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シボレー カマロ コンバーチブル新車試乗記(第669回)

Chevrolet Camaro Convertible

(3.6リッターV6・6AT・504万円)

2012年夏グルマ第3弾は、
マッスルでアメリカンな
アイツしかいない!

2012年08月24日

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キャラクター&開発コンセプト

5代目カマロに伝統のコンバーチブルが復活


シボレー カマロ コンバーチブル コンセプト(2007年)

コルベットと共にシボレーのスポーツモデルを代表するカマロは、1967年に初代がデビュー。現行モデルは5代目にあたり、米国では2009年3月に、日本では同12月に発売されている。そのカマロに、かねてからコンセプトカーで予告されていたコンバーチブルが昨年2011年7月14日に追加された。最終組立はクーペと同じカナダ・オンタリオ州のGMオシャワ工場で行われている。

なおイヤーモデル制をとるアメリカ車の通例で、カマロの2012年モデルにも若干のマイナーチェンジが実施されている。改良内容は3.6リッター直噴V6エンジンの改良(約10kgの軽量化と最高出力の19ps向上)、インパネやステアリングホイールのデザイン変更、リアビューモニター付自動防眩ルームミラーの新採用、助手席シートの電動化など。また各グレードに「シボレー カマロ生誕45周年記念限定車」が設定されている。

■過去の新車試乗記
シボレー カマロ LT RS (2010年1月更新)

価格帯&グレード展開

コンバーチブル代は69万円


ボディカラーは写真のインフェルノオレンジ(メタリック)、サミットホワイト、シルバーアイス、ラリーイエロー、ビクトリーレッド、ブラック、そして特別仕様車のカーボンフラッシュメタリックがあり、現在は計7色

2009年末の日本発売以来、コンバーチブルの追加を除けば基本ラインナップに大きな変更はない。日本仕様は全て左ハンドルの6ATで、2012年モデルのラインナップは3.6リッターV6・DOHC(327ps、38.4kgm)の「LT RS」(435万円)と「コンバーチブル」(504万円)、そして6.2リッターV8・OHV(405ps、56.7kgm)の「SS RS」(535万円)の3モデル。クーペとコンバーチブルの差額は同じV6モデル同士で69万円になる。

また「シボレー カマロ生誕45周年記念限定車」は各モデルをベースに+15万円で、専用ボディカラーのカーボンフラッシュメタリック、レッド/チャコールの専用ストライプ、ディープシルバーペインテッドアルミホイール、45周年記念刺繍入りレザーシート、専用ステッチ入りシート/ヘッドレスト/ステアリングホイール/シフトノブ、専用エンブレムを与えたもの。

 

なお、ライバルのフォード マスタングは、3.7リッターV6(309ps、38.7kgm)のクーペが430万円、5リッターV8(418ps、53.9kgm)のクーペが500万円、そしてV8のコンバーチブルが570万円。またV6のコンバーチブルは昨年発売された限定車(販売終了)のみで505万円だった。価格的には互角だが、現行ラインナップのコンバーチブルに関しては、V8ならマスタング、V6ならカマロという棲み分け?になっている。

なお、米国内ではマスタングの他に、ダッジ チャレンジャーも因縁のライバルになる(ただしコンバーチブルはない)。また、少しクラスやキャラクターは異なるが、日産の370Z ロードスターも対抗馬になる。


■シボレー カマロ
・LT RS       3562cc V6・DOHC(327ps、38.4kgm)+6AT   435万円
コンバーチブル   同上    504万円  ※今週の試乗車
・SS RS       6153cc V8・OHV(405ps、56.7kgm)+6AT   535万円

パッケージング&スタイル

問答無用のカッコ良さ


写真はポジションランプを点灯している。

現行カマロには2年半前にも試乗しているが、今回はコンバーチブル、しかもボディカラーがド派手な「インフェルノ オレンジ」ということで、見た目のインパクトはさらに強烈。500万円前後でこれだけ押し出しの強いクルマも珍しい。盛り上がった前後フェンダー、ボンネット、20インチタイヤなどなど、マッシブかつマッスルな造形のてんこ盛りになっている。ボディサイズも全長4840mm、全幅1915mmとアメリカ車らしく大柄。マスタングより一回り大きい。

 

リアウインドウはもちろん熱線入りのガラス製

なお、試乗したのは2012年モデルだが、現在はすでに通称「2012.5年モデル」に移行している。変更点は主に外装で、V6モデルのボンネット先端にV8モデルと同じスリットが入ったほか、ウインカーをリアコンビランプにビルトイン(従来の日本仕様はリアウインカーをバンパー下部に配置していた)。またフロントのボウタイエンブレム(従来あった突起物対策のカバーが省かれた)やグリルのデザインも若干変更されている。

コンバーチブルのルーフは伝統的な電動ソフトトップ(幌)。これが流行りのメタルトップだったら興醒めだったかもしれない。幌の開発に際しては、“幌骨”が外側に浮き出すのを防ぐため、通常のアルミ製フレームではなく複合材のフレームを採用し、ステッチも工夫して美しいソフトトップに仕上げたという。おかげでクローズド状態でもクーペと同じようなルーフラインになる。

 

幌の素材はキャンバス地で、遮音材をラミネートしたもの
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
BMW 335i カブリオレ 4610 1780 1385 2760 5.3
レクサス
IS250/350C
4635 1795 1415 2730 5.1
アウディ A5 カブリオレ 4645 1855 1375 2750 5.4
初代シボレー カマロ
(1967年)
4690 1840 1300 2746
メルセデス・ベンツ
E350 カブリオレ
4715 1785 1395 2760 5.1
フォード マスタング
コンバーチブル
4785 1880 1415 2720
シボレー カマロ
コンバーチブル
4840 1915 1395 2855
 

インテリア&ラゲッジスペース

クール&レトロフューチャー


試乗車は2012年モデルで、インパネやステアリングのデザインが新しい。リバース時にはルームミラーにリアビューカメラの映像が表示される

インテリアデザインは基本的にクーペと同じだが、印象は今でも新鮮。一昔、二昔前のアメ車によく見られた安っぽさや大雑把なところはなく、きっちりカッチリ、「クール」でレトロフューチャーなデザインと質感でまとめられている。正直、このあたりのデザインは日本車より上手。

なお、カマロは日本仕様でも左ハンドルのみ。今やポルシェやフェラーリでも右ハンドルが増えているのに、やっぱりこれは左ハンドルでしょ、と思えてしまうあたりに、日本における「アメ車」の特殊性が見える気もする。

 

メーター中央の「DIC」(ドライバーインフォメーションセンター)は、平均燃費、航続可能距離、トリップメーター、タイヤ空気圧などを表示

70年代風レトロ・フューチャーなデザインの4連メーター(油温計、油圧計、電圧計、ATF油温計)がセンターコンソールに並ぶ。運転中はほとんど見ない
 

ソフトトップは電動だが、ロック操作のみ手動


幌を開ける時は頭上のレバーを起こして反転。そのままの状態で、マップランプ左側のスイッチを押す

幌を開閉する時は、フロントウインドウ上部のロックを1ヶ所、手動で操作する以外は(けっこう力が要る)、頭上のスイッチを押し続けるだけ。カタログには約20秒で可能とあるが、電動トップの作動時間そのものはオープンにする時が実測で13~14秒、クローズドにする時は約20秒だった。

また、多くの最新オープンモデル同様、カマロもクリープで動きながら幌を操作できるので、信号待ちの時にも割と躊躇なく操作に踏み切れる。例えば、途中で信号が青になったとしても、少し発進しながら操作を完了できる。

トランクには折り畳み式のトノカバーも入っているが、これは主にオープン時の見た目をスッキリさせるためのものなので、仕舞いっぱなしで構わない。

 

幌は遮音・吸音材を挟み込んだキャンバス製で、Z字型に折り畳まれる

ちなみにGMによれば、ソフトトップの開発時には、開閉テストを計2万2500回行ない(一日に2回操作したとしても30年分!)、-30度Cから77度Cまで、湿度95%という条件下で繰り返し行ったとのこと。当然ながら工場出荷時にはウォーターテストを実施し、耐水性をチェックしているという。まあ、日本の気候も厳しいが、米国の気候は地域によってはそれ以上なので、オープンカーに求められる耐候性もそれなりということか。

 

後席は実用的だが、トランクは狭い


6ウェイ電動・フルレザーシートは標準装備。エアバッグは前席フロントおよびサイド(ヘッド&トルソー保護用)の計4個

後席は2人掛けで、クーペより少々横方向が狭いが、ヘッドルームは身長165センチ程度までなら頭が幌にかする程度に確保されている。足もとについても、つま先が前席の下に入るし、背もたれの角度も適切なので、意外に楽な姿勢がとれる。大人でも30分くらいの移動なら、不満なく過ごせそう。乗降性については、前席の背もたれを前に倒しても、自動で電動スライドしてくれないなど気が利かない部分はあるが、特に困るわけではない。

 

大人でもまずまず快適な後席。ヘッドレストはないが、背もたれが首の付け根あたりまでサポートする

オープン時の後席の様子。ヘッドレストをあえて付けないところがアメリカ人の美意識か
 

トランクは開口部が狭く、幌を収納すると容量も半減する。中に見えるのは折り畳み式のトノカバー(本来はカバーに入っている)

一方、トランク容量はクーペだと320リッターで、トランクスルーも可能だったが、コンバーチブルの場合はクーペでも狭かった開口部がさらに狭い。容量は米国仕様で10.2立法フィートとあるから約290リッターだが、クローズド時にはトランクの上部に幌が収まるので、さらに狭くなるし、もちろんトランクスルーも不可。まあ、大きなものは後席にも積めるので、ここは貴重品入れという感じか。トランクリッドに鍵穴やドアハンドルはないのでセキュリティー性は高い。トランクを開ける時は、運転席ドア内張りのボタンか、リモコンキーのボタンを押すことになる。

 

トランクのコーションラベル。幌の収納スペースを確保するパーティション(仕切り)を出しておかないと電動トップが作動しない

床下にはタイヤが収まりそうな空間はあるが、少なくとも日本仕様にスペアタイヤはなく、パンク修理キットとバッテリーが収まる。

 

基本性能&ドライブフィール

コンバーチブルはV6のみ

クーペには6.2リッターV8・OHVもあるが、日本仕様のコンバーチブルは3.6リッターV6・直噴DOHCのみ。近年のGM車では大黒柱のようなエンジンで、変速機はこれまた定番の6AT。

まずはそのまま乗り込む前に、GMお得意のリモートスタート機能を試してみる。リモコンキーのドアロックボタンを一回押した後、別のボタンを長押しすると、無人状態にあるカマロのエンジンがククク、グォンと掛かる。バットモービルみたいでちょっと楽しい。車内に入った後、キーを差してイグニッションをオンにすると、初めてシフトレバーや電動ソフトトップ等の操作が出来る。

加速感はクーペのV6とよく似た感じ。V6エンジンのFR車という点では、キャデラックのCTSや、もっと言えばトヨタのクラウンとも同じで、上質感や静粛性といった部分を除けば近いものがある、と言っていいかも。

 

3.6リッターV6の最高出力は2011年モデルの308psから、この2012年モデルでは327psにアップしている

ただ、V6モデルに対して、アメ車らしいドロドロしたエンジン音や低回転から溢れ出るトルク感を期待してしまうと、肩すかしを食らう。直噴DOHCヘッドのモダンなV6エンジンは、ドロドロどころか、シューンと滑らかに回り、パドルシフトを操作すれば、フォォン!とブリッピングを行い、すかさずシフトダウン。レッドゾーン目がけてクォーン!と鋭く吹け上がってゆく。その走りを一言で表すなら、パワフルというよりは俊敏。有り余るトルクはないので、トラクションコントロール(TRC)やスタビリトラック(いわゆるESP)をオフにしても、20インチのピレリ Pゼロがホイールスピンすることはまずない。このマッチョなスタイルをひと目見て、いい意味でちょっとお馬鹿な(失礼)キャラクターを期待してしまう人は多いと思うが、実際に話をしてみたら、頭が良くて、受け答えもしっかりしている優等生だったという感じ。

クーペと(おそらく)ほとんど同等の走り


リアサスはマスタングが現行モデルでも伝統のリジッドであるのに対して、カマロは近代的なマルチリンクになる

現行のV6モデルには「スポーツサスペンション」が標準装備されており、ボディ自体もしっかりしている。コンバーチブルの車重はクーペより130kg重いが、これは電動ソフトトップに加えて、ストラットタワーバー、トランスミッションサポート、ドライブシャフトトンネルブレース、Aピラーやフロントウインドウフレーム周りの補強といったものを追加しているから。ドイツ車のオープン・モデルほどビシッとはしていないが、フロントウインドウがワナワナすることはないし、少なくとも一般道で試す範囲ならオープン化に伴うハンドリングへの悪影響もない。意図的にブレーキングを遅らせるような走り方をしても、しっかり曲がってくれるし、緩やかなコーナーではスポーツカーのような気持ちのいいハンドリングも楽しめる。ただクーペ同様、素早い切り返しや横Gが強く掛かるようなコーナーは少し苦手。

 

日本向けカマロのタイヤサイズはV8を含めて全車共通。前が245/40R20、後ろが275/40R20

そもそも日本の狭いワインディングでペースを上げてゆくと、1915mmもある全幅(助手席側のドアが遠く感じられる)や1.8トン超という車重が気になる。そんなことでドキドキするより、いっそ流すように走る方が楽しい。エンジンやシャシーは近代的だが、おおらかな性格はアメリカンGTカーの伝統通り、といったところか。

2年半前に乗ったクーペよりもハンドリングが良くなっている気がしたのは、もちろん細かな改良もあるだろうが、ひょっとするとコンバーチブル自体の重量配分や重心もいい方向に働いているのかも。メーカーによれば、サスペンションチューニングは現行のV6クーペと同等とのこと。

ちなみにV8モデルの方にはさらに強化された「ハイパフォーマンスサスペンション」とブレンボ製ブレーキシステムが装備される。

「アメ車+コンバーチブル」は無敵

カマロ コンバーチブルの真骨頂は、やはりオープン走行時の気持ちよさにあると断言できる。サイドウインドウを下ろしたまま、郊外の道を40~50km/hくらいで流していると、まるでプールサイドで寛いでいるように気持ちが和み、いつまでもこうしてのんびり走っていたくなる。こうなるともう、エンジンがV6だろうがV8だろうが、どうだっていいや、とも思えてくる。

実際、このV6でも一般道を流す程度なら1200回転くらいでユルユル回っているだけで、加速時もせいぜい2000回転で事足りる。ドイツ製カブリオレでも似たようなことは出来るが、ワイドなボディの左隅に座って、片ひじをつきながら、FMラジオから流れる音楽に耳を傾けて、そよそよ流れる風に包まれる気持ち良さは、アメ車ならでは。とにかくオープン状態なら、30km/h、40km/hという速度制限を守って、ゆっくり走るのが全く苦痛ではない。

 

とはいえ、もちろん高速巡航も得意。100km/h巡航は6速トップでたった1500回転。80km/h、1200回転でもけっこう楽しく走れるので、クルーズコントロールの助けを適宜借りて、名古屋から東京まで2000回転以下をキープしてのんびり走るのも悪くないんじゃないかと本気で思える。そんな走りなら燃費もいい。ただオープンの場合は、風の巻き込みがけっこうあり、秋冬はちょっと辛いかも。

一方、クローズドであれば快適性は問題なし。幌の立て付けや遮音はしっかりしているし、ロードノイズの遮断も完璧に思えた。「静粛性はクーペと同等」というメーカーの主張に誇張はない。大柄で重量級のボディの割に、ゆったりまったりした直進安定性は希薄だが、そのあたりは燃費の良さ、シャキッと正確なハンドリング、スタイル重視の20インチタイヤなどとのトレードオフかも。

 

GMお得意のヘッドアップディスプレイも標準装備。デジタル速度計、外気温、アナログ回転計、クルーズコントロール設定速度などを表示

ちなみにフロントウインドウに各種情報を投影するヘッドアップディスプレイは標準装備。最初は煩わしい感じがしたが、見慣れてくると少なくとも速度表示に関しては便利だった。表示はデジタル速度計がメインで、それにアナログ回転計や外気温計を組み合わせることも出来る。またクルーズコントロール使用時には設定速度が表示されるし、CDプレーヤー使用時には曲の初めにトラック表示が出る。

試乗燃費は6.6~7.7km/L。街乗りだけなら5km/L台、高速巡航だけなら11km/L前後


平均燃費は100kmあたりの消費燃料量で表示される。写真の14.1L/100kmは約7.1km/L

今回はトータルで約300kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつものように一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が6.6km/L。昼間、渋滞した一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)が7.1km/L。夜間、空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)が7.7km/L。高速道路を80~100km/Lで巡航した区間(約30km)が11.1km/Lだった。

印象としては、まったく燃費のことを考えず雑にアクセルを踏むと5km/L台だが、高速道路でクルーズコントロールを使いながら大人しく法定速度内で巡航すれば11km/L前後という感じだった。10・15モードおよびJC08モード燃費は未発表だが、V6・6AT仕様の米国EPAハイウエイモードは29MPG(12.3km/L)とあった。

燃料タンク容量は72リッターで、現行のマスタング(60リッター)より2割多い。いずれも指定燃料がレギュラーなのが嬉しいところ。

 

ここがイイ

スタイリング。コンバーチブルであること。意外に高い実用性

初代カマロをリスペクトしたスタイリング。いつもいうように「ルーツのあるカタチ」はやはり素晴らしい。そしてやはりコンバーチブルであること。屋根を開け放って、トロトロと流す時の気持ちよさは「アメ車のコンバーチブル」のまさに特権では。幌を閉じたら閉じたでカッコイイというのもいい。

トランクは狭いが、大人4人が乗れるパッケージング、まずまず充実した装備、しっかりした走り、良好な高速燃費、レギュラーガソリン指定など、いかにもアメリカ車らしく実用的に出来ていること。また、ヘッドアップディスプレイ、リモコンエンジンスターター、リアビューモニター付のルームミラーといったギミックやブルーで統一された計器類の照明も楽しい。

大柄なクルマは乗せられてる感が強くなりがちだが、カマロは体にフィットする感覚があるのがいい。小柄な人でも、むやみにシートを前に出さずにポジションがとれる。マッチョなスタイリングからは想像しにくいが、意外に真面目に作られているクルマだ。スタイルに惚れて衝動買いした後も、V8に比べると維持費も多少安いし、十分に実用車として使えるのでは。

ここがダメ

コンバーチブルではV8が選べないこと。フルオートではない幌。右Aピラーとドアミラーによる死角

アメ車らしいV8のドロドロ感、マッスルカーらしいパワフルな走りを求めるなら、V8モデル(SS RS)が本命だろうが、日本仕様のコンバーチブルでは選べないこと。このご時世、何もそこまでV8にこだわる必要はないというのが正論だが、趣味性が強いモデルゆえに、そこにこだわる人は多いはず。それほど数は売れないかもしれないが、やはりコンバーチブルにもV8モデルを導入して欲しいところ。

幌を閉める場合、最後は頭上のレバーでロックして終了となるが、その時にも前後左右で計4枚あるサイドウインドウは開いたまま。これをパワーウインドウのスイッチで一つ一つ閉めるのが面倒で、慣れていないとリアクォーターなどは閉め忘れがち。他メーカーのオープンモデル同様、幌と連動して閉まるとか、4つ一度に閉められるボタンを付けるとか工夫が欲しい。また、今やMINI コンバーチブルでさえフルオートなのだから、ロック操作も自動にしたい。レバー操作にはけっこう力が必要で、女性が操作しているところは想像しにくい。

以前、クーペでも指摘したように右Aピラーとドアミラーが作り出す大きな死角は、今回も気になった。交差点を右左折する時は、自転車や歩行者を見落とさないように注意が必要。フロントの見切りも良くないので、かなり前に寄せたつもりでも、まだ1メートルくらい空いていた、なんてことも。フロントにもセンサーが欲しくなる。

細かいことだが、フューエルキャップは鍵式だった。防犯のためだとは思うが、少々面倒なのは否めない。もう一つ細かいところでは、サンバイザー裏のミラーがむき出しであること。スライドの蓋はあった方がいい。

総合評価

「いい時代」のアメリカそのもの

先日、ビーチ・ボーイズの日本公演を見てきた。なんと50周年記念ライブ。メンバーはもう70歳だ。ということで観客も老人と呼んでも差し支えない人がかなり多い。若くても40代? ファッションも正直そうとう老人っぽい人が多いから(バミューダパンツに開襟シャツ、キャップをかぶり、腰にはウエストバッグw)、いわゆるロックコンサートというムードではなかった。とはいえ、ステージの方は素晴らしかった。バックバンドの若いサポートメンバーがしっかりしてるし、肝心のコーラスは完璧。ビーチ・ボーイズの楽曲は1940年代、50年代のポップス、ロックンロール、ゴスペル、ドゥワップなどをベースにし、60年代ウエストコーストの若者文化を象徴するサウンドに仕立てられた、まさに「いい時代」のアメリカそのもの。またその中で歌われる、クルマと女のコとサーフィン、ハンバーガーショップなんていうものに彩られたライフスタイルは、ベトナム敗戦をまだ知らないアメリカ中産階級の(子供たちの)もの。当時、四畳半に住んでクルマも持てず、ハンバーガーなど食べたこともない日本の若者(団塊世代)にとって、そのライフスタイルは憧れそのものだっただろう。

団塊世代と違ってリアルタイムでビーチ・ボーイズを聞いていない世代も、1970年代初頭の映画「アメリカン・グラフィティ」のエンディングで、名曲オール・サマー・ロングを聞き、甘酸っぱい感傷とともに、ビーチ・ボーイズ、そしてアメリカへの想いを強めたはず。特にこの映画はビデオデッキの普及とリンクしていて、TV放映が録画され、繰り返し再生されたから、その感覚は世代を超えて伝わっていった。最後のクルマ好きと言われる現在30代後半以降の世代は、この映画に、そしてビーチ・ボーイズに代表されるアメリカンポップスに何らかの影響を受けているのではないだろうか。最近、日本人の中に脈々と流れるヤンキー(アメリカ人という意味ではなく、いわゆる日本のヤンキー)気質を考察する本も出ているが、日本のヤンキーにも、この映画は多大な影響を及ぼしたと思う。

そんなわけで世代を超えて戦後の日本人の多くは、アメリカが好きだった。そしてたぶん今も好きなはず。その間に日本はすっかりアメリカナイズされ、ハンバーガーショップはいたるところにあり、日本の子供の大半がディズニー(ランド)を楽しんでいる。また特に地方において、クルマと共にあるそのライフスタイルは1950年代のアメリカとほぼ同じといっていい。クルマと女の子、サーフィン(じゃなくてもいいけど)という若者のライフスタイルは、日本でも1970年代後半から始まっている。ただ最近になって、そこからクルマが抜け落ち始めていることはご承知のとおり。若者はもうカッコいいクルマには反応しなくなっている。それに並行して、アメリカと同じような格差社会になってきているようにも思える。その点でも日本はアメリカを追従しているのかもしれない。

「Fun, Fun, Fun」が聞こえてくる

ビーチ・ボーイズ公演のラストナンバーは、1964年の名曲「Fun, Fun, Fun」。親父に取り戻されるまで、勝手に乗ってきた親父のTバード(フォード・サンダーバード)で楽しむ女のコの歌だ。Tバードではないけれど、このカマロ コンバーチブルをオープンにして乗っていると、どこからともなく「Fun, Fun, Fun」が聞こえてくるような気がした。カッコいいオープンカーとエンドレスサマーを思わせる夏の日差し。(私にとっては)何十回も繰り返されてきた平和な夏の日を楽しむには、カマロは最高のクルマだった。

そんなカマロ コンバーチブルの日本仕様にはアメリカンな6.2リッターV8はなく、V6だけになる。パワー的には十分だが、アメ車らしいトルク感はやや弱い。ただ、3年前にクーペに乗った時より、足回りの熟成はずいぶん進んだように感じられ、乗り心地もよく、ワインディングも気持よく走れるクルマに仕上がっていた。アメリカンな直線番長でなく、普通に乗れる上質なクルマになったカマロ。このカッコ良さと気軽に乗れる感覚こそ、アメリカ車らしいところ。クルマに日常的に乗るアメリカと同じように、カマロは日本の日常でも使えるクルマだ。燃費だって思ったより悪くないし。

若い子にはちょっと手の届かない価格のこのクルマも、これまでまじめに働いてきたアメリカ好きのオヤジなら手が届く。左ハンドルの真っ赤なカマロ コンバーチブルは葬式には乗っていけないけど、それ以外ならいつでもOK。もちろんドライブにはアメリカン・ロックが欠かせない。ビーチ・ボーイズなら、彼らの音楽的リーダーで1960年代後半に精神を病んだブライアン・ウイルソンの復活作「15・ビッグ・ワンズ(偉大なる15年)」という1976年に出たアルバムをオススメしたい。オリジナルとオールディーズが半々で構成されたこのアルバムは、1970年代中盤のアメリカへの応援歌でもある。

 

しばらく前までは、戦争もなく、自然災害もなく、まがりなりにも成長を続けてきた日本社会。しかし311以降、中産階級の幸せな未来像は消えようとしている。だが今のオヤジ世代なら、アメリカとともにあった幸せを維持することもできるだろう。偉大なるビーチ・ボーイズを聞き、偉大なるアメリカを讃え、そして偉大なるアメリカ車カマロを転がす。豊かだった時代に思いを馳せながら、アメリカンに生涯を終えるのも悪くない。そんなことを考えながらの試乗に、肝心のビーチ・ボーイズのCDを持っていくのを忘れてしまった。しかたなくFMをつけると、流れてきたのは1960年代のアメリカを象徴するもう一つのバンド、ドアーズの「ハートに火をつけて」だった。
 
 

 

試乗車スペック
シボレー カマロ コンバーチブル
(3.6リッターV6・6AT・504万円)

●初年度登録:2012年6月●形式:不明 ●全長4840mm×全幅1915mm×全高1395mm ●ホイールベース:2855mm ●最小回転半径:-m ●車重(車検証記載値):1840kg(950+890) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:LFX ※車検証:国[01]782 ●排気量・エンジン種類:3562cc・V型6気筒DOHC・4バルブ・直噴・縦置 ●ボア×ストローク:94.0×85.6mm ●圧縮比:- ●最高出力:241kW(327ps)/6800rpm ●最大トルク:377Nm (38.4kgm)/4800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/72L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:後輪駆動(FR) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 マルチリンク+コイル ●タイヤ:前 245/45R20、後 275/40R20(Pirelli P Zero) ●試乗車価格:510万3000円  ※オプション:エクステリア有償色 6万3000円 ●ボディカラー:インフェルノ オレンジ(メタリック) ●試乗距離:約300km ●試乗日:2012年8月 ●車両協力:GMシボレー日進(株式会社ホワイトハウス)

 
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