、これからは安心感があるクルマこそがスポーツカー」とトヨタは言う。

    5ドアで荷物も積めて、それでいてかっこよくて、速くて安全で(ニーエアバッグが初めて採用された)しかも楽という、30年前から考えたらそれこそ夢のようなクルマが「ザ・ツーリングマシーン」であるカルディナだ。30年前からたゆまぬ開発を続けてきた成瀬氏を始めとするトヨタとしては、まさに正常進化の極みというべきクルマになったと自負しているだろう。ただ残念ながら運転する人間と走らせる環境は30年間では大した進化はしていない。街ゆく人の運転がうまくなったとはとても言えないし、クルマに対する人間の意識は退化(無意識化)すらしている。カルディナの発表試乗会は誰もが自由に走れる解放されたサーキットでなく、30年前から存在する昔ながらの富士スピードウェイで行われ、そこまでは渋滞の高速道路を走って行かなくてはならない。

    このように人と環境が変わっていないために、カルディナの本質はなかなか理解されないだろう。おそらく、走りの気持ちよさを追求したNエディションのハイパーな乗り味より、古いマニュアルのスポーツカーの方が、進化していない人間には気持ちいい走りに感じられてしまう。同様に、トヨタの新デザインキーワード「VIBRANT CLARITY(わくわく、さわやか)」に基づいて作られたワゴンでもクーペでもない新ジャンルスタイルも、理解されるには時間がかかるように思われる。

    そんなハイテク・カルディナだが、開発自体は意外にアナログだ。バネ付ストラットタワーバーにしてもその効果は計算づくではないという。これを装着して走ると確かにいい、という実践によって採用されたものだ。またトヨタトップのボディ剛性もその補強自体はあれやこれやと実際に試してみた結果だという。今後ボディ剛性は固めるだけでなく、しならせる方向に向かっているとも。このようにクルマ自体はまだまだローテクな部分を残しており、今後も進化は続いていくだろう。ただ人と環境の進化にシンクロしないと、クルマはますます普通の人にとって興味のないものになっていきそうで、そこがちょっと怖いところだ。

    トヨタ カルディナ 2.0 ZT (2WD)
    口●全長4,510mm×全幅1,740mm×全高1,450mm●ホイールベース:2,700mm●車重:1,340kg●エンジン:1,998cc・DOHC 4バルブ直噴式・横置き●駆動方式:前輪駆動●152ps/6,000rpm、20.4kgm/4,000rpm●10・15モード燃費:14.0km/L●タイヤ:215/45R17(BS POTENZARE040)●価格:212万円(試乗車:257.9万円 ※オプション:DVDナビシステム 32.7万円、レーンモニタリングシステム 6.2万円、ムーンルーフ 5万円、ルーフレール 2万円)口

    公式サイトhttp://toyota.jp

     
       
       

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